大虚に俺は突撃した。
大虚は再び胸から刀を生やして、突きを放って来る。それをジャンプして躱し、刀の上を走って大虚に接近して刀を振り下ろした。
大虚は腰の刀を抜いてガードする。
「ウオラァアアアアッッ‼︎」
正面から刀と刀がぶつかり合い、ギリギリと押しあった。
筋肉が軋む、刀身からメキメキと音が鳴る、それでも瞬きすらする事なく俺は力を入れた。
「ォォオオオオオラアッ‼︎」
思いっきり振り下ろし、俺の刀は大虚の刀をぶった斬って、正面から大虚の身体の表面をぶった斬った。
大虚も負けじと、折れた刀を俺の肩に突き刺すと、刀から手を離して俺の手首を掴み、その辺の木に叩きつけるようにブン投げた。
背中を強打した俺に、胸から出した剣を引っ込めて、もげた左腕から刀の刃を伸ばしてくる。俺は低姿勢になって、下からその刃を打ち払うと、後ろの折れかけの木を掴んで、無理矢理引き抜いて正面から振り下ろした。
打ち上げられた刀でその木をガードする大虚。その隙を突いて一気に接近すると、俺は左下から刀を振り上げた。
『グッ……‼︎』
身体をそらしてギリギリ回避する大虚。
すると、左腕の刀を横に振り抜いた。スパッと斬れた音がして、布が辺りに飛び散る。だが、それは俺が身代わりにした黒装束の破片だ。
俺は背後に回り込み、後ろから刀を振り下ろした。
『‼︎』
前に回避した大虚の背中が斬れる。
………なるほど、大体分かった。俺は肩に刺された刀を抜いて、その辺に放り投げた。
奴の伸びる刀はおそらく、体の一箇所からじゃないと出せない。なら、その刀を封じてやれば、奴の武器はなくなる。
再び俺は大虚に突撃。左腕の刀を引っ込めた大虚は、俺の刀を引き気味に回避した。
お前の狙いはわかってる。元々の刀が折られて、武器が一本になった今、お前は逃げに徹して、俺の動きがまた単調になったところをサクッと反撃するしかない。
俺はわざと動きを単調にした。刀を前に構えて、思いっきり特攻をカマす。その直後、大虚は左腕を俺に向けて、刀を放った。
それを俺は身体を回転させながら回避すると共に、刀で思いっきり横に払った。
『‼︎』
バギィンッと鈍い音が響き、大虚の姿勢が大きく崩れる。
直後、俺は刀で大虚の腹を突き刺そうとした。払われた刀を強引に戻した大虚は、腹の前で刀を横にしてガードする。
「ッラァッ‼︎」
それでも俺は突きをやめなかった。
俺の刀が大虚の刀を貫通し、そのまま大虚の腹に突き刺さる。
「ァァァアァアアアアッッ‼︎‼︎」
さらに強引に押し込み、後ろの木に大虚を固定させた。
『ガッ………⁉︎』
俺は左手で腰の鞘を抜いて振り上げた。
「さぁて、ここからは撲殺タイムだ」
そう言って鞘を振り下ろそうとした時、大虚の肩から刀が伸びた。それが、俺の左手を貫通する。
『出セル刃ハ、一本ダケダト思ッタ?』
さらに、右肩からも刃が出て来て、俺の胸を貫通する。
『逃ゲラレナイノハ、ソッチ』
しまった、読み逃したか。この後に及んでまだブラフを掛けていたか。
だが、
「一手遅いな」
『………ナンダト?』
直後、俺の脇の下から伸びた砕蜂の雀蜂が、敵の蜂紋華に突き刺さった。
『⁉︎ コ、コレハ⁉︎』
「終わりだ、大虚」
『グォッ……ォォオオオオ‼︎⁉︎』
大虚は消滅した。
………ふぅ、任務完了だな。
「いやぁ、ナイス砕蜂」
「馬鹿者‼︎」
え、怒鳴られた。何よ急に?
