アリア「あれ? え、これ、もしかしなくても私なしで物語が進んじゃってます……?」
どうも、ふぁもにかです。今回はついにジャンヌちゃんとの戦い、と見せかけてまさかの説教回がメインです。随分と久しぶりに熱血なキンジくんが見られることでしょうね。ええ。
閑話休題。久しぶりに『熱血キンジと冷静アリア』の執筆してるせいか、キンジくんたちの性格のこれじゃない感が凄まじいですね。……ん、これ何気に重大案件ですよね。どうしたものか。
「クククッ。気配察知スキルAAA+のこの我が貴様の存在に気づかぬとでも思ったか、遠山麓公キンジルバーナード?」
「まさか。アリアを出し抜いたぐらいだしその内バレるとは思ってたよ。まぁ、もうバレたのはさすがに予想外だったけど」
魔剣にとっての死角にいるにも関わらず自分がいることを見破られてしまったキンジは魔剣と白雪の前に姿を現す。どことなく違和感を感じる声で高圧的に話しかけてくる魔剣にテキトーに返答しつつ、キンジは目で軽く状況を確認する。魔剣&白雪との彼我の距離は約15メートル。遠いわけでもなく、かといって近いわけでもない。仕掛けるには何とも微妙な距離だ。
「あと、俺は遠山麓公何たらじゃなくて遠山キンジだ」
「ん? 何を言っている、遠山麓公キンジルバーナード?」
「いや、だから遠山キンジだって! 名前呼ぶなら変なのつけないでちゃんと呼べよ!」
「クククッ。隠さずともよい。真名を明かされて焦る気持ちはわかるが、頑なに偽名を真名だと言い張るのは呆れを通り越していっそ哀れだぞ、なぁ? 遠山麓公キンジルバーナード?」
「……あぁ。もういいや、それで」
キンジは深々とため息を吐くと魔剣に向けていたジト目を横にそらす。キリッとしたレオぽんの仮面を被った魔剣から白雪と似たような頑固さを感じ取ったキンジが間違った自分の呼び名の訂正を諦めることにした瞬間である。
「キンちゃん!? どうしてここに!?」
「そんなの決まってんだろ。ユッキー、お前を助けに来たんだ」
「え?」
「ほんの少しだけどお前と魔剣が話してるの聞いたぞ。……何やってんだよ、ユッキー。勝手に諦めたりなんかするなよ。勝手に俺の前から消えたりなんかするなよ。寂しいだろうが。お前は俺にとって命の恩人なんだ! 一生かけたって返せるかどうかわからないぐらいの大恩人なんだ! だからさ。頼むから俺の元からいなくならないでくれ、ユッキー!」
キンジは自身の正直な気持ちをそのまま白雪にぶつける。魔剣がいる手前、ふつふつと湧き上がる感情を理性でしっかりと抑えつけた上で白雪に思いを伝えようとしたものの、キンジは自分の感情が理性の制御を超えて徐々に昂ぶっていくのを感じた。
兄さんが死んでからというもの、何事にもやる気を出せず無気力に過ごしていた俺の心を救ってくれたのはユッキーだった。ユッキーは空腹を理由に俺の部屋に転がりこむと俺以上に堕落した様を意図的に見せつけてきた。散々我がままを言ってきた。そんなあまりのユッキーの堕落っぷりを放置できずにユッキーの世話をしていくうちに段々と俺の心の中を占める兄さんの割合が減っていったのだ。
決して風化していったのではない。今の今まで収まりのつかなかった感情がストンと心の中にハマったような感覚。ユッキー曰く、悲しい現実を乗り越えるためにはまずは一端そのことを忘れて時間の経過に身を任せることが大事とのこと。本人はアニメの受け売り的なことを言っていたが、ユッキーのその心遣いは俺の心によく響いた。
ユッキーがいなければ。きっと俺は武偵であることを止めていたかもしれない。兄さんが結果的に命を失ってまで成し遂げた偉業がああも貶められるくらいなら武偵なんてやってられないと今まで積み上げてきたものを全て捨てていたかもしれない。実際、あの時の俺は武偵を止める一歩前まで気持ちが傾いていたのだから。
それどころか、下手すれば俺は兄さんがいないという喪失感に耐えきれずに突発的に自殺に走っていたかもしれない。兄さんをこれでもかと非難しまくったマスコミ関係者を殺しにかかっていたかもしれない。それだけ、あの時の俺の精神状態は危ういものだった。
俺が前を向けるようになったのは。世界最強の武偵及びマスコミ各社の誠意ある焼き土下座を最終目標に今日まで突き進んでこれたのは偏にユッキーが支えてくれたおかげだ。ユッキーが無気力になった俺のことを相変わらず信じていてくれたからだ。
(だからってわけじゃないけど、今度は俺がユッキーの心を救う番だ!)
