【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。ようやく今回から原作2巻の話に突入します。おそらく第一章ほど話数を使うことはないでしょうが、それでもある程度は話数がかさむことでしょう。少なくとも何だかんだで20話は使うでしょうね、おそらく。
 ……いやぁー、それにしても長かった。ここまで連載するのにすっごく時間かかった。やっとダメっ娘ユッキーや厨二ジャンヌが跳梁跋扈するカオス展開を執筆できますよ。

 でもって、私ふぁもにかはこの『熱血キンジと冷静アリア』でオリキャラは一切出さないつもりでしたが(おまけは除く)、今回少しだけ登場します。まぁ、物語に深く関わるわけではありませんし、というか今回ぐらいしか出番がありませんし……いいですよね?



第二章 熱血キンジと魔剣(デュランダル)
32.熱血キンジと何気ない日常


 

 拝啓 天国の兄さんへ

 

 天国の暮らしはどうですか? 快適ですか? ふと思ったのですが、天国には何か変わった食習慣とかあるのでしょうか? 何か天国特有のスポーツがあったりするのでしょうか? 天国に向かった善人でも魔が差したってことで何かしらの犯罪を犯すこともあったりするのでしょうか? その場合は天国でも牢屋に放り込まれるのでしょうか? 兄さんに天使の翼が生えてたり輪っかが頭の上に浮いてたりしてるのでしょうか? ここの所、何かと天国のシステムが気になって仕方がない弟の俺は今日もRランク武偵を目指して日々鍛錬に努めています。

 

 それはそうと。最近俺にパートナーができました。神崎・H・アリアという小柄な女の子です。ですが、侮るなかれ。油断すれば俺の方が負けてしまいます。それくらいアリアは強いです。

 

 そんなアリアに出会ってからというもの、バスジャック事件の解決のために全力を尽くしたり、ハイジャック事件でイ・ウー所属の『武偵殺し』と対決したりと、中々に波乱万丈で将来武勇伝にできそうな日々を送っています。そして。この平穏とは程遠い生活は、アリアとこれからも関わる以上、アリアの母親:かなえさんの冤罪を証明する協力を惜しまない以上、続くことでしょう。ゆえに。これからも俺は、アリアとともにイ・ウー所属の犯罪者相手に熾烈な逮捕劇を繰り広げることとなるのでしょう。

 

 そんな状況下に置かれている俺ですが、俺の勇姿を時々でいいので覗き見してくれるとありがたいです。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 四月下旬のとある日。午前4時にきっかり起床したキンジはアリアを起こさないようにこっそり身支度を整える。もはや日課となっている朝のマル秘特訓メニュー(キンジ考案)をしっかりとこなすためだ。物音一つ立てず、アリアに気配を察知させずに一連の動作を済ませて外に出る辺り、さすがは強襲科(アサルト)Sランク武偵といった所か。

 

 そうして。いつもの訓練場所を訪れたキンジは早速特訓を開始する。一日でも早くRランク武偵に、ひいては世界最強の武偵にクラスチェンジしたいキンジ。その逸る気持ちが、キンジの早朝訓練にキレを生む。

 

 午前6時。一通りマル秘特訓メニューをこなし、男子寮に帰還したキンジは早速シャワーを浴びて汗を流し、それから朝食作りに取りかかる。その手際の良さは既に料理好きの女子をうならせ、彼女たちを自己嫌悪に陥れるほどのレベルに達している。しかし。何とももったいないことに、キンジは現在同居中のアリアと東京武偵高の生徒会長たる白雪にしか料理の腕を振るっていないため、自身の料理スキルが今現在どの領域にあるのかを知らない。宝の持ち腐れとはこのことか。

 

「おはようございます、キンジ」

「あぁ、おはよう。アリア。もうすぐできるから、テキトーに待っててくれ」

「わかりました」

 

 ある程度朝食が出来上がってくる頃合いに、目を覚ましたアリアが目をゴシゴシとこすりつつ、台所のキンジへと声を掛けてくる。アリアが起きるのは決まってこの時間帯だ。アリア曰く、朝食のいい匂いが目覚まし代わりになっているのだそうだ。

 

