卯ノ花さん護衛します!   作:杉山杉崎杉田

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1日目(続・4)

 

 

瀞霊廷の公衆トイレ。そこに東仙はいた。涙目逃走の途中でお腹が痛くなり我慢できなくなったので駆け込んで来た次第である。

 

(水上祐作め……!この借りは必ず返す!)

 

心の中でそう誓いながら、ケツからブリブリ垂れてトイレットペーパーに手を掛けた。

直後、カランッと虚しい音。

 

「………?」

 

慌ててトイレットペーパーを手探りで探すが、見つからない。

 

(これは、まさか……!)

 

そう、紙切れである。東仙は思いっきり個室トイレのドアを殴った。

 

(クッ……!ここに来て盲目であることの弊害が出たか……!)

 

悔しそうに歯軋りしてると、隣からダンッとドアを殴る音がした。

 

「あ、ああ、済まない。少し、騒がしかったな」

 

素直に謝るが、返事はない。まぁいいか、と東仙はこれからどうするか顎に手を当てた。

ティッシュは無いし、下半身丸出しで出て行くわけにもいかない。ここは男子トイレだ。このトイレの中だけなら、下半身丸出しで歩いても問題ないだろう。

 

(しかも今は非常事態、こんな時に腹下すバカはいないだろう)

 

と特大ブーメランを投げなながら判断し、立ち上がった。

 

「…………」

 

歩き出せない、どうにもドアが開けられない。というか、上は着物着て、下半身は何も履かないで歩いた事なんて人生で、いや死神生で一度もなかった。そのため、かなりの勇気を必要としていた。

どうする、こうしている間にも水上はやり放題してしまうし、何より言うと藍染からいつ指令が下されるか分からない。

 

『要、作戦通り頼むよ』

 

『その前にトイレットペーパー頼んでもいいですか?』

 

3秒後には鏡花水月の餌食になるのは目に見えていた。

 

(いや、待てよ)

 

たった今、隣から壁を殴られた事に気が付いた。いや、今更気付くのもどうかと思うが、迷いはしなかった。

 

「すまない、隣に誰かいるだろう?こちらの個室は紙がないんだ!貸してくれないか?」

 

「あー、悪い。こっちも死紙状態」

 

どっかで聞き覚えのある間抜けな声がした。というか、聞き覚えしかなかった。

 

「つーかあんた。誰だか知らねーけど紙がないからって八つ当たりはダメでしょ。他に人がいるかもしんないのに」

 

「おい待て。その声、貴様水上祐作か?」

 

「そうだけど……え、誰?なんで声だけで分かんの?」

 

「き、ききき貴様!なぜこんなところにいる⁉︎」

 

「何故って、目的は皆一緒だろ。つーか、なんだこの銀魂みたいな状況」

 

「知るか!おい、貴様、今から殺してやる。覚悟しろよ!」

 

「殺してやるってお前……下半身丸出しでケツにう○こ付着した状態でやり合う気か?俺嫌だよそんなの。そんな殺され方、死んでも死に切れねーよ」

 

「貴様の事情など知ったことか!」

 

「いやいやいや、お前も冷静に考えてみろって。瀞霊廷をここまでしっちゃかめっちゃかにした黒幕を殺しましたって言って差し出した死体のケツにう○こ付いてたらどう思うよ。みんな『こんな奴に瀞霊廷は荒らされたのか……』ってなるよ。もっと言うと、そんな奴にワンコはやられたことになるよ」

 

「むっ、確かに……は?狛村をどうしたって?」

 

「キ○タマホールインワンして来た」

 

「き、貴様ぁ〜‼︎」

 

「まぁ落ち着けって。やり合うにしてもまずはトイレを出よう」

 

「グッ……!クソウ、敵の大将を目の前にして……!クソゥッ……!」

 

「おい、あんまクソクソ言うんじゃねーよ」

 

祐作は一息ついて聞いた。

 

「で、お前は誰だ?」

 

「東仙だ!知らずに話してたのか⁉︎」

 

「ごめん、つーか俺とあんたあんま話したことないし、仕方ないっちゃ仕方ないっしょ」

 

「おい、てめぇらトイレにいる時くらい静かに出来ねぇのか」

 

「!」

 

「!」

 

別の声がした。やけに若い声。

 

「その声、日番谷隊長か?」

 

「うるせぇ、東仙。大声出すな」

 

「何故、貴様はここにいる⁉︎今までまさかここにいたのか⁉︎」

 

「ちげーよ。あっち向いてホイを極めたから水上に挑もうとしたら、冷凍みかん食べ過ぎて腹下したんだよ」

 

「れ、冷凍みかん?」

 

「ま、ここに水上がいるのはラッキーだったな。てめぇ、あとで顔貸せや」

 

「いや、俺の顔が欲しければ整形なりマスク被るなりすればいいんじゃねぇの?」

 

「そういう意味じゃねぇよ‼︎レトロなボケしてんじゃねぇよ‼︎」

 

「おい、兄ら。貴様らいい加減、そのうるさい口を閉じれんのか」

 

そこでまた新たな声。

 

「く、朽木白哉か⁉︎」

 

「………あんた何やってんすか。言っとくけど、う○こじゃオセロとかできないよ」

 

「今まで貴様、どこにいた⁉︎」

 

「ふっ、私はオセロの極意を極めていたのだ」

 

「いや、フッ、じゃねぇよ。お前あれからそんなバカなことしてたの?」

 

「水上、一戦付き合え」

 

「わかったからその前にケツをなんとかしような」

 

「なんだ、兄は知らんのか?トイレの床がタイルである理由はそこでオセロができるようにだぞ?」

 

「なわけねぇだろうが‼︎ていうかここでやる気だったのかあんた⁉︎」

 

「白黒つけようじゃないか、オセロだけに」

 

「上手くねぇし、あんたの戦歴は真っ暗だろうが‼︎」

 

「えっ、朽木隊長ってオセロ弱いのか?意外」

 

「それな。俺も強いもんだと思ってた」

 

「いやいや、スペランカーより弱いよ、あの人」

 

「ふっ、それはこの前までの私だ。今の私は」

 

「しかし、このメンバーにあと誰か一人加わったらホント銀魂だな。なんか一人いそうなんだけど。最近、顔見てなかった奴」

 

「ねぇ、聞いて」

 

「私は誰の顔も見たことないが?」

 

「誰もてめぇの話はしてねぇ。しかし、誰だろうな。剣八とか、涅とかか?」

 

「おい、拗ねるぞ」

 

「僕だよ」

 

「「「「…………えっ?」」」」

 

四人から間抜けな声が出るほど、意外な声の主は藍染惣右介だった。

 

 


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