「猫さんも行きたいのですか? じゃあ、ほら、こっちに来てください」
緑の巫女がそう言って吾輩を抱えてくれたのである! わがはいはにゃあとお礼を言っておくのである。紳士はお礼をかかさぬ。
きらきらした瞳で吾輩をみてから、にぱぁと緑の巫女が笑ったのである。うむうむ、笑うことはいいことである。吾輩もうれしいのである。
「そういえば猫さんはお名前はあるんですか?」
首をかしげて聞いてきたので吾輩も思わず一緒に首を傾げたのである。……名前であるか? わがはいはわがはいである。
「私は早苗っていいますよー。以後お見知りおきを~。よしよし」
さなえであるか! いい名前であるな、吾輩はとても気に入ったのである。うなうな、吾輩はさなえの腕の中でもぞもぞ動いてみるのである。最近分かったのであるが、こみゅにけーしょんとは言葉だけではなにのである、うれしい時はこう動いて……。
「めっ」
怒られたのである……。ううむ、こみゅにけーしょんは難しいのであるな。
「さーてとそれじゃあ勝手に非想天則の上に乗った不届きな子を退治するとしましょう。猫さんもサポートお願いしますね」
さぽーとであるな! 得意である。わがはいはちゃんとわかっているのである。さぽーととはあれである……うむ……たすけることであろう!
そう思っているとまた、ふわりと空に浮いたのである。もう何度も空を飛んだことはあるから吾輩は驚かぬ。どっしりとかまえているのである。さなえもゆっくりと空に上がっていくのである。
それにしてもロボは大きいのである。空を浮かんでいるのはロボも同じであるが、疲れぬのであろうか。たまには休むのである。
どんどん昇って行って、吾輩とさなえはロボの上で寝転がっているるーみあを見つけたのである。ちょうどろぼの頭の上であるな。さなえはそのるーみあの近くに降りたのである。今回は短い空の上であったのである。
「……」
寝ているのである。
るーみあは腕を枕にしてお昼寝であるな。さっきまで起きていたのに疲れていたのであろう。さなえもるーみあの寝顔を見ているのである。
「なんか、幸せそうに寝ていますね。起こすのはかわいそうな気もしますけど、まあ」
さなえが後ろを振り返ったのである。
おお、風が吾輩をなでなでしてくれるのである。遠くまで見えるのである。お天道様が今日は元気であるな。なんだか幻想郷がきらきらしているのである。
「確かにお昼寝日和かもしれませんねー。よいしょっと」
さなえはるーみあの横に寝転んだのである。ずるいのである。吾輩もそれをするのである。こてんと吾輩も仰向けに寝てみるのである。両足がつかぬ、ぱたぱた動かしてみるのであるがどうにもならぬ。
「くす。これが川の字ってやつですねー。神奈子様と諏訪子様ともたまにやりますけど、ああ…猫さん。空って広いですね―」
そうであるな。吾輩の前には空しかないである。いや、雲がいるのである。どこに行くのであろう。買い物であろうか? 急いでいるようであるな。
ごろごろ、なかなかいいではないか。横をみたらるーみあがすやすや眠っているのである。吾輩もちょっと眠たくなってしまうのである。さなえよ、吾輩が眠たくなったのである。
にゃあ、と伝えたのであるが返事がないのである。
起き上がってみるとさなえが眠っているのである。なんだか幸せそうな顔であるな。吾輩はなんだか寂しいのである。仕方なくるーみあの上での中にもぞもぞと入りこんでみるのである。うむ、ここもなかなかよいのである。
「あ……ぁ……」
るーみあがなにか言っているのである。
「……けいね…ありがと……」
うむうむ。るーみあもちゃんとお礼が言えるのである。ということはるーみあも紳士であろうか? ううむ、難しい問題である。さなえよどう思うであろうか。吾輩はるーみあを踏み越えてさなえに聞いてみたのである。よだれを垂らしているのである。これはダメであるな。それにもこうと違って乗りにくそうである。
吾輩はさなえのほっぺたをぱんちしてみるのである。おきぬ。
ねぼすけさんであるな。吾輩はもう一度ぱんちしてみるのである。おきぬ。
ううむ。なんだか楽しくなってきたのである。ぷにぷにとほっぺたを触ってみるのである。するとさなえがゆっくりと目を開けて、むーと吾輩を見てきたのである。
「猫さん?何をしているんですか?」
……吾輩は何もしておらぬ。
「なんでそっぽを向いているんですか? さっきまで私のほっぺたを触ってたりしてませんでしたか」
…………。
「こら」
おおう、あごを撫でながらのじんもんは卑怯である。おお、そこである。吾輩はそのばでごろごろさせられてしまったのである。
「ふふふ。ここか、ここかー」
なかなかいいのである。吾輩は気持ちいいのである。高いところでまっさーじはおつなものであるな。吾輩はさなえの膝の上にのせられてごろごろするのである。うむ? 突然さなえの手が止まったのである。
「ふふふ」
さなえが吾輩を見ながら笑っているのである。もう少しマッサージしていいのである。吾輩はにゃあと言ってみるのであるが、さなえは動かぬ。
「ちゃんと白状したらもう少ししてあげますよ? どうしますか」
にゃあにゃあ。
ううむ。悪かったのである。この通りであるな。吾輩はおわびのしるしとしておなかを見せてごろごろしてみるのである。
「甘えたって駄目です。ちゃんと反省するまでなでなでしてあげますから、ほらほら」
これは反省をせねばらなぬ……おおう、おおう。吾輩はその場でくねくねと体を動かしてみるのである。さなえは吾輩の毛並みに沿ってなでなでしてくれるのである。
「ふぁーあ」
おおう、るーみあも起きたのであるか。おはようである。るーみはあ目をごしごししながら、吾輩達におはようの挨拶を……
「なんでいるの?」
ちゃんと挨拶をせねばならぬ! 吾輩はきりりとした目で抗議したのであるが、るーみあは頭を掻いているのである。さなえよ何か言ってあげるのである。
「おはようございます! でもだめですよ、勝手に上ってきちゃ」
「……」
るーみあがさなえをじとりとした目で見ているのである。
「そーなのかー」
それだけ言ってぷいとそっぽを向いているのである。さなえを見上げて、吾輩は相談するためになあお、と言ってみたのである。さなえはうんうんと頷いてくれたのである。よくわからぬが通じたのであろうか。
「まあ、いいですね」
さなえよさっきまで何をうんうん頷いていたのであるか。
「ああ、きもちいー」
さなえはまたコロンと寝転がって、大きく伸びをしているのである。手を空に向けて、指を立てて動かしているのである。
「大空をキャンパスにしてスケッチするっておしゃれですよね? 猫さん」
きゃんぱす……すけっち……難しいのであるな。しかしおしゃれと聞けばいいことであろう。
「ほらほら、ねこさんねこさん」
さなえが指を動かしているのである。るーみあと吾輩はその指に合わせて顔を動かすのである。楽しいのである。
「何を書いたの?」
るーみあがきいているのである。吾輩もとても気になるのである。るーみあよ、もう少し詳しく聞くのである。さなえはふふっと吾輩達に笑いかけてこういったのである。
「一緒にお絵かきすればわかるかもしれませんよー」
「……」
るーみあはその場にこてんと寝て手を伸ばしたのである。
吾輩も負けてはおれぬ! 前足を伸ばしてみたのである。
並んで青空に何かを書いてみたのであるが、難しかったのである。