 そして。午前6時半。二人は「いただきます」と両手を合わせて、朝食にありつく。今日の朝食は和食中心の献立となっている。一月前まで朝食は和食一筋だったキンジだが、今は和食と洋食とを交互に作っている。キンジが朝食に洋食を取り入れたのは偏にイギリスからはるばる日本へとやって来たアリアへの配慮だ。尤も、箸の使い方をすぐさまマスターしたアリアは今では体の一部のように箸を使いこなしているため、そのような配慮はもはや必要ないのだろうが。

 

 ともかく。キンジにとって、アリアとの同居生活はもはや何気ない日常の一部へと切り替わっていたのであった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 東京武偵高2年A組教室。朝のホームルーム。話の内容は、武偵高のビックイベント:アドシアードについてだ。現在、武偵高の教師にしては比較的大人しいことに定評のある2年A組担任の高天原先生が来週に迫るアドシアードについてわかりやすく説明している。

 

 アドシアードとは年に一度の武偵高の国際競技会である。言うなれば、オリンピックの武偵バージョンみたいなものだ。アドシアードは世界の数か所で開催され、東京武偵高もその開催場所の一つに選ばれている。尤も、武偵版オリンピックと言っても、活躍するのは強襲科や狙撃科(スナイプ)の連中に限定されている。他の学科にも活躍の機会があってもいいのではないかとキンジ自身は考えるのだが、その辺はおそらく見栄え上の問題なのだろう。

 

「そうか。もうアドシアードの季節なのか……」

 

 いつものごとく登校中に下剋上を仕掛けてきた複数人の襲撃者を軽く撃退して武偵高にやって来たキンジは頬杖をつきつつ、黒板に無駄に達筆で書かれたどこぞの巨匠レベルのアドシアードの文字を眺めながら、担任教師の話を軽く聞き流す。アドシアードは去年も経験しているため、わざわざ説明を真剣に聞く必要はなかったりするのだ。

 

(そういや、去年は理子の奴が珍しく勇気を振り絞って、アドシアード閉会式のチアガールをやろうとして、クラスの皆に大々的に宣言して、でも土壇場で逃げ出してたよなぁ)

 

 結局、あの時逃走した理子を誰も発見できないままに閉会式が執り行われたことをキンジは今でも鮮明に覚えている。今にして思えば、あの時の理子は世紀の大怪盗:アルセーヌ・リュパンの逃げの才能を存分に行使していたのかもしれない。それだったら理子があの武偵包囲網を前に見事に逃走しきったのもうなずける。まぁ、才能の無駄遣いもいい所だけど。

 

 そんなことをぼんやりと考えつつ、キンジは前を見る。しかし。白雪のとはまた違う温和な雰囲気が特徴的な高天原先生は既にいなくなっていた。どうやらホームルームの時間はいつの間にやら終わっていたらしい。全然気づかなかった。思った以上に思考にふけっていたようだ。

 

「キンジ。貴方は何をやるのですか?」

 

 と、そこに。キンジの隣に座るアリアが早速といった感じで尋ねてくる。元々キンジの隣には武藤が座っていたのだが、アリアが転入した当初に武藤が無駄に気を利かせたために今ではアリアの席となっている。

 

 しかし。高校生の身分でありながら小学生並みの未熟体型であるアリアは当然のことながら座高も低い。ゆえに。武藤の座っていた一番後ろの席だと結構黒板が見づらかったりする。そのことをアリアが寮でボヤいていたのを聞いてからはキンジはアリアに積極的にノートを見せることにしている。もちろん、武藤にバレないように慎重を期しているが。善意は時として当人の意図しない方向へと舵を切るものである。

 

 ちなみに。今まで窓際の席に居を構えていた理子の姿はない。表向きにはロンドン武偵高で探偵科(インケスタ)Aランク武偵の実力を奈何なく発揮していることになっているらしい理子なのだが、実際はどこで何をしているのやら。

 

(――と、いうか。あいつ、あんな場所から飛び降りて大丈夫だったんだろうか?)

 

 あの何にでも異様に怯える理子が遥か上空から飛び降りた際に空中で気絶してしまったのではないかといった懸念を現在進行形で抱くキンジだが、一番の心配事は別の所にある。

 

 あの時。理子が飛び降りた時、ANA600便は東京湾上空を飛んでいた。つまり。あの場でANA600便から脱出した理子はそのまま東京湾のど真ん中にダイブしたことになる。4月の海は意外と寒い。それも時刻が夜なら尚更だ。それなりに冷たい海に少しでも浸かっていれば、即座に体温を奪われてしまう。そうなれば、あっという間に身動きが取れなくなってしまうだろう。その後にどうなってしまうかなんて想像に難くない。

 

(さすがに溺死してるなんてことは……ないよな?)

