卯ノ花さん護衛します!   作:杉山杉崎杉田

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6日目(続)

 

二班の捜索範囲に到着した。その場では、二班の二人が倒れていた。

 

「! 貴様ら……‼︎」

 

すでに息はない。すぐに辺りを見回した。

虚の気配はない。自分の班の班員に命令した。

 

「おい、バカとデブを呼べ」

 

「了解」

 

一人一つずつ持ってる無線機で通信した。

 

「ダメです、出ません!」

 

「何やってんだあのバカ達は‼︎」

 

 

あのバカ達。

 

「未来融合、フューチャーフュージョンを発動!デッキからブルーアイズを三体墓地に送り、俺は2ターン後にブルーアイズアルティメットドラゴンを特殊召喚する!」

 

「サイクロン」

 

「うおっ⁉︎またかよ!」

 

「お前少し夢見過ぎだろ。ロマンにも限度があるぞ」

 

遊戯王やってた。

 

 

油断なく辺りを見回す砕蜂。

すると、辺りが突然、黒い煙っぽいものに包まれていってることに気付いた。離脱し、煙を眺める。

 

「………これは、」

 

なんだ?と、続けようとした直後、煙から手が首に向かって伸びてきた。

 

「ッ!」

 

首を後ろに逸らしながら、その手首を掴んで、強引に煙から引っ張り出した。

 

「! こいつは……!」

 

目の前には大虚。人型のものだ。

 

「クッ……!こいつが例の……‼︎」

 

『死神、見ツケタ……』

 

そう呟かれ、再び攻撃して来る。それを回避しながら言い返した。

 

「ほう、言葉を話せるのか貴様は。虚にも意思というものがあるのか?」

 

『イイノ?余所見シテテ』

 

「………何?」

 

『オイラノ本体ハ、ズットオ前ノ後ロニイルケド』

 

「ッ⁉︎」

 

慌てて後ろを振り返るが、黒い煙が晴れた場所には誰もいない。

直後、後ろから蹴り飛ばされた。

 

「! 砕蜂隊長‼︎」

 

目の前の木に突っ込んだが、その木を踏み台にして受け身を取った。

 

(チィッ……!『本体』という意味深な言葉に騙された。奴はそれほどの知能を持ってるというのか?)

 

攻撃力は普通、よりも少し高い。だが、それ以上の知恵に若干怯みつつも、斬魄刀を出した。

 

「尽敵螫殺、『雀蜂』」

 

指に装着している短い斬魄刀を武器に、大虚に突撃しながら隊員の男に叫んだ。

 

「直接行ってバカ二人を呼んで来い!嫌だ面倒だとごねたら卯ノ花隊長にチクると言え!」

 

「了解しました!」

 

男が行ったのを見ながら、大虚と戦闘開始。

大虚の拳を回避したあと、雀蜂をボディに思いっきり叩き込んだ。

 

『グフッ……‼︎』

 

食らった胸を抑えながら、大虚は退がる。

自分の胸に出て来た黒い花の様な紋様を見る。

 

『ナニ、コレ……?』

 

「そいつが雀蜂の能力だ。その蜂紋華に次、私の雀蜂による攻撃が当たれば、貴様は死ぬ」

 

『!』

 

「二撃決殺、という奴だ。せいぜい気をつけろよ」

 

砕蜂は再び大虚に襲い掛かった。

拳で顔面へ殴り掛かり、それを大虚は回避すると、胸に突きが飛んで来た。それを左腕でガードしながら退がって距離を取る。

その左腕にも蜂紋華が出た。

 

『…………』

 

「次からは右腕でガードするんだな」

 

得意げにそう言いながら再び斬りかかった。

それをあっさり躱す大虚。直後、砕蜂は膝を振り上げた。大虚はその膝を左手でガードした。

その左手に雀蜂を振り下ろした。それを右手の平で受け止める大虚。

 

「これで右手ももらったぞ‼︎」

 

『オイラモ、アンタノ腕ヲモラッタヨ』

 

「何?」

 

刺された右手で、砕蜂の手ごと雀蜂を掴み、固定した。

 

『二回刺ササレルト死ヌナラ、一回目デ封ジレバイイ』

 

「グッ……‼︎離せ貴様……‼︎」

 

直後、大虚は腰の刀を抜き、下から振り抜いた。

砕蜂の身体から下から斬られ、血が大きく噴き出した。かろうじて後ろに体を反らし、傷を浅く済ませた。

 

