初日から仕事をサボりたくなった俺は、サボることにした。
俺は部屋から出て、足早に廊下から出て草履を履いた。よし、抜ける‼︎そう思った直後、後ろから肩をガッと掴まれた。ニコニコ笑顔の卯ノ花隊長だ。
「………あっ」
「水上副隊長?お仕事は終わったのですか?」
「や、あのっ……ちょっとトイレ……」
「草履を履いて?」
「や、その……アレだ。ひばんたに隊長ん所に借りようと……」
「わざわざ?それと日番谷隊長です」
「ち、違うの!お腹が痛かったの‼︎」
「タメ口?」
徐々に笑顔が怖くなっていってるんですが……。
「それで、お仕事は?」
「そ、そもそもあんな量初日から捌けるわけないでしょ‼︎」
「タメ口?」
「……ですよ。だって俺今まで事務作業なんてやった事ないんですよ⁉︎」
「それでも、今日から副隊長ですよ?隊長に就任したその日から敵に襲撃を受け、『俺初日なんですよ!』って言い訳しますか?」
「や、そう言われたらその通りなんすけど……」
「とにかく、あれは副隊長のお仕事です」
「でもあれは多過ぎるでしょ!隊長の書類なんてジャポニカ学習帳くらいしかないじゃないですか‼︎」
「私は今朝からあらかじめ仕事を終わらせておいたんです」
「嘘だね!絶対嘘だね‼︎」
「タメ口。3回目ですよ?次はないですよ?」
「………すいません」
何でこの人はこんなタメ口に厳しいんだろうか……。高校の運動部なの?
「で、でもあの量は……!」
「男の癖にグダグダ言わないでください」
「何だよ!男の癖にとかそんなん関係ないだ……」
直後、俺のボディに拳が減り込んだ。予想外の攻撃と威力に俺の意識は遠のいて行った。
学習しないなぁ、俺……。………いや、にしてもいきなり殴るって無くね。
*
目を覚ますと、俺は執務室に座らされていた。目の前には書類の山、そして俺の身体は椅子に縛られていた。見事に腕だけ解放されてる状態。というか、こんな事に縛道を使うなよ……。
「目が覚めましたか?」
微笑みながら現れたのは、やっぱり卯ノ花隊長だった。
「………こんな事しなくても仕事しますよ……。仕事しないと殺されそうだし」
「分かっていただけて何よりです」
「だからこれ解いてくれませんかね」
「ダメです。逃げるじゃないですか」
「逃げねーですよ。………つか、あんたに見張られてて逃げ出す奴なんているかよ(小声)」
「もう一撃いきます?」
「すいませんした」
………聞こえてんのかよ。地獄耳かババァ。
「では、私はここで見ていますので、さっさと終わらせて下さいね」
そう思うなら仕事の量を減らしてくれませんかね……。
まぁ、そう言ったところでこの人聞く耳持たないだろうけどね。鬼だし。
嘆いてても仕方ないので、仕事を進める事にした。
こんなに仕事の量あるって事は、それだけ山爺に報告することがあったって事だろ。どんだけ仕事してたんだ四番隊。
「………あの、これなんか十番隊の書類とかあるんですけど、何でですか?」
「日番谷隊長はまだ隊長に就いてから間もないですからね。少しお手伝いしてあげたんです」
「何でだよ……ですか⁉︎それ何で俺に回すんですか⁉︎ていうかさっきと言ってることメチャクチャですよ‼︎」
「いいから仕事して下さい」
「なっ……ちょっ、横暴でしょう流石に⁉︎」
「仕事して下さい」
「話聞けよ!」
「仕事、して下さい?」
「……はい、すみません。四度目でしたね」
くそう……人を良いようにこき使いやがって……。何処か隙があればこんな縛道なんて……‼︎
いや、必ず隙は出来る。今は待つんだ。書類は……責めて俺が請け負うべき分はやろう。時間は……そうだな、一時間半後ってとこか。
それまでは真面目にやろう。
「……………」
「……………」
ぽっぽ〜、ぽっぽ〜。
一時間半後、卯ノ花隊長は本を読み始めた。
今がチャンスだな。
「卯ノ花隊長、トイレ行きたいんですが」
「ダメです」
うっ、まだ警戒されてたか。
「や、でももう結構我慢の限界なんですけど……」
「……どのくらい進んだのですか?」
「まぁ、ある程度は進んだと思うんですけど……。あ、こっちが終わった方です」
右側の書類の山を指した。半分以上は終わっている。
すると、少し考えた卯ノ花隊長は微笑みながら答えた。
「だめです」
「なんで⁉︎」
「だって、逃げそうなんですもん」
初日でどこまで信頼落としてんだ俺‼︎
仕方ない、第二プランだ。
「卯ノ花隊長」
「今度はなんですか?」
「お綺麗ですね」
「褒めても無駄で……」
「両サイドから垂らした髪で結った三つ編み、可愛らしいながらも凛とした顔とタレ目、何より着物の上からでも分かる巨乳によって女性のエロスが身体中から捻り出されてま」
ボグッ‼︎
「寝てなさい」
「グフッ………」
やっぱりな、そんな気はしたよ。グフッ。
「卯ノ花隊長、御食事のお時間です」
「……………」
「卯ノ花隊長?」
「……はっ、な、何ですか?勇音」
「……どうかなさったんですか?顔が赤いですけど……」
「な、何でもありませんよ。これは、その、何。返り血です」
「何があったんですか⁉︎って、そこで倒れてるのは……?」
「新しい副隊長の水上祐作さんです」
「は、はぁ……治療しなくて大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。大丈夫でなくても知りません」
「は、はぁ……(あ、なんか機嫌良いなこの人)」
「では、夕食にしましょうか」
「そ、そうですね……」