さて、寝床は確保したぞ。あとは雛森さんを抱き枕にして寝るだけ……と、思ったら、「んっ……」と息を漏らして雛森さんが起き上がった。
「えっ」
あ、起きちまった⁉︎まずい!また戦闘が始まっ……‼︎
「えへへ〜、お兄ちゃーん‼︎」
「ええええええ⁉︎」
抱きついて来た。
「お兄ちゃーん、えへへー♪」
「ええっ⁉︎な、何これどういうプレイ⁉︎一時間いくら⁉︎」
「何言ってるの?桃はお兄ちゃんの妹だよ?」
「妹⁉︎」
「えへへー、お兄ちゃん。遊ぼ?」
「いやいやいや、待て待て待て!一体全体これはどういう……!」
そこで、ハッとした。確か、雛森さんを眠らせた時、催眠術をかけたよな……。まさか、あの適当な催眠術でこうなったのか⁉︎
マズいだろそれは!いくらなんでも流石に罪悪感がヤバイ!なんとかしないと……!
「桃ね、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するんだー♪」
「そうか、俺も桃と結婚したいなー」
悪くないな。
*
翌日、確保した寝床である木の上で目を覚ました。すると、トランシーバーから声が聞こえた。
『こちら夜一じゃ、起きとるか?』
「はい、今起きたとこです……」
『そうか。こちらの準備はもう少し掛かる』
「りょかい。あ、一護もそっち呼べば?単独じゃ危ないでしょ」
『一護はこちらにいる』
「えっ?」
『というか、捕まってる連中以外はこちらにいる』
「ま、待てよ!なんで俺だけハブ⁉︎」
『それより、昨日の時点での報告はどうなってる?』
「ああ、あの後、桃……雛森さんと檜佐木さんに襲われて、檜佐木さんは返り打ちにしたよ。文字通りピッチャー返しで」
『ヒナモリ?は?』
「俺の隣で寝てるよ」
『待て祐作!それはどういうことだ⁉︎』
『なんじゃ砕蜂、うるさいのう』
『何してた⁉︎昨日の夜ナニしてた⁉︎』
「あーなんかよく分からんけど催眠術にかかって……」
『さ、さささ催眠術⁉︎どんなプレイだそれは‼︎』
「うるせーな」
『それで、倒した藍染はどうした?』
『今どこだ祐作⁉︎私か今すぐにそこへ行って貴様を……』
『瞬閧‼︎』
『ぎゃす!』
「それどころじゃなかったよ。雛森さんに襲われてトドメ刺す前に逃げられたっぽい」
『ふむ、そうか。奴が今回の事件の黒幕じゃ、そう簡単にはいかぬと思っておったが……』
「わーってますよ。もしかしたら、昨日気絶した藍染も鏡花水月かもしれねーんだ、倒したなんて思ってませんよ」
『それなら良い。とりあえず、朽木ルキアを盗むのを処刑当日と決めた今、戦力が揃うまで逃げよ』
「けど、向こうが先に処刑をはじめちまったらそうは行きませんよ。俺一人でも助けに行きます」
『その時は、砕蜂だけでも行かせる』
「りょうかい」
『じゃあの』
「え?あ、うん」
『あれ?おい恋次、そこにいた砕蜂はどこへ行っ』
切れた。と、思ったら背中から気配を感じた。後ろを見ると、砕蜂が指をコキコキと鳴らして立っていた。
「おい……祐作……」
「え、あ、うん。コンニチハ!」
「どういうことか聞かせてもらおう」
「あの、それはこっちの台詞なんですけど……」
寝てたはずの雛森さんの声が聞こえた。
「雛森、起きてたのか?」
「砕蜂隊長、藍染隊長が黒幕って、どういう事ですか?」
………そこから聞こえてたんだ。
*
事情を説明した。直後、雛森の顔は青ざめていった。
「そんな、まさか、本当に……⁉︎」
「ああ、残念だけど、その通りだ」
「ねぇ、桃。俺のことお兄ちゃんって呼ばないの?」
「う、嘘です!あの藍染隊長に限って、そんな……!」
「事実だ。現に、平子真子や六車拳西が現世で見つかっている」
「桃、ほら、お兄ちゃんって」
「………そんな、水上君のいうことが正しかったなんて」
「それを止めるために、とりあえず朽木ルキアを私達は救いに来た」
「桃ちゃーん、お兄ちゃんですよー?」
「ちょっと黙ってて変態」
殴り飛ばされた。
「分かりました。そういうことなら、私も藍染隊長を止めるのを手伝います」
「それは構わないが、お前は大丈夫なのか?立場とか」
「平気です。それに、水上くんのことを疑って、私は斬魄刀を水上くんに向けました。あの時、私が邪魔をしなければ勝っていたかもしれないのに……!だから、私もお手伝いしたいんです!」
「………わかった。祐作もそれでいいな?」
「任務了解」
「で、でもそれならマズイですよ!」
「へっ?」
突然、雛森さんが焦ったような声を出した。
「四十六室から命令があったんです。水上祐作が5人以上の隊長を倒した時、卯ノ花烈を人質にしておびき出し、仕留めろって……!」
………今なんつった?