わがはいは、わがはいである   作:ほりぃー

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じゆうきままにいきるのである

 吾輩は今日がご機嫌なのである。昨日は巫女にあらぬ疑いを掛けられたのであるが、ゆかりの膝でよく眠れたのである。

 

 吾輩はどんなことでも一度眠ればよい思い出になるのである。

 それに今日は一つ楽しみがあるのである。この幻想郷は吾輩の庭のようなものであるからして、どこに行けばまたたびをよく取れるかを吾輩以上に知っている者はおらぬ。

 

 気が向いたから、吾輩は森の中に入ってまたたびを楽しみに行くのである。

 吾輩は草むらを抜けて、剥き出しになった木の根っこを飛び跳ねながら進むのだ。

 またたびはたまには巫女にも分けてやらねばならぬと思いつつも、吾輩がまたたびを咥えて持っていくわけにはいかぬ。途中で転んでしまうのだ。仕方ないであろう。良い気持ちになってしまうのだ。

 

 それでも吾輩は反省している。これではいかぬとおもいつつも、まだ吾輩にはとんと妙案が浮かばぬ。

 巫女にまたたびをやったことはないのであるが、おそらく好きであろう。いや、嫌いな物がおるのであろうか。吾輩はその場で考え込んでみたのである。

 

 みんなまたたびは好きであろう。うむ。

 

 ちゃんとけつろんをだしてから、吾輩は前に進むのである。それにしても今日もきょうとてよい日である。

 温かい日はいつもよいである。いや、雨の日もよい日であるし雪の日は……よい日である。しかし、雷はいかぬ。あのばこんという音が吾輩は苦手である。偶には手加減してくれも罰は当たらぬと思っているのである。

 

 そういえば、昨日神社から帰る途中に妙な猫と会ったのである。

 頭に緑色の帽子を被った、黒猫であった。片耳にイヤリングをしているお洒落な猫である。

 お月様もちょっとだけ顔をだした日であったから、顔はよく覚えておらぬ。ただ、尻尾が二股に分かれていたのである。吾輩は痛くないであろうかと気遣ったのであるが、大丈夫とのことであった。

 吾輩それで安心してから、みゃあとちゃんと挨拶をしてそばを抜けていこうとしたのである。ただその猫は吾輩に妙なことを言ってきたのである。

 

 遠くの山の奥に猫の楽園があるというのである。

 そこでは「ちぇん」なるぼすがいて、食べ物もまたたびもいっぱいくれるというではないか。その猫が言うには「ちぇん」は猫たちに慕われているというのであるが、今なら楽園に迎えてくれるというのである。むしろ「ちぇん」に従うならゆうぐうしてくれるというのである。

 

 吾輩は興味ないのである。

 その二股尻尾の猫には悪いのであるが吾輩は自由気ままに生きていたいのである。それに楽園などに行かなくとも、吾輩は神社やら寺やら人里やらに出入りしているのである。

 

 中々に毎日が楽しいのである。

 そういって断るとその猫は、それでも楽しいことはいっぱいあるのだとにゃあにゃあいうから、吾輩も悪い気が深まってしまったのだ。

 せんざいもつけるというのであるが、なんのことかわからぬ。

 こんなに熱心に誘ってくれても吾輩は応えることが出来ぬ。そこで吾輩はその猫に「またたびのいっぱい取れる場所」をこっそり教えてあげたのである。

 

 その猫は眼をぱちくりさせから喜んでいたのである。

 

 ★

 

 あの猫は元気であろうか、ぜんいで吾輩を楽園に誘ってくれたのであろうから、吾輩もついつい秘密の場所を教えてしまったのである。

 まあ、吾輩もまたたびを独り占めはできぬ。ちゃんと教えてあげることが紳士なのである。

 おお、そろそろ秘密の場所につくはずである。吾輩は背の高い草を押しのけながら、途中で休みつつ、毛づくろいしつつ迅速に行動をするのである。

 

 開けた場所に出たのである。このあたりはまたたびがいっぱい取れるのである。

 木になっているまたたびは、吾輩が空を見上げればいっぱい……

 

 ないのである。

 