 

 キンジはふと脳裏に浮かんだ理子の水死体をフルフルと首を振って振り払う。確かに理子はイ・ウーの一員で、さらに兄さんが死ぬ原因となったアンベリール号沈没事故に関わってる可能性のある人物だ。だが。約一年もの間、理子とある程度の交友関係を築いてきたこともあってか、キンジは素直に理子を敵認定できていない。だから。理子の死なんてものを想像して、気分がよくなるはずがないのだ。尤も、アリアの母親のことを考えると一刻も早く捕まってほしい所なのだが。

 

 キンジはひとまず、どっかの漁船だったりイ・ウーの仲間だったりがきちんと理子を助け出していることに期待する形で理子に関する思考を切り上げることにした。

 

「……キンジ? 聞いてますか?」

「あ、あぁ。俺か? 俺はとりあえず、競技には参加しないで色々と見て回るつもりだ。アドシアードって見てる分にも結構楽しいしさ。だから、やるのはイベント手伝いくらいだな」

 

 実の所、拳銃射撃競技(ガンシューティング)の代表に選ばれていたキンジだったが、キンジはその話を聞いた時点で速攻で辞退している。去年拳銃射撃競技(ガンシューティング)に参加したというのも一つの理由だが、一番の理由はキンジがマスコミに向けて発砲した例の一件からまだ半年も経っていないことが挙げられる。記者連中が訪れるアドシアードに、彼らに第一級危険人物及び凶悪武偵とのレッテルを貼られている遠山キンジが平然と姿を現すワケにはいかないのだ。折角のアドシアードを台無しにしないためにも。

 

「そういうアリアは何をする気なんだ?」

「私は……を、いえ。まだ内緒です。アドシアード当日になってからのお楽しみ、とだけ言っておきましょう」

 

 アリアは何事かを口にした後、フルフルと首を振って、それからニィと口角を吊り上げる。どうやらとっさの思いつきでギリギリまで自身の選んだ選択肢をキンジに隠し続けることにしたらしい。しかし。キンジは持ち前の読唇術でアリアの口が『チアガール』と動いたことに目ざとく気づいていた。

 

「なるほど。チアガールか」

「ふぇっ!? ちょっ、どうしてわかったのですか!?」

「俺の読唇術をなめるなよ。これくらい余裕だ。ちなみに武藤もできるぞ」

 

 少々得意げにキンジが笑みを浮かべると、アリアは少々悔しそうな表情で「……読唇術、私も本気で習得してみましょうか」と真剣に悩み始める。読唇術のせいでアリアの目論み通りに事が運ばなかったことに思うところがあったのだろう。

 

「それにしても、アリアがチアガールか……」

「……キンジ。何ですか、その物言いは? 暗に『私のような幼児体型の女子にチアガールなんて似合わないから今の内に止めておけ』とでも言いたいんですか? そうですか、そうですか。キンジがその気なら私にも考えが――」

「ちょっ、アリア!? そんなこと一ミリたりとも思ってないって! ただ、ちょっとアリアにしては意外だなって思ってさ。だからとりあえずそのガバメントはしまってくれ!」

 

 キンジがポツリと呟くと、その言葉を思いっきり変な方向に解釈したアリアがスッとガバメントを取り出しつつ、ハイライトの消えた真紅の瞳でキンジを見つめてくる。そんな威圧感たっぷりのアリアを前に本格的に命の危機を察したキンジは慌ててアリアの誤解を解きにかかる。その必死さが伝わったのか、「……そういうことにしておきます」とアリアはガバメントをしまってくれた。かくして、キンジはアリアの情状酌量によって天国行きを免れた。

 

「で、どういう風の吹き回しなんだ?」

「そう大したことではありませんよ。ただ以前、お母さんが高校生活を楽しめといった趣旨のことを言っていたのを今日お母さんの夢を見た際に思い出したので、私なりに折角の機会(アドシアード)を楽しもうかと思いまして」

 

 アリアは少し遠い目を虚空に向けて、いつになく優しげな微笑みを浮かべる。きっとその母親:神崎かなえとの夢のことを思い出しているのだろう。そんなアリアの可愛らしい姿を前に、キンジは気まずさに眉を潜める。

 

