【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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ふぁもにか「次回は紅鳴館に殴り込みだと言ったな? あれはウソだ」

 どうも、ふぁもにかです。ここの所、何だか一般人代表:神崎千秋くんがそれなりに人気になってるみたいだったので、ちょっと彼を中心にした完全なるネタ話を作ってみました。急ピッチで作った完全なるネタ話なだけあって終始ギャグです。さらに、ただでさえ性格改変でキャラ崩壊を起こしている原作キャラたちがさらに色々と崩壊しています。なので、閲覧する際はきちんと覚悟を決めることをオススメします。

※今回は会話文と千秋くんの心の声と申し訳程度の地の文で構成されています。
※今回のお話は熱血キンジと冷静アリア本編とは全く関係ありません。その辺はご了承ください。



71.突発的番外編:神崎千秋の一日占い師 前編

 

 とある占い店にて。全身を黒のローブで包んだ怪しげな男が一人座っていた。

 

千秋「ハァ、俺が占い師の代理、ねぇ……ホント、どうしてこうなった?」

千秋「いや、わかってるけどな。あのエセ占い師が日帰り旅行に行きたいからって俺に仕事押しつけてきたせいだしな。……くそっ、俺がNOと言える日本人だったら今頃こんなことにはならなかったはずなのに」

千秋「……」

千秋「……ハァ。愚痴ってても仕方ないか。今更どうしようもないんだし、やるだけやってみよう。これはあくまで一日アルバイトだし、あのエセ占い師も『テキトーなことを言ってお客さんを安心させればいい』って言ってたしな」

千秋「とりあえず、今日はお客さんが一人も来ませんように。そしたら俺も占い師の演技をしないで済むからな」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

千秋「(来たよ、来ちゃったよ。お客さんが来ないよう願った途端に一人目来ちゃったよ。なに? 俺って神様に嫌われてんの?)」

理子「……あ、あのー(←恐る恐る)」

千秋「はい、どうされましたか?(おい、あれって同じクラスの峰じゃねぇか。あのビビりの峰がなんで占い店に――って、そうか。あいつ日頃から何かと怯えまくってるもんな。そりゃあ人並み以上に悩みも抱えてるか)」

理子「ひゃ、ひゃう!?」

千秋(……声かけただけでこれかよ。ちょっと傷つくぞ)

千秋「ルシルの館をご利用ですか? でしたら、こちらにお座りください(けど、峰みたいなタイプなら簡単に安心させられそうだな。なんつーか、基本的に何でも素直に信じる感じだしな)」

理子「は、はい。お、お邪魔しま~――ッ!?」

千秋「え――(ちょっ、何にもない所でつまずいたぞこいつ!? って、マズい!? このままだと峰が――)」

 

 ズグァン! ←理子の頭が思いっきり水晶と激突した音。

 ドサッ ←気絶した理子が地に倒れた音。

 

理子「きゅう……」

千秋「……手遅れだったか。何もこんな所でドジっ子アピールなんてしなくていいってのに」

 

 ツゥ ←理子の頭から血が流れる擬態語。

 

千秋「って、おい!? 血ぃ出てるじゃねぇか!? 大丈夫かこれ!? 生きてるよな!? 死んでないよな!? と、とりあえず救急車だ! 救急車を呼ぼう!」

 

 理子は無事搬送されました。

 

千秋「ハァ、疲れた。精神的に疲れた。初っ端から流血沙汰になるとか、幸先悪いにもほどがあるだろ。ホントに大丈夫かよ、今日の仕事」

千秋「……神様お願いします、今日のお客さんは峰だけでありますように。いや、ホントお願いだから」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

千秋(……神様なんて死ねばいいのに)

アリア「お、お邪魔します(←おずおずと)」

千秋「ルシルの館をご利用ですか? でしたら、こちらにお座りください(って、また同じクラスの奴じゃねぇか。しかもよりによって神崎・H・アリア。俺こいつ苦手なんだよなぁ、名字が被ってるせいでスゲー苦労してきたし。「神崎」って呼ばれて振り返ったけど俺じゃなくてこいつに用事があったってこと、今までに何度もあったしなぁ。……止めよう、思い出したら何か悲しくなってきた)」

アリア「あの、相談があってきたのですが……」

千秋「はい、何なりと申し上げください(でも、こいつは強襲科(アサルト)専攻にしては割と大人しいし、常識人だ。言語が通じてない感が凄い他の武偵高の連中と比べれば話しやすい方だし、悪くないお客さんだな)」

