砕蜂にお姫様抱っこされながら精霊廷に到着。誰にも見つかりませんように、と全力で願ったが、出迎えてくれた卯ノ花隊長にバッチリ見つかり、「随分と仲が良いのですね」と、恐怖の笑顔で言われた。
一方、砕蜂は今更自分のやったことに恥ずかしさを感じたのか、顔を真っ赤にしていた。
今はその翌日、今日も今日とて書類仕事。俺の怪我など御構い無しに、卯ノ花隊長は俺をこき使っていた。
「あの、卯ノ花隊長……俺、腕……」
「砕蜂隊長とイチャつくことが出来るのですから、仕事くらい大丈夫でしょう」
「いやイチャついてないんですけど……。お姫様抱っこされるっていう羞恥プレイ食らっただけで……」
「というか、気に食わないのでダメです」
「はぁ⁉︎なんだそりゃ!完全に私情じゃねぇか‼︎」
「タメ語?」
「グッ……‼︎し、知るか‼︎いつもいつも他人と上下関係ばっか厳しくしやがって‼︎ナメんなババァ‼︎」
「……………あ?」
「すいません、調子に乗ってました」
すぐさま土下座した。くっ……情けねえ……。
その俺の様子を見て、卯ノ花隊長は少し考えるような表情になった後、微笑みながら言った。
「じゃあ一つ、お使い頼まれてもいいですか?」
「は?」
*
何が「じゃあ」なのかよくわからないが、俺はお使いに来た。十三番隊、つまり浮竹隊長の所だ。
「うぃーっす」
「むっ、水上か」
ルキアがで迎えてきた。
「浮竹さんは?」
「いるぞ、中だ」
………相変わらず、ルキア俺につめてーなー。まぁ、仕方ないっちゃ仕方ないけど。
や、でもこの前の朽木隊長の件の時は普通だったよな。もしかしたら、すでに俺のこと許してて、今だけなんか不機嫌なのかもしれない。
「HEY!ルキアちゃん、千年殺しィィイイイイ‼︎」
「うひゃあ⁉︎」
ルキアの肛門に二本の指をねじ込んだ。思いっきり前に吹っ飛び、ドンガラガッシャーンとでも言わんばかりに前に転がった。
「なっななな何をする馬鹿者‼︎」
「千年殺し。おっと、安心しな。俺は貧乳に興味はねえからな」
「う、ううううるさい‼︎ホンッッットに無礼者だな貴様‼︎私は貴様のそういうところが嫌いなのだ‼︎」
お、おう……。エラくストレートな物言いだなオイ。
まぁ、そらそうか。俺がこいつの大切な人を殺したんだ。恨んでも恨み切れないだろう。
「浮竹さん」
「ん、おお。祐作か」
「卯ノ花隊長から書類預かってるけど」
「ああ、ありがとう」
「では、私は失礼します」
ルキアは浮竹さんの部屋から退がった。
「よし、じゃあ浮竹さん。オセロやろオセロ」
「ああ、分かった」
「言っとくけど俺強くなったからね。朽木隊長フルボッコにしたからね」
「いやそれ彼が弱いんじゃ……」
「いいからやりましょう」
*
浮竹隊長とオセロをした後、ゆっくりお茶を飲んで甘いもの食べてカップ麺食べて酒飲んでスマブラやってマリカーやってフルブやって浮竹隊長の容態が悪化した所で、俺は四番隊隊舎に帰った。逃げてないから、その辺誤解しないように。
………いや、待てよ。今、四番隊隊舎に帰っても仕事手伝わされるだけだ。もう少しどこかで遊んで行こう。
「どこで遊ぼっかな〜」
ゲーセンでもあればいいのになーなんて思いながら歩いてると、「おい」と声が掛かった。
「なら俺たちと遊んでかねぇか?」
振り返ると、斑目一角が立っていた。木刀担いで。
うわあ、出やがった。
「うわあ、出やがった」
「おい、声に出てんぞ」
「喧嘩馬鹿集団」
「なんだコラその言い草はテメェ‼︎」
この十一番隊は俺の事が嫌いだ。何故なら、こいつらの道場で俺も一緒に稽古した時、目の前の斑目一角をボッコボコにしてしまったからだ。
勿論、お互い斬魄刀無しので木刀での戦闘だったが、それでも勝ったことには変わりない。それからずっと因縁付けられているのだ。
「それよりほら、喧嘩しようぜ」
まぁ、目の前のバカは何となく負けっぱなしは嫌だみたいな感じだけど。
だから、目の前のバカは正直そこまで問題ではない。問題なのはこいつらの隊長だ。
「うるせーよハゲ。お前馬鹿なの?死ぬの?一々喧嘩なんてしてられるかよ」
「てめっ、誰がハゲだ‼︎」
