わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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みずあそびである!

 

「うーん、結構写真をとったわねー。でもこう、パンチが弱い気がするわ」

 

 はたてが立ち止まって何かを言っているのである。困っているのであろうか? 吾輩も一緒に考えるのである。あとぱんちも任せるのである。

 そう思って吾輩ははたての足に吾輩の前足をかけて、背伸びをしてみるのである。はたては吾輩を見てくすりとしているのである。

 

「どうしたのよ? そろそろおなかでも減ったのかしら?」

 

 なんだか吾輩はいつもはらぺこのように思われている気がするのである……。はたてはしゃがみこんで吾輩と目を合わせたのである。吾輩も負けずにじぃーとみてみるのである。

 

 じー

 じー

 

「ぷっ。負けたわ」

 

 よくわからぬがはたてに勝ったのである! ううむ、少しうれしいのである。はたてよ、まだまだであるな。うむうむ。

 

「あ、そうだ。水辺とかってどうかしら」

 

 ぱちんと指をはたてが鳴らしたのである。

 ……それはどうやって鳴らすのであろうか! 吾輩もこうやってみたいのである。吾輩は肉球をこう、こうくにくにと……ならぬ!

 

 川である! 吾輩は駆けだしたのである。

 吾輩は河原はなかなか好きなのである。きらきらと水が流れていくのである。

 

 吾輩は水の中を覗き込んでみるのである。小さな魚がいるのである。吾輩はここまで小さいものを食べたりはせぬ。ただ、前足をちょっといれてみるのである。

 

 冷たいのである、ううむ。

 ……おぅ。よさげな石があるのである。吾輩はひょいと飛び乗ってみるのである。ううむ、その先にまた別の石があるのであるな。吾輩はさらに飛び乗るのである。

 

 おぉ。すべるのである。吾輩は少し立ち止まったのである。こういう時は落ち着いて首筋を掻くのである。

 

「えへー」

 

 吾輩がさっきまで乗っていたところにこがさが立っているのである。なんでかわからぬが笑顔であるな。

 吾輩はにゃおと答えておいて次の石に飛んだのである。

 

「よっと」

 

 こがさがついてくるのである。なんでついてくるのであろうか。

 まだ先に石があるようであるが小さくなっているのである。吾輩は川の流れを見てみるのである。きらきら光りながら水が流れているのである。何か光っているのであろうか?

 

 ううむ。わからぬ。吾輩はちょっと前足で水を掻いてみるのである。冷たいのである。吾輩は泳げぬわけではないのであるが、冷たいのはあんまり好きではないのである。

 

「お魚を探しているの?」

 

 こがさが聞いてくるのである。別に探しているわけではないのであるが……うむ。やまめもどこかにおるやもしれぬ。きょろきょろと探してみるのであるが、蟹がいるのであるな。

 

「あ、カニさんだー」

 

 こがさは蟹とも知り合いなのであろうか? なら、吾輩も挨拶をしていた方がよいやもしれに。吾輩はそう思って、赤くて小さな蟹の前でにゃあと鳴いてみたのである。

 

 

蟹がハサミをあげたのである!

 おぉ。挨拶を返してくれたのである。ううむ。こがさのともだちにしては礼儀正しいのである。

 

「あれ? 猫さん、そのカニさんとお友達なの?」

 

 挨拶をすれば友達といってもいいやもしれぬ。

 こがさは石の上でしゃがんで吾輩を抱っこしたのである。じっとこがさが吾輩を見て、にこっと笑ったのである。吾輩もなんとなくうれしいのである。

 

「猫さんっていつも楽しそうなかおしてますねー」

 

 そうであろうか? 吾輩はこがさのほうが楽しそうにしているように見えるのである。

 

「よっと」

 

 うむ? 後ろでもみじが近づいてきたのである。こがさと同じように吾輩が飛んできた石に乗っているのである。こがさは……。

 

「にゃあにゃあ」

 

 何を鳴いているのであろうか? 後ろにもみじがいるのである。

 もみじはやれやれとした顔をしているのであるな。吾輩はもみじのことなら何でもわかるのである。もみじが手を伸ばしてきているのである。

 

「あ、あれ」

 

 もみじがぐらつて。こがさの肩を押した……

 おぉ、空が見えるのである!

