わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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たのしくおさけをのむのである

 周りから大きな拍手が続いているのである。

 吾輩はこがさに抱かれたままであるから身動きが取れぬ。もぞもぞと動いてからこがさを見るとほっぺたを赤くしてちょっと目も赤いのである……おお、目が赤いのは今までもそうなのであるがこう、いつも白いところが赤いのである……、むむむ「ことば」で表すのは難しいのであるな。

 吾輩はこがさの手から離れて地面に降りてみるのだ。地底の地面にはひんやりしているのである。吾輩はなんとなくその場で体を長くして転がってみるのである。

 みんな見ているのである……照れるのである。吾輩はちょっと困ったのでこがさを見たのであるが、

 

「っふふーん」

 

 こがさが嬉しそうで吾輩は何よりである。それでもまあ、吾輩は困っているからしてどうにかしてほしいのである。

でもまあ、よくわからぬが、ぱちぱちとみんなが拍手をしてくれたから吾輩もとても満足である。

 こがさは両手を腰につけて胸を張っているのだ。吾輩も同じような格好をしてみたいものなのであるが、ううむ? 吾輩の腰はどこであろうか、吾輩はその場でぐるぐると回ってみて体を眺めてみたのであるがまるで見当がつかぬ。

 もしかしたら吾輩には「こし」がないのかもしれぬ……。しんこくな悩みを吾輩は持ってしまったのやもしれぬ。

 

 そんなことを想っていると、空から何かが降ってきたのである。

 大きな盃を持った……なんだゆうぎであるな。地面に降りるときにどこんっと音がして吾輩はびっくりしたのである。

 おお、そのあとにゆっくりともみじもおりてきたのである。吾輩はもみじになんとなく近寄ってみると、もみじもしゃがんで両手を広げたのである。

 

「ほら、おいで」

 

 お呼ばれしたのである。これはいかねばならぬ。

 吾輩はしょうたいされたのでもみじのそばに行くとなでなでされたのである。おお、気持ちいのである。

 

「がんばったね」

 

 なんだかもみじも口調がやわらかいのである。吾輩はどちらでも好きである。

 ?????

 もみじが吾輩の首の後ろをごりごりと力強くなでてくるのである……ううむ、うううむ。これは、これは気持ちいいのである。吾輩はその場で座り込んでみたのである。もっとしてほしいのである。

 

「いや、お見事お見事。さすがは大道芸人というだけはあるね」

 

 ゆうぎがなんだかこがさをほめているのである。こがさはなんでかほっぺたを膨らませているのはなぜであろうか。

 

「わ、私はだ、大道芸人ではないんですけど……」

「そうなのかい? まあ細かいことはいいじゃないか! あっはっは。私を驚かせることができたんだ、なーに人間くらい簡単に驚かせることはできるさ」

「ほんと!? ……う、ううでもこれで驚いてもらっても、私のあいでんてぃてーは……」

「あ、あいで……小難しい言葉を使うわね。まあ、この勝負はあんたの勝ちだ」

 

 ばんばんとこがさの背中をゆうぎがたたいているのである。すると吾輩を撫でるもみじの手が止まっているのである。吾輩はおもわず体でもみじの手に当ててみるのだ。

 撫でてくれぬ、吾輩は辛抱たまらぬ。おもわずにゃーと言ってしまったのである。するともみじはちらりと吾輩をみて、

 

「ここか」

 

 ごりごり。

 そこである、おお、おぉ……。いいのである。

 もみじにも吾輩はお返しをしたいのであるが、どうにもできぬ。肉球を後でほっぺたにつけてみようと思うのであるが、気持ちはいいのであろうか。

 ふと、ゆうぎを見てみるのである。

 

 ゆうぎは吾輩を見てにっこりと笑っているのである。それから周りに向かって叫んだのだ。

 

「野郎ども!! この地上からの客をもてなしてやりな! ……飲むぞぉ!!」

 

 わぁああああああああ!!!

 吾輩はあまりの大きな声に思わずもみじへ抱き着いてしまったのである!

