【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。これジハという名のオリジナル小説の執筆意欲がこれでもかってくらいに減衰してしまったので気分転換の二次創作です。例によってまた原作を持っていないので一発ネタのつもりですが気が向いたらオリジナル小説放り投げてこっちに鞍替えするかもしれません。ホントはオリ主系をやってみたかったけど他の作家さんと被る&原作蹂躙の自信があったのでここは性格改変モノでいこうと思います。緋弾のアリアの登場人物全員の性格改変に取り組んでみたいと思います。熱血なキンジがいたっていいじゃないか! ええ! どこまでいけるか分かったものではありませんがよろしくお願いします。


第一章 熱血キンジと武偵殺し
1.熱血キンジとチャリジャック


 

 拝啓 天国の兄さんへ

 

 天国の暮らしはどうですか? 快適ですか? 天蓋ベッドはありますか? 兄さんのカナバージョンをただの女装として見下さない人と仲良くやれていますか? いい人は見つけられましたか? 敬愛する兄さんが天国にいると信じてやまない弟の俺は今日もRランクを目指して頑張っております。Rランクの道は険しいなんて言葉では表せないほどに厳しいものであり、ヒステリアモードを駆使しても手が届きそうにない状況ですが日々の精進がいつの日か身を結ぶと信じて突き進む所存です。天国ライフをエンジョイしつつチラッと俺の勇姿を見届けていてくれるとありがたいです。さて。そんな俺ですが今現在命の危機に晒されております。まだ高校二年生でありながら早くも兄さんの元にたどり着いてしまいそうです。もしも兄さんが天から俺を見守っているのならば俺に何らかのご利益を授けてくれると凄くありがたいです。……正直に言います。ヘルプミイイイイイイイ、兄さあああああああん!!

 

 

 ◇◇◇

 

 

 遠山キンジは窮地に追いやられていた。ゼェゼェと荒い息を吐きながら、汗をダラダラと流しながらもキンジは自転車のペダルを踏む足に力を込める。ハンドルを握る両手に力を込める。赤信号などお構いなしにただ前へ前へと全速力で突き進む。ちなみに何かに追われているわけでも武偵高に遅刻寸前だから急いでいるわけでもない。だったらスピード落とせよと思うかもしれない。事故ったら洒落にならないぞと思うかもしれない。その考えは尤もだとキンジは心から同意する。キンジだって好きでこれだけ速いスピードで自転車を漕いでいるわけではない。死角から車や歩行者が飛び出してきたらと思うと背筋が凍る思いだし体力だってもはや限界に差し掛かっている。

 だけど。今ここにおいてキンジが自転車から降りることもとい自転車のスピードを緩めることは許されていないのだ。理由は単純明快。何たって――

 

『あ、あー、マイクテスマイクテス……。ゴホン。えー、この自転車には爆弾がついてますデス。えっと、ちゃんと聞こえてマス?』で『速度を落としたら爆発しますデス。……ホントですからネ! ホントにホントなんですからネ!』なのだから。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……ハァ、ハァ……」

 どうしてこうなった。キンジは両手で頭を抱えてその場にうずくまりたい衝動に駆られる。まぁ両手を離せば自転車がコントロール不可になりかねないので一瞬だって手を離すつもりなどないが。普段のキンジは徒歩で武偵高に通っている。両手首、両足首に重りを装着して体に負荷をかけた上での登校は体力作りに持って来いだからだ。世界最強の武偵になるためのキンジの日課だ。こういうコツコツとした努力の積み重ねが大事だとキンジは常々考えている。世界最強に近道など存在しないのだ。それに徒歩で歩いているとほぼ毎日現在武偵ランクSのキンジを打ち取って名を知らしめようと襲撃者がキンジに襲い掛かってくる。時たま超能力をも使える超偵が紛れ込んでいることもあり彼らとの戦闘は良い訓練になるのだ。

 

 だから普段のキンジは武偵高への通学手段に徒歩を選んでいるのだが遅刻一歩手前の時は話が別だ。寮の時計が狂っていることに気づいたキンジは神速とも言える早業で制服に着替えバックを持って武器を携帯して寮から飛び出し自転車で通学路へと飛び出すこととなった。その際、自転車に何か黒い物が取り付けられていたのだがまた武藤が気まぐれで俺の自転車を改造したのだろうとキンジは気に留めなかった。それが今回の、後にチャリジャックと称される事件の発端となってしまったのだ。

