わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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お久しぶりです。こがさの案内で傘を手に入れた3人組。

ご機嫌なお散歩をご一緒に


かさのしたでおさんぽである

 3つの傘が並んでいるのである。

 いや、はたてともみじとこすずが並んで歩いているのである。吾輩はその後ろをとてとてついていくのである。

 

 はたては桜の傘であるな。吾輩はその下に入って、上を見上げてみるのである。桃色の傘に桜の花びらが浮かんでいるのである。うむうむ、これは「絵」なのである。吾輩はちゃーんとわかっているのである。

 

「んーんー」

 

 はたてが何か歌っているのである。手元でくるくる傘を回しているのであるな。ごきげんなのはいいことなのである。吾輩は安心したのである。

 少しゆっくりいくと、はたてが先に行って今度はもみじの足元に来たのである。わがはいの周りがほんのり赤くなったのである。吾輩が見上げるともみじの大きなおめめが吾輩を見ているのである。

 手には紅葉の描いてある傘を、だいじそうに両手で持っているのである。傘の下に来たから周りがほんのり色が変わったのであるな。不思議である。

もみじは吾輩を見下ろしながら、ぱちぱちと瞬きをしているのである。吾輩に何か言いたいことがあるのであるな! 吾輩はちゃんとわかっているのである。

 

「歩くのに……じゃま」

 

 すまぬ。吾輩は紳士であるからして、ちょっと横にそれたのである。

 もみじは吾輩の横を歩いて前に行くのである。その時ちょっと小さな声で何か言っていたのである。

 

「いま……言葉が通じた? まさかなぁ」

 

 よく聞こえなかったのである。もみじが吾輩を振り返りながら見ているのである。手の傘を少し傾けて小首をかしげているのである。そういえば小首とはなんであろうか。吾輩は首は一つしかないのであるが……もみじにはじつは大首もあるのかもしれぬ……。

 

「猫さん猫さん」

 

 おぉ。こすずであるな。吾輩はそちらを見てみるのである。

 にっこりとこずすが笑っているのである。吾輩は、にゃぁおと答えてみるのである。こすずも「にゃおにゃお」と言っているのである。

 

 !

 にゃおにゃおとは新しいのである! 吾輩もちょっと真似をしてみるのである。ぐるる、うまく声が出せぬ。なかなかこうどな技であるな。こすずを見直したのである。こんど集会に呼んでもいいやもしれぬ。

 こすずはアジサイを描いた青っぽい傘をさしているのである。「えへへ」とこすずもごきげんであるな。吾輩もうれしいのである。しかし、うれしいことをちゃんと伝えることは難しいのである。吾輩はなやましいのである。

 

「猫さんも傘を買ってもらったらよかったのにねぇ」

 

 うむうむ。こすずの言う通りなのである。

 ……いや、やっぱりいいのである。吾輩には傘は大きいのである。もらっても吾輩は咥えて引きずることしかできぬ。いや、そうであろうか、くふうをすれば意外といけるやもしれぬ……。

 

 吾輩ははたてたちの後ろを歩きながら深く考えてみるのである。

 傘を持つにはどうすればよいであろうか。

 背中に乗せても大きいのである。

 尻尾でこう、引っ張ってみてはどうであろうか。

 いや、ううむ。それより咥えてみればいいやもしれぬ。

 難題である。こんなに悩んだのはやまめを頭から食べるか尻尾から食べるか悩んだ時以来であるな……ううむ。ううむ。難しいのである。

 

 カラカラ。

 吾輩はその足音に気が付いて後ろを振り向くと、こがさがいたのである。不思議そうな顔をしているのであるがなんであろう?

