【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。今回でこの『熱血キンジと冷静アリア』も30話目となります。……うん、飽きっぽい性質の私がここまで連載してるのって何気に凄いことだと思うんだ。(←自画自賛)

 さて。それはともかく。前回、次回は過去編後半へとTO BE CONTINUED的なことを書きましたが……あれ嘘です。ごめんなさい。今回は過去編中盤。過去編は全3話構成へと変更されました。それでは、文字数少なめかつシリアス(?)な本編をどうぞ!



30.熱血キンジと過去編 中編

 

 兄さんの葬式が執り行われてから1週間の時が流れた。俺は民間人たるマスコミ連中に発砲したことで東京武偵高から3週間の謹慎処分を言い渡されていた。そう。たったの3週間だ。この通知を聞いた時、自分に対する処分の軽さに驚いたことは記憶に新しい。まぁ、どうでもいいことなのだが。

 

 2009年1月1日。寒さの残る部屋の中。俺は布団を被って横になっている。時刻は12時半。普段ならこんな時間に寝転がるようなことはないのだが、今は何もする気になれなかった。

 

 ふと鏡を見れば、死んだ魚のように濁った瞳。完全に据わりきっている漆黒の瞳。兄さんの弟とは思えないほどに酷い顔が見える。何の感慨も湧かず、視線をずらす。その視線の先にあるのは、兄さんの写真だ。正確には、兄さんと、兄さんの同僚の人と、俺との三人で成り行きで撮った写真。俺はただ見つめる。やはり何の感慨も湧かなかった。精々、感じるのは虚無感くらいだ。

 

(……寝るか)

 

 俺は目を瞑る。眠れば、もしかしたら夢の中で兄さんと会えるかもしれない。今までは会えていないけど、今日こそは会えるかもしれない。現実世界でもう二度と会えないのなら、せめて夢の世界で会いたい。話したいことはいっぱいある。伝えたいこともいっぱいある。なのに。それらを伝える前にいなくなってしまった兄さんと、もう一度会って、話がしたい。俺は淡い希望を胸に眠ろうとする。

 

 と、その時。インターホンの軽快な音が鳴り響く。誰とも会う気がおきず、居留守の使用を速攻で決定した俺をよそに客人の来訪を告げるインターホンの音は鳴り続ける。数分経ってもインターホンを鳴らし続けている所から、どうやら新聞の勧誘だったり宅配便だったりではないようだ。彼らはそこまでしつこくはない。

 

 となれば、知人の来訪か。俺の知り合いなら、俺が今謹慎中だと知っているだろう。ゆえに。俺がしっかりと居留守を使っているのもお見通しということか。

 

(ったく、誰だよ……)

 

 誰だか知らないが適当にあしらってお引き取り願おう。相手はひたすらインターホンを連打しまくるようなマナーの欠如した奴だ。居留守を使ったことで文句を言われても知ったことではない。

 

「誰だ――」

 

 俺は鉛のように重い体を引きずるようにして玄関に向かい、ドアを乱暴に開け放つ。瞬間、「あうッ!?」との痛みを訴える可愛らしい悲鳴が下から響いた。

 

「……って、ユッキー?」

 

 俺は視線を下におろす。その先にいたのは、白と赤を基調にした巫女装束を纏った俺の幼なじみ、星伽白雪ことユッキーだった。どうやら俺が苛立ちに任せてドアを勢いよく開けた際に強く頭をぶつけてしまったらしく、額に両手を当ててうずくまっている。

 

「うぅ。キンちゃん、痛いよー」

「わ、悪い、ユッキー。それよりどうしたんだ? お前がここに来るなんて珍し――ッ!?」

 

 よほど痛かったのだろう。俺を見上げて抗議してくるユッキー。怒っても全然迫力がないユッキーだが、上目遣い&涙目の抗議に俺はつい罪悪感に駆られて謝った。なぜかユッキーを直視できなくなり、俺は視線を横に逸らす。そして。武偵高に通う時以外は滅多に女子寮から出てくることのないユッキーがわざわざここまで訪ねてきた理由を聞こうとして、遮られた。目の前のユッキーが不意にフラフラし始めたかと思うと、そのまま俺の方へと倒れてきたのだ。

 

「お、おい!? どうした、ユッキー!?」

「……お腹すいた」

「え?」

「お腹すいた。何でもいいから何か食べ物プリーズ。私、もう限界……」

 

 俺はユッキーの両肩を掴む形で彼女の体を支える。俺がそのままユッキーの容体を尋ねると、ユッキーが何事か呟く。よく聞き取れなかったので、ユッキーの顔色を伺いつつもう一度言うように促そうとした所で、ユッキーはきゅるるるるとお腹を鳴らしながら弱々しい声で食事を要求してきた。

 

「……」

 

 まさかの食事の要求。意外過ぎるユッキーの言葉に俺は思わず絶句する。その時。俺はふと気づいた。ここ一週間、俺が一度も女子寮に足を運んでいないことに。ユッキーの世話を放棄し続けていたことに。

 

 もしかして。こいつは一週間もの間、動くのめんどくさい、食べるのめんどくさいと食事を抜き続けてきたのだろうか。水だけの生活を続けていたのだろうか。

 

(よく生きてたな、ユッキー。これも星伽の武装巫女の力だったりするのか……?)