 

「……ゼヒュ、ヒュー……」

(武藤の奴、後で覚えてろ――)

 キンジは荒い息を吐きながら寡黙でマイペースな友人――武藤剛気――の姿を脳裏に浮かべる。あいつのせいだ。あいつが常日頃から俺の持ち物を改造しまくるからいけないんだ。あいつが全ての元凶だとその名前とは裏腹に全然ガサツでない友人に責任をなすり付ける。所詮現実逃避だ。坂道に差し掛かりスピードが減衰し始めている事実からの現実逃避である。さっきから『あなたに恨みはありませんけどここで死んでもらいますデス。運が悪かったとでも思って諦めてくださいデス。ご、ごごごめんなさああああああい! 祟らないでえええええええええ!』とヒステリック気味に全力で謝る機械音声に怒りをぶつけようと思えないのも武藤にキンジの怒りの矛先が向かった理由だ。尤も、キンジの自転車に4台ものセグウェイで追随しキンジが不審な行動を取らないように機関銃を向けている張本人に謝られても困るだけなのだが。

 

 しかし。このままではマズい。急勾配の坂道のせいで自転車の速度は徐々に落ち始めている。いつ犯人が自転車を爆発させるか分かったものではない。現に『こ、これ以上速度を落としたら本気で爆発させますですヨ! 本気ですヨ! 爆破なんてスイッチ一つで簡単なんですからネ! ポチッとな、なんですからネ! ……えっと聞こえてますカ? できたら返事してくれたら嬉しいなぁーって思うんですケド』とのどこか真剣みの欠けた最後通牒が機械音声を通してキンジに届けられている。もはや猶予はない。だが。いくら疲労困憊の体にムチ打つよう脳が命令を下しても足が言うことを聞いてくれない。爆弾搭載済みの自転車の速度は緩やかに落ちる一方だ。

 

 

「……ゼィ、ゼィ……」

(俺は、このまま死ぬのか?)

『あ、はい。確実に死にますネ。臨時収入が入ったのでお金によりをかけて強力な小型爆弾いっぱい搭載しましたですシ。ちょっと調子に乗っちゃってましたネ。少しくらい貯蓄に回せばよかったデス。反省してマス』

 

 キンジは木っ端微塵に粉砕する自身の未来像を想起してブルリと体を震わせる。犯人の言葉から判断するに実際に爆発してしまえばきっと痛みとか感じる間もなく死ねるのだろうがそんな焼死体も残らなさそうな無様で悲惨な最期はゴメンだ。犯人が何故かキンジの心の声を正確に汲み取って来た件については華麗にスルーすることにしてキンジはギリリと歯噛みする。一瞬心の奥底で生まれた痛みを感じずに死ねるのならそれはそれでアリなんじゃないかとの考えをねじ伏せるために。余談だがさっきから犯人が色々と場違いな事を口走っていることにキンジは気づいていなかったりする。

 

 ――こんな。こんな所で終われるか。終わってたまるものか。

 まだ兄さんの汚名を晴らしてないんだ。兄さんの偉大さを世間に知らしめてないんだ。マスコミ各社の幹部共に誠意ある土下座をさせてないんだ。世界の偉人100人に兄さんの名前を載せてないんだ。ここで死んでたまるものか。俺には世界最強の武偵になって兄さんが命を賭して為した偉業を全世界に認知させるという使命があるんだ。俺が死んだら誰が兄さんの無念を晴らすんだ。誰が兄さんの行いに正当な評価を与えるよう奔走してくれるんだ。俺しかいない。俺しかいないだろ。だったらここで、終わるわけにはいかない。

 

 

「いいいいのおおおおおちいいいいいいいをおおおおおお燃おおおおおやああああああああせええええええええええええええええええええッ!!」

『ひぅ!?』

 

 体力が既に限界? ペダルが重い? だからどうした。そんなの速度を緩める理由にはならない。今日の分の体力がないなら明日の分を持ってくればいい。明日の分だけで足りないのなら明後日の分も、明々後日の分もくれてやる。己の全てを両足に込めろ。何のために毎日毎日鍛えてきたと思ってるんだ。今日のような事態を乗り越えるために決まってるだろ。人間に限界なんてない。越えられない壁なんてない。どこぞで俺を観察しているであろう殺人未遂容疑者に見せつけてやろうじゃないか! 遠山家次男の意地を! 覚悟を! 不屈の魂を! 諦めの悪さを!

