女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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久しぶりのひふみ先輩回だぞ!喜べ貴様ら!
久しぶりすぎて軽くキャラ崩壊してるかもしれない……そこはすまない……。


アニメは明日で最終回ですね……それに合わせて予約投稿しております。一応、オリキャラ?が出ますがあくまでレラジェとかと同じゲームのキャラクターです。では、。


滝本ひふみは狙い澄ましている。

 

PECOのマスターアップを終えてから数日。やることも終わって暇というわけもなく、東京ゲーム展に向けて与えられた仕事を丁寧丁寧にこなして、休む暇もありつつステップも踏む余裕があるくらいに捗っていた。余裕すぎて1人でカーニバってしまうくらいであったし、半日で仕事が片付いてしまい、俺は手持ち無沙汰となってしまった。優秀すぎるのも考えものである。……実を言うと、そんなに仕事が無かったのだが。

 

 

一応、言及しておくと東京ゲーム展とは、非モテ夏の三大名物と称されるものの一つである。残り二つはコミケと透けブラと薄着。決めたのは俺と材木座であることは言うまでもない。

 

 

 

入場無料でゲームを楽しめ、新作ゲームの最新情報を誰よりも早く手に入れられるゲームヲタクにとっては至高の場であることは間違いない。が、最近ではSNSの普及が進んで東京ゲーム展に来る前に情報を投稿されて知ってしまうなど、人によってはわりと不快な思いをすることもある。ちなみに俺はそういうのは気にしない。なぜなら結局知ることになるのなら構わないだろうという思考だ。まぁ、ガセネタだったら流石に怒るが。

 

 

 

コミケもあの合戦のような人の嵐を駆け抜けなければならないことを除けば、好きなサークルの絵を覗くことができたり、流行りのネタのコスプレやカッコよかったり可愛いコスプレを目にしたりできるのだ。しかも、これも交通費さえ考えなければタダなのである。薄着や透けブラに関しては外に出れば無償で見れるのだが、別に興味ないとか材木座に言えなかったです。

 

 

 

さてさて、そんなこんなで東京ゲーム展に来ましたよっと。どういう事だよ、説明しろ苗木!とか言われても、「今日はすることないから行ってきたら?」とか言われたから。それに、と視線を横にずらすとホクホク顔でキャリーバッグを引くひふみ先輩の顔が映る。

フェミニンなブラウスに白スカートと春っぽい装いで、頭に付けたピンク色のシュシュと相まって春の始まりを告げているかのようだ。今は夏なんだがそこは気にしない。

 

 

 

『また、一緒にコスプレ……やらない?(>_<)』

 

 

とかメールされたら断れませんよね。いや、色々と理由を付ければ断れたのだが。そんなことするとひふみ先輩に嫌われちゃう!『それくらいで嫌われるってことはその程度の関係性だったんだろ』とか思っちゃったけど、地味に冬コミも参加しようねと言われたのにしなかったからそれの罪滅ぼしみたいな感じなんだよな。

 

 

 

「ひふみ先輩、今日は何のコスプレ持ってきたんですか?」

 

 

さっきからうふふと頬が緩みっぱなしで可愛いひふみ先輩に尋ねると聞こえてないのか答えは返ってこなかった。多分あれだな、つくまでのお楽しみということなんだろう。そうに違いない。我ながら名推理だ。

 

 

 

駅から数分ほど歩くとガヤガヤと喧騒が耳に入ってくる。人が増えたためか、ひふみ先輩はさきほどの顔は失せていつものように人とトラブルに合わないように安全運転で歩いていた。

 

 

 

「やっぱり、この辺りまでくると…人多いね」

 

 

ひふみ先輩の言う通り会場に近くなればなるほど、人は多くなってくる。しかし、ひふみ先輩は俺よりも東京ゲーム展に来た回数は多いし、なんならコミケの人の多さも経験してるはずだが、あまり慣れてない様子だ。やはり、コミュ症は人混みに慣れることができない種族なのだろうか。そう首を傾げていると、後ろから「おーい!」と元気な声が聞こえてくる。

 

 

 

振り返ると、『やる気 元気』と書かれたノースリーブのシャツに大胆な太ももを露わにするようなショートパンツを履いているはじめさんがこちらに向かって走ってきていた。何度か人にぶつかりそうになって謝りながらようやく近くまでやってくる。

 

 

 

「いやー、良かったよ知り合いに会えて」

 

 

 

一息ついてペットボトルを取り出して水分を補給するはじめさん。ぷはぁ!と生き返ったように息を吐くと湧き出している汗を拭う。

 

 

 

「八幡も一人で来てたんだね。言ってくれたら一緒に来たのに」

 

 

 

何を言ってるんだはじめさんは。俺の隣には今日を誰よりも楽しみにしていた人がいるだろうと、隣を向くとそこにひふみ先輩の姿は無かった。

 

 

「? どうしたの八幡?キョロキョロなんかして」

 

 

 

辺りを見渡してひふみ先輩を探すが姿形もなく、俺は「なんでもないです」と口にする。ひふみ先輩見ませんでしたか?と聞こうとも思ったが、口に出さないことから見てなかったのは明白である。故にひふみ先輩ははじめさんの接近に感づいてここから消えたと見て間違いないだろう。なんなのあの人、直感EXかよ。おそらく、自己防衛本能とも呼べるものなのだろうが、同じ会社の知り合いにまで発動するとは悲しいなあ。

 

 

 

「さて、どこから回ろうか!」

 

 

 

建物の中に入ると様々な企業が最新ゲームの試供プレイや、最新映像を公開しており、外の喧騒とは違った形でこちらは盛り上がっていた。はじめさんはどうやら完全に俺と回る気らしくマップを見ながら「ここなんてどうかな!」と目を輝かかせていた。

