いきなり卍解が三つ出たと思ったら、四人倒れてた。まぁ、この人たちが何を思ってどうしようと卍解したのか知らないけど、勝手に自滅してくれたのはラッキーだったな。
さて、俺は恋次達を助けに………いや、その前に今のうちに藍染にとどめ刺すか。いや、もう下半身丸出しで寝てる時点で地に落ちてるけど、生物的に息の根を止めようって意味で。
斬魄刀を抜いて、藍染の元へ歩き出した直後、
「何の音⁉︎……って、あ、藍染隊長⁉︎」
顔を真っ赤にした雛森さんが現れた。その後ろには檜佐木さんもいる。
「おおう、もう……」
思わずおでこに手を当てた。さようなら、藍染。あなたの威厳はたった今、完全に落ちました。
「ど、どうなってやがんだ……⁉︎って、東仙隊長⁉︎朽木隊長に、日番谷隊長まで……‼︎」
檜佐木さんと雛森さんが俺の事を睨んだ。
「おい、水上……!テメェ、どういう事だ」
「……そこまで堕ちたんだね、水上くん」
「えっ?いや、それやったの俺じゃなくて」
「テメェ以外に誰がいんだよ‼︎」
「許さない……!さては、トイレに四人が揃ってるところを奇襲したのね……‼︎」
「違う!違うから!みんなでトイレ入ってて紙がエロ本しかなかったからとりあえずそれで拭こうとしたら勝手に卍解3連続で吹っ飛んで気絶してるだけだからこのバカ達‼︎」
「そんな馬鹿な真似をこのクソ真面目四人衆がやるわけねぇだろ‼︎」
「この人達、君が思ってる30倍くらい馬鹿だからね⁉︎」
「もういいです。これ以上は話しても無駄です」
「いやそれこっちの台詞!少しは人の話聞けよ!」
「私が、水上くんを正気に戻します」
お、おいおいマジかよ……!雛森さんと戦う流れ?無理だよ、俺女の人は砕蜂以外殴れないから。
「弾け、『飛梅』‼︎」
「ああもうっ‼︎最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ、『神木ノ太刀』‼︎」
木刀なら俺の力の加減次第で殺すことはないだろう。まぁ、それ以前にこっちが手を出すことはないけど。
木刀にしながら火の玉を打ち返した。返した玉が檜佐木さんの顔面に直撃した。
「あっ、やべっ」
「檜佐木さん!………水上!」
「違う違う違う!今のわざとじゃないから!」
「はぁっ‼︎」
さらに飛んでくる火の玉、打ち返す俺。ああ、ダメだ。この子、正気じゃない。どこまで怒ってんのこの子。どうにかして、まずは落ち着かせないと……落ち着くといえばなんだ。考えろ、落ち着かせるにはなんだ。……童話だ!
「むかーしむかし、ある所に、おじいさんとおばあさんが……」
「私をバカにしてるの⁉︎」
逆上させてしまった!マジでどうしよう。落ち着かせるには……催眠術だ!
俺は五円玉の真ん中の輪を紐で結んでぶら下げ、飛梅の火の玉を避けながら目の前に出して振った。
「あなたは段々、眠くなるー」
「うっ……ふわあぁあ……て、そ、そうはいかないったら!」
やだこの子ったらかかり掛けたわ可愛い。これは使える。
「あなたは段々眠くなるー」
「ううっ……ね、眠気なんかに……!」
「あなたは段々眠くなるー」
「ま、負けない……んだから……ふわっ……」
「はよ寝ろや」
「……すーすー」
よし、一丁上がり。さて、助けに行きますか。
*
雛森さんを脇に抱えて、俺は走った。残りは山爺、市丸隊長、卯ノ花隊長、更木隊長、涅隊長の五人か。さて、随分隊長達倒せたし、そろそろ砕蜂は恋次とルキア助けられたでしょ。
そんなことを考えてると、トランシーバーに連絡が入った。
「もしもし?」
『祐作か?今どこにいる?』
「ああ、砕蜂。今、公衆便所出たとこ」
『こちらは阿散井恋次を奪還し、卍解を習得させている』
「ルキアは?」
『そっちはまだだ。守りが思いの外、厳重だった』
「てか何、別の場所に捕まってたってわけ?」
『ああ。朽木ルキアには崩玉がある。当然といえば当然だ』
「じゃあどうすんの?」
『処刑の直前にルキアを奪還する。隊長は今、どんな感じだ?』
「残りは1、3、4、11、12だけ」
『涅なら問題ない。石田雨竜から撃破したとの報告がある』
「へぇ、やるね。あ、あと京楽さんと浮竹さんは仲間になったよ。お二人には一護のお友達がピンチになったらさりげなく助けるようにお願いしといた」
『了解。なら、双極の護りの隊長は四人だ。処刑の時に隊長達を止め、朽木ルキアを奪還する』
「おk。じゃ、それまでは各自生き残るってことで」
『もしもーし、聞こえとる?』
別の声が割り込んで来た。この声は、市丸隊長か?
『貴様、誰だ⁉︎』
『その声、砕蜂隊長やん。僕が捕らえたはずなのにおかしいな。まぁ、ええか』
『市丸……⁉︎』
『今、旅禍の子達を二人捕まえたで。茶髪の女の子と黒髪のメガネくん』
! 井上さんと、石田、だっけ?
『それと、京楽隊長がロン毛のヤンキーみたいな子を捕らえたみたいや』
京楽さん、助かるよ。
『これで、逃げる泥棒は四人やな。警察の隊長は6人、覚悟しとれよ』
「どろけいかよ……!」
それを最後に、通信は切れた。ま、あの辺にはむしろ捕まっててもらった方が安全だ。助ける手間は増えたが、死なれるよりマシだ。
「さて、後半戦と行きますか」
そう呟きながら俺は、とりあえずそろそろ寝たいので隠れ家を探した。