【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 オリキャラ:神崎千秋くんが働くルシルの館に次々と現れるおかしなお客さんたち。
 一人目:峰理子リュパン四世。二人目:神崎・H・アリア。三人目:星伽白雪。
 そして。四人目:風魔陽菜。
 果たして、一般人代表改め一日占い師:神崎千秋くんは個性豊かなお客さんたちを相手に今日一日を乗り越えることができるのか!?




72.突発的番外編:神崎千秋の一日占い師 後編

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

陽菜「ふむ。ここで合ってるでござるか?」

千秋(――他を当たってほしいとひたすら思えばお客さんが来なくなるんじゃないかと思ってた時期が俺にもありました)

千秋「ルシルの館をご利用ですか? でしたら、こちらにお座りください(にしても、今度は見た目からして変わってる奴だな。防弾制服着てるからこいつも武偵高の奴なんだろうけど)」

陽菜「承知した」

陽菜「……」

千秋「何かお悩みですか? 何なりと申し上げください(もう俺は驚かないぞ。どんな突拍子もない悩みだろうと絶対に驚いてやるものか)」

陽菜「その、新しい自分に生まれ変わりたいでござる」

千秋「新しい自分、ですか?(ん? 思ったよりまともな悩みか?)」

陽菜「はい。拙者、熱血キンジと冷静アリアの世界では人をからかって遊ぶのが大好きな忍者キャラとなっているでござるが……作者のふぁもにか殿は冗談大好きキャラのセリフを考えるのが非常に苦手らしく、だったら出番自体をなくせばいいやと拙者の出番を鋭意消去中にござる。このままでは拙者の存在が本編から消されてしまうでござる。精々おまけに登場するだけの端役中の端役にしかなれないでござる。ゆえに作者が扱いやすい性格に生まれ変わろうと考えたでござるが、何か作者が気に入りそうな性格に心当たりはないでござるか?」

千秋「……少々お待ちください。水晶で占ってみますので(おい、神崎2号が来たぞ。また熱血キンジと冷静アリアとか作者のふぁもにかとかヘンテコな設定出てきたぞ? 何なの、今それ流行ってんの? つーかこいつら、占い師を何だと思ってんだよ? どこぞの猫型ロボットでも聖杯でもねぇんだぞ、俺は)」

 

 ポォォォ ←水晶が光を放つ擬態語。

 

陽菜「おぉ……!」

千秋「なるほど、わかりました。貴女の性格自体には何も問題ありません。問題なのはその『ござる』口調です(ここはテキトー言って、とっととお引き取り願うか。頭のおかしな連中といつまでも会話なんてゴメンだし、こいつも何気に猜疑心とかなさそうだしな)」

陽菜「『ござる』口調、でござるか?」

千秋「そう、それです。作者のふぁもにかは冗談大好きキャラを苦手としているのではなく、古風の話し方をするキャラに苦手意識を持っているみたいです。まずは口調を別のものに変えてみてはいかがですか? 例えば……そうですね、『ですます口調』や『ツンデレ口調』、あとは『お嬢さま口調』なんてどうでしょう?」

陽菜「……これは盲点にござる。まさかふぁもにか殿が拙者の『ござる口調』を敬遠していたとは。助言、感謝するでござ……感謝しますわ、占い師さん♡」

千秋「そうそう、そんな感じです。その調子でレッツトライです」

 

 陽菜がログアウトしました。

 

千秋「……もうやだ。もうゴメンだ。なんでどいつもこいつもふざけた悩みしか持ってねぇんだよ。普通の悩みを抱えた普通な奴はいねぇのかよ。もっとこう……好きな人との相性とか、自分の夢がかなうかどうかとか、占い師に聞きたいことなんて色々あるだろうが」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

不知火「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

武藤「……出番、欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

中空知「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

レキ「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

カナ「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

ヒルちゃん「出番が欲し(ry」

エルちゃん「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

ANA600便の機長さん「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

シャーロック「出番が欲し(ry」

 

 ◇◇◇

 

千秋「うがぁぁぁあああああああああああああああああああ!! 俺か!? 俺がおかしいのか!? 俺が熱血キンジと冷静アリアの世界の住人だって認識できてないのがおかしいのか!? そうなのか!? 違うよな!? 誰か違うと言ってくれぇ!」

