……歩いてくる姿を見て思い出した! あれはゆーかであるな。
お祭りの時にいろいろと一緒にまわったことが昨日のこととのように思い出せるのである。うむうむ。よくよく考えたらゆーかもこがさも同じようにかさをもっているからして、きっと友達なのであろう。
「こんばんは。猫さん。お久しぶりね?」
みゃー。
吾輩はちゃーんとあいさつをするのである。……こがさよ、こがさも挨拶をせねばならぬ。そういうことをちゃんと吾輩が教えてあげなければならぬのやもしれぬ。みゃーと吾輩はこがさの足に頭を擦り付けながらあいさつをするように言うのである。
「……ああ」
こがさがすごく汗をかいているのである。挨拶が苦手なのであろうか……? 心配いらぬ。にゃーとあいさつが苦手であれば、吾輩たちはお鼻をくっつけてあいさつすることもあるのであるからして、こがさもゆーかにしてくるのである。
「なんだろう、あいつ、すっごく強いような気配がする気がするわ」
こがさがなんかいいながら後ろに下がるのである。ゆーかはえがおで近づいてくるのである。笑顔はいいことである。
「吸血鬼の思い付きでいきなりのことだけど、こんなことになってあなたも災難よね? えっと、傘のおばけさん」
「……多々良小傘よ」
「ふーん」
ゆーかが指をパッチンとしたのである! あれはすごい。吾輩もやりたいのである。こう手を、こう、ぺろぺろ。はっ、なんとなく手を見たらなめてしまったのである。
いつの間にか吾輩とこがさは花畑にいたのである。白い花がいっーぱい咲いている。お月様の光をですごくきれいである。しかしゆーかが傘をゆっくりふると光る花びらが舞い始めたのである。
「……猫さん」
こがさが吾輩をこわきに抱えたのである。遠慮がないのであるな。
「逃げよ!」
こがさが走り出したのである。周りの光る花びらが渦を巻いて降りてくるのである。まるで光のトンネルであるな。きらきらしてきれいである。
「わーーーー、ひぃいいーーー!」
こがさがうるさいのである……。ふわりと浮いて、びゅーんと飛び始めたのである。花びらも追ってくるのである。こがさが物陰に隠れるとどーんと音がして花びらが突っ込んできたのである。
「はあはあはあ。に、にげきった」
こがさが首元をぱたぱたしながら言っているのである。疲れているのであるな……吾輩は首をなめてみるのである。
「ひっ」
吾輩を見てくるのである。ちょっとほっぺたが膨れているのである。なんで怒っているのであろうか……。む、そんなことより空から降りてきたのである。
「……こんばんは、おひさしぶり」
「ひぃ」
傘をもってゆっくりと地面におりてきたゆーかが言ったのである。久しぶり……これは挨拶であるな、さっき会った気もするが、何度も挨拶をすることはいいことである!
こがさが涙目でがたがた震えて、吾輩をだっこしているのである。ううむ。よくわからぬがゆーかよよわいものいじめはよくないのである。
「弱い者いじめ良くありませんよ」
おぉ、あの妙な金色にむらさきを混ぜたような髪をしているのは、聖であるな! ひさしぶりである。聖はいつものかっこうではなく黒いどれすとひらひらのすかーとをはいているのである。その後ろには金髪の少女がいたのである……たしか、星……じょーであるな。
聖が言ったのである。
「私の弟子である、一輪に村紗、それにナズーリンまでやられたと聞いてまさか巫女の仕業かと驚きましたが、貴方ならさもありなんといったところね。……その上に小傘さんまで手にかけようとは……」
「……」
ゆーかがこがさを見たのである。こがさは「え、えへへ」とか言っているのである。さっきの三人はこがさが倒した気がするのであるが……。ゆーかはにやりと笑ったのである。
「へえ、もしそうならどうだというのかしら?」
「弟子の仇を取らせてもらうわ」
じょーが「いや、死んでませんよ」と言っているのである。……吾輩の目の錯覚であるな、くしくしするのである、聖とゆーかの間の空間がゆがんで見えるのである。
「と、とりあえず猫さん、い、今のうちに逃げよっか」
こがさが吾輩を掴んでまた走り出したのである。吾輩たちの後ろでどーんと大きな音が立て続けに起こって、大きくてきれいな光がとんでいくのである。
☆
どんどこ崩れたぱーてぃー会場の中庭に吾輩たちは戻ったのである。がれきの間に隙間があるの遊びがいがありそうである。あとで探検してもいいかもしれぬ。とりあえず、こがさが迷子にならぬように今は見張っておかねばならぬ。
「やってらんないわ!」
ぐびぐびと何か飲んでいる赤毛のしょうじょがいたのである。なんとなくゆーかと似ているのであるな、その後ろに赤と白と黒の少女がしゅんとしているのである。
「なにかしらあれ」
さっきこがさがぱーてーの会場で残っていた串をもぐもぐしているのである。吾輩もやまめを食べさせてくれたのである。食べた後に口を舌で舐めると意外と味がするのである。
「どうしたのー?」
赤毛がきっとにらんできたのである。
「どーしたもこーしたもないわー! いきなり予定が変わっちゃったから、今日の演奏会が弾幕ごっこになっちゃった! どんぱちしているし、飲まないとやってられないわ。リリカもメルラン、ルナサもやることがないし」
赤毛がぐびぐびと飲んでいるのである。ネクタイをしているのであるな! 吾輩それを知っているのである。3人組はりりかとめるらんとるなさというらしいのである。難しい名前であるな。
楽器を持っているのである。吾輩はそれを扱うことはできぬが、なんどか音を鳴らしているのを見たことがあるのである。いい鳴き声をするのである。
どーん、
またどこかで音がしたのである。空を見るとおーきな花火のようなものがはじけたのである。きれいであるな。
「たーまーやー!」
こがさが嬉しそうに言うのである。にゃーと吾輩も言っておくのである。
「はー。今日はとりあえず、演奏はなさそうね」
赤毛が言うのである。吾輩はその膝の上に載ってみるのである。
「わ! 何!? この猫」
よくわからぬが吾輩は聞くのである、吾輩はじーと赤毛を見てみるのである。なずーりんなどとは違ってひっかけるところがあるからして、前足を置きやすいのである。
「もしかして猫さん。演奏聞きたいの?」
こがさが言ったのである。赤毛が、はあ?と吾輩の目を覗き込んできたのである。それから抱っこして。じーと見つめあうのである。
ふっと赤毛が笑ったのである。それから吾輩のほっぺたにちゅっとしたのである。吾輩もなめるべきかもしれぬ! しかし赤毛は吾輩を地面におろして、両手を握りこんだのである。
「よーし。どうせなら思いっきり、ド派手な演奏をしてやるわ! ドンパチしている連中にも負けないくらいにね! あなたも聞いていくでしょ!?」
「……」
「なんでふくれっ面なの?」
こがさがふくれっつらなのである! ぷにぷにしてみたいのである。
「私の猫さん」
「! あはは、ごめんごめん。そういえばまだ名乗ってなかったわね。私は堀川 雷鼓よ。たぶんあなたもそうだと思うけど、付喪神よ。お仲間さん」
らいこは立って、ウインクするのである。白い上着を着ていつの間にか後ろに三人も立っているのである。
「さぁ。夜のクライマックスに向けて思いっきり暴れてやるわ! 楽しんでいってね! なすびの付喪神さんと猫ちゃん!」
こがさはなすびであったか!
「ち、ちがうぅう!!」
こがさの叫びがうるさいのである。