 以前。キンジは一度、単独で神崎かなえと会っている。それはつまりアリアと神崎かなえとの親子の再会の機会を一回分奪ったことを意味する。その時は神崎かなえの冤罪の証明が関わっていたこともあり、アリアは気にしなくていいと言ってくれたが、こればかりは気にしない方が無理な話だ。アリアの一秒でも多く母親と一緒にいたいという気持ちをパートナーたるキンジはよく理解しているから。たまにアリアが寝言で「……お母さん」と呼んで、その際に涙を流していることを知っているから。

 

「それで選んだのがチアガール、か」

「はい。アドシアードの作業の中で一番普通の女の子らしくて、アドシアードを純粋に楽しめるものといえばコレだと思いましたので。それに、前々からこういう衣装には興味がありましたから」

 

 キンジは気まずさを紛らすように言葉を続けると、アリアは自身がチアガールを選んだ理由について語り始める。ちなみに。チアガールとは正確にはアル=カタのことで、ナイフや拳銃による演武をチアリーディング風のダンスと組み合わせてパレード化したものだ。そのため、当然のように銃弾をばら撒く仕様となっているので、アドシアードでのチアガールが普通の女の子らしいかといえば明らかに否なのだが。

 

「まぁ、いいのかもな。そういうのも」

 

 膨らみ続ける風船は空気を抜かなければいずれ破裂してしまう。それは人間の精神においても同じことが言える。アリアにもちょうど息抜きが必要な時期だったのだろう。急いては事をし損じるということわざもあるくらいだし、アドシアードの期間中くらいは好きに羽を伸ばしても罰は当たらないだろう。

 

「……キンジ……」

 

 そんなことを考えていると、キンジの肩を武藤がポンポンと叩いてくる。

 

「ん? どうした武藤?」

「……もしも競技に出るつもりがないなら、受付やってほしい……」

「ん? まぁそれはいいけど。元々イベント手伝いをするつもりだったし。武藤と一緒に受付やるってことか?」

「……否。これは神崎さんじゃない方の神崎から頼まれた……」

「アリアじゃない方って……あぁ。あいつか」

 

 キンジが心当たりのある人物の方へと視線を向けると、キンジたちの様子を遠目でうかがっていたらしい黒髪黒目の男がペコリと頭を下げてきた。

 

 神崎千秋。2年A組に属するもう一人の神崎姓を持つ男だ。もちろん、アリアと血縁関係ではない。単に名字が一緒なだけの赤の他人だ。同じ神崎姓を持つアリアの転入により、元々影が薄かったというのにさらに影が薄くなってしまった哀れな男であり、運の悪さに定評がある男であり、また将来的に武偵を止めて一般人になりたがっている男でもある。

 

「でも、なんで俺なんだ? 不知火辺りでも良くないか? あいつ、確かガンシューティングの補欠だろ? 実質出番ないようなもんだし、案外暇してるんじゃないのか?」

「……無理。あれに接客関係の仕事は務まらない。それに、不知火だと神崎さんじゃない方の神崎が怯える……」

「あ、そっか。まぁ、グレる前の不知火なら適任だったんだろうけどなぁ。……ホント、惜しい奴を亡くしたもんだ」

「……同意……」

 

 キンジが両手で顔を覆ってさも悲しそうに言葉を紡ぐと武藤がうんうんと頷いてくる。あの爽やかフェイスに物腰の柔らかさ、そして誰にでも分け隔てなく接する非の打ち所のないイケメンの象徴と言えるかつての不知火だったなら、受付として最適だっただろう。アリアじゃないの神崎も安心して不知火とともにイベント手伝いをこなしたことだろう。

 

 だが。非常に残念なことに、今の不知火は絶賛反抗期である。何かと逆らうことにカッコよさを見出しているお年頃である。ゆえに。受付としては完全に不適格だ。不良の不知火にはとても受付の仕事を任せられない。

 

 不知火が夏休みデビューを果たし、不良化してから約半年。悪ぶっている不知火を生暖かい眼差しで見守ることを決めたキンジと武藤だったが、そろそろあの綺麗だった頃の不知火を拝みたいとの考えは二人の共通認識のようだ。

 

「わかった。じゃあ俺が受付やるよ。そう神崎に伝えといてくれ」

「……了解……」

 

 ひとしきりお通夜ムードを醸しだすキンジと武藤。しかし。ここで「いや、死んでねぇから!」とツッコむはずの不知火が何ともタイミングの悪いことに教室にいないことに気づいた二人は早々にふざけるのを止め、話を切り上げるのだった。