 

「おおおおおおおおおおおおお――」

『あ、あのッ、ちょっ、お、おお落ち着いてくれると嬉し――』

「おおおおおおおおおおおおおおお!!」

『ひぃぃいいいい!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ――』

 キンジは雄叫びとともにペダルを漕ぐ足に力を込める。キンジの思いが存分に込もった咆哮の影響か、坂道にも関わらず自転車の速度は爆発的に上昇する。キンジはただ足に力を集中させる。その後のことなど考えていない。生き残る。それのみを目標に掲げたキンジの姿はさながら本能むき出しの肉食獣のように見える。キンジの様子を別室から監視しているであろう犯人がキンジの気迫に怯えまくっているのにも無理はない。

 

「ッ!?」

 と。ここで地獄の上り坂は終わり下り坂に差し掛かる。どうやら脳内でキンジの敬愛する兄たる遠山金一にご利益を要請したのが功を奏したようだ。持つべきものは天国の家族である。坂道が継続すると思い込んでいたキンジは急に下り坂に切り替わったことで危うく自転車のコントロールを失いかけるがどうにか持ち直す。さすがはSランク武偵といった所だろうか。自転車のバランスを上手くとったキンジはニヤリと口角を吊り上げる。下り坂ならば速度が落ちる心配はない。それはキンジが一旦漕ぐのを中断して現状をいかに打破するかを考える時間的猶予を手に入れたことを意味している。

 

 さて。どうしたものか。キンジがSランク武偵並の頭脳を働かせて起死回生の一手を練っていると前方に人影が立ち塞がる。桃髪。ツインテール。幼児体型。女子。東京武偵高校のコスプレ。主だった特徴はこのくらいだろうか。両手で食べかけの何かを持っている桃髪少女。アレは確かももまんだったか? アレそんなに好きじゃないんだよなぁ。まぁ俺の場合は甘い物全般があんまり好きじゃないんだけど――って、そうじゃなくて!

 

「おい!? 何してんだお前!? 早く避けろッ!!」

 キンジは視界に映る小柄の少女に切迫した声を上げる。しかし。キンジの声が聞こえていないのか、はたまた無視しているのか、少女はただももまんをパクパク食べるだけで一向に自転車の進行経路から逃げる気配はない。どこかの公園で見かければ何とも微笑ましい光景になっただろうが今の状況では悪夢にしか見えない。このままでは少女と人身事故を起こしてしまう。今キンジの漕ぐ自転車は下り坂の助力もあって時速100キロを軽く超えている。少女と接触してしまえばキンジはまだしも少女の死は確実と言っても決して過言ではない。かといって今の速度で方向転換など行えばどうなるかは火を見るより明らかだ。

 

 容易に想像できる最悪の未来にキンジは頭をフル回転させ必死に打開策を構築する。しかし。その全てがキンジの死または少女の死を導いてしまう。もうどうしようもないってのか? キンジが現状打破に絶望しかかっている中、眼前から超特急で迫りくる自転車を前に平気でももまんを平らげた少女の視線がキンジの漆黒の瞳を貫く。私に任せなさい。何となく少女の真紅の瞳がそう語ってるようにキンジには感じられる。

 

「なぜ避ける必要があるのですか?」

 そして。少女の印象的な高音ボイスがキンジの鼓膜を打った時。突如頭部に鈍器で殴られたかのような強く鈍い衝撃を受けたキンジであった――

 




キンジ→熱血キャラ。
アリア→ですます口調。
武藤→寡黙キャラ。気まぐれでキンジの自転車や携帯を改造したりする。
理子→ビビり。超ビビり。

……うん。ちょっとやり過ぎたかもしれませんね。色々な意味で。

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