「……キン、ちゃん」
「ユッキー。お前言ったよな? 私のために武偵を止めないでほしいって。俺が武偵として活躍する夢をもっと見させてほしいって。あの言葉があったから今の俺がいるんだ! ユッキーがああ言ってくれたから世界最強の武偵なんてバカげた目標掲げる今の俺がいるんだ! 俺にはお前が必要なんだ! お前がいなきゃ武偵やってるカッコいい遠山キンジは成り立たないんだよ!」
「――ッ!?」
「だから! だからッ! そんな何もかも諦めきった顔してないでもっと足掻けよ、ユッキー! それで自分の力じゃどうしようもないって思ったら諦める前に迷わず助けてって言ってくれ! お前が助けを求めればそれだけで動いてくれる奴なんてたくさんいる! もちろん俺も全力でユッキーを助けてみせる! 武偵高での生活は楽しかったんだろ!? もっと皆と一緒に過ごしたいんだろ!? ここにはどこぞの星伽神社と違ってお前を縛るものなんて何一つないんだ! だから、ロクに抵抗もしないうちに全て諦めて人生棒に振るような真似すんな、ユッキー!」
「キン、ちゃ……」
キンジは感情のままに思いの丈を叫ぶ。激情のままに等身大の思いを口にする。この場において一番の問題は白雪の心だった。魔剣との会話を聞いた限りでは例えキンジが白雪を助けようと手を伸ばしても白雪がその手を取らない可能性があった。諦めてばかりの白雪が、武偵高での生活を切り捨てて魔剣と落ち合った白雪が元の場所に戻ろうとしない可能性が考えられた。
その可能性を潰すために、白雪の精神を揺さぶるために、キンジは本音を叫ぶ。漆黒の瞳を見開きそこからツゥと一筋の涙を流す白雪を見る限り、効果は抜群のようだ。
「ちょっとその辺で見てろ、ユッキー。世界はお前が思ってるほど残酷でも理不尽でもないってこと、そこの魔剣を倒して証明してやるからさ」
「……うん」
「ククッ。これは大きく出たものだな」
キンジは素直に引き下がった白雪から魔剣へと視線を移す。と、同時に。今までキンジと白雪とのやり取りを腕を組んでただただ静観していた魔剣がふと小刻みに肩を上下させて笑う。
「茶番は済んだか、遠山麓公キンジルバーナード?」
「あぁ。わざわざ待ってもらって悪かったな、魔剣。別に奇襲を仕掛けてきてもよかったんだぞ?」
「クククッ。
「そうかよ」
魔剣は話すことはないと言わんばかりに黒マントの内側から両手の指と指の間に計8本の銃剣を取り出し、キンジもそれに応じるように右手にバタフライナイフを展開する。両者の視線が中間で激しくぶつかり合い、徐々に緊張感が高まっていく。
「いくぞ! 魔剣!」
「クククッ。愚かだな、貴様は。実に愚かだ。もう既に我は仕掛けているぞ?」
「は? ――なッ!? 足が!?」
地下倉庫のどこかからカタンと乾いた音が鳴ったのを契機にキンジは魔剣の元へと一直線に駆けようとする。しかし、それは叶わなかった。いつの間にかキンジの足元に一本の銃剣が刺さっており、そこからキンジの両足を巻き込むようにして円状に氷が張っていたからだ。
「我は格下相手に奇襲を仕掛けない。だが誰が罠を仕掛けないと言った? ……これで終わりだ。
「くッ!?」
魔剣は目に見えないほどのスピードで腕を振り両手の8本もの銃剣を時間差で次々と投擲する。そして一度手に持つ全ての銃剣を投げ終えるとすぐさま黒マントの内側からまた新たな銃剣を取り出しすぐさま投擲。不自然なほどの速さで魔剣から放たれた銃剣はあっという間にキンジの眼前で弾幕を形成する。
動きを封じられたキンジは迫りくる幾重もの銃剣の弾幕をバタフライナイフで弾いていく。いや、その場から動けないためにバタフライナイフ一本で防がざるを得ない。キンジは防弾&防刃加工されている制服部分の防御を捨てて必死に銃剣を弾くも、それでも弾丸のごとく迫ってくる銃剣の全てを弾き飛ばすことはできない。ヒステリアモードの時ならいざ知らず、今のノーマルキンジにはさすがに荷が重いようだ。
と、その時。弾き損ねた銃剣の内の二本がキンジの腹部に命中して衝撃を残し、残りの一本がスッとキンジの頬をかすめて切り傷を作る。キンジは現状が自身にとって不利極まりないことに舌打ちをするとともに、左手に拳銃を取り出し銃弾を放って銃剣をあらぬ方向へと弾き飛ばす。下手に跳弾して誘爆を生まないように最大限気を遣いながら、勢いよく迫ってくる銃剣を全て銃弾で撃ち落していく。
「……貴様、正気か? ここで銃を使うことの意味を理解していないのか?」