「穴だらけではないか!なんという無茶苦茶な戦い方だ‼︎」
「穴だらけって……人間元々穴だらけだろ……って、あれ?」
本当だ。ていうかこの出血量、俺死ぬんじゃね?
「ふああああ⁉︎死ぬ、死ぬうううう‼︎」
「おい、仮にも四番隊が慌てるな」
「いやいやいや、だって死んじゃうものこれ‼︎もう死ぬってマジで‼︎やべっ、そう思うとなんか俺……」
身体の力が抜け、俺はドサッと倒れた。
その俺の真上に砕蜂は立った。………おお、まさか助けてくれるのか?そうだよなぁ、俺があんた助けたようなもんだし、そりゃそうだよなぁ……。
「そういえば、私の事を散々貧乳だなんだと言ってくれたな」
「えっ」
「少し覚悟しろよ」
邪悪に微笑むと、砕蜂は俺に馬乗りになるようにしゃがんだ。
「こちょこちょこちょ」
「うわっ、ぎゃはははっ!バカッ、やめっ……‼︎ふっはははは‼︎」
仕返しが可愛い!子供かあんたは‼︎
「って、バカ!くすぐった痛い‼︎これ傷口開く‼︎」
「知るか!少しは隊長を敬うということを教えてやろう」
「いだだだだ‼︎バッ、やめっ、死ぬ……‼︎」
「フハハハハ‼︎無様だな祐作うううううう‼︎」
「あ、ダメ、死んだ……」
「フハハハハ‼︎」
「………………」
「ハハハハ……あれ?なんか血が吹き出てきてる……」
「………………」
「あれ?だ、大丈夫だよね?起きれるよね祐作?」
「………………」
「へ、返事をしろおおおお‼︎祐作うううう‼︎」
「なあんちゃって、起きてました〜」
「雀蜂!」
「すいませんでした!」
「チッ、起きてるならさっさと行くぞ。大前田達は既に精霊廷に帰っている」
「いやー、そうしたいんですけどね……」
「なんだ、まだ私をからかうか?」
「そういうんじゃなくて、血ぃ抜きすぎてフラフラする。立てません」
「はぁ?」
「おんぶして」
「はぁ⁉︎」
仕方ないだろ……。もう身体動かないの、というか立てないの。
「ふざけるな!何故、私がそんな事を……!」
「だーかーらー、身体が動かないんだって。大丈夫、俺は貧乳には興味ないから」
そう言った直後、ピキッと砕蜂から嫌な音が聞こえた。
「貴様ぁ……さっきから貧乳貧乳とバカにしおって……‼︎ならば貴様に小さい胸の魅力を見せてやろう‼︎」
「えっ、いや結構です」
「見せてやる‼︎」
何を思ったのか、砕蜂は俺の事をお姫様抱っこした。
そして、押し付けるように自分の胸を俺の顔面に当ててくる。
「ほれほれ、どうだ?」
「やめろ!需要ないから!というか恥ずかしいから‼︎」
「ダメだ!このまま精霊廷に連れ帰る‼︎」
「ふざけんな!落ち着いて自分を客観視してみろ‼︎ヤバイ状況だぞこれ‼︎」
「貧乳をバカにした己を呪え‼︎」
「テメエエエエ‼︎男のプライドをなんだと思ってやがんだ‼︎」
「女のプライドをバカにした奴のセリフか‼︎」
ダメだこいつ、話を聞いてねえ‼︎なら謝るしかないか……。
「分かった、悪かった!だからせめておんぶ!そもそもおんぶしてもらうのもかなりプライド削ってるんだからな‼︎」
「ダメだ‼︎」
ええーこの人面倒臭い。………まぁ、恥ずかしい思いするこの人もだし、別にいいかもう。
それに、この時間なら誰も起きてないだろ。
このあと、ガッツリ卯ノ花隊長達に見つかり、今度は砕蜂と俺が付き合ってるという噂が流れ始めた。