俺の檻の前に、なんか変な箱を持った卯ノ花隊長が座った。微笑みながらしばらく見つめ合う俺と卯ノ花さん。
すると、卯ノ花さんが箱のボタンを押した。
「あばばばばば⁉︎なんだこれえええええええ⁉︎」
あばばばばば‼︎なんか痺れるうううううう‼︎
「実は、あなたの体に細工をさせていただきました。私がイラっとするたびに、このピカチュウボックスのボタンで10万ボルトです」
「いやネーミングセンス!ていうか何このお笑い芸人みたいな仕打ち⁉︎てか俺の顔見ただけでイラっとしたの⁉︎」
「タメ口?」
「すいませんでしたああああああああ‼︎」
「……………」
「止めてええええ!謝るからまじ止めてえええええ‼︎」
「どーしよっかな♪」
「かわいい!あんたそんなキャラじゃないだろ‼︎」
「本音を先に出すスタンスで来ましたか」
「いや分析しないでいいからああああああ‼︎」
涙ながらに懇願すると、ようやく止めてくれた。
あー……○ケット団の気持ちがすごくわかった気がする。
「では、2ndステージ♪」
「いい加減にしろ‼︎話が進まないんでマジで‼︎」
一瞬、ピリッとしたものの、すぐに収まった。
で、ようやく話が進む。
「それで、何故こんな真似し」
「ヘッキシ!……え?何?」
「……………」
「すいませんでしたああああああ‼︎タイミング悪かったですうううううう‼︎」
くそッ……電気はさっきから卑怯だろ………!
「何故って言われましても……もうその問い何度も答えてるんですが」
「私は答えてもらってません。ちなみに、下手なことは答えないほうがいいですよ。返答によっては、電気ショックしながら私が斬り捨てる、ビリビリ斬です」
「ダセェ!って嘘ですごめんなさい押さないで押さないで」
と、言われてもなぁ、藍染がどこで聞き耳立ててるか分からんし……。
「僕も気になるね」
声がした。そっちを見ると、藍染隊長が檻に閉じ込められていた。………スウェットとトレーナーを着た状態で。
「何かしら事情があるんだろ?水上くん」
「…………なんでここにいんの?」
「わからない。猥褻行為などした覚えはないのだが、『隊長の公然猥褻により逮捕する』と、言われてね」
この人はもうダメだな。
「最近、雛森くんからの視線がやけに冷たくてね。………もう何度首を吊ろうと思ったか」
この豆腐メンタルがいると、俺も下手なこと言えないな。夜一さんとか、浦原の名前は出せない。
「だから、ルキアを助けに来たんだっつの。それ以上でもそれ以下でもない」
「なんだと?」
「俺は黙って知り合いを見殺しにするような奴にはなりたかなかったから、行動に移したまでだ。………まぁ、とっ捕まったけど」
「素晴らしい!」
突然、藍染から声が聞こえた。
「確かに、仲間を大切にし、護ろうとするのは悪い事ではない」
白々しいーなコノヤロー。
「はぁ、露出m……藍染隊長、うちのバカをあまり甘やかさないで下さい」
卯ノ花さんが呆れたようにおでこに手を当てた。
「まったく、そのために尸魂界を敵に回し、色んな隊長に喧嘩を売り、総隊長の腕を掻っ攫ったとは……」
「は?腕?」
「知らないのですか?一刀火葬は片腕を犠牲にして放つ破道なんですよ?」
え、あのおっさんそんな大技俺に使ったの?バカななあいつ?足りないのは髪の毛だけじゃなく中身も?
「いや、でもあの人腕あったよ」
「忘れてたみたいです」
「忘れてた⁉︎それでペナルティーはなかったことにされんの⁉︎」
「思い出したら朽ちたそうです」
「朽ちてるのは頭だろ‼︎」
「さっきからタメ口がひどいですね。痺れたいのですか?」
「ごめんなさい」
「それに、忘れてたのは総隊長ではなく作」
「それ以上はいけない!」
*
夜中。結局、藍染がいた所為で卯ノ花さんにまともに説明できなかったなぁ。どうしたもんか……。
そんなことを考えてると、コンコンと檻にノックがきた。
「ん?誰?」
「私だ」
………白哉がいた。
「………なんすか、てか何してんだオメー」
「兄こそ貴様ここで何してる?」
「捕まったんだよ。総隊長にボコられた。それより助けてくれ」
言った直後、白哉は頷いて背負ってる巾着から何か板のようなものを取り出した。それを開いて、檻の前に置いた。その後、黒と白の駒が大量に詰められた箱を二つ取り出し、片方を俺に渡した。
「やろうか」
「ここでもオセロ⁉︎この最悪の状況の人間に勝負を挑みますか⁉︎」
「先手は兄でいいぞ」
「相変わらず人の話を聞かない奴だなテメェ。わかった、わかったよ。とりあえず、俺とルキアを連れて逃げ出してください」
「了解した」
逃げ出した。………藍染を置いて。