アリア「はい、ありがとうございます。私、その……」

千秋「(さぁ、来い。どうせ高校生の女子らしいありふれた悩みだろうし、テキトーにアドバイスして終わらせるか)」

アリア「このパワーインフレの凄まじい熱血キンジと冷静アリアの世界をどうにかしたいんです」

千秋「……はい?(パワーインフレ? 熱血キンジと冷静アリア? 何それ? 何かいきなりワケの分からない言葉が出てきたぞ?)」

アリア「おかしいとは思いませんか? 私は強襲科Sランク武偵ですよ? Rランクに次ぐ数少ないエリート武偵ですよ? 今まで幾多の凶悪犯罪者を捕まえてきた凄腕武偵ですよ? なのにここの所、峰さんだったり魔剣(デュランダル)だったりとSランクの私以上に強い敵が当然のように出てくるし、しかも二人はあくまでイ・ウーの一構成員。つまり、イ・ウーには彼女たちより強い敵がまだまだゴロゴロいるということです。……これどう考えてもおかしいですよね? 明らかにパワーインフレ起こってますよね」

千秋「え、えーと?(何を言ってるんだ、こいつは? 電波さんか? 電波さんなのか?)」

アリア「これは由々しき事態です。このままでは私はパワーインフレの止まらない熱血キンジと冷静アリアの世界に取り残され、ぽっと出のくせにやたら強い新キャラに出番を根こそぎ奪われてしまいます。なので、速やかにパワーインフレ路線を止めて戦略を駆使した頭脳バトルに物語をシフトするようどうにか作者のふぁもにかさんに陳情しないといけないのですが、残念ながら画面の外に生息するふぁもにかさんと接触する手段を私は知りません。占い師さん。私に何か効果的な方法を伝授してくれませんか? お願いします、この通りです(←土下座ッ!)」

千秋「ちょっ、落ち着いてください! それと、その……パワーインフレ? 熱血キンジと冷静アリア? とやらについて簡潔に説明してくれませんか?(今の俺は占い師だ。いくら電波さんとはいえ、話ぐらいはきちんと聞かないとダメだしな)」

 

 アリア説明中。

 

千秋「要するに、貴女は熱血キンジと冷静アリアという二次創作のメインヒロインだということですね?(こいつ絶対頭イカれてるだろ。厨二病か?)」

アリア「はい。なので、空気キャラにならないように一刻も早くこのパワーインフレの世界を作っているふぁもにかさんに物申したいんです。何とかなりませんか?」

千秋「……その前に一つ、貴女は神崎・H・アリアさんですね?」

アリア「ッ!? どうして私の名前を!?」

千秋「私は占い師ですからね。私ほどの実力になると人の顔を見るだけで名前がわかるようになるのですよ(実際はクラスメイトだから名前を知ってただけだけどな)」

アリア「な、なるほど……」

千秋「神崎さん。いくら私と言えど画面の外のふぁもにかと接触することはできません。しかし、落胆することはありません。貴女はメインヒロインの自分が空気キャラとなってしまうことを危惧していたようですが……考えてみてください。この世界の名前は何ですか?」

アリア「……熱血キンジと冷静アリア」

千秋「では、貴女の名前は?」

アリア「神崎・H・アリ――あ!?」

千秋「気づきましたか? そうです、貴女の名前は神崎・H・アリア。そしてこの世界の名前は熱血キンジと冷静アリア。つまり、貴女の名前がそのまま世界の名前として採用されているのです。それが意味することは――作者のふぁもにかが貴女を看板タイトルとして使いたいと思うほどに貴女のことを気に入っているという証です。作者の意思決定権が物語の行く末を決定する以上、作者に懇意にされている貴女の出番がなくなり空気キャラになる、なんてことはあり得ません。……パワーインフレなんて気にすることありません。貴女はただ貴女らしく生きていけばいいのです。それが作者の望みなんですから」

アリア「……そうですね。そうですよね! 私は何を悩んでいたのでしょう! 作者に気に入られている私が物語からフェードアウトするなんてあり得ないのに! ――ありがとうございました、占い師さん! 私、これからも自分らしく頑張ってみます!」

千秋「その意気です。頑張ってくださいね」

アリア「はい!」

 

 アリアがログアウトしました。

 

千秋「……よし、何とか乗り切ったな。自分をメインヒロインに設定しちゃう哀れな厨二病相手だから上手くいくかスゲー心配だったけど、案外何とかなるもんだな」

千秋「にしても、神崎ってあんなおかしな性格してたんだな。何だよ、熱血キンジと冷静アリアの世界って。……常識人だと思ってたんだけどなぁ。俺が勝手に同族意識抱いてただけ、か」

千秋「ま、とにかく占い師の責務は最低限果たした。もう今日は誰も来なくていいぞ。何たって、今日は閑古鳥の日なんだからな」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

