わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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注意:書籍ネタがあります


おはなしはたのしいものである

 

「――それでは本日はお集り頂き有難うございます」

 

 鈴の少女が皆の前で挨拶をしたのである。

 

「それでは納涼祭のメインイベントの百物語を」

 

 吾輩はようむの手の中で周りを見渡すことにするのである。

あの頭に鈴をつけた少女が以前に吾輩がねこじゃらしで遊んでやったことがあるのであるな。たしかあの日は良い日差しの日であった。

 今日はちょっと曇り気味ではあるが、お月様が偶に顔を出してくれるいい日である。

 今から「百物語」とやらを始めるらしいのであるが、大勢集まって車座になるのはこう、よい事であるな。皆で一か所にあつまるとこう、なんというか落ち着くのである。

 周りを見渡せば巫女にまりさもいるのである。あとは、頭に蛇を巻いた変な奴がいるのである。恰好は巫女に似ているのであるが、髪が緑色であるな。あとは、さくやであるな……この間は大変な目に会ったのであるから、そっとしておくのである。それとそのれみりあもいるのである。

おお、あれは浴衣を着たゆかりであるな。こっちに手を振っているのである。吾輩も挨拶をしたいところであるが、身動きが取れぬ。

 

「うう、うううう」

 

 ようむが吾輩をしっかりと抱いているのである。痛いのである。吾輩は抗議の意味を兼ねてようむの手を嘗めたのである。

 

「ひゃ、ひゃあ!! お、おばけゆゆこさま」

 

 びくっ。

 びっくりしたのである。そこまで驚かなくてもいいのである。みんなこっちを見ているのである。

 

「はいはい。おばけのゆゆこさまですよ」

 

 となりでゆゆこも何か言っているのである。おばけとはあれであるな、こがさのようながんばりやさんのことを言うのであろう。ということはゆゆこもがんばりやさんなのである。ようむもそうであろうか。

 

「はっはっは。始まる前からにぎやかじゃの」

 

 おお、にぎやかなのはいいことなのである。吾輩がそれを言ったものに首をぴんとあげて、顔を向けたのである。頭に葉っぱをつけた女子であるな。手にはきせるを持っているのである。あれはいかぬ、きせるを持った人間はこう、匂いがあるのである。

 それにしてもきょうはあれであるな、頭に葉っぱを載せていたり蛇を巻いていたりと妙な格好が多いのである。吾輩も何か頭に付けた方がいいのであろうか……。

 

 なぁご、なあお

 

 吾輩は心配になってようむに聞いてみたのであるが、ようむは青ざめた顔で正面を見て動かぬ、吾輩はそのほっぺたを軽くたたいてみたのであるが、ううむ反応がない。まるでしかばねのようであるな。

 

「ご主人様はどうやら集中しているようじゃの」

 

 後ろを見れば葉っぱを頭にした女子がいるのである。なんであろうか、何故か狸を思いだすのである。訳が分からぬ。

 

 

 ううむ。百物語とはあれであるな、一人一人が何かを話して蝋燭を消していく遊びのようである。さっきから深夜の街をお面をして歩いていた人がいた話など、中々に面白い話があるのである。

 吾輩もお面をかぶってみたいものである。うむ……そういえばこころはどこに行ったのであろうか。

 

「ひぃい!!」

 

 びくっ! 

 話が終わるたびにようむが吾輩の耳元で叫びのである。それがとてもこわい。

 ようむよ、吾輩がちゃんとついているのであるからして、いきなり叫ぶのをやめてほしいのである。

 

「あら、猫さんも怖いのかしら」

 

 ゆゆこよ、違うのである。ようむが締め付けるから声が出るのである。

 吾輩はは吾輩の名誉の為ににゃあにゃあとちゃんとじじょうを説明したのであるが、ゆゆこはちゃんとニコニコしながら聞いてくれたのである。

 

「お腹減ったのかしら?」

 

