わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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てーぶるのうえでおしゃべりなのである

 吾輩は負けぬのである。さとりがなでなでしてくれているのであるが、吾輩の横でこいしもなでなでされているのである。

 

「んー」

 

 こいしはとても気持ちよさそうであるな。そうである、吾輩も負けてはおれぬのである。こう、なでなでされるのは吾輩がベテランなのである。さあ、さとりよもっと撫でるのである。

 

「……あなたたち何をしているのかしら?」

「お姉ちゃん。なんだかねむたくなってきちゃった」

「……こいし。眠るならベッドに行きなさい」

「ぐう」

「こいし!?」

 

 吾輩も眠たくなってきてしまったのである。これはりらっくしているからに違いないのである。いやまだ眠ってはおれぬ。せっかく心の読めるさとりと知り合うことができたのである、こみゅにけーしょんを巫女と取るにはどうすればいいのであろうか。

 

「まったく。この子は。でもちょうどよいかもしれないわ」

 

 さとりが吾輩を抱き上げてテーブルの上に乗せたのである。吾輩は今テーブルに腰かけているのである。まるで人のようであるな。なんだかうれしいのである。

 さとりが吾輩を両手で持ったまま、じいとみてくるのである。そんなに見つめられても吾輩はやぶさかではないのである。いや、もしかしたらこれはにらめっこやもしれぬ。吾輩も負けずにさとりを見返したのである。じい。

 

「くす」

 

 おお、笑ったのである。にらめっこは吾輩の勝ちであるな。

 

「いつからにらめっこになったのかしら?」

 

 そういえばそうである。吾輩ははやとちりしてしまったのかもしれぬ。恥ずかしいのである。

 

「なんで巫女なんかとコミュニケーションなんて取りたいのかしら?」

 

 うむ。それは説明すると深いわけがあるのである。話せば長くなってしまうかもしれぬのだ。……ううむ、まずどこから話せばいいのであろうか、そうである! 吾輩は巫女と仲良くなりたいのである。

 おお、説明が終わってしまった。

 

「なるほど」

 

 さとりはこいしの頭を両ひざの上にのせてなでなでしているのである。吾輩はテーブルの上でそれを見ながらうらやましいなどとおもって……はおらぬ。吾輩は紳士であるからして、お膝の上はこいしに譲るのである。

 

 にゃあー

 でもまあ、あとでもう一度お膝の上にのせてくれても吾輩は一向にかまわぬ。ちらり、ちらり。さとりは知らんぷりしているのである。いや、口元が笑っているのを吾輩は見逃してはおらぬ!

 

「ふふ、ごめんなさい」

 

 いいのである。吾輩は寛大に許すのである。吾輩のこころは山よりも海よりも大きいのである。……頭の中で山よりも大きなこころが暴れているのである。おそろしいのである。

 吾輩は海は見たことないのである。

 さとりは吾輩を見てきたのである。こいしは「おねえちゃんだいすき」と言っているのである、寝言であろうか。吾輩も寝言を言っているのかもしれぬ、しかし吾輩は吾輩の寝言を聞いたことはないのである。

 さとりは自分の寝言を聞いたことはあるのであろうか?

 

「ないわ」

 

 ふむ。吾輩もないのである。

 

「あなたはここで暮らす気はないかしら?」

 

 吾輩にとってはお天道様のしたはみんな吾輩のお庭なのである。

 

「そう、それでも地上に戻っても巫女とおしゃべりは難しいと思うけれど。ここならいっぱい仲間もいるわ。こいしもあなたが気に入っているようだし」

 

 ううむ。やはり巫女とのおしゃべりは難しいのであるか、吾輩はとても残念なのである。それでも吾輩は上に帰るのである。巫女が心配するやもしれぬ……。

 

「ずいぶんと巫女のことが好きなのね」

 

 吾輩は誰でも好きなのである。

 ふともこがさももみじもようむもこいしも、多すぎて全部は言えぬ。吾輩はみんな好きなのである。おお、さとりのこともちゃんと好きであるからして安心するのである。

 さとりが目をぱちぱちさせているのである。なにかあったのであろうか、

 

