卯ノ花さん護衛します!   作:杉山杉崎杉田

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6日目

 

夜中。俺は真っ黒な服に目以外のすべての身体を包んで、二番隊の中に紛れ込んでいた。

 

「では、これより大虚の捜索を開始する」

 

砕蜂隊長の支持によって、二番隊の5人+四番隊1人は森の中で捜索を開始した。

 

「おい、水上。遅れるなよ」

 

「へーへー」

 

「ちゃんと返事をせんか貴様‼︎」

 

面倒くせえなぁ、クソ真面目貧乳女が。

 

 

そもそも、なんで俺がこの中にいるか。それは、卯ノ花隊長の気まぐれの所為だ。役割は違うとはいえ、四番隊なら応急処置の一つくらい出来るようになれ、との事で、応急処置を教わった俺に卯ノ花隊長が任務を言い渡したのだった。

 

「あ?二番隊と?」

 

「はい。あなた方がこの前倒した大虚が他にもいた場合の為、隠密機動隊の方々が出ることになりました」

 

「で、なんで俺なんすか」

 

「この前の調査の時にいて、尚且つ隠密機動隊の速さについて行けるのはあなただけでしょう。そういうわけなので、お願いします」

 

「………さては、ついでに回復役としても使えるようにするために俺に応急処置を教えやがりましたね?」

 

「その通りです」

 

こ、この野郎……。

 

「やーだー!隠密機動の隊長ってあの貧乳だろ⁉︎守ってあげたくなるタイプじゃねぇしやる気出ねえっすよ‼︎」

 

「だそうですよ?砕蜂隊長」

 

「へっ?」

 

卯ノ花隊長が俺の後ろに向かって言うので、つられて振り返ると砕蜂隊長がものっそい形相で俺を睨んでいた。

 

「あっ」

 

「貴様が応急処置を真っ先にしなければならない相手を教えてやろう」

 

そう言うと、砕蜂隊長は指をコキコキと鳴らし始めた。

 

「貴様だ」

 

 

で、気絶させられて起きたら森の中である。流石、隠密機動、人を拉致することに長けてやがる。

 

「おう、テメエが水上か?」

 

「あ?」

 

「俺は大前田ってんだ。お前とは気が合いそうだ、よろしくな」

 

「え、俺とお前に共通点があるの?どの辺?」

 

「隊長の愚痴」

 

「友達になろうか」

 

剥き出しの悪意を引っ込めて握手を求め、大前田がそれに応じようとした。

 

「そこのバカ二匹、後で覚えてろよ」

 

慌てて手を引っ込めた。

移動する事しばらく、目的地に到着し、俺たちは立ち止まった。

 

「二組に分けて捜索する。絶対一人にはなるなよ」

 

『了解』

 

「では、二組にわけるが……」

 

うーん……真面目な雰囲気だな。何となくつまらん。遊びを入れよう。

 

「おーい、そいそい隊長」

 

「砕蜂隊長だ。……なんだ?」

 

「せっかくだからグーパーで決めません?」

 

「水上、貴様ここに何しに来た?遊び気分か?」

 

「お、いいなそれ」

 

「せっかくだしな」

 

「たまにはそういう運要素があってもいいよな」

 

「おい、貴様ら。話を聞け」

 

「砕蜂隊長、やらないんすか?やらない人はボッチっすよ?」

 

「二人一組と言ってるだろう‼︎やる‼︎」

 

やだこの人、少し可愛いんだけど。

そんなわけで、グーパーをした。

 

 

結果、俺、大前田、砕蜂隊長の3人組になった。

作戦時間は30分。この辺一帯を徘徊したあと、何もなければ別のポイントへ移動する、ということだ。ちなみに、別のポイントで捜索を開始するときはチームグーパーをする事は言うまでもない。

二手に分かれ、捜索開始。

 

「まったく、なぜ私が貴様らなどと……!」

 

「いいよな、お前んとこの隊長は色気があって」

 

「ああ、お前んとこの隊長はど貧相だもんな」

 

「嫌なヤツらが仲良くなりおって、これだから男は……」

 

「ど貧相とか言ってやるなよ、あれでも女の子だぜ?」

 

「いやいや、だってぶっちゃけお前の方がおっぱい大きいじゃん」

 

「せめてどちらか一人なら良かったものを……!」

 

「やめてやれよ。女性と男の胸囲を比べてやるなよ」

 

「事実だからしゃーないだろ。つか何、じゃあお前は仮に彼女ができるとして、あんな大胸筋以下の胸でいいのか?」

 

「ッ……と、特に水上など斬魄刀すら持っていないとか、戦力になるのか疑問だな」

 

「絶対嫌だ」

 

「だろ?あんな胸で喜ぶのは一部のマニアかロリコンだけだっつの」

 

「………お、大前田もだ。あんな隠密機動に一番似合わない体型の男と一緒か私はついてないな!」

 

「かぁ〜!そう思うと四番隊のお前が羨ましいぜ!」

 

「だべ?………まぁ、あの人意外とクソドSなんだけどな」

 