 なぜであろうか、吾輩にはわからぬ。あたりを走り回ってみても全くないのである。

 かりかり。

 はっ、気が動転して木で爪とぎをしていたのである。こんなことをしている場合ではない。

 吾輩はその場でぐるぐる回りながら、なんでまたたびが一つもないのかを考えているのである。もう一度上を見てみると、またたびのなっている木の枝に葉っぱもかなりむしられているのである。

 

 うーむ。これはいかぬ。どろぼうである。

 二日連続でどろぼうと会うとは思わなかったのである。

 吾輩はだれが犯人かを考えながら、その場でぐるぐるぐると回ってみるのである。すると視界の端っこに黒い影が見えるではないか!

 

 吾輩はすぐさまそれを追っていくのである。その場をくるくる回っても追いつけぬ。中々逃げ足の速いやつである。犯人に違いあるまい!!

 

 かぶり、吾輩はかみついた。はみはみするのである。まいったか!

 ……これは吾輩の尻尾ではないか。ぐるぐる回っていて気が付かなかったのである。

 

 吾輩は恥ずかしくてあたりを見回してみるのである。背筋を伸ばして、首を回してみるのだ。すると近くの茂みががさりと動いたのである。吾輩はそれに素早く反応したのである。

 

 しっぷうのように茂みに突撃する吾輩。がさりと入り込むと、がつんと頭に何かが当たったのである。

 

「わ、わっ、いたぁ」

 

 どしん、ばたん。ぐちゃ。何か音がしたのである。

 見ればひとりの少女がうつ伏せで倒れているのである。あたりに葉っぱが舞い散っている。これはまたたびの葉っぱではないか。

 少女は赤い服を来て、お尻から二股の尻尾の飾りを付けている、ううむこの程度の変装で猫に成りすます気であるな。それに胸元でつぶれているのはまたたびの実である。胸でつぶしたのか、あたりに匂いがするのである。

 

 うにゃあ。

 は、いかぬ。木をしっかり持つのだ吾輩。いや木の枝を何故噛んでいるのだ吾輩。気をしっかりもつのだ。

 吾輩は少女のお尻から背中に上りにゃあと抗議するのである。茶色の髪をパンチしてみるのである。頭に被っている帽子は昨日の猫と同じようなものであるな。

 

 ともかく観念するのである。

 

「……にゃあん、ごろにゃあぁん」

 

 少女は赤い顔でごろごろもぞもぞしながら、何か唸っているのである。……またたびを潰したときに酔ったのではないであろうか。

 

「うにゃあ」

「ごろごろ」

 

 なんであろうか。もはや話が通じぬくらいにまたたびに酔っているのである。

 吾輩が一度パンチしても、意味がないのである。しっかりするのである。吾輩はこの少女の気付けに舐めてみるのである。

 

「……!……」

 

 なんだかびくびく痙攣するだけで変わらぬ。

 

「……ぐす、ぐす」

 

 な、なんで泣くのであるか。どこか痛いのであるか、吾輩心配なのである!

 吾輩は降りて少女の顔をのぞきに行ったのである。頭におおきな耳があるのである。それよりも大粒の涙を流すのはなぜであろうか。

 

 にゃあご。

 吾輩は聞いてみるのであるが、通じぬ。少女は誰に言うでもなくぼそぼそなにかを言っているのだ。

 

「いうこと……きいてよ、もうまたたび……ないけど」

 

 何を言っているのであろうか。と吾輩は思ったときに思い出したのである。昨日の猫の言葉を。

 もしかしてこやつ「ちぇん」ではないであろうか。

 楽園のまたたびやご飯を一人で用意しているというのであるから、それはそれは毎日大変なのであろう。

 

「らんしゃまぁ」

 

 うなされておるのである。きっと「らんしゃま」は楽園の猫の一匹であろう。

 うむ、わかったのである。……吾輩は寛大な心で全てを許すのである。またたびを持っていくがよいのである。

 そう思って、吾輩はおそらく「ちぇん」の少女に肉球を当ててみるのである。

 

「がぶっ」

 

 噛まれたのである!

 

 

 

 




数日前にデリートされた物語でした。

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