 ……。吾輩の意図が伝わってはおらぬ。

 まあいいのである。吾輩はさっきから叫び続けているようむの口に肉球を当ててみるのである。ようむは吾輩の前足を手で持って口元から外したのであるな、なんでここだけ冷静になっているのであろう。

 

 

 それにしても面白いものであるな。あの葉っぱの頭のおなごもかーなびとやらの話をしてくれたのである。ううむ、ゆかりもなかなか面白いことを言っているのである。

 吾輩はひとの話を聞くのが大好きである。こみゅにけーしょんは取れぬが、こう寝そべって何かを聞いているのはいつでも楽しいものであるな。

 

「退屈なのかしら」

 

 ゆゆこよ違うのである。吾輩は楽しいのである。そもそもようむがいつ叫びだすかが気がかりで全く気が抜けないのである。

 

「ひぃい!」

 

 びくっ!

 いうそばからこれであるな。ゆゆこが吾輩にしゃべりかけてきたから身構えておけなかったのである。間違いなく今日一番吾輩を驚かせているのはようむではないだろうか。

 また吾輩はようむにぎゅうと抱きしめられるである。

 にゃあ……くるしいのである。もう少し弱めに抱いてくれればいいのであるが、吾輩は紳士なのである。怖がっている少女に対して無下にすることはできぬ。そもそもようむをみればあれである、ほっぺたを赤くしているのである。

 なあご、んなーお。

 吾輩は腕が緩んだすきにほっぺたを嘗めてやるのである。まあ、安心するのである。あれだ、悪いおばけがでてきても吾輩には恐るるに足らぬ。こうぱんちでげきたいしてやるところである。

 

「…………くすぐったいわ」

 

 ようむが吾輩の脇を持って体から離してきたのである。よかったのであるな、思いのほかほっぺたが柔らかくて噛んでしまいそうになっていたところである。

 

 目の前のさくやの顔があるのである。わ、笑っているのである。

 ふぎゃあ、にゃああ!?? 

 ようむがいきなりさくやになってたのである。吾輩は思わずさくやのほっぺたにぱんちをしてみたのである。

 

「ふえっ!」

 

 ようむのほっぺたにぱんちが当たってしまったのである。

 ????? いきなりさくやが出てきて、いきなりようむに変わったのである。わ、わけわからぬ。お、怒るでない。いまのはふかこーりょくというやつである。吾輩は急いでさくやを振り返ったのである。

 

「ところでお嬢様。諸葛草を召し上がられますか?」

「なんでいきなり野草を食べないといけないのかしら。咲夜」

 

 れみりあと何かしゃべっているのである。むむ、さくやがちらっとこっちをみて片目を閉じて舌を出したのである。やはり犯人はさくやなのである! ようむよ、はんにんはあっちなのである。いや、刀を抜こうとするのを止めるのである。

 

 こ、ここは一時退却なのである。百物語を全て聞けぬのは残念であるが、斬られてはたまらぬ。吾輩は脱兎のごとく飛び出したのである。吾輩はやぐらに足を掛けて、ぱあっと空にジャンプしたのである。

 意外に高いのである。後ろから巫女の声が聞こえる気がするのである。吾輩は空中でくるり、にゃあおと皆に挨拶をしておくのである。紳士は常にれいぎただしくあらねばならぬのである。巫女が吾輩に手を伸ばしているのである、何をしているのであろう。

 

 吾輩はくるくると回転してから、地面にすたりと着地したのである。

 やぐらの上から拍手が聞こえてくるのである。照れるのである。

 それでも吾輩はやぐらの上に戻る気はないのである。ようむとは今度お昼寝でもするとしよう。そうだ、こころを探さねばならぬ。そろそろ泣いているのかもしれぬな。そう思って吾輩は駆けだしていくのである。

 

 ごちん。

 いたいのである。吾輩は誰かにぶつかってしまったのである。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 吾輩が見上げると浴衣を着た女性がいたのである。お月様がちょうど出ているからして、げっこうを背に吾輩に手を伸ばしてくるのである。緑の髪は右側だけ長いのである。

 


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