女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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鈴村健一さんの「初恋の絵本 another story」が素晴らしくいいです
もし、お暇があれば聞いてみてください

え、前書きってなんか前座みたいなことして読者の心を鷲掴みィ!
にするためのものなんじゃ……え?鷲掴みできてないって?
アハハ……


では、どうぞ(無理矢理)


やはり、ただで食う飯は美味い

 

 

 

 

『拝啓、お母様、親父、親愛なる妹小町へ

 

私がゲーム会社に勤めてもう2週間ほどになりますが、そちらはいかがお過ごしでしょうか?

こちらはというと労働基準法どおりの勤務時間、お休みを頂いています。』

 

休憩時間を使いそこまでペンを走らせていると意外な人物に声をかけられた。同期の涼風青葉である。

 

「どうしたらいいのかなぁ……」

 

「いや、俺に言われてもな…」

 

ことの次第は1週間前。

今回作ってるゲーム、名称は一応決まってるらしいがまだ未発表ということで俺達には明かされていない。まぁ、明かされてるけどあくまで仮だ。もし、ゲームの出来が悪ければ白紙に戻るケースもある。そういうことも含めての(仮)ってやつだ。

 

しかし、ガールフレンドはいつまでたっても(仮)で俺の携帯から飛び出して来てくれないので難儀である。

 

話は逸れたがそのゲームでの主人公が街で動いている姿を見せてもらった時のことだ。

その主人公が動いている街に村人がいなかったのだ。

それでその村人達を涼風が作ることになったのだが……

 

なかなか八神さんにOKを貰えず困っていて俺に相談に来たというわけだ。

 

ちなみに村人とか直接操作しないキャラのことをNPC、つまりノンプレイヤーキャラって言うんだ。逆に操作できるキャラはPC

これテストに出るから覚えとけよ。

あと、猫町っていうとこの村人はすべて完成してるらしく、制作は滝本先輩らしい。さすが女神。

 

「だって、比企谷君もキャラ作ってるんでしょ?」

 

「まぁな」

 

といっても、敵モンスターとか山賊とかのやられ役だが。

 

「何体くらい作ってるの?」

 

「そうだな、今作ってるので2体目くらいだ」

 

「もうそんなに!?」

 

「驚くことないだろ。……まぁ、そっちは八神さんだし少し手厳しいのかもしれんが」

 

飯島先輩は意味不明だけどな。一体目の時、『ちゃうねんて、こいつはもっとどひゃーって!感じでばあーって!感じやねん』とか言われたからな。どういうことだよ、擬音語で説明するなよ!って思ったけどやりましたよ!必死に!その結果があれなんですよ!

 

『ん〜まぁ、いいんちゃう?気になるとこはウチが手直ししとくわ』

 

線画も!色塗りも頑張ったのに!その結果が『手直ししとくわ』だってさ!

 

あと、エラーコードのこと注意されました。はい。

それでプログラムの人達に怒られるから気をつけや……ってもっと早く言って欲しかった。

 

さて、珍しく俺が、しかも同期で女子に相談されてるわけだ。

可哀想に俺以外に相談するヤツいなかったんだな…って思ったらはじめ先輩とか飯島先輩にも相談していたようだ。

なるほど、俺は一番最後か。知ってた。

 

「参考になるかわからんが、とりあえず今作ってる村人見せてもらっていいか?」

 

俺が聞くと涼風は「うん!」と嬉しそうな顔をした後、キャラの制作画面を見せる。

 

「見た感じ悪くなさそうだが……」

 

そう、見た感じだ。よく観れば、気になる点は意外に多い。

 

「そうだな、これでダメならもっと細かいとこにこだわってみるしかないな」

 

「細かいところ……?」

 

「あぁ、例えば服のシワとかカバンと靴のデザイン、髪の光の当たり方…くらいか」

 

俺が言い終えると涼風はじーっと俺を見つめ、その目線をパソコンの画面に移すとタッチペンを取ると俺に笑顔で

 

「うん……よし、頑張ってみるよ!」

 

俺はその言葉に頷き、自分の席に戻った。

戻ったら俺の机に追加でキャラの設定集やらが置かれ、その上に『追加分よろしくな〜』と書かれていた。

 

うん、人のことしてる場合じゃなかった。

 

 

###

 

あれから数日後、涼風のキャラは無事完成したらしく、俺と同じく3日で1人(俺は1体だが)作れと言われたそうだ。

せめて、4日に?無理に決まってるだろ。そんなに現実は甘くないんだよ……!!でも、最終的に1日1体と聞かされた時は泣きたかった。

 

そして……

 

 

「それではちょっと遅くなっちゃいましたが涼風青葉ちゃん、比企谷八幡くんの新人歓迎会を行いたいと思います……乾杯!」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

