わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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おだんごはちていにつづいて


おだんごのあじはどんなものであろう

 吾輩は人里にやってきたのである

 ここはいつ来ても人が多いところなのであるな、吾輩はがらがらと車輪を回して大きな車が横を通るのを見ながらとてとて歩いているところだ。それにしてもだいはちぐるまはすごいのである。いろんなものが載せることができて吾輩もちょっと乗せてもらえぬだろうか?

 車には上に多くのお米をいれた俵が乗っているのである。これを引いているおじさんは吾輩もたまに遊びに行く八百屋のおじさんであるな、頑張るのである。

 吾輩は砂埃が目に入らぬように路地に入っていくのだ。

 ここは涼しいのである。陰になっていて地面すらもひんやりしておるではないか。そこで吾輩ははっとしたのである。気になってあたりをきょろきょろ、にゃあにゃあと鳴いてみるのだ。

 ふとは、おらぬようであるな。

なんだかこう、じめじめとした場所でよく会うから警戒してしまったところだ。だが、勘違いしてほしくはない。吾輩はふとを慕ってはおらぬがなかなかに気に入っているのである。

 よいしょ。吾輩はそこで腰を、いや体を下したのである。おおう、やはり地面がひんやりしていて吾輩大好きなのである。足をなめてまっさーじするにはいい場所であるな。

 

 それはそうと今日はどこにあそび……いやいや、伺いに行こう。

 りんのすけのところでもよいし、巫女のところはこの頃入り浸っているところである。うううむ悩むのである。こういう時に誰かとこみゅにけーしょんが取れればいいのであるが……お寺でもいい……とそこで吾輩は名案を思い付いたのである。

 

 りんのすけと巫女を誘ってお寺に遊びに行くのはどうであろう。

 それであればみんな楽しいかもしれぬ。あと、ついでにふとも見かけたら誘うところだ。こうなっては善は急げというのである。ちゃんと体中をまっさーじしてから向かうのだ。

 ぺろぺろ、はむはむ。

 忙しいのである。あと首のあたりも掻いておこう、あとではかけぬかもしれぬ。

 吾輩はじんそくに準備を整えるとすっくりと立ち上がったのである。ちゃんと毛並みが整っているかその場で回って確かめるにゅうねんさが大切なのである! おお、このあたりがまだ、なむなむ。

 

 なむなむというと、お経のようである。そういえばあの猫舌のジョーはどうしているのであろうか。

 

「なんだとー!」

 うむ? どこかでけんかの声がするのである。初めて聞いた声であるな。

 

「そんなふうに鈴瑚(りんご) がいうからお客さんに仲悪いって言われるんじゃない!」

 

 いかぬ。どこかでリンゴにけんかを売っている者がいるのである。声の主よ、リンゴはあれである。しゃべれぬし吾輩ともこみゅにけーしょんが取れぬ。勘弁してやるのだ。つい最近リンゴ飴にお世話になった吾輩としては見過ごせぬ。

 吾輩は忙しい体を起こして喧嘩の仲裁に向かうのである!

 

 

「そうやってみたらし団子だとか黒ゴマだとか、団子本来の味に自信がないから清蘭はダメなのよー。売り上げはうちの方が上だしねー」

 

 吾輩が駆け付けると二人の少女が喧嘩をしていたのである。

 片方は声の主であるな。青い髪で頭にウサギの……耳を生やしているのである。おお、驚きなのである。せいらんというのであるか、えぷろんをつけてお団子を持っているのだ。

 もう片方はさきほどくろごまだとかみたらしだとか言っていた方である。頭にウサギの……お揃いであるな。ただ髪が金髪で短いのだ。あと妙な帽子をかぶっているのである。

ところで喧嘩に巻き込まれたリンゴはどこにいるのであろう。吾輩がころころしてこの場から逃がさなければならぬ。

おらぬ。もしかすれば走って逃げられるリンゴであったのかもしれぬ。吾輩も少し見たかったのである。

 どうやらこの二人はお団子やのようであるな。道端に幟(のぼり) を立てて商売をしているのであろう。それぞれ「清蘭屋」と「鈴瑚屋」であるか……よめぬ。なんと書いてあるのであろう。