 

 

「あはは」

 

 こがさは遠くでお酒を飲んでいるようであるな。笑い声が聞こえてくるのである。

地底のみんなとの飲み会はたのしそうであるが、吾輩はどこに行っても撫でられるので疲れてしまったのである。街中でお酒を飲んでいるのである。

 くろだには妙な動きをしたり、きゃぷてんは吾輩のしっぽをつかんでくるのである。

 仕方なく吾輩はぱるすぃのおひざで休んでいるのである。ここなら安心であるな。

 

「それにしても天狗とは久しぶりに会った」

 

 ぱるすぃの前でゆうぎが座っているのである。その前にはふらふらと頭を揺らしているもみじがいるのである。

 

「え? そそうですね。上司のしゃ、しゃめーまるが私にひっく」

「天狗のくせにだらしがない。ほら飲め飲め」

 

 もみじが手に持った盃にゆうぎがとくとくとお酒を注いでいるのである。もみじも「いただきます」と言ってくいっと飲んでいるのである。吾輩も飲んでみたいのであるが、お酒に近づくとぱるすぃが「めっ」と言ってくるのである。

 

「そ、そういへば、ゆうぎさま、あ、あまのじゃくは」

「ああ。あれか。小傘の芸の間に気付で酒を飲ませたんだが、目がとろんとしてね、あげくあへぇだのほえぇだの変なことを言い出したのから寝かせてある」

「……鬼のお酒をどれほど飲ませたのですか? 勇儀様」

「……そんなに飲ませてなんていない! あくまで気付だ、まあ、量でいえば……10杯も飲ませてないわ」

「…………あまのじゃく……」

 

 そういばせいじゃはどうしたのであろうか、吾輩は心配なのである。そう思ってぱるすぃに聞いてみても「にゃー」としか返ってこぬ。吾輩は仕方なく、その場で自分で首を掻くくらいしかできることがないのである。

 ゆうぎは吾輩を見ているのである。

「この猫もなかなか肝が据わっているわ」

 

 きもがすわっている……きもとは誰であろうか? どこに座っているのかわからぬ。吾輩はあたりをきょろきょろしてみてみたのであるが、もみじとぱるすぃとこいししかおらぬ。

 ゆうぎよ、きももちゃんと仲間に入れてあげるのである。

 みゃあ、みゃあ吾輩は真剣に訴えるのである。仲間外れはいかぬ。

 

「この猫何か私に言いたいことでもあるのか」

「勇儀様。まさか、猫ですよ……」

 

 ゆうぎともみじとこがさがじいいとみてくるのである。恥ずかしいのである、吾輩は思わずそっぽを向いてあくびをしてしまったのである。断じてテレカクシではないのである。これはふかこーりょくというと、思うのである。

 

「あっはっは!」

「ふふふ」

「あははは!」

 

 ゆうぎともみじとこいしがそれぞれ笑っているのである。

 そういえばいつの間にこいしは来ていたのであろうか……、まあいいのである。

 

「……」

 

 ゆうぎが立ち上がったのである。ゆっくりとまわりを見回しているのである。それからもみじに聞いたのである。

 

「天……いや椛。お前たちはいつごろ帰るつもりだった?」

「えっ? そ、そうですね。私も小傘も目的はもうありませんので落ち着いてからすぐ帰ろうかと思います」

「そうかい。ゆっくりしていけばいいのにねぇ。温泉にも入ったのか?」

「は、はい」

「そうか、それじゃあ地上に帰るまでに汗をかいたらもったいないわ。よし、私が地上まで送ってやろう」

「! そ、そんな。恐れ多い。勇儀様地上へは私どもだけで」

「遠慮するんじゃない。椛もあの小傘も猫もちゃんと送り届けてあげるわ」

 

 ゆうぎはいいやつであるな。でももみじも言うのである。

 

「こ、このようなことで勇儀様を地上までご足労願うわけには……」

「何を言っているんだ?」

 

 ゆうぎがキョトンとしているのである。

 

「私は地上に行く気なんてないわよ?」

 

 もみじが吾輩を見て小首をかしげたから、思わずまねてしまったのである

 





じかいちていへんらすと

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