「ハゲてんだろうが。世界中の人間にアンケート取ったら全員が全員満場一致120%ハゲって言うわ」
「てんめぇ……‼︎」
「クリリンか天津飯か……ピッコロでもいいな」
「喧嘩したくなくても売ってきてんだろうがァッ‼︎殺す、絶対殺す‼︎」
「ああもう、面倒くせえなぁ」
一角の一撃を俺は浅打でガードして後ろに飛び退いた。
追撃して来る一角。俺は避けながら逃げ出した。
「テメェ、逃げんじゃねえ‼︎」
「るせーバーカ‼︎俺ァ、面倒ごとはゴメンなんだよ‼︎」
「売っといて何言ってやがんだテメェ‼︎」
逃げる俺と追う一角。命懸けの鬼ごっこが始まった。
*
二番隊隊舎。
「ふむ、ようやく届いたか。新しい隊服。この前の任務の時に引き裂かれたからなぁ。さて、早速着てみるか……」
「退けエエエエ‼︎」
ゴシャッ(←祐作が砕蜂を蹴り飛ばす音)
「貴様、祐作‼︎何をする‼︎」
「すいまっせーーーん‼︎後ろ、気をつけた方がいいよ」
「は?」
「退けええええ‼︎」
スパッ(←一角が新しい隊服を斬る音)
プチッ(←砕蜂の堪忍袋の緒が切れた音)
*
六番隊隊舎。
「おお、朽木隊長強くなりましたね」
「ふむ、まぁ訓練したからな」
「これなら祐作の野郎に勝てるんじゃないすか?」
「そうだな。ありえるかもしれん」
「じゃあ早速行きましょうか」
「待て、初勝利記念に写メ撮りたい」
「女子高生かよ……」
「退け退け退け退けええええ‼︎」
ピョーン(←祐作がオセロの盤を飛び越える音)
「うおっ!危ねえぞ祐作‼︎」
「ごっめーん!マジゴッメーン‼︎」
「いいところにきた、水上副隊長。少し私とオセ……」
「そんな事より後ろ、後ろ!」
「退け退け退けエエエエ‼︎」
スパッ(←オセロの盤が切れる音)
ドドドドッ(←そのあとに続いてる砕蜂が走る音)
プチッ(←白哉の何かが切れる音)
*
十番隊隊舎。
「………なんだ、ヤケに外騒がしいな」
「どうせ十一番隊の連中か水上クンが騒いでるんでしょう」
「はい、邪魔〜」
マゴッ(←祐作のラリアットが日番谷に減り込む音)
「テメッ、水上ァアアアア‼︎」
「シロちゃん後ろ後ろ!」
「テメェが白ちゃんって言うな……‼︎」
「はい、邪魔〜」
スカッ(←一角が日番谷の頭の上を空振る音)
ドドドドッ(←その後に続いてる砕蜂、白哉の走る音)
プッツン(←トーシロの血管の切れる音)
*
一番隊隊舎。
「ふむ……何やら不穏な者が近付いて来とるの」
「退けクソ爺ィイイイイ‼︎」
スカッ(←俺の跳び蹴りを避ける音)
「何事じゃ……」
「退いてください総隊長オオオオ‼︎」
スパッ(←山爺の髭が裂ける音)
ドドドドッ(←そのあとを続く砕蜂と白哉とトーシロの走る音)
ブヂッ(←山爺がキレる音)
*
五番隊隊舎。
(しかし困った……。相変わらず水上をどう対処するか……。奴は常に私の考えもしない行動をとってくる……このままでは虚圏の事も全て……)
「退け退け退けェ〜イヨロレイヒィ〜ッ‼︎」
「えっ」
メキャッ(←祐作のドロップキックが炸裂する音)
「な、なにするんだ水上副隊長‼︎」
「後ろおおおお!志村後ろォォォォォ‼︎」
「誰が志村⁉︎」
「退けエエエエ‼︎」
スパッ(←一角が藍染の眼鏡を斬る音)
ドドドドッ(←その後を続く砕蜂と白哉と山爺が走る音)
ズコッ(←その後ろでトーシロがコケる音)
プッツン(←藍染の色々な何かがキレる音)
*
なんで、なんで……なんで知らねえ間に隊長が五人も増えてんの⁉︎俺はちゃんと全部避けてたはずなのに‼︎(←錯覚)
「待ちやがれエエエエ‼︎喧嘩しろオオオオ‼︎」
「んなこと言ってる場合か‼︎後ろ見ろ後ろ‼︎」
「あれ?何で俺追い掛けられてんの⁉︎」
「あれ?じゃねぇだろ‼︎お前が何でもかんでも切り捨て御免するからだろうが‼︎」
「人聞きの悪いこと言うな‼︎俺はちゃんと退けって言いました‼︎」
「退けって言えばいいってもんじゃねぇだろ‼︎お前が避ける努力をしろ‼︎」
「誰彼構わず飛び蹴りしてたお前に言われたくねえよ‼︎」
「俺はちゃんと退けって言いました‼︎」
「テメェも同じじゃねぇかッ‼︎」