「クソッ………‼︎」

 

『オット、躱シタカ。ダガ、次ハ仕留メル』

 

そう言って大虚が刀を振り上げた時だ。

 

「隊長‼︎」

 

大前田が叫びながら五形頭を振り下ろした。

ガンダムハンマーのような物が飛んで来て、大虚は後ろに飛びながら雀蜂を離して回避した。

 

『チィッ……援軍カ………』

 

「無事ですか隊長⁉︎」

 

「大前田………!」

 

砕蜂を庇うように大前田は立った。

 

「………水上はどうした?」

 

「俺がなんだよ貧乳」

 

後から眠そうに祐作が降りて来た。

 

「ふん、生きていたか無礼者」

 

「いいからいいから、治療するから服脱いで」

 

「えっ?」

 

祐作は砕蜂の服に手をかけた。

 

 

監視してる二人。

 

「「えっ」」

 

「え?脱がすん?水上が?砕蜂の服を?」

 

「……………」

 

「うわあ……砕蜂ちゃん、ホンッッットに胸ないなぁ」

 

「……………」

 

「水上くんもまるで気にしてないやないですか。驚く程真顔やないですか」

 

「……………」

 

「藍染さん」

 

「……………」

 

「もしかしてそれ、勃ってます?」

 

「……………」

 

 

「ちょっと、その傷では応急処置くらいしないと危ないですって。暴れんな」

 

「ば、馬鹿者離せ!異性だぞ私と貴様は‼︎」

 

「何、医療器具見ただけでテンション上がってんすか。ガキかテメーは」

 

「そ、そういう問題じゃない‼︎自分でやるから‼︎異性だと言ってるだろ‼︎」

 

「オメーごときのオッパイで興奮なんかしねーよ。男前な身体しやがって」

 

「こ、殺す‼︎お前ほんとに後で殺す‼︎」

 

「治療してやるだけでもありがたく思えバーロー。えーっと、消毒ってどうやるんだっけ?傷口に塗るんだっけ」

 

「ぎゃああああ‼︎いだだだだだ‼︎なんか不安なんだけどあんたの応急処置‼︎」

 

「おい、素が出てんぞ」

 

ったく、いつまで経ってもガキなんだからこいつは……。

このままじゃあ、足止めしてくれてる大前田も保たねえぞ……。

そう思った直後、ズシャアァアァッと隣に大前田が転がってきた。

 

「クソッ……‼︎オイ水上、まだか?」

 

「お前んとこの隊長が暴れて中々治療させてくれねーんだよ」

 

「う、うるさい!責めてもっとこう……やり方というものがあるだろ‼︎」

 

「うるせーのはテメーだよカス。そもそも何あんなのにやられてんの」

 

「うぐっ……‼︎」

 

「おい、大前田。消毒は終わらせたから、なんかエロい感じに包帯巻いてやってくれ」

 

「わ、分かった。お前は?」

 

「お前もこの人も勝てねえんなら、俺しかいねえだろ」

 

俺は浅打を抜いて大虚の方に歩いて行った。

 

『次ハオ前?』

 

「おう。シロー・アマダってんだ。よろしくな」

 

意味のない嘘をついてみた。

 

『オ前ハ楽シマセテクレルノ?』

 

「御託はいいからさっさと掛かって来い。もう眠いんだよ」

 

『…………』

 

直後、大虚は腰の刀を抜いて斬り掛かった。

それをガードしようと、右手で刀を抜いて頭上に構えた直後、大虚は刀から手を離して、ガラ空きの俺の腹に拳を振り抜いて来た。

それを俺は膝を上げてガードして、左手で鞘を抜いて大虚の顎を殴りあげた。

 

『ガッ……⁉︎』

 

そのまま刀を大虚の腹に突き込んだ。貫通させた後、腹を足で蹴り込んだ。

蹴り飛ばされながらも受け身を取った大虚は、ジッと俺の顔を見てくる。

 

「虚が俺にブラフを掛けようなんて十年はえーよ」

 

『…………』

 

「おら、どうした?掛かって来い。化かし合いなら負けね……」

 

『ソウジャナクテ、耳ドウシタノ?』

 

「えっ」

 

『ナンカ無クテ遠慮シチャッタケド』

 

「………………」

 

俺は少し目を逸らしながらソッと耳に手を当てた。

 

「え、い、いや別に。ちょっと、落ちた」

 

『落チタ?ナンデ?』

 

「や、その、ちょっと邪魔だったから……」

 

