ころんころん。吾輩は転がるのである。
地面に転がっては後で砂を落とさねばならぬ。吾輩はそんなことにはならぬようにさいしんの注意を払うのである。だから、ちゃんとござの敷かれたうえで転がるのである。
「はむはむ」
横では胡坐をかいてなずーりんがおまんじゅうを食べているのである。お膝に竹の葉っぱにのせた白いおまんじゅうが並んでいるのであるが、吾輩にはくれぬ。
さっきけいねがなずーりんにだけくれたのである。ううむ、吾輩にもほしいのである。吾輩はむっくりと起き上がってなずーりんのひざ元に近寄るのである。
「…………」
そうするとなずーりんはおしりを使ってくるっと後ろを向いたのである! 吾輩は仕方なく前に回り込もうとして、またなずーりんは回ったのである。
「饅頭はやらないからな」
なずーりんよ。吾輩はそんなことは言ってはおらぬ……まあ、ほしいといえばほしいのであるが。それにしてもなずーりんは食いしん坊さんであるな。よく食べることはよいことである。感心するのである。
「なんだ、その目は」
じっとりと吾輩をなずーりんが見てくるのである。なんだといわれても吾輩は特に何もないのである。遊んでげるのはやぶさかではないのである。そう思ってコロンと寝転がってみるのである。
ごろごろごろ。ううむ頭がかゆいのである。吾輩は後ろ足で掻くのである。ごしごし、おお、きもちいい……。ふるふる。ごろごろ。
「ひまそうだなぁ」
吾輩は忙しいのである。抗議をする意味を込めてなずーりんを見るのである。じぃとみているとなずーりんはもぐもぐとほっぺたを動かしているのである。なんだかおもしろいのである。吾輩はにゃあと声をかけてみるのである。
「……にぁ……」
なずーりんは何か言いかけて首を振っているのである。頭を掻きながら「ああ、ペースが狂う」と言っているのである。ぺーすとはなんであろうか、わからぬ。吾輩は知ったかぶりはしないのである。だからなずーりんの眼を見ながら首をかしげてみるのである。
こうしているとたまに教えてくれたりするのである。
「……?」
おお、なずーりんも同じように首をかしげたのである。いや、教えてほしいのである。一緒の動きをして貰いたいわけでないのである。ううむ、らちが明かぬ。けいねはどこに言ったのであろうか、るーみあを探すといって言ったのであるが……。
吾輩はたちあってきょろきょろと周りを見渡してみたのである。さっきまでいた人が結構いるのであるな。吾輩となずーりんはちょっと離れてりらっくすしているのである。
! そうである。けいねのお手伝いをするのはどうであろうか、るーみあをちゃんと見ておかなかったのも吾輩にせきにんがあるのである。そう思って、なずーりんへ振り向いたのである。ちょっと出かけてくるのである!
……? 振り向くとなずーりんが吾輩に手を伸ばしたまま固まっているのである……? なんであろうか。
「……あ、ああ」
なんで顔を赤くしているのであるか? ……おお! わかったのである。吾輩を撫でてくれるのであるな。それはやぶさかではないのである! 吾輩はちょっとなずーりんに近づいてみるのである。
「だ、誰が撫でたりするか!」
それは残念である……吾輩はあきらめきれずにお膝に乗ってみるのである。
「う、うあ」
顔を赤くして逃げようとしてもあれである。別に何もないのであるが、観念するのである。この首のあたりとかが吾輩はいいのである。
なずーりんは固まったまま動かぬ……吾輩は仕方なくお膝から降りてみるのである。まあ。いいのである。ここでちゃんと留守番をしているのである。吾輩はけいねを探しに行くのである!
たったか、吾輩は走り出したのである。吾輩を止めるものは誰もおらぬ!
☆
「こら、ちゃんと待っているように言っただろう?」
なでなで。
すまぬのである。しかし。吾輩はけいねのお助けがしたかっただけである。なでなでされながら吾輩は毅然としたたいどをとるのである。ううむ、うむうむ。そこである。
「いつも目を離すとどこかに行こうするんだからな……ほら、おいで」
けいねははあとため息をついてから吾輩の顎を指でちょいちょいとしたのである。ちゃんとついていかねばならぬ。吾輩は紳士なのである。
「それにしてもルーミアはどこに行ったんだろうか。お茶碗を買ってあげようとおもったけど……」
けいねは紫の包みを大切そうに抱えているのである。あれは吾輩のおちゃわんだったはずである。なずーりんとの激しい戦いに勝って手に入れたのである……。じゃんけんは初めてであったが勝てるとは吾輩も末恐ろしいかもしれぬ。
空を見るとあの大きなろぼが浮かんでいるのである。
「あれはたしか非想天則……だったかな。前に聞いたことがあるんだけど、それにしても妙な形をしているな……くす」
うむ? けいねよ。なあなあ、にゃあ!
「なんだ」
あのろぼの上に立っているのはるーみあではないであろうか。
空に浮かんだろぼの一番高いところで両手を組んで立っているのである。にゃあにゃあ、吾輩はけいねに訴えてみたのであるが、
「おなか減ったのか?」
いや、違うのである。
「ヤマメ食べにいこうか?」
うむ。
おお、ちがう。るーみあがあそこにいるのである。それにしても気持ちよさそうであるな。すかーとがはたはたと動いているのである。かぜさんも来ているのであろう。吾輩はだっと駆けだしてみるのである。
「おーい」
のんびりとしたけいねの声がするのであるが、吾輩は振り返らぬ。
るーみあだけずるいのである!
吾輩もあそこの行きたいのである。しかし、吾輩は飛んでいくことはまだ練習しておらぬからできぬ。
まりさやこがさはおらぬであろうか? 吾輩はあたりを見回したのである。
! あれはみこである。吾輩はにゃあにゃあ言いながら近寄ったのである。吾輩をお空の上まで連れて行ってほしいのである。
うむ? なんであろう、いつもと格好が違うのである。かみのけが葉っぱと同じ色なのである。それにちょっともじゃもじゃしておる気がするのである。
「ん?」
振り向いたそのみこは、吾輩に気が付いたのである。大きな瞳がお星さまが飛び出したようにきらっと光ったのである。
吾輩は驚いたのである。吾輩の知っている巫女ではないのである。格好が似ていたから間違えてしまったのである。なんとなく目を合わせたまま、止まってしまったのである。
これではいかぬ。吾輩は紳士である。ちゃんと挨拶をするのである。
みゃー。
うまく言えたのである。
緑の巫女は吾輩を覗き込みながら、
「にゃあ?」
と聞いてきたのである。吾輩はすかさずにゃあと返したから、相手も「にゃあにゃあ」といいながら両手を組んで頷いているのである。どうやらちゃんと通じたようであるな。よくわからぬが。
緑の巫女は自分でしゃべりだしたのである。
「今回のお祭りは成功したようねー。こんな猫さんまでやってくるなんて……。どうせなら霊夢さんとかも来ればよかったのに」
れいむ? 聞いたことがあるのである……おお、たしか巫女の名前であるな。吾輩はいつもみことしか言っておらぬ。
というか忘れていたのである。るーみあのところに行きたいのである。吾輩は上を向いてにゃあにゃあと鳴いてみるのである。
緑の巫女も不思議そうな顔で上を向いてくれたのである。
「あ、あんなところに上ってる人がいる。注意した方がいいかしら? よーし」
ふわっと巫女が浮いたのである。吾輩も連れてってほしいのである!