白雪「んーと、ここかな?」

千秋(おい、閑古鳥何サボってんだよ。働けよ。ちゃんと鳴けよ)

 

 この時。千秋の耳に「この俺様にタダ働きをさせる気か? いいご身分だなァ」と嗤う閑古鳥の声が聞こえた気がした。

 

千秋「ルシルの館をご利用ですか? でしたら、こちらにお座りください(つーか、今度は堕落生徒会長の星伽白雪のご登場か。……何だ? ここって武偵高の生徒御用達だったりすんのか?)」

白雪「はいはーい」

千秋「何かお悩みですか? 何なりと申し上げください(見た感じだと悩みとは無縁そうな奴だけどな。頭の中がお花畑な印象だし。まぁ人は見かけによらないって言うし、何か抱えるものでもあるのかな?)」

白雪「は、はい。えーと、私この世界にシエスタを導入したいんです」

千秋「シエスタ……というと、アレですか? スペインで導入されていた昼寝休憩のことですか?(なーんか嫌な予感がしてきたぞ。この生徒会長サマも神崎みたいにぶっ飛んだこと言ってくる気がしてきたぞ)」

白雪「はい、それです。……私、この世の人たちは働き過ぎだと思うんです。いつもいつも時間ばかり気にしてキビキビ動いて、でもそれだと無駄にストレスを抱え込むだけ。こんな生活を続けてたらいつか皆壊れちゃいます。だから私、誰もが一日中ゴロリと昼寝するだけでいい世界を作りたいんです。その第一歩としてシエスタを全世界に浸透させたいと思ってるのですが……やり方がわかんなくて面倒です。というか、私が一日中ダラダラしてても問題なく幸せに生きていける世界をちゃっちゃと作ってしまいたいです。占い師さん占い師さん、何とかしてくれませんか?」

千秋「……(おいおいおい!? 無茶ぶりが過ぎるだろ!? 何とんでもないこと人任せにしちゃってんの!? つーか、これ占い師に頼むようなことじゃないだろ!? ……おぃぃぃ、何なんだよこいつ。昼寝帝国でも作りたいのか? 21世紀のライナ・リュートなのか?)」

千秋「貴女はアリとキリギリスというお話を知っていますか?」

白雪「はい。普段から食べ物を蓄えていたアリは生き残って、逆に遊びほうけていたキリギリスが餓死しちゃう話ですよね?」

千秋「その通りです。しかし、それはあくまで原典の話です。日本のアリは飢えに苦しむキリギリスに食べ物を分け与えてくれます。つまり、それは堕落しきったどうしようもない存在にも何らかの形で手を差し伸べてくれるお人好しが必ずいるということです」

白雪「ッ!」

千秋「他人は他人。貴女は貴女です。周囲のことなんて構うことはありません、貴女は己の欲求のままに好きなだけだらけた生活をすればいいのです。わざわざシエスタを導入せずとも、困った時に貴女を無償で助けてくれる都合のいい働きアリが日本にはたくさん存在しているのですから」

白雪「うん、うん! そうですよね! ありがとうございました、占い師さん! 私、何だかスッキリしました! 今なら心地よくお昼寝できる気がするので早速寮で寝ようと思います!」

千秋「いい夢が見れるといいですね」

白雪「はいッ!」

 

 白雪がログアウトしました。

 

千秋「……かなり無理やりな理論だったけど上手くいったみたいだな。生徒会長サマは天然って話だし、それのおかげかな」

千秋「にしても、やるなぁ俺。よくもまぁあんな色々と無茶な要求に上手く切り返しできたよな。今日の俺は冴えてんのかね?」

千秋「さーて。もう誰も来るなよー。こっちはぶっ飛んだ悩みを抱えた女子二人の相手でもういっぱいいっぱいだ。占ってほしいなら他を当たって――」

 

 キィィ ←ゆっくりとドアが開く音。

 

陽菜「ふむ。ここで合ってるでござるか?」

千秋(――他を当たってほしいとひたすら思えばお客さんが来なくなるんじゃないかと思ってた時期が俺にもありました)

 

 

 果たして、一般人代表改め占い師:神崎千秋くんは個性豊かなお客さんたちを相手に今日一日を乗り越えることができるのか!? 

 

 

 

 後編へ続く。

 

 

 

 




Q.神崎くんって一日占い師のくせにタロットカードとか水晶とか全然使ってな――
A.深く考えたら負けです。気にしないでください。

 というわけで、71話終了です。この突発的番外編は本編が既にギャグの塊(のつもり)ですので残念ながらおまけはありません。にしても、改めて中身を見てみると銀魂チックな流れになってる気がしますね、何となく……

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