あうんの頭の上に吾輩は乗っているのである。
普段よりも高いところにいると新しい発見があるのである。うむ……たとえば……うむ。あうんの髪は柔らかいのである。
「猫さん。逃げないでくださいねー。私が霊夢さんに怒られますからね」
「うるさいんだけど」
巫女はずんずんと前を歩いているのである。あうんとその上に乗った吾輩には背中しか見えぬ。
それにしてもらくちんである。吾輩は自分で歩くのも好きであるが、こういうのもいいと思うのである。そう思ったら巫女が振り返ってきたのである。むむ、怖い顔をしているのだ。
「いい? あうん? 今日は紅魔館でパーティーをするっていうけど、ちゃんとおなか一杯食べるのよ。数日は食べなくていいように」
「は、はい~。で、でも霊夢さん。最悪ご飯を食べなくてもなんとかなりますけど、できれば毎日食べたいです」
「ちっ」
「し、舌打ち!??」
そうである。ごはんは毎日食べなければならぬ。元気がなくてはよい遊びはできぬ。あうんも「ひどいですー」と言っているのであるからして、わがはいもちゃんとにゃーと言っておくのである。
「なによあんたら……なんでそんなに息があっているのよ?」
吾輩とあうんは仲良しである。
……
しばらくあうんが歩いていると吾輩は眠たくなってきたのである。ゆらゆら揺られて、たまに毛並みのめんてなんすを舌で行っていると大きな建物が見えてきたのである。
おお、大きいのである。
赤い建物の周りを黒い柵が囲んでいるのである。どれくらい大きいのかというと、うーむ。そうであるな。どういっていいのであろうか。こう、うむ。大きなヤマメがこう100匹並ぶより大きいやもしれぬ。
吾輩はあうんの頭に乗ったまま入り口から入ったのである。庭であるな。背中に羽の生えためいどが大勢いるのである。どこからかいい匂いもしてくるのを吾輩はきょろきょろして探すのである。
「なによまだ準備中? おら、そこの」
羽の生えためいどを巫女がけったのである。
「わっ? なんですか?」
「レミリアはどこよ」
「お屋敷の方だと思います」
巫女はそれでずんずん歩いていくのである。
「猫さん。ああいう建物をせーよー建築っていうのですよ」
あうんがお屋敷を指さしながら言ったのである。ふむふむ。せーよーけんちくであるな覚えたのである。それはなんであろうか。
「神社みたいに木造じゃなくて、レンガっていうかたーくて、頑丈なものでできているんですよ。粘土とかをこんがり窯で焼いて作るらしいです」
うーむ。こんがり焼いてできたおうちであるか……うむうむ。吾輩は知っているのである。正月に巫女がおもちをこんがり焼いているのであるからして、同じ作り方であるな。……もしかしたらおいしいやもしれぬ。
吾輩とあうんは巫女の後を追って建物の中に入っていくのである。中はかなり広いのである。天井が高いのはさとりのところみたいである。
「あ、レミリア」
吾輩は巫女が叫んだ時にぽんとあうんの頭から地面に降りたのである。……!!!! おお、地面が柔らかい。それにふかふかである。
「ああ、絨毯ですねー。これはいいですねー」
吾輩とあうんは地面でごろごろしていた、さくやの腕の中にいたのである
!!????
吾輩が見上げるとさくやがほほ笑んでいるのである。なでなでしてきて、おおそこ、そこ。……いや違うのである。いつの間にかさくやが現れて吾輩はなでなでされているのはわけがわからぬ。
吾輩はもぞもぞして地面におりたのである。さくやの腕の中にいる。
????