 

 俺は内心で、ユッキーの生命力の高さを心から称賛した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ねぇねぇキンちゃん。私、折角だからボンゴレ・ビアンコ食べたい。作って」

「は?」

 

 とりあえず腹ペコ巫女:ユッキーを家へと迎え入れた後。俺はユッキーに料理を振舞うために、エプロンを付けて台所に立つ。その時。へにゃ~とテーブルに頬をつけているユッキーがゴロンと顔だけを俺に向けてきたかと思うと、ボンゴレ・ビアンコの提供を求めてきた。

 

「……ユッキー。お前、さっき何でもいいって言わなかったか?」

「あれ? そうだっけ? まぁいいじゃん。私ことユッキーはボンゴレ・ビアンコを所望するよ、キンちゃん!」

 

 俺の問いに、一度コテンと首を傾げてから、目をキリッとさせて胸に手を当ててはっきりとした声でイタリア料理を求めるユッキー。顔文字で表すなら『(`・ω・´)キリッ』といった所だろうか。

 

 それにしても。ユッキーが何か特定の食事を要求してくるなんて珍しい。いや、初めてだ。今までは俺の出す料理は何であれ「おいしい」などと絶賛しつつ、残さず完食していたユッキー。そのユッキーによる食べたい料理の指定。ここまでわざわざ足を運んできたことといい、何か意図でもあるのだろうか?

 

 まぁ、それはともかく。根が大層頑固なユッキーは決して自身の要求を曲げたりはしないだろう。こうなった以上、ボンゴレ・ビアンコしか食べようとしないだろう。実際、俺のジト目を平然と受け流してるくらいだし。まぁ、ユッキーのことだから、俺の呆れ混じりの眼差しの意味する所を理解していないだけかもしれないが。

 

「はいはい。わかったよ」

 

 俺は一度ため息を吐いて、それから冷蔵庫の扉を開ける。ユッキーには悪いが、今の俺に普段のクオリティの料理を期待するなよ、などと考えつつ。

 

「あ」

 

 だが。冷蔵庫にはパスタどころか何も入っていなかった。と、そこで。キンジは昨日から何も食べていなかったことを思い出した。特に食欲が湧かなかったことで今まで気づかなかったのだ。

 

「悪い、ユッキー。そういや冷蔵庫の中、空だった」

「ん? そうなの? じゃあ、食材買ってきてよ。今」

「……いやいや、ユッキー。俺、今思いっきり謹慎中なんだけど――」

「大丈夫大丈夫。……バレなきゃ大丈夫。それに、いざとなったら私のこのあふれ出んばかりの威厳たっぷりの生徒会長オーラで何とかするから、ね? お願い、キンちゃん。私、待ってるから」

 

 ユッキーは威厳たっぷりの生徒会長オーラには程遠い、ふんわりのほほんとした平和的な雰囲気を醸しだしつつ、俺の食料の買い出しを促してくる。両手を合わせてお願いしてくるユッキーの姿は何とも小動物チックで可愛らしい。

 

 ほんわかとした生徒会長オーラはともかく、ユッキーの生徒会長権限があれば、例え俺の外出がバレても何とかなるだろう。そう信じないとやってられない。精神的に。というか、いくらマスコット的立ち位置とはいえ仮にも生徒会長なんだから、謹慎中の生徒の外出なんか許しちゃダメだろ。何やってんだよ、生徒会長。

 

「おいおい……」

 

 俺はため息とともに内心の気持ちにきちんと蓋をしてから、外出するための準備に取り掛かるのだった。

 




キンジ→精神的に結構参っちゃっている熱血キャラ。
白雪→傷心のキンジくんの元に食事をたかりにやってきた怠惰少女。

 いやぁー。久しぶりに武装怠惰巫女少女:ユッキーが登場しましたね。おまけや地の文をカウントしなければ実に24話越しの登場ですよ。……うん、今までロクに出番与えなくてごめんなさい。


 ~おまけ(ネタ:マルチルート もしもキンジくんの元を訪れたのがユッキー以外だったら)~

 ケース1.レキ(戦闘狂)