『エ?邪魔デ耳ヲ取ッタノ?ワザワザ?痛イノニ?』

 

「わざと取ったって言うか……てか、なに、急に。て、敵に心配されたくないんだけど」

 

『ヤ、ワザワザ遠慮シチャッタダケナノニ、ナンカ「化かし合いなら負けねーよ、キリッ」トカ言イ出スシ、……チョット、面白クテ………』

 

その大虚の言い様に、大前田と砕蜂はプフッと吹き出した。

俺の頬がドンドンと赤くなっていくのが分かった。多分、顔真っ赤。

 

『モシカシテ、戦闘中ノ俺カッコイイトカ思ッチャッテルノ?』

 

「お、思ってねえし‼︎ただ、前回の時も今回の時もちょっと良いとこあっただけだし‼︎」

 

『ナwルwシwスwトwww』

 

ブチッと俺の何かがキレる音がした。

 

「うるせええええええ‼︎てんめええええええブッッッ殺おおおおおおす‼︎‼︎」

 

『ケラケラケラケラwww』

 

「笑ってんじゃねええええ‼︎」

 

ジャンプして浅打を振り上げて、思いっきり大虚に振り下ろした。

バゴォッと轟音と共に俺の浅打は地面を抉り、砂煙が舞い上がった。大虚は刀が当たる直前に後ろに跳んで回避した。

俺もすかさずジャンプして、大虚に追撃した。

 

『クッ、早イナ……‼︎』

 

「俺別に全然カッコつけようもなんてしねェし‼︎ちょっと雰囲気的にそういう事言った方が良いかなって思っただけだしィッ‼︎」

 

『マダソノ話シテンノ……?イヤ、カッコツケタクナルキモチ、オイラ若干分カルカラモウ弄ルノ止メヨウト思ッテタンダケド……』

 

「うるせええええ‼︎あとで貧乳とデブに弄られる未来しか見えねえだろうがああああ‼︎」

 

『オ前思ッタヨリ繊細ダナ‼︎』

 

浅打を横から振り、それをジャンプで躱す大虚。そこに手を伸ばし、首を掴むと顔面に刀を突き刺そうとした。

首を横に捻って躱され、大虚は刀を俺の腕に振るった。俺が手を離して回避した直後、顔面に拳が直撃し、俺は落下した。

 

「痛ぇな」

 

その俺に刀を突き刺すように大虚は降って来る。それを回避し、距離を取ると、追撃して来た。

俺に向かって突きを放って来たが、それを紙一重で回避した。

 

『!』

 

「もみ上げが散った」

 

胸に刀で突きを放った。それを左腕でガードする大虚。俺は横に刀を振り抜いて、左腕を落とした。

 

「はい、まず一本」

 

『チィッ……‼︎』

 

この前の奴ほど強くない。知力の分、戦闘力は落ちてるのか?まぁ、虚の知能が人間レベルになった所で問題にはならない。

俺をナルシスト呼ばわりした事を後悔させてやる。

そう思って再び斬りかかった直後、大虚は刀を飲み込んだ。

 

「⁉︎」

 

厄介な何かをしてくる。そう確信があったから、発動される前に斬ろうとした。

直後、大虚の胸から極太い刀の刀身が出て来た。

 

「ッ‼︎」

 

慌てて横に回避したが、右腕を掠めた。掠めただけでこの出血量はヤバイな。俺は距離を取りつつ、服の袖を引き裂いて、傷口を結んだ。良かった、応急処置を学んでおいて。

 

「! 水上、大丈夫か⁉︎」

 

砕蜂隊長が俺の横に駆け寄る。サラシ巻いてる姿みたいなのに全然ムラッと来ない。

 

「………今、失礼な事考えただろう」

 

「気の所為ですよ」

 

「どうする?やれるか?」

 

「相手の能力が分からない以上は厳しいでしょ。単調な動きになったところを読まれた。多分、知力は残したままだな。まぁ、やるしかないのは分かってるよ」

 

「クソッ……もう一撃、私の雀蜂が胸に刺せれば……」

 

「なに、どゆこと?」

 

「私の斬魄刀の能力だ。刺した箇所に蜂紋華が付き、そこにもう一度刺せれば、問答無用で相手を殺せる」

 

「なら、それに繋げよう。俺が奴の能力を把握して、それと共に隙を作るから、トドメは頼むわ」

 

「分かった」

 

俺と砕蜂隊長は並んで大虚と向かい合った。

 

 


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