千秋「くそッ。何だよ何だよ、どいつもこいつも出番出番出番出番! それしか言える言葉ねぇのかよ!? つーか、別になくていいじゃねぇか出番! 熱血キンジと冷静アリアの世界ってパワーインフレの止まらないバトルものの二次創作なんだろ!? なら出番なくていいじゃねぇか! そっちのがむしろ好都合じゃねぇか!? 出番ない方が命の危険がなくて安全なんだしさぁ!」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

キンジ「……ここでいいのか?」

千秋(あー、また出番厨か? 出番クレクレの人か? いい加減にしてくれ、そんなの作者に言えばいいだろ。なんで皆して俺に言ってくるんだよ。どう考えてもおかしいだろ、これ。一占い師に何をそんなに期待してんだよ。占い師にできることなんて高が知れてんだからさ、頼むからもっと現実見てくれよ……)

千秋「ルシルの館をご利用ですか? でしたら、こちらにお座りください(――って、誰かと思えば遠山じゃねぇか。何だ、あいつにも何か悩みあったのか。意外だな)」

キンジ「は、はい」

千秋「何かお悩みですか? 何なりと申し上げください(遠山の奴、何か元気ないな。これは本格的に悩んでるのかもな。……遠山はいい奴だし、力になってやりたいな)」

キンジ「……占い師さん。貴方は近親相姦についてどう思いますか?」

千秋「……続けてください(……前言撤回。どうしよう。こいつ、今までの中で一番ヤバい悩み持ってるかもしれない)」

キンジ「俺は兄さんが好きです。大好きです。好きで好きでたまりません。世界で一番好きです。なのに。俺はこんなにも兄さんを愛しているのに、この世界はまるで俺の思いをあざ笑うかのように兄弟同士の結婚やセックスをタブー扱いしています。だけど、正直言って俺にはその理由がよくわかりません。確かに生まれてくる子供が奇形児になる可能性があるというのはわかります。わかってるつもりです。ですが、今の世界では徐々に同性同士の愛が認められつつあります。同性愛はOKで兄弟の愛が相変わらずタブー扱いされているのは納得いきません。いいじゃないですか、兄弟同士の恋愛に近親相姦。両者の間に偽りのない真の愛があれば性別や血縁関係なんて関係ないじゃないですか。どうして俺と兄さんとの愛を世界は認めてくれないんですか。こんなの理不尽にも程があるじゃないですか。……占い師さん、貴方はどう思いますか?」

千秋(……ヤバい。これはヤバい。色々とヤバすぎて何も言えない。こいつ、ブラコンなのは何となくわかってたけど、ここまで重症だったのかよ。つーか何があったか知らないけど、とりあえずその据わりきった目で淡々と話すのは止めてくれ。怖いんだよ。今にも夢に出てきそうなんだよ。てか、男同士の性交じゃ奇形児以前に子供生まれないからな? さすがにそれぐらいはわかってるよな? そこは信じてもいいよな?)

千秋(……にしても、マズいな、これは下手に否定できないぞ。んなことしたってこいつが暴走して強硬手段に出たらアウトだ。こいつは社会的に殺される。ここは占い師の立場を使ってどうにか思いとどまらせないと……!)

千秋「……言いたいことはそれだけですか?」

キンジ「え、まだ言っていいんですか?」

千秋「言いたいことは以上ですね?(あれだけ言ってまだ言い足りなかったのかよ!? どんだけブラコン極めてんだよ、こいつ!?)」

キンジ「は、はい」

千秋「……やれやれ、貴方のお兄さんへの愛の方向性にはガッカリです。貴方は十数年もの間、ずっとお兄さんと同じ時を過ごしてきたのでしょう? なのに、貴方はお兄さんを恋愛や性的な対象としてしか見られないのですか? だとしたら、それは愛とは言いません。セフレ相手に抱く低俗な感情と似たようなものです」

キンジ「なッ!?」

千秋「誰かをどれだけ愛しているかは恋愛感情の深さや性的行為の有無で決まるものではありません。結婚やセックスが二人の愛の完成形ではありません。なぜならそれらの行為はあくまで形式的なものでしかないからです。……近親相姦の境地など軽く飛び越えて、互いが互いを信じ合い、いついかなる時であっても自然に心を重ね合わすことができる関係性を築く。この領域へ達することこそが真の愛と言えるのではないでしょうか?」