――ガチャ ←キンジがドアを開ける音
キンジ「レキ……?」
レキ「キンジさん。話は風から聞きました。ここは一度外で私と遊んで、ストレス発散しませんか? いい気分転換になりますよ?」
キンジ「いや、いい。そういう気分じゃないんだ。それに俺、今謹慎中だし(つーか、『遊ぶ』って何だ? 嫌な予感しかしないんだが)」
レキ「まぁそう言わずに。さあ、私と殺り合いましょう。今すぐ殺り合いましょう」
キンジ「ひッ!?(←思わずドアを閉めようとするキンジ)」
レキ「逃がしませんよ?(←ドアの側面を手で掴んで無理やり開くレキ)」
キンジ「ひぃぃぃッ!?(←レキの眼光に怯えるキンジ)」


 ケース2.峰理子リュパン四世(怪盗ビビりこりん)

――ガチャ ←キンジがドアを開ける音
キンジ「理子……?」
理子「と、とと遠山くん。話は聞いたよ。えっと、その……災難、だったね(うわぁ、思ったより酷い顔してるなぁ。遠山くんのお兄さんが死んだってことになってるの、ボクが原因みたいなものだし、罪悪感が凄いなぁ……)」
キンジ「そうだな……」
理子「あの、その……きょ、今日はいい天気だね!(ここはボクの話術でひとまず遠山くんに元気になってもらおう!)」
キンジ「……思いっきり曇ってるけど? むしろ今から雨降るんじゃないか?」
理子「ッ!? そ、そうだね……(わァー!? やっちゃったよ、ボク!?)」
キンジ「……」
理子「……」
キンジ「……」
理子「…………はぅ(か、会話が続かないッ! 気まずい、凄く気まずいよ! 誰か助けて! 何でもするから! ヘルプミィィィイイイイイイイイイイイイイイ――!!)」
キンジ「……(もう部屋に戻ってもいいんだろうか?)」


 ケース3.風魔陽菜(忍者)

――ガチャ ←キンジがドアを開ける音
キンジ「陽菜……?」
陽菜「師匠。話は聞いたでござる。こういう時は気晴らしをするのが一番でござるよ。ということで、とりあえずブックオンで『To Loveる』に『魔法先生ネギま!』、『ゼロの使い魔』、『いちばんうしろの大魔王』など色々と師匠が好きそうなのを安値で買ってきたのでパラパラっと読んでみてはどうでござるか?」
キンジ「俺が好きそうなのって……陽菜。お前の中で俺の印象はどうなってんだ?」
陽菜「それは内緒にござる。あ、そうそう。ついでにTSUTIYAで『デットコースター』シリーズを借りてきたゆえ、一緒に見るのはどうでござるか? あぁ。それとも『NieR Replicant』に『ドラッグオンドラグーン』の中古モノも手に入れておいたゆえ、一緒にプレイしてみるでござるか?」
キンジ「……(ラブコメ系の漫画&小説にホラー映画に鬱ゲー勧めてくるとか、陽菜は俺に何を求めてるんだ?)」


 ケース4.不知火亮(不良)

――ガチャ ←キンジがドアを開ける音
キンジ「不知火……?」
不知火「オラァ、キンジ! いつまで寮に閉じこもってるつもりだァ!?」
キンジ「いつまでって、今俺謹慎中――」
不知火「知るか、んなもん! 傷心のお前には一人でいる時間が必要だと思ったからしばらく放置していたが、いつまでも引きこもるなんてお前らしくないぞ! オラ、いい加減後ろばかり向いてないで、立ち上がれ! 前を向け! それが今のお前にできることだ! 違うか!? ァア゛!?(←拳を強く握りつつ)」
キンジ「……お前、そんなキャラだったっけ?(うぜぇ……)」


 ケース5.???

――ガチャ ←キンジがドアを開ける音
キンジ「……」
???「……」
キンジ「……え、誰?」
???「やあ! 僕、ەۆونۆگۆزژۆزەتژ؛ان؛گگەنلکاووحق`だよ!(←某ネズミキャラ風に)」
キンジ「いやいやいや! 誰だよお前!? 福笑いみたいな顔した知り合いなんて俺にはいねぇぞ!?」
???「……俺だ……(←ビリビリと顔の皮をはぎ取りつつ)」
キンジ「何だ。武藤だったのか。気付かなかった」
武藤「……」
キンジ「……」
武藤「……暇を持て余した……」
キンジ「武偵たちの」
武藤&キンジ「――遊び」
キンジ「……(何やってんだろ、俺……)」

 ヤバい。どのルートも書いててすっごく楽しい。特にりこりんと武藤の辺り。

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