卯ノ花さん護衛します!   作:杉山杉崎杉田

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5日目

 

一護の修行は、とうとう最終段階になった。

斬魄刀を呼び出し、出発の日まで戦闘。

 

「………で、なんで俺がその戦闘の相手?」

 

「お願いしますよ、水上サン。アタシよりも水上サンの方が向いてると思ってのことッス」

 

「別にいいけどよ……」

 

チラッ、と一護を見た。やる気満々の顔で俺を睨んでいる。

 

「えっ、と……本気でやっちゃっていいの?」

 

「ああ、本気で来いよ。水上。いや、その前に斬魄刀を解放しろ」

 

「………は?」

 

「斬魄刀だよ、テメェの。こっちは斬魄刀使うってのにテメェは使わない気か?」

 

「………ほ、本気で言ってんの?」

 

「本気だよ。つーか本気でかかって来いって言ったろ」

 

「や、本気でやって欲しいなら斬魄刀じゃない方が良い気もするんだが……」

 

「良いから斬魄刀を出せって言ってんだよ」

 

「………わ、分かったよ……。その代わり、後悔するんじゃねぇぞ」

 

「!」

 

俺は腰の浅打に手をかけた。

すると、思い出したように砕蜂が呟いた。

 

「……そういえば、祐作の斬魄刀は私も初めて見るな」

 

「へぇ、今までどうやって戦ってたンスか?」

 

「浅打のままだ」

 

「へ、へぇ……」

 

「これがバカに出来ない強さなんだ。浅打のまま大虚とタイマン張ってたりするしな」

 

「す、すごいッスねそれは……。なら、どんな斬魄刀が出てくるのか尚更楽しみっス」

 

…………俺は浅打から手を離して、両手でTを作った。

 

「………あの、やっぱやめない?」

 

「ふざけんな‼︎いいから斬魄刀出せって言ってんだろ⁉︎」

 

「いや、真面目に。あとで夕食の肉一枚あげるから」

 

「………‼︎い、いやダメだ‼︎」

 

「悩んでんじゃねえか」

 

「いいから解放しろ‼︎」

 

仕方ねえなあ……。ほんとは嫌なんだけど……まぁ、仕方ないか。

 

「……笑うなよ」

 

「笑わねえよ」

 

「………最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ『神木ノ太刀』」

 

直後、俺の浅打からかなりの霊圧が漏れ出し、爆発したように辺りに爆風が吹いた。そして、俺の手に出て来たのは、知っての通り木刀だった。

 

「…………は?」

 

「…………え?」

 

「…………ん?」

 

「ほら見ろォッ‼︎そういう反応になるから解放したくなかったんだよ‼︎」

 

「「「………ご、ごめん」」」

 

「これ言っとくけど俺のコンプレックスだからね⁉︎唇が厚いだとか、額にニキビが多いだとか、鼻の穴がデカイだとか、そういうのと同じだからな⁉︎俺の斬魄刀は木刀なんだからな⁉︎」

 

俺が怒鳴ると、3人とも気まずそうに視線を逸らした。

ああもういいよ!とにかく一護をボッコボコにすればいいんだろ⁉︎

 

「行くぞ‼︎一護‼︎」

 

「お、おう……あ、斬魄刀戻せば?」

 

「良いよ別に‼︎このままやるよ‼︎」

 

俺は正面から一護に殴りかかった。それを斬魄刀でガードしながらも後ろに下がる一護。つか、こいつの斬魄刀バカデケェな。

俺は逃さずに木と……神木ノ太刀で追撃する。下から振り抜き、それをガードする一護。ほんの一瞬、浮き上がった斬魄刀の下から手を伸ばし、一護の胸ぐらを掴んで引っ張り、腹に蹴りを入れた。

 

「グフッ……⁉︎」

 

さらに出来た隙を逃さず、一護の脚を蹴り払う。浮き上がった一護の腹に拳を叩き込んだ。

最後の一撃は斬魄刀でガードする一護だが、衝撃だけは受け切れず、後ろに膝をついて下がった。

 

「テメッ……!調子に、乗るんじゃねぇッ‼︎」

 

地に着いた脚でそのまま地面を蹴り、一護は横から斬魄刀を振り抜いた。俺はジャンプして回避する。

 

「………いねぇ」

 

「後ろだアホ」

 

振り抜いた一護の斬魄刀の上に乗っていた俺は木……神木ノ太刀で顔面を殴り飛ばした。

 

「ガアッ……⁉︎」

 

ゴロン、ゴロンも転がる一護。そこからピクリとも動かない。………やべっ、やり過ぎたかも。

 

「………浦原。気絶しちゃったかも」

 