キンジ「あ……」

千秋「確かに貴方はお兄さんを愛しているのでしょう。しかしお兄さんを愛した結果が結婚や近親相姦になるようではそれは真の愛とは言えません。貴方が真にお兄さんを愛していると言うのなら、まずは二人の愛を健全な形で貫き、それから二人の愛を世界が認めざるを得ないほどに高尚なものへと昇格させるべきではないでしょうか?」

キンジ「……なるほど。そうですね、確かに貴方の言う通りです。俺は一体何を血迷っていたんでしょう? ありがとうございます、占い師さん。貴方のおかげで目が覚めました。生まれ変わった気分です。道は険しいですが、俺と兄さんとの愛の深さを全世界に思い知らせてやりますよ!」

千秋「いい顔になってきましたね。貴方はそのまま貴方の信じる道を突き進んでください。そんな貴方を私は心より応援します」

 

 キンジがログアウトしました。

 

千秋「……ふぅ。小難しい言葉を並べただけの自分でもよくわからん暴論だったけど、どうにかなったな。これで遠山が過ちを起こさなきゃいいけど。兄を愛でるだけで終わってくれればいいけど。……これから遠山との付き合い方、変えるか。じゃないと俺の心の安寧が保てなさそうだ」

千秋「ハァァァ……(頼む、閑古鳥。働いてくれ。ちゃんと鳴いてくれ。今なら千円払うから)」

 

 この時。千秋の耳に「ハッ! この俺様が千円なんてはした金で働くわけないだろうが」と嗤う閑古鳥の声が聞こえた気がした。

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

かなえ「……」

千秋「ルシルの館をご利用ですか? でしたら、こちらにお座りください(ん? あれ? この人、武偵高の生徒じゃない!? ちょっ、これ初めてじゃないか!? 初めての大人のお客さんじゃないか!?)」

 

 キンジのインパクトの強すぎる悩みのせいで前にも大人なお客さん(※カナ、機長さん、シャーロックの三人)が訪れていたことを完全に忘れちゃってる千秋くんである。

 

千秋「何かお悩みですか? 何なりと申し上げください(それにこの人落ち着いた雰囲気してるし……ついにまともな悩みを持った一般人が来てくれたのか!? 待望の!?)」

かなえ「実は、非常に話しづらいのだが、一言で言うなら……」

千秋(って、待て。この顔、どっかで見覚えが――おいおいおいおい!? まさか!? まさか、神崎かなえ!? 武偵殺しとか色々やらかしたあの凶悪犯罪者の!? いや、落ち着け俺。落ち着いてよーく考えろ。神崎かなえは今獄中のはずだ。こんな所にいるはずがない。つまり! この人は神崎かなえのそっくりさん! そうだ、そうに違いないッ! 何だよ、驚いて損したぜ)

かなえ「プリズン・ブレイク、してしまったんだ」

千秋「……詳しい話をお聞かせ願えますか?(本人でした☆ って、やべぇぇぇえええええええええええええええ! どうしよう!? マジでどうしよう!? 何だよこの状況!? こんなことになるなんて聞いてないぞ!? 逃げるか!? 逃げた方がいいか!? でもどこに逃げればいいんだ!? そもそもこの凶悪犯罪者が俺を取り逃すなんてこと、あり得るのか!?)」

かなえ「いや、私にその気はなかったんだ。本当だぞ? だが……自分で言うのも何だが、私は囚人たちに慕われていてな。何を思ったのか、彼らが『貴女はこんな所で終わっていい人じゃない!』とか『貴女はもっと多くの悩める人に正しい道を指し示すべきだ!』とかいきなり言ってきて、そのまま無理やり私をプリズン・ブレイクさせたんだ」

千秋「……よく脱獄できましたね(いや、ホントだよ。いくら囚人が結集したって脱獄できるほど牢獄は甘くないだろ、普通に考えて)」

かなえ「いやな、囚人仲間の(コウ)がレーザービームの使い手だったらしくてな。彼女が牢獄の壁という壁をそのレーザービームで破壊して、彼女を中心に日々緻密な脱走計画を練っていた囚人たちが看守をあっという間に無力化して、それでプリズン・ブレイクが達成されたわけだ。……あまりにあっさり成功してしまったからか、未だにプリズン・ブレイクしたことに現実味が湧かないのだがな」