 

 

遠山先輩の音頭で全員のグラスがカンっと音を立て乾杯のアレをする。その後、俺はコーラをグイッと飲み干し目の前でグツグツ煮え立っている鍋に目を向ける。

 

「今日は会社のおごりだから、みんな好きなだけ飲んで食べてね!よっしゃー!食うぜー!」

 

八神さんはビールを少し飲み、箸を素早く掴み肉を何枚も一気に持っていく。それに不満があったのは俺だけではなく、はじめ先輩が

「あ!そんなに肉を持ってかないでくださいよ!」

と言いながら俺の狙ってた鶏肉を持っていったことは絶対に忘れないだろう。

 

###

 

 

男は俺1人と傍から見れば羨ましいのかもしれないが童貞の俺にはかなり厳しく、俺は端の方で肉や野菜をバランスよく食べつつ、炭酸飲料で喉を潤していると滝本先輩が気になったのか、心配になったのか小さな声で話しかけてきた。

 

「比企谷君はこういう飲み会は初めて……?」

 

「そうすっね…昔、高校の文化祭の後に知り合いとお好み焼き屋さんに行ったことがあって……」

 

まぁ、あれは飲み会じゃなくて後夜祭、打ち上げとかいうやつか。

しかも、前回は男子が俺以外に2人いたしな……戸塚どうしてるかな……

 

「そうなんだ…じゃ…な、慣れてるの?」

 

「まぁ……微妙って感じですね」

 

俺がそう言うと滝本先輩は「そ、そうなんだ……」と苦笑いを浮かべる。ごめんなさい、そういうのに全く誘われない質でして。

 

「まぁ、これから慣れたらいいんだよ…私もまだ慣れてないし…」

 

この時俺は思い知った。

滝本先輩の慈愛に

お姉さんの素晴らしさに

まるでめぐめぐりっしゅ先輩のような和らぎ安心慈愛に触れた俺は滝本先輩のことを心の中でひふみ先輩と呼ぶことにした。

 

 

###

 

 

酔っ払った歳上の女性ほどめんどくさい人はいないんじゃないかと思う。母親しかり、平塚先生もそうだ。酒を飲んで酔っ払うと面倒な絡み方をされてたまらない。

 

だが、ここの人は意外に酒に強いのか今のところ酔い潰れているのは飯島先輩だけらしく、ひふみ先輩は日本酒を度々俺に頼むように頼んでは美味しそうに飲んでいる。どうやら、ひふみ先輩はお酒にかなり強いようだ。

 

しかし、今、酔っ払った八神さんが涼風いじりに飽きたのか俺にターゲットをつけた。

 

「なんだよ〜青葉はいないのか〜。じゃ、比企谷君は?」

 

「……何がですか?」

 

「きまってんじゃーん、彼女だよ!彼女!いたことないのー?」

 

「……俺にいると思います?」

 

俺が遠い目をして言うと八神さんは申し訳なさそうに「な、なんかごめんね。あ、なにか飲む?」と同情したようになったのでお返しに「そういう八神さんはどうなんですか?」と言ったらめちゃくちゃ照れていたので写真に収めたかった。

 

 

###

 

 

新人歓迎会も時間が経ち、遠山さんも強い酒を飲んだのかぐったりしており飯島先輩と共にダウンしてしまったようだ。それに対して八神さん、はじめさんはワイワイしていた。てか、なんでモーション班のはじめさんがいるのはなぜかと考えたが、まぁ、仲良くしてもらってるしいいかとなった。

 

涼風は俺のいない間にひふみ先輩に日本酒を頼むように言われたのか飲み方(ロックか水割りかソーダ割り)について聞かれて戸惑ってしまったという話をされて、そん時の涼風が可愛かったので心のメモリーに閉じ込めておいた。

 

てか、この会社の女の人って可愛いと思うんだよな。なんで、彼氏いないんだろ。

 

とりあえず、俺は会社から金が出るということもあっていつもは頼まないような肉とかサイドメニューを食べていた。

 

だって、端っこの方にいるから何頼んでも気付かれないんだよな。

まぁ、ひふみ先輩はたまに「……これもらっていい……?」って聞いてくるから一緒に食べたりしてたんだぜ! 最高かよ

 

 

そんなこんなでラストオーダーになりましたとさ。

 

 

 

 

 

「えーそれではもうお開きみたいなんですが、二次会くる人!」

 

 

と八神さんに聞かれたが俺はすぐにひふみ先輩を送るから断ろうとしたら…

あれ?ひふみ先輩いないじゃん。

 

行こうとしたら、もう八神さん、遠山さんと涼風が3人でどっか行ってたし、はじめ先輩と飯島先輩はもう帰ってたので俺はゆっくりと帰路につくのであった。

 

 

 


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