 

「猫さん。なんか遅れてるわよ?」

 

 うむ? おお、考えている間にはたてたちがずっと前にいるのである。恥ずかしいのである。吾輩はすごく遅れてしまったのである。少し早く歩くのである……。ぉお宙に浮いているのである。

 

「ほら、だっこだっこ」

 

 こがさがだっこしてくれたのである。

 ちょうどいいのである。こがさは傘に詳しいのである。こがさよ、吾輩が傘を持つためにはどうすればよいのであろうか。吾輩は前足をこうふりふりしたり、にゃあーにゃーと言ってみたりしてこみゅにけーしょんをとってみるのである。

 

「んー? 猫さんどうしたのかしら」

 

 きょとんとしているのであるな。こがさの眼は大きいのである。こがさは「んー」と言って少し考えているのである。吾輩の気持ちをわかってほしいのである。

 

「ふふ、私もそろそろ猫さんが何を想っているのかわかってきたわ」

 

 吾輩は騙されぬ。そう言って吾輩の気持ちをちゃーんとわかってくれる者はあまりおらなかったのである……。

 

「傘がほしかったのね?」

 

 ??

 こがさとこみゅにけーしょんができたのやもしれぬ……こがさよ、そうである! 傘を持つには吾輩はどうすればよいであろうか? いやそれよりもこがさとこみゅにけーしょんができてうれしいのである。

 

「私みたいな!」

 

 …………。

 ふいっ。

 

「あ、あれ? 猫さん? なんでそっぽをむくの?」

 

 …………。

 

「ちょ、ちょっともみじぃー!」

 

 たったったっとこがさが吾輩を抱きかかえたままもみじに泣きついたのである。

 

「なんだ」

「猫さんがそっぽをむいちゃった」

「な、何をしたんだ? おい」

 

 もみじは吾輩をなでなでしてくれるのである。うむ。こがさを許すのである。ほんとはこがさとこみゅにけーしょんがとれて嬉しかったのであるが、やっぱりあまりわかっておらなんだのがちょっぴりがっかりだったのである。

とりあえず吾輩はみゃーと鳴いてみるのである。もみじはなんだか優し気に笑っているのである。もみじのなでなでは優しいのである。

 

「なんだ。撫でてほしかっただけじゃないか」

「ええ? 私……私みたいな傘がほしいの猫さんって聞いたら……そっぽむかれちゃったんだけど」

「……あー。それは小傘が全面的に悪い」

「な、なんでぇ?」

「悪逆非道だな」

「え!!?? 私みたいな傘って来たらそ、そこまで、むむしろ私の方が傷つくわ」

 

 くすくすともみじが笑っているのである。

 そこにはたてがやってきたのである。

 

「はい。ちーず!」

 

 ぱしゃ。

 吾輩とこがさともみじを写真に撮ったのであるな。はたては手元の「ケイタイ」を見ながらうんと頷いたのである。

 

「な、なにするんだはたて」

「椛が普通に冗談を言うなんてあれね。小傘と仲がいいのね。あ、あと何をするんだってもともと今日の目的って記事用の写真とか取ることだしね。仲良さげな写真を撮ってあげたのよ、地底に行ったトリオの今って感じでね」

 

 こがさよ。気になることがあるのである。ちーずとは何であろうか? こがさは吾輩をみてなでなでしてくれたのである。いや、そうではない。

 

「あのー。はたてさん。なんで『チーズ』っていうんですか?確か西洋の食べものですよね」

 

 こすずよ。ありがとうなのである。あとこがさよ首筋のあたりがなでてほしいのである。

 

「えっ? そりゃあ、あれよ。……なんでかしらね。あー、んー。わからないわ」

「へー。天狗でもわからないことってあるんですね」

 

 はたてともみじがこすずを挟み込んで、ほっぺたを両側からつねったのである。

 

「にゃにするんですかー」

 

 こすずが抗議しているのである。はたてともみじは両側から何か言っているのである。「悪い口はこれかしら」とはたてが言っているのだ。

それよりも3人は傘を手に持っているのであるからして、桜と紅葉とアジサイが重なっているのである。こがさよ、今である、こがさも仲間にはい……らなくていいのである!

 

「あ、はたてさん!」

 

 こがさがはたてから携帯をとったのである。それから片手で構えたのである。吾輩にも携帯に映ってる画面が見えるのである。

はたてともみじが仲良くほっぺたをつねっているのである。

 

「はい、ちーず」

 

 ぱしゃと、音がしたのである。

 


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