「そう、それはどうも」

 

 さとりはこいしを撫でる手を止めて紅茶のかっぷを口元にもっていったのである。吾輩は紅茶を飲んでいるさとりを驚かせたらどうなるであろうかと、体がうずうずしているのである。

 さとりがせき込んでいるのである。大丈夫であろうか。

 

「げほ、げほ、や、やめなさい」

 

 まだ何もしておらぬのである。いや、しようとしたわけではないのであるが。なんとなく考えてしまったのである。

 吾輩はテーブルの上にしゃがんでみるのである。なかなかいい場所であるな。いつもは神社の屋根に上ってのんびりしていることもあるのであるがこのくらいの高さもいいやもしれぬ。

 神社に一つ置いてくれぬであろうか。

 

「あの巫女はそうはしないでしょうね」

 

 さとりは巫女と知り合いなのであろうか、吾輩は気になるのである。

 

「知り合いというほどではないわ。通り魔みたいなものね」

 

 とおりまーであるな。おいしいあれであるな。すまぬ。本当はよく知らぬ。まあ、詳しくは知らぬがきっと巫女のいいところであろう。さとりよどういう意味か教えてほしいのである。吾輩はにゃあと真摯にお願いしたのである。

 

「…………………」

 

 さとりも知らぬのであろうか。なかなか口を開かぬ。

 

「と、とおりまーというのは、そうね。えっと。その」

 

 さとりよ頑張るのである。吾輩はしっかりときいているのである。巫女のいいところを教えてほしいのである。吾輩は真剣に耳をぴくぴくさせるのである。

 

「道行く人たちにコミュニケーションを仕掛ける人のことよ……」

 

 なるほど、吾輩はまたひとつ賢くなったのである。確かに巫女と一緒にいるといろんな人に会うことがある気がするのである。もしかしたらみんな巫女のことが好きなのやもしれぬ。

 こみゅにけーしょんは大切なのである。吾輩も道行く人に挨拶を欠かさぬのである。

 

「……ごめんなさい」

 

 なんでさとりが謝るのであろうか。吾輩は不思議で首をかしげてしまったのである。吾輩はいいことを教えてくれたさとりに感謝しているのである。今はセミの抜け殻を持ってはおらぬが今度持ってくるのである。

 

 さとりよどこを向いているのであろうか。

 吾輩はさとりの見ている方向を一緒に見たのだ。何もないのである。吾輩はさとりが何を見ているかわからずに、にゃあと聞いてみたのであるが、さとりはこちらを振り向いてはくれぬ。

 

 まあいいのである。

 そういえばこがさたちはどうしているのであろうか、そろそろ吾輩も戻らないと心配しているやもしれぬ。そう思って、吾輩はテーブルからとっと、ジャンプしたのである。着地はこう肉球をうまく使わねばならぬ。これにはコツがいるのだ。

 しゅた。吾輩は胸を張った。

 吾輩はさとりを振り向いたのである。こいしはまだ寝ているのであるな、今度また一緒に遊ぶのである。

 

「もういくの?」

 

 楽しかったのである。また来るのである。

 

「また? また来られるつもりなのかしら?」

 

 大丈夫である。吾輩はちゃんとさとりのことを覚えているのである。地底も吾輩の庭のようなものであるから、ちゃんと会いに来るのである。

 一度会ったらともだちなのである。今度はおいかけっこをしてもいいかもしれぬ。それでも吾輩が一度神社に帰らないと巫女が心配するのである。一言にゃあと言っておくのである。

 

「あの暴力巫女のどこがいいのかわからないわ」

 

 さとりが手に大きな目玉のようなものを持ったのである。さとりの服の飾りなのであろうか。お洋服に目玉をつけるとは吾輩はさとりとこいししか見たことがないのである。

 

「これは個人的な興味でしかないわ」

 

 目玉がぴかっと光ったのである!

 

「少しだけ読ませてもらうわ」

 

 

 




わがはいには明日も明後日も楽しい日がつづくと、思っているのである

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