キンジがまさか火薬や爆薬が盛りだくさんの地下倉庫で拳銃を使ってくるとは思わなかったのだろう。自分の想定を軽く超える行為を平然とやってのけたキンジに魔剣は呆然といった風に言葉を漏らす。投擲しようとその手に持っていた銃剣をポロッと落としていることからも魔剣の驚き具合がよくわかる。
「心配すんなよ、魔剣。俺にはまだまだやることがあるからな。下手に誘爆させて一緒に心中するつもりなんてない!」
キンジは足元の氷を銃弾で砕いて体の自由を取り戻すと、驚きのあまりつい攻撃を止めている魔剣へと一気に駆ける。ここで牽制代わりに一度発砲したい所だが、魔剣の後ろに何が置かれているかわからない以上、それはあまりに危険過ぎる。そのため、拳銃を使えないキンジはまず魔剣との距離を詰めないと話にならないのだ。
「――って、またかよ!?」
だが。キンジは魔剣によっていつの間にやら足元に投擲されていた銃剣につまずいた。キンジはすぐに体勢を立て直そうとして、そのまま前方に倒れた。床に突き刺さった銃剣を起点に発生したらしい氷が再びキンジの両足を巻き込んで展開されていたからだ。それだけに飽きたらず床を急速に凍らせていく氷は床についたキンジの両腕をも凍らせてしまう。結果、キンジは四つん這いの状態のまま動けなくなってしまった。
(間違いないな、こいつも
「クッハハハッ! アーハッハハッハハハ! 足元がお留守にも程があるぞ、遠山麓公キンジルバーナード! 世界最強の武偵を目指す男が聞いて呆れる! ほれ、これでとどめだ。喰らえッ!
魔剣は自分の罠に二度も引っかかってくれたキンジを見下ろして存分に嗤う。それから。十分に嗤い終えた魔剣は仮面の裏に勝利を確信した笑みを浮かべつつ、キンジの頭蓋に穴を開けようと全力で銃剣を投げつけるのだった。
キンジ→どこぞの上条さんチックになってしまった熱血キャラ。地下倉庫だろうと平然と銃を使っちゃう怖ろしい子でもある。あと割と足元がおろそか。
白雪→キンジの言葉に思いっきり心を揺さぶられた怠惰巫女。
ジャンヌ→気配察知スキルAAA+(自称)の厨二病患者。パワーバランスの関係上、原作より色々と強くなってたりする。
わー、キンジくんが絶体絶命だぁー(棒読み)
ということで49話終了です。それにしても何だか戦闘シーンの描写が凄まじく下手になってる気がしますね。こんなクオリティで大丈夫なものでしょうかねぇ。
~おまけ(その1:ジャンヌの使った技説明)~
・ほとばしる閃光(ピアシング☆スロー)
→手に取った銃剣を常人には到底真似できないスピードで投擲する技。投擲された側(※実験台のりこりん)が飛来してくる銃剣を見た時に「まるで閃光のようだったよ、ジャンヌちゃん……」と震えながら感想を漏らしたことからこの技名となった。
・ほとばしる包囲網(ピアシング☆ウェブ)
→ほとばしる閃光(ピアシング☆スロー)の上位交換技。自身の持つ銃剣をただひたすら対象に向けて尋常じゃないスピードで投げ続けることで最終的に銃剣の弾幕が形成される。圧倒的手数で対象を追い詰める際に効果的な技である。
~おまけ(その2:かの「馬鹿な……早すぎる……!」ネタを緋弾のアリアキャラでやってみるテスト ※キャラ崩壊注意)~
アリア「まず私が天を仰いで『あぁ、あなたたち。しんでしまうとはなさけないですね』って言う」
理子「そしてボクは涙を流しながら『世界が、終わっちゃうよぉ……』って言う」
キンジ「それから俺は頭を抱えて『うぐッ!? こ、このままでは、俺の中の
神崎千秋「でもって俺は『クソッ! 何だってこんな時にッ!?』と苛立ちを顕わにしつつ荒野を駆け抜ける」
武藤「そこで俺が『……これが、神の因子の暴発か……!』と戦慄を覚える」
不知火「直後に俺は『チッ、今日はアレの販売日じゃねぇか。急がねぇと!』と舌打ちしてその場を去っていく」
レキ「一方その頃、私は憂い顔で『――儚いものですね』と公園のすべり台の上で嘆く」
綴先生「で、私はご機嫌で『クフフ。面白いことになってきたやないか♪』って言う」
陽菜「そこで拙者が歪んだ笑みを浮かべて『拙者たちの悲願が、ついに――!』って意味深な言葉を残す」
警官A「それから俺が『フッハハハッ! テメェらの時代は終わったんだよ!』って言ってデスサイズを振り下ろす」
神崎かなえ「その時私は『さて。私はどの立場に立ったものか』と檻の中で逡巡する」
ジャンヌ「我はそんな貴様らを次元の狭間から眺めて『クククッ、この程度か。是非もない』とニヤつく」
白雪「えー、とりあえず……今日も日本は平和です!」