千秋「……(来たよ、来ましたよ、非現実極まりない言葉。今度はレーザービームかよ。……俺はそろそろ常識を捨てるべきかもな。じゃないとこの世界に順応できる気がしねぇよ、もう……)」

かなえ「本当なら私はすぐに牢獄に戻るべきなのだろう。私のプリズン・ブレイクのために体を張ってくれた彼らには悪いが、こんな所で油を売っていたって罪状が増えるだけだ。それでは私のために頑張ってくれている二人に申し訳ない。……けど、一方で一度アリアに会って抱きしめてやりたいと思う私もいるんだ。……なぁ、占い師さん。私はどうすればいい? 一体何が正解だと思う?」

千秋「……その、アリアというのは?」

かなえ「私の娘だ。私の罪を晴らそうと、自分を蔑ろにしてまで頑張ってくれている健気な子だ」

千秋「……(うっわぁ。ヤッバいなこれ。脱獄云々を差し引けば今までで一番深刻な悩みじゃねぇか。さすがにここまで重いのは俺の手に余るぞ。どうする俺? 俺はこの人に何て言ってやればいい?)」

かなえ「……なんてな」

千秋「え?」

かなえ「悪かった。貴方に決断を委ねるような真似をして。……私はただ、自分の気持ちを聞いてくれる相手がほしかっただけなんだ」

千秋「……」

かなえ「私は戻るよ。娘を抱きしめるのは罪が晴れた時までお預けにする。アリアだってプリズン・ブレイクした私に抱きしめられるのは本望ではないだろう。では、失礼する」

 

 神崎かなえがログアウトしました。

 

千秋「……くそッ、なんで俺が罪悪感なんか抱かないといけないんだ。ふざけんなよあの女」

千秋(けど、凄くいい人だったな。とても極悪非道の犯罪者とは思えない。……本当にあの人は犯罪者か? 囚人から慕われてて、娘のことをちゃんと考えられるあの人が、犯罪者? 何かの間違いじゃないのか? ……触らぬ神に祟りなしなのはわかってるけど、このまま胸くそ悪いままで終わらせられるかよ。俺だって今は一応武偵だしな。……俺にできることなんて限られてるだろうけど、色々調べてみよう。まずはそこからだ)

千秋「にしても、疲れた。もう俺のライフはゼロだ。一言だって他人と話せる気がしない。だから、もう誰も来ないでくれ。……パトラッシュ、疲れたろう。俺も疲れたんだ。なんだか、とても眠いんだ(←精神的に疲れすぎてどうかなっちゃってる千秋くん)」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

理子「……あ、あのー(←恐る恐る)」

千秋(……無限ループって怖くね?)

 

 ◇◇◇

 

 閉店後。

 

千秋「ハァ、くっそ疲れた……(あのエセ占い師、いつもこんなふざけた連中を相手にしてきたのかぁ? だったら少し見直すぞ)」

エセ占い師「お疲れーい、千秋くん」

千秋「やっと帰ってきましたか、エセ占い師」

エセ占い師「うん、ただいま。はーい、旅行のお土産。あと本日分の給料。で、どうだった? 占い師の一日アルバイト、楽しかった?」

千秋「……今の俺の様子見てよくそんなこと言えますね」

エセ占い師「アッハハハ。その様子だと苦労したみたいだね。あ、でさ。明日私ハワイに行きたいからまたお店任せても――」

千秋「ッ!」

 

 神崎千秋は逃げ出した!

 残念、エセ占い師からは逃げられない!

 

エセ占い師「ね? もう一日だけ、いいでしょ? ……いいよね?」

千秋「うぅ、なんでこんなことに……」

 

 神崎千秋の受難は続く。

 

 

 

 おわり。

 

 




Q.どうしてジャンヌちゃんの出番がないんですか?
A.ついこの前まで散々出番あったからたまにはハブろうかと思いまして(ゲス顔

 というわけで、72話終了です。千秋くんは不憫な子。はっきりわかんだね。

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