死ぬ!あのメンツは死ぬ‼︎特に山爺はヤバイ!焼かれる‼︎
そうだ、四番隊隊舎だ!卯ノ花隊長の覇王色レベルの覇気なら助かるはずだ‼︎
そう判断すると、俺は四番隊の隊舎へ向かった。入り組んだ道を利用し、なんとか距離が縮まらないように走った。
「ぐぬう、逃げ足だけは速いやつめ……‼︎」
「私が捕らえましょう。斬魄刀の使用の許可を得たいのですが」
「良いじゃろう、許可する」
「え?許可するんですか?」
「俺も手伝うぜ、朽木隊長」
あれ、なんか不穏な台詞が聞こえた気が………、
「散れ、『千本桜』」
「霜天に坐せ、『氷輪丸』‼︎」
「だああああ⁉︎殺す気かあんたら‼︎」
「「ああ。死ね」」
「まさかの殺人予告⁉︎」
ふおお!死ぬ、死んでしまう‼︎薄ら目一角の所為で‼︎
「んにゃろ……上等だよ畜生がッ‼︎」
「おっ!やる気になったか‼︎」
「お前は邪魔‼︎」
鞘に入った刀で一角を殴って黙らせると、俺は刀を構えた。
その俺に、朽木隊長が目を細めた。
「やる気か?だが、兄がヤル気になったところで、私の刀は既に貴様を覆ってるぞ」
辺りに桜の花びらのようなものが舞っていた。
………ああそうか、これ全部あの人の刃なんだっけ。死ぬじゃんこれ。
「って、ナメんなクソボケエエエエッ‼︎」
横の壁を刀で叩き斬ると、中に入った。その後を追ってくる千本桜。はっ、バカめ。俺が穴を開けたのは逃げるためじゃないわ。千本桜の軌道を絞る為だ。
「ウオラァッ‼︎」
「!」
刀を高速で動かし、目に見えない刃を斬り落とした。
だが、俺が入り込んだ壁は塀だった。つまり、天井はない。上からも千本桜が襲い掛かる。
「フンヌオオオオオオッッ‼︎」
さっき穴を空けた塀の切り取った部分を持ち上げて盾にしながら後ろに退がる。
直後、冷気を感じた。ヤケに寒いと思ったら、氷輪丸から出てきた氷の竜が俺の後ろにいた。
「終わりだ」
「うおおおっ‼︎⁉︎」
反射的に俺は鞘で正面から竜を突き刺した。ピシピシピシッと竜全体に亀裂が入る。
「何ッ……⁉︎」
「まだだ‼︎」
すると、死角から砕蜂が瞬歩で接近して来て、完全に捕まってしまった。
「捕らえたぞ‼︎」
「お、おまっ、お前らなぁ‼︎隊長が3人がかりで恥ずかしくねえのかよ‼︎」
「うるさい。死ね。尽敵螫殺、『雀ば……』」
「お前に捕まったって嬉しくねえんだよ貧乳が‼︎」
「んなっ……⁉︎」
解号の隙をついて力任せに背負い投げした。
よし、なんだかんだあと少しで四番隊隊舎だ!抜ける!
そう思った直後、何者かに頭を掴まれてグルングルン振り回され、壁にダンクシュートを叩き込むように叩き付けられた。
「グボァアッ⁉︎」
「何を暴れてるんですか?」
卯ノ花隊長だった。
「れつえもん‼︎あいつら、ひどいんだ!隊長格が揃いも揃って僕のことを虐めるんだ‼︎」
「……………」
すると、卯ノ花隊長は俺の事を離して隊長達の方に向かって、恐怖の笑顔で言った。
「どういうわけがあったのかは分かりませんが、私の部下への暴力は慎んでいただけますか?」
「し、しかし卯ノ花隊長。そいつは……」
「しかしもクソもありませんよ?砕蜂隊長」
うおお……この人、味方になるとここまで頼りになるのか……。
「いえーい、いいぞれつえもん‼︎もっと言ってや」
「あなたは黙ってなさい」
「ヘヴッ⁉︎」
また壁に叩き付けられた。
「………ふむ、卯ノ花隊長がそう仰るのなら仕方ないのう。行くぞ、そこの斑目だけ持って」
「「「了解」」」
「しかしのう、卯ノ花隊長。余り、そこの馬鹿者を甘やかさないようにのう」
「分かっております、総隊長」
四人の隊長は一角を担いで去って行った。あーあ……さようなら一角、今までありがとう。
………あれ?そういえば藍染隊長は何処へ行ったんだろうな……。確か、あの人は一角に眼鏡斬られてたはずなんだが…………、
「さて、水上副隊長」
俺の思考をせき止めるように、卯ノ花隊長は言った。
「覚悟は出来ていますね?」
………あっ、ヤベェ。激おこモードだ。
「仕事をサボった挙句、よその隊長に迷惑をかけるなんて、万死に値します。覚悟して下さい」
「あのっ、ごめ」
謝る間もなく、ボコボコにされた。