「………皮肉が聞こえていないのか?それとも自分に都合の悪い言葉は聞こえないようになってるのか?男の癖に情けない奴らだ」

 

「そういや一時期、あの人と付き合ってるみたいな噂あったけど、アレは?」

 

「ねぇよ、ねぇ。ありゃ虎徹さんと雛森さんが蒔いたデマだ」

 

「お、おい。聞こえてるんだろ本当は?それとも本当に聞こえてないのか?」

 

「だよなぁ、そもそも卯ノ花隊長って恋愛とか興味無さそうだし」

 

「それな。だから難攻不落の要塞じみてんだよなぁ……。まぁ、俺は諦めないけど」

 

「き、きこえてるんだろ!なんだ?言い負かされるのが怖いのか?わかった、今なら何言っても暴力では訴えないから!」

 

「なに、お前卯ノ花隊長好きなん?」

 

「そりゃあもうね、一目惚れだよ一目惚れ。着物の上からでもわかる巨乳、優しそうな表情ながらも凛とした顔、というか可愛いタレ目、両サイドから垂らした髪で結った三つ編み、大人の女性を絵に描いたような大人の女性だろ?」

 

「ねぇ!反応しろ!無視って一番酷いんだぞ‼︎」

 

「外見だけじゃねぇか」

 

「バッカ野郎‼︎中身も可愛いんだぞ、あの人甘い物が好きみたいなんだけど、お饅頭を両手で持ってはぐはぐ頬張ってるところがハムスターみたいで可愛」

 

「………返事、してよぅ」

 

グスッ、としゃくりあげた声が聞こえたので、大前田と二人して振り返ると、砕蜂隊長がマジ泣きしてた。

 

「………隊長を、仲間はずれに……グスッ、するなよ……」

 

「「……………」」

 

なんで泣いてんのこの人。

 

 

一通り見回りが終わり、もう一組と合流した。

次のポイントへ移動し、砕蜂の謎の独断により、今度は二人一組で移動する事になった。

どういうわけか、祐作はまたまた大前田と一緒。

だが、とにかく二人から別れたかった砕蜂としては、すごい良い気分で他の隊員と見回りに出た。

 

「あームカつく!ムカつくムカつくムカつく‼︎すっごいムカつく‼︎」

 

「あ、あのっ、砕蜂隊長……あまり大きな声を出されると、万が一大虚がまだいた時に……」

 

「五月蝿い‼︎そもそもお前はここになんのためにいる⁉︎」

 

「それは調査のため……」

 

「違う‼︎私の愚痴を聞くためだ」

 

(何言ってるんだろうこの人)

 

二番隊の男はため息をついて言った。

 

「いいからさっさと任務を終わらせましょう。総隊長に叱られますよ」

 

「お前まで私を無視するのか……?」

 

「ええー、ほんと何泣いてんのこの人……。わかりました、わかりましたよ。任務終わったらいくらでも聞いてあげますから、とにかく任務を優先しましょう」

 

「………うん、わかった」

 

(やだちょっと可愛い)

 

そんな事を話しながら歩いてると、無線機に通信が入った。

 

『た、隊長!砕蜂隊長!』

 

「! 大前田か?」

 

ただ事じゃない声に、砕蜂は表情を一瞬で変えた。

 

『大変です!水上野郎か……‼︎」

 

「水上がどうした?」

 

『ウンコか漏れそうみたいで……‼︎』

 

「知るか、死ね、漏らせと伝えろ」

 

『え?ちょっ、隊ちょ……』

 

無線機を切った。

 

「チッ、緊張感もへったくれもない奴らめ……」

 

小声で毒づいた時、またまた通信が入った。

 

「はい」

 

『誰が漏らすかよクソ貧乳‼︎死ねバーカバーカ‼︎』

 

「あ?」

 

通信が切れた。イラっとした砕蜂はすぐに無線機を入れて言い返した。

 

「貴様、本当にあとで覚えてろよこの野郎‼︎」

 

『この電話番号は、現在使われておりません』

 

「〜〜〜ッ‼︎キィーーー‼︎」

 

とうとう奇声まであげ始めた隊長に、隊員の男は3人分くらいを間を空けた。

すると、またまた無線機に通信が入った。

 

「なんだ貴様‼︎調子に乗るなよ、卯ノ花隊長に言い付けるぞ‼︎」

 

『へ?は、はぁ、別にいいっすけど……』

 

「あっ」

 

別のもう一班の男だった。

 

「いや、すまん。何かあったか?」

 

『いえ、こちら異常無し。戻ります』

 

「あ、ああ。了解した」

 

『では、失礼し』

 

直後、ガシャンという轟音と共に無線機にザーッというノイズが入る。

 

「⁉︎ おい、どうした⁉︎おい‼︎」

 

「どうかなされましたか?」

 

「二班の通信が途切れた。行くぞ」

 

「了解!」

 

「おい、三班。二班との通信が途切れた。お前らも現場へ急行しろ」

 

『この電話番号は、現在使われておりません』

 

「本当にくたばっちまえバーカ‼︎」

 

そう言って、砕蜂は無線機を握り潰した。

 

 


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