夕方。俺は暇になったので、四番隊隊舎で漫画を読んでいた。
すると、同じ部屋にいた卯ノ花隊長が立ち上がった。
「? どうしたんすか?」
「いえ、そろそろお風呂に入ろうと思いまして」
なん……だと……⁉︎卯ノ花隊長がお風呂……それはつまり、着物越しでも分かるあのオッパイの周りのアーマーがパージされるということか⁉︎
「……水上さん。考えてることがすべて顔に出てますよ」
「はっ、いっけね!」
「訂正はしないのですね……。言っておきますが、覗きなんて考えない方がいいですよ?……さもないとその両目、失う事になりますから」
「…………すいませんでした」
「はい、よろしい」
謝ると、満足そうに卯ノ花隊長はお風呂に向かった。
………甘ぇ、甘ぇよ隊長。両目失う事が怖くて覗きなんか出来るかよ‼︎
恋次に言われるまでもない。俺は、四番隊に入る事になった直後から覗きをすることを決心していた‼︎
昨日は色々あって実行出来なかったが、今日は違う。まず俺は窓から飛び上がって、屋根の上に乗った。
その後、風呂場の天井まで走り、窓から風呂場の中を覗いた。
卯ノ花隊長の姿はない。他の女性の姿も。ならチョロいな。そう思った時だ。後ろからゴガッと蹴られた気がした。
「えっ」
間抜けな声と共に落下し、顔面から地面に落下する。
「な、なんだ⁉︎」
慌てて上を見上げると、卯ノ花隊長が笑顔で立っていた。
「その両目、失うと言ったはずですよね?」
あちゃー、バレてたかー……。じゃない!ホントに目を潰されかねない‼︎
どうする、言い訳するか?いや、下手な言い訳するとマジで消されるからな……。素直に謝ったほうがいいかもしれない。
「すいませんした」
土下座した。
「謝ってもダメです。私はあらかじめ宣告しましたよね?」
「すいませんでした‼︎」
「いえ、ですから」
「卯ノ花隊長を甘く見てました‼︎」
「謝っても……え、そっち?」
「次からはバレないようにやります‼︎すいませんでした‼︎」
「まるで反省してないのですね……。覗きをしないとは言えないのですか?」
「あともう覗きしません‼︎すいませんでした‼︎」
「薄っぺらいにも程がありますよ、その謝罪」
どうしましょうか……と、言わんばかりに卯ノ花隊長は眉間にシワを寄せた。多分、どうしようもない悪ガキをどう裁こうか考えてるんだろうなあ。
「………そうですね、決めました」
「? 何を?」
「あなたが私のお風呂を覗くことが出来れば、その日は一緒にお風呂に入ってあげましょう」
「マジで⁉︎」
なんでそうなるの?とは言わないでおく。
「ただし、その前に私に阻止されれば、お仕置きです。それも、とてもキツイお仕置き」
ああ……確かにこの人のお仕置きはキツそうだ。48時間横四方固め耐久とか言われそう。……いや、0距離であの柔らかおっぱい堪能し放題って悪くないな。
「どうですか?」
「良いでしょう」
二つ返事でOKした。なにその最高のゲーム。
「で、今日はどうなるんですか?」
「うーん……今日は私、見つけちゃいましたので……」
やっぱりお仕置きか……!
20%の覚悟と80%の期待を込めて、俺はキュッと目を閉じた。
その時だ。
「卯ノ花隊長!」
第三席の虎徹さんがやって来た。随分とお急ぎの様子だ。
「どうしました?勇音」
「それが、最近起こってる夜間の虚の出現の調査において、五番隊の方々が調べる事になったのですが、以前調査に出た二番隊の方々が失踪されていることから、回復役として選ばれる事となりまして……」
「そうですか……。それでは勇音、それと水上さん。行きなさい」
さも当然、とでも言うように卯ノ花隊長は言った。
「え、なんで俺」
「良いでしょう。あなたは元々回復役の護衛、少人数で戦うのであれば、尚更あなたの力は必要になります」
「えーヤですよー。もう眠いですもん」
「なら、先ほどの罰ゲームってことで」
うわっ、それはズルいわ……。
「仕方ないスね……」
「先ほど、というのは?」
「勇音は気にしなくていいですよ?」
「そうそう。虎徹さんは気にしなくていいです」
「むっ………」
「いいから行きなさい?五番隊の方々を待たせているのでしょう?」
「はっ、そうですね。行きましょう、水上副隊長」
「あーい」
卯ノ花隊長は誤魔化すの上手いなぁ……。
感心しつつ、五番隊の人達と合流しに行った。
*
はい、なんでこうなったのでしょうか。
俺の前には五番隊の隊員が3人、そこまではいい。ただ、問題は内1人が雛森さんであることです。まだ、怒ってるのか、俺と目も合わせてくれない。
「……あの、水上副隊長」
横から虎徹さんが耳打ちして来た。
「なんすか?」
「雛森副隊長が先程からすごい形相で水上副隊長を睨んでるのですが……何したんですか?」
「人には言えないようなことだよ」
「へ……?はっ、まさか……!さ、最低です!」
勝手に顔を赤くし、俺を虫を見る目で睨んできた。
違う、違うよ。強姦なんてしてない。このムッツリすけべが。
「そこ!おしゃべりしないでください‼︎任務中ですよ‼︎」
ビシィッと八つ当たり気味に雛森さんが俺と虎徹さんに言った。
それを見て、虎徹さんは生優しい笑顔で雛森さんの頭を撫でた。
「大丈夫ですよ、私は雛森さんの味方です。あの変態副隊長をいつかやっつけましょう」
「? は、はい?」
なんか勘違いと勘違いが結び付いて共通の敵にされてしまったんですが……。
まぁいいや。男の拳に粛清されたらキレるけど、女の子の拳なら大歓迎です。
そんな緊張感もへったくれもない感じで指摘の場所へ到着。特に虚の気配は感じない。
「………」
「何も、ありませんね」
「じゃあ帰ろうぜ。もう眠いよ俺」
「ダーメ。帰るのはある程度調査をしてからです」
雛森さんは真面目で可愛いなぁ……。はっ、いかんいかん。そんな事ではまた嫌われてしまう。いやもう嫌われてるだろうけど。
「じゃ、俺と虎徹さんはここで待ってるから、五番隊の人達で見てきてよ」
「ちょっとー、シレッと仕事押し付けないでよ」
「俺たちはこの辺り探すから。それでいいだろ?」
「………」
チラッと虎徹さんを見る雛森さん。
「お任せ下さい。私が責任持って副隊長を働かせます」
「なら安心できます。じゃあ10分後にここに集まりましょうか」
「あれれー?おかしいぞー?僕、虎徹さんより立場上だよー?」
「何か見つけたら一度こちらに報告すること。では、散」
俺の言うことなどまるで無視して、五番隊の子達は辺りを探索し始めた。