「ふむ……仕方ないッスね。水上サン、次からはもう少し加減するように」

 

「あーい」

 

「砕蜂サン、叩き起こしてあげて下さい」

 

「……ふん、何故私が……」

 

ぶつくさ言いながら一護の方へ歩き、蹴りを入れる砕蜂。うん、あいつはツンデレの素質があるな。

 

「……にしても、不思議っスね」

 

「? 何が?」

 

「水上サンの斬魄刀っス。普通、木刀になるなんてありえないっスよ。今の所、何か能力があるようにも見えないですし」

 

「それな。卯ノ花隊長もおかしいとか言ってたし」

 

「斬魄刀っていうのは、普通持ち主の戦闘スタイルに合わせて共に育って行くものっス。そんな斬魄刀がもし、出るとしたら……」

 

「したら?」

 

「………水上サンが相手をただボコボコに殴りたいからそうなったか」

 

「どういう意味⁉︎」

 

「いやぁ、木刀ならホラ、刀と違ってどんなに殴っても死なないじゃないッスか」

 

「……ふぅん、そう?じゃあまずお前を殴ろうかな」

 

「やめてください死んでしまいます」

 

謝ってから浦原は続けた。

 

「………まぁ、もしくは真の力を発揮するには条件が足りないか……」

 

「………条件、ね」

 

そんなものがあるのか?そんな事を思ってると、砕蜂から「おい」と声を掛けられた。

 

「起きたぞ」

 

「さぁ、やろうぜ。水上」

 

「………考えるのは後にするか」

 

言うと、俺は木刀を軽く振りながら再び一護と殴り合った。

 

 

晩飯。

 

「ご飯できましたよー」

 

井上さんがそう言うと共に、晩飯を運んで来た。

この人はルキアと恋次を助けに行く人間二号だ。三号が茶渡泰虎さんです。

 

「ッシャ、来たかオラァッ‼︎」

 

「コラ、暴れるな‼︎」

 

後ろから夜一さんに殴られた。この駄菓子屋に世話になってから以来、俺は晩飯の時は夜一さんの隣と決められた。

お陰で、砕蜂から嫉妬ビームを身体中に浴びていて、迷惑なことこの上ない。

 

「主はすぐに飯になると暴れるからのう」

 

「今日はホント疲れてるんだって。何回一護を気絶させたと思ってんの?」

 

「ウルセェ‼︎明日はテメェに勝つ‼︎」

 

「百億年はえーよ」

 

「上等だよテメェ表出ろコラ‼︎」

 

「よろしい。格の違いを教えて差し上げますよ」

 

「学習しないガキは儂は嫌いじゃぞ?」

 

「「すいませんでした」」

 

指をコキコキと鳴らし始める夜一さんに、俺と一護は土下座する。

 

「ああ……いいなぁ、私も夜一様に怒られたい……」

 

一人、病気みたいなことをほざいた砕蜂を無視して、飯開始。

 

「あっ、てめっ一護!それ俺の唐揚げ!」

 

「他にまだたくさんあんだろうが‼︎」

 

「うるせぇ‼︎それは俺のなんだよ‼︎」

 

「ジャイアンかテメェは‼︎」

 

「ああそうだ‼︎お前のものは、俺のモノォッ‼︎」

 

「危なっ……てめっ、表出ろコラァッ‼︎」

 

「ま、まぁまぁ二人とも!落ち着いてよ。唐揚げならたくさん作ってあるから!ね?」

 

「ダメだ。一護に食わせる唐揚げはねえ。そもそもテメェ、俺に今日負けまくったんだから譲れ」

 

「はぁ⁉︎ふざけんな!それとこれとは話が別だろうが‼︎」

 

「もう、そんなこと言ってると、もう二度と唐揚げ作らないよ?」

 

「すいませんでした井上織姫様。俺のことは殺してもいいのでそれだけは勘弁してください」

 

「こ、殺さないよ!というか殺せないし!」

 

基本、人の話も人の言うことも聞かない俺だが、唯一頭が上がらないのが、この織姫様だ。この人の作る唐揚げより美味いものはない。俺はこの人と卯ノ花隊長のためなら死ねる。

すると、隣から腹立つ声が聞こえて来た。

 

「はっ、ザマァ見ろ水上」

 

「はいぃ、テメェの処刑確定ィイイイイ‼︎」

 

「だ、だから二人とも〜」

 

「ええい!いい加減にしろアホ二人‼︎」

 

「「貧乳は黙ってろ」」

 

「卍解してやろうか⁉︎」

 

その様子を見て、チャドは呟いた。

 

「………親子かこいつらは」

 

 


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