吾輩は意味が分からぬ。みゃーと巫女に言ってみると、巫女はこめかみを抑えているのである。
「あんたねぇ、猫に能力使ってんじゃないわよ」
「あら、別に構わないでしょう?」
さくやと巫女の言うことがよくわからぬ。詳しく教えてほしいものである。ただ、ぱんと音がしてびくっと吾輩はそちらを見ると、れみりあが手をたたいた音であった。
「はいはい。まあ、よく来たわね霊夢。今日はゆっくりしていくといいわ。まあ、まだパーティーの準備中だけど」
「早く来て損をしたわ」
「…………そんなことはないわよ、霊夢」
「なによ」
れみりあが巫女ににじり寄るのである。ニコニコしておる。……うむ? そういえばあうんはどこに行ったのであろうか? どこにもおらぬ。
「ふー。重いものを外に捨てるのは疲れるわ」
さくやはなぜか疲れておるようであるな。さくやはあうんがどこに行ったかしらぬのであろうか。聞いてみてもほほ笑むだけであった。
「ふっ、霊夢、今日のパーティーはドレスコードを採用している」
「どれす、こーど。何よそれ。新しいスペルカードかしら」
「いいえ。外の世界ではよくあるしきたりよ。決まった服装をしないとパーティーには参加できないのよ」
「なによそれ」
れみりあは両手を組んでにこりとしたのである。
「安心して霊夢。ちゃんとあなたのためにドレスを用意したわ。さあ、咲夜。案内してあげなさい」
「ちょっと待ちなさい。私はわけのわからないものを着る気はないわ!」
巫女よ。よくわからぬが頑張るのである。
「いやぁ。あきらめたほうがいいですよ」
うむ? 赤い髪の背の高い女性が来たのだ。
「あ? 美鈴。あんた」
巫女も振り向いたのである。
「そうそう、レミィの思い付きでも、この場はあんたが不利ね」
むむ、また誰か来たのである。ふわっとした帽子をかぶった紫の髪の少女である。
「パチュリー……」
巫女がつぶやくのである。
「あんたたち。何私を囲んでんのよ」
「囲むなんて人聞きが悪いわ霊夢。何も取って食おうっていうわけじゃないわ」
れみりあが言うのである。そうであるとって食べるのはいかぬ。
「パチェのいう通り思い付きみたいなものだけど。この幻想郷に我々の文化を広げる必要があると気が付いたのよ霊夢」
「ああ? 何を意味の分からないことを言ってんのよ」
「別に難しいことじゃないわ。幻想郷はもともと我々がいた場所とは全く違う文化があるからこそ、小さな不満がいっぱいあるのよ。例えばお米なんて私は食べないし、紅茶を手に入れるだけでも一苦労だけど、苦い抹茶は売ってたりね」
「はあ~?」
巫女が胡散臭そうな顔をしているのだ。
「ああ、別に霊夢が理解する必要はないわ。この機会にドレスに聞かざる紅魔館の豪華絢爛なパーティーで幻想郷全体の雰囲気を古臭くて貧乏な感じから変えるのよ。それにはとりあえず霊夢。あなたからドレスアップする必要があるわ」
「…………それで、あんたら全員出てきたの? いい!? そんなものを絶対着たり……だせー! なにこれ!」
いつのまにか巫女が車輪のついた檻に入れられているのである。それをさくやがきゅるきゅる車輪の音を鳴らしながら持っていくのである。
うむ!? 吾輩はいつの間にか地面に降りているのである。なんだかほっとするのである。さくやが霊夢に話しかけるのである。
「戦闘態勢になってない巫女なんてこんなものね霊夢。そう暴れないの。まあ、あんたなら本気になればこれくらい壊せるかもしれないけど。お嬢様のもうそ……構想はともかくただ外の世界のかわいいドレスを着てみるのはいい経験と思うわ」
廊下の向こうかられみりあの声がしたのである。
「咲夜! さっさと終わらせなさい。他のお客の相手もこれからいっぱいあるんだからね」
「はい! お嬢様」
巫女は檻の中で黙っているのである。ちょっとほっぺたが膨らんでいるのである。吾輩は檻の隙間から入ってその膝の上で寝そべったのである。