ひっくり返る明王。俺はその隙にワンコを殴ろうとした。だが、ワンコも何故かひっくり返っている。なんだ?巻き込まれたか?と、思ったらワンコの頬が赤く腫れあがってることに気付いた。さらに、明王と同じ感じで倒れている。
………これは、明王へのダメージはワンコにも入る、ってことでいいのか?
「グッ……!やってくれたな……‼︎」
顔を抑えながら立ち上がるワンコ。明王も立ち上がろうとしたが、俺は脚を木刀で殴り、再び転ばせた。
「ぬをっ⁉︎」
ワンコもひっくり返る。俺はニヤリと口を歪ませた。
「き、貴様……‼︎って、なんだその顔は……‼︎」
素敵な笑みを浮かべたまま、倒れてる明王の股間に向かってある。ワンコの顔が真っ青になってるのが、見なくても分かった。
「ま、待……‼︎」
「6番、ファースト、大竹文雄」
「お願いまって‼︎てか、何その懐かしい漫画のチョイス‼︎」
「一振!」
「おごっ!」
「二振!」
「うごっ!」
「三振ッ‼︎」
「ぬぐおおおおおっ……!お、おお……‼︎」
場外ホームランと共に、ワンコは股間を抑えて悶絶し、卍解が切れたのか明王は消え去った。
「木刀をなめてっからだワン公」
唾を吐き捨ててそう言うと、俺は次の隊長を探しに行った。
「………腹減ったな」
*
イヅルとギンの猛攻を避けがら、砕蜂はボロボロになりながら逃げていた。
(チィッ……!不殺でやるとすると雀蜂は使えん。斬魄刀無しで隊長と副隊長を撒けるのか⁉︎)
イヅルが侘助で突撃し、その後ろからギンが神鎗で援護する。
既に7回ほど侘助を受け、砕蜂の雀蜂はかなりの重量になっていた。
「チッ、仕方ない……。こんな所で使うつもりは無かったが……‼︎」
「………なんや?」
「精々、死なないように気を付けろよ」
砕蜂は斬魄刀を元の刀に戻すと、隊長羽織を脱ぎ捨てた。
背中と両肩に高濃度に圧縮した鬼道を纏い、霊圧が高まっていった。
「な、なんだそれは……⁉︎」
イヅルが声を漏らした。
「そうか、貴様は知らないか。これはつい最近まで私が編み出したと思っていた技だ。まぁ、夜一様に見てもらったら、『いやそれ瞬閧やん』と言われてしまったがな。これは、瞬閧という技だ」
「いや、なんで瞬閧二回言った?」
「………二回?」
「『いやそれ瞬閧やん』と、『これは、瞬閧という技だ』」
「…………」←顔真っ赤なそいぽん
「…………」←敵とは言え申し訳ないことをしたと思うイヅル
「…………」←腹抱えて爆笑のギン
「………本来は隠密起動総司令官に継承される技だ」
(なかったことにしようとしてる!何事もなく話を進めようとしてる‼︎)
「この技は、まだ私どころか夜一様にですら上手く手加減できん。怪我しないように気を付けろよ」
(ダメだ、笑うな僕……今更カッコつけるなとか思うな……!)
「イヅル、退き」
「隊長………?」
「これ以上はキツイ。隊長の斬魄刀は封じたし、十分やろ。それに、さっき旅禍が侵入して来たみたいやし、こんな大技出されたら、援軍が気付いてこっち来るのも時間の問題や」
「………了解」
ギンとイヅルはその場から退いた。砕蜂はそこで腰を下ろし、息をついた。
「………先を急がねば」
砕蜂は瞬閧をしまい、すぐに立ち上がって先を急ごうとした。その直後、
「嘘や」
ギンの声が聞こえた。後ろから侘助に思いっきり背中を殴られた。自分の体重が倍になり、動けなくなる。
「なっ……⁉︎」
「ははっ、相変わらず砕蜂隊長は純粋やなぁ。少し霊圧消して逃げただけで気を抜いちゃうなんて」
「貴様っ……‼︎」
「さて、じゃあ連行しよか」
縛道でしばられ、砕蜂は捕まった。
*
一護達は、兕丹坊との戦闘を終えて、瀞霊廷に侵入した。
「さて、とりあえずどうする?夜一さん」
「ふむ、あのデカイ白いのは見えるか?あれが双極じゃ」
「あれが、ルキアを処刑する奴か……」
「あそこの一番デカイ建物に檻があるはずじゃ。そこまで行くが、纏まっていると隊長達を全員相手にせねばならん。二手に分かれて……」
そう言いかけた所で、ピクッと夜一は空を見上げた。一護もだ。
「これは……!」
「砕蜂の霊圧が、消えた……⁉︎」
「………なんかパクられた気がする」
最後にチャドが余計なことを言ったが、少なからず夜一と一護に動揺が見えた。
「すまん、儂は砕蜂の元へ行く。一護とチャド、石田と井上に分かれて進め!」
「分かった。石田、井上。気を付けろよ」
「ああ」
「黒崎くんもね」
二手に分かれた。
*
一護とチャドは二人で檻を目指す。その途中、影が二つおりて来た。二人の前に、一角と弓親が現れた。
「死神……‼︎」
「出やがった……‼︎」
「………チッ、水上の野郎じゃねぇのか」
「どうする?一角、出直す?」
「いや、せっかくだ。さっさとぶっ倒して祐作をやるぞ」
四人は構えて殴りかかった。