 

「鈴瑚なんて三色団子なんて地味なやつじゃん」

 

 うむ? リンゴ? どこにいるのであろう。空にはお天道様しかおらぬ。おおーい、お天道様は知らぬであろうか。駄目であるな、聞こえておらぬ。

 吾輩はお天道様に聞くことをあきらめてせいらんを見ると、金髪と近い距離でにらみ合っているのである。少し怖いのであるな。

 

「三色団子の良さがわからない清蘭なんかにお団子を売ってほしくなんてないわ!」

 

 金髪の手には串にささったお団子があるのだ。上から三色、桜色に吾輩のおなかのような白に、ようむの服のような緑であるな。つやつやしてておいしそうである。吾輩はお団子は食べたことはない、一つくれぬであろうか?

 

「このお団子を作るために地上の人間にどれだけ頭を下げて材料を手に入れたか! 朝早くからヨモギを取りに行ったり……うんぬんかんぬん…………………」

 

 金髪が早口でしゃべっているのであるが、吾輩はとてもじゃないのであるが聞き取れぬ。せいらんもたじたじで涙目であるな。それにしても金髪がウサギ耳をフリフリしながらしゃべっているのは新鮮であるな。こう耳を振りながらしゃべるものはそうはおらぬ。

 しかし、目が血走っているのはいただけぬ。お団子とは奥が深いのかもしれぬ。

 吾輩はふと、自分の耳を見ようとしたのであるがどうにも見えぬ。耳を動かしてどうにかしてみようとその場をくるくる動いてみるのであるが、おお視界の端で動いているのである。

 

「う、うっさいなあ。鈴瑚のばーか」

 

 むむもしやリンゴとは金髪のことであったか、吾輩不覚であったのである。ただ、吾輩は頭にウサギ耳をしたリンゴがようかいであることはちゃんと見抜いていたのである。おそらくウサギとリンゴのようかいであろう。

りんごはせいらんに「ばか」と言われて思わず三色団子をもぐもぐしているのである。吾輩もほしいのである。

 しかしせいらんよ、ばかとはいかぬ。悪口を言ってはいけないとけいねも言っておったのである。吾輩は紳士であるからしてせいらんに「にゃあ」と注意してやるのである。

 

「な、なにこの猫」

 

 ぱちくりしながらせいらんが見下ろしてくるのである。しかしすぐにりんごに向き直りつつ、吾輩を指さしたのである。

 

「じゃ、じゃあこの猫にお団子で釣って食べたほうのお団子が魅力的じゃない!?」 

 

 吾輩にもお団子をくれるのであろうか? 大歓迎である。

 りんごももぐもぐごっくんしてから、串を口にくわえながら返したのである。

 

「ほほむところよ」

 

 りんごよ。口の中のものをきれいに食べてからしゃべるといいのである。

 

 

「ほーらほら、あまいよー。おいしーよー。みたらしだんごだよー」

 

 吾輩の前に二人の少女がしゃがんでいるのである。

 せいらんが吾輩の目の前でとろとろで甘い匂いのするもののかかった団子を左右に振るのだ。吾輩は無意識に目で追っているのである。

 

「もぐもぐ」

 

 りんごは片手でお団子を自分でたべつつ、吾輩にもう一つ三色団子を差し出してくるのである。これがじつえんはんばいというやつであるな。ううむ、しょうばいじょうず。

 

 なやむところである。吾輩はどちらかを選べといわれると迷ってしまうのである。ううむ、うううむ。せいらんとりんごの目がいがいと必死でこわい。

 

「待ちなさい」

 

 おおう? せいらんとりんごとわがはいが声のした方を見たのだ。

 

「猫に甘いものは毒よ。その勝負は私が判定してあげるわ」

 

 道の真ん中に編み傘をかぶった薬売りが立っていたのである。

 長い紫の髪がさらさら風にゆれているのはきれいであるな。一体だれなのであろう。

 

 

 


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