 こがさが「ぁあぁ!」と変な声を出しているのである。

 

 ばっしゃーん。

 

 冷たいのである! 吾輩はあわてて、すぐに上がってふるふるふるとしたのである。

 ふるふるふるふる。水を飛ばすのはこうするのである。もみじよ、びっくりしたのである。

 

 そう抗議しようとしたのであるが、もみじはなんだかあわあわしているのである。

 うむ? 吾輩はもみじが見ている方にふりかったのである。

 

「ふふ、うふふふ」

 

 こがさが川に腰までつかりながら笑っているのである。

 前髪で目元がかくれて見えぬ。

 

「ふふふふ……うふふ」

 

 しかし、笑っているのであるからして大丈夫であろう。それでも早く上がらねば風邪をひくのである! 吾輩はもみじの裾を口でひっぱって、早くこがさを助けるようにあぴーるするのである。

 

「あ、ああ、ああ、……その。こ、こがさ。わ、わざとじゃない」

 

 じゃばーとこがさは立ち上がってたのである。ほっぺたが膨らんでいるのである。

 

「もんどーむよー!!」

 

 こがさが手に水をいれて飛ばしてきたのである。ううむ。吾輩にかかったのである。もみじは「きゃあ」と言っているのである。

 

「それーそれー」

 

 ぱしゃぱしゃとこがさが水を掬ってはとばしてくるのである。ぱしゃぱしゃの間にはたてがぱしゃぱしゃと何か撮っているのがみえるのである。

 

「こら、やめろ、こ、こがさ。も、もう」

「それー」

 

 もみじとこがさよ……。吾輩は、吾輩は……一緒に遊びたいのである!

 吾輩も川に入ってぱしゃぱしゃと前足を動かしてみるのであるが、こがさのようにうまくはいかぬ。こがさは水あそびのてんさいであるな。

 

「い、いーかげんにしろー」

 

 もみじが水を手にためて投げたのである! すごいのである。こがさの顔にぶつかってぱーんと音がしたのである。

 

「い、いたーい。て、天狗のくせに本気でやったわねー」

「そ、それはお前が調子にのるからだ」

「私だってまけませんよ」

「や、やめ」

 

 今度はもみじの顔にお水がかかったのである。吾輩もやりたいのである。うむ? あれは……さっきの蟹であるな。一緒に遊びに来たのであろうか。こがさよ、こがさの友達が遊びたいようであるぞ。

 

「にゃ!!?」

 

 もみじがばしゃーとこがさに水をかけたのである。

 こがさはびしょ濡れであるな。服が肌にはりついているのである。吾輩も毛並みがこう張り付いたりするのであろうか? 蟹よ、どう思うであろうか。いや、泡を出されても分からないのである。

 

「あんたたちー。もう十分に写真を撮ったから、そろそろ上がったら?」

 

 おお、はたてである。吾輩は岸に上がってふるふるふるふると水気を飛ばすのである。

 

「ううー」

「おまえ……なんで。私がこんなことに」

 

 びしょ濡れのこがさともみじがそれぞれ上がってきたのである。ふるふるするといいのであるぞ、こうである。

 こがさは顔をふるふると振って、青い髪から水を飛ばすのである。

 

「あんたたち、子供かー」

 

 はたてが笑いながら言ったのである。もみじは「いや、だってこがさが」と言っているのであるな。

 

「いや、その言い訳の仕方こどもっぽいわ」

 

 くすくすとはたてが笑っているのである。そこに後ろからこすずがやってきたのである。こすずははーと言いながら、両方の掌を上にあげて。

 

「皆さん。こどもですねー」

 

 と言ったのである。

 吾輩が振り向くとこがさともみじはお互いに顔を見合わせているのである。

 

 

「にゃ、にゃにするんですかー!」

 

 もみじとこがさが仲良く両側からこすずのほっぺたをつねっているのである。こすずのほっぺたはお餅のようであるな。吾輩もこう、引っ張ってみたいのである。

 

 

 


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