 




キンジ→アリアが男子寮で生活していることに欠片も違和感を感じなくなっている熱血キャラ。
アリア→キンジの料理を食べ続けた影響で舌が肥えてきつつある子。たまに物事を変な風に解釈する傾向がある。
武藤→在りし日の不知火の帰還をキンジとともに待ちわびる万能男。
高天原先生→実は習字が上手かったりする。達人一歩前のレベル。
神崎千秋→所詮、影の薄い地味なオリキャラ。というか、モブに名前を付けてみただけと言った方が正しい。今は神崎(アリア)じゃない方としての不遇の扱いを受けている。ある意味で原作キンジくんに近い性格・境遇かもしれない。実はちゃっかり4話の地の文でその存在が示唆されていたりする。

 私ふぁもにかは、不遇で不幸で救われない、そんな千秋くんを全力で応援します。頑張れ、千秋くん! ……もう出番与えてられそうにないですけど。


 ~おまけ(ネタ:キンジの登校中の出来事 ディスガイアネタ)~

キンジ「……(ん? この辺に襲撃者がいるっぽいな。今日は3人か。いい訓練になればいいけど)」
赤タイツ(防弾仕様)に覆面をした男「待っていたぞ、遠山キンジ!」
青タイツ(防弾仕様)に覆面をした男「邪悪な闇が迫るとき、呼ばれてないのに現れる!」
黄タイツ(防弾仕様)に覆面をした男「使命に萌える三つの光が勇気と希望で世界を救う!」
赤タイツ男「オレたち! 三人そろって――」
青タイツ男「虹色戦隊!」
黄タイツ男「ニジレンジャー!」

――それぞれカッコよさげな決めポーズを決める3人。

キンジ「……俺にどう反応しろと。『カ、カッコいい!』とでも言えばいいのか? つーか、ニジレンジャーのくせに三人しかいないってどうなんだ? 全然、虹色じゃないんだけど。ここは七人そろえて登場すべきなんじゃないのか? これじゃただの信号機じゃねぇか(←ちょっと引きつつ)」
赤タイツ男「こ、この未熟者! オレたちには友達が少ないのだ! それくらい察しろ! それでも選ばれし強襲科(アサルト)Sランク武偵か!?」
キンジ「いや、お前らの事情を察するのにランクは関係ないだろ」
青タイツ男「ヒーローとは孤独なものなのだ! わかったか!?」
キンジ「いやいや、友達が少ないのは別の理由だろ。どう考えても。少しは自分の胸に手を当てて、よーく考えてみたらどうだ? というか、なんでお前らは俺に下剋上なんか仕掛けてるんだ? ヒーローなら他にやることあるんじゃないのか? ほら、困ってる人に手を差し伸べるとか」
赤タイツ男「むろん、友達が欲しいからだ! Sランク武偵の貴様を倒した肩書きがあれば、友達いっぱい! 真のニジレンジャーを完成させることも夢ではなくなるからだ!」

――再度、カッコよさげな決めポーズを決める3人。

キンジ「うわぁ……(←可哀想なものを見る目をしつつ)」
赤タイツ男「いくぞッ! ブルー! イエロー! へんし――」
キンジ「……(今のうちに倒しておくか。面倒だし)」←発砲。
青タイツ男「あべし!?(←撃沈)」
黄タイツ男「ひでぶ!?(←轟沈)」
赤タイツ男「ブルゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウ!? イエロォォォォオオオオオオオオオオオ!?(←絶叫)」
赤タイツ男「な、何ということだ! 青木貞夫(あおきさだお)と黄菊正雄(きぎくまさお)がァ!? ……じゃなかった。ブルーとイエローが撃たれてしまった……! これでは変身できない! おのれェェ! 変身前に発砲するとは、何と非常識な! 貴様、それでも人間か!?」
キンジ「いや、知るかよ。つーか、それを言うなら初めから変身してから出てこいよ(それより、その全身タイツ姿は変身した後の姿なんじゃないのか? それが変身前の姿とか……何か嫌な予感しかしないんだけど)」←発砲。
赤タイツ男「ザオリクッ!? む、無念……。だが、ここでオレたちがやられても第二第三のニジレンジャーが必ず貴様を倒しに……ぅ……」
キンジ「……えー(こんなふざけた連中がまだいるのかよ……)」

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