 

 

「じゃ、俺はこのへん回るんでまた後で」

 

 

 

「は?」

 

 

 

華麗にモンファンブースに向かおうとするとはじめさんに肩をガシッと掴まれる。

 

 

「えっと、八幡は私と回るの……嫌?」

 

 

振り返るとそこにいたのは鬼のような形相ではなく、結構不安そうな顔をしたはじめさん。アイエエエ!?ナンデ!?となったが、そう思うのも無理ないか。

 

 

 

「いえ、俺はこっち見たいんではじめさんがあそこ見たいんなら別行動の方がいいかと思ったんですが」

 

 

「あ、そっかー!なるほどね!八幡賢い!じゃ、また後でね!」

 

 

そう言ってビューンと駆け足で目的のコンテンツコーナーに向かうはじめさんを見てまるで嵐のような人だなと思ってしまう。あながち間違いではないのだが。怒られると予想していたから、これはかなりついてるかもしれないと拳を握る。

さて、俺も行くべきところに行くとしよう。今回は一般日ではないから、人も少ないほうなので伸び伸びと回れそうだ。にしても、何か大切なことを忘れてるような。そう思っていると背筋にゾクッと悪寒のようなものが走る。

 

 

「……は、八幡……?」

 

 

唐突に声をかけられて振り向けば、まるで春がやってきたかのような錯覚を覚える装いをした美少女が……と思ったらひふみ先輩だったぜ。さっきぶりですね、と軽くあいさつをしようとしたが顔をよく見ると、来た時のホクホク顔ではなく刺し穿つような瞳が俺に向けられていた。薄く瞳は潤んでおり、どことなく怒っている様子だ。

 

 

 

「か、勝手にいなくなって…ごめん…ね…」

 

 

 

紡がれたのは謝罪の言葉でひふみ先輩は頭を下げる。びっくりしたー……泣かれて怒られるのかと思った……。ホッと胸を撫で下ろしていると、ひふみ先輩に手を掴まれる。

 

 

「じゃ、行こっか」

 

 

行くってどこにとか、なんで急にいなくなったのかとかいう前に繋がれた手に意識を持ってかれて、その言葉は口にできずに俺は引っ張られるままにその足を進めた。

 

 

 

###

 

 

ある龍は言った。原初に還れ、と。その原初とは生まれる前の母胎の中なのか、本当に居るべき場所なのかは分からないが、俺は帰ってきたぜ。

懐かしいのピンクのタイルの床に、俺が入ってくることを確認するとウィィンと音を立てて開く蓋。今や慣れたものだが、学校のトイレにはこんな機能はなかった。

 

 

 

「……これ、着て」

 

 

 

ここに連れ込んだ主はキャリーバッグから取り出した紙袋の中に入っていたコスプレ用の衣装を俺に渡してくる。

また、ここで着替えるのか。前回もこんなことがあった気がする。いや、前は女子トイレだったんだけど、今回は多目的トイレなんだよね。どこが違うのかというと、とりあえず多目的なんだよ。でも、着替え用のトイレじゃないと思うんだ。

 

 

「あの、着替えるんで後ろ向いてて貰っていいですか?」

 

 

 

「あ、うん…」

 

 

 

顔を赤くして慌てて後ろを振り向くひふみ先輩を尻目に上の服を脱ぐ。コミケも入れると3回目なのだが、その時は男子用の更衣室だったから今よりは気が楽だったかもしれない。会社の先輩で女の人(しかも可愛い)が後ろにいる状況で平常心で着替えられるわけねぇから!

そういえば、ひふみ先輩も着替えてなかったような…とコスプレ用の服を着ながら振り向くと、噎せた。

きめ細かな白い肌に桜色のブラの紐、ピンク色のシュシュを解いてそれを口に咥えるひふみ先輩。どういうことかと言うと、ひふみ先輩もお着替えタイムということだ。それも俺と背中合わせで。

なんだこの状況。おそらく、100人の男性に聞いたら100人の男性が「羨ましい!氏ね!」というシチュエーションだ。これなんてエロゲ?今回のゲーム展に出典されてないかと材木座あたりが聞いてきそうだ。

にしても、あのひふみ先輩が俺の後ろで着替えてる……あ、やべ……ちょっとタンマ。うーん、落ち着け!もう一人の俺!大きく深呼吸して息を整えて素早く脱衣!下を履いて何も見なかったかのように、カツラを被って袋の中の小道具を手に持ち、いざ戦場へ!と準備万端にして待っていると、よし、と呟く声が聞こえる。

 

 

「八幡、着替え…終わった?」

 

 

さきほどの春らしい衣装から一気にチェンジ。紅蓮のように燃え盛るような赤い和服に手に持たれた短刀のレプリカ。そして、高めの位置で結ばれたポニーテール。フェアリーズ・ストーリー3でひふみ先輩が担当したキャラ「ヒガンバナ」のコスプレだろう。

メインストーリーでソフィアとレラジェとの別れが終わったあとに出てくるキャラクターで、彼岸花の花言葉を体現したキャラと言える存在だ。

 

 

情熱的な性格だが孤高。その理由は愛する人との別れが原因であり、最期は虚しく、待ち焦がれた人は既に死んでおりそれによるショックで自暴自棄になっていたところを死の精霊につけ込まれ、主人公達に打ち倒されるというものであった。このストーリーを見た時は葉月さんの頬にグーパンを食らわせてやろうと思った。もちろん、拳で。

 

 

 

「終わりましたよ…相変わらず寸法ピッタリですね」

 

 

 

俺の衣装はレラジェだ。服を着替えて目の下にクマを入れて、カツラを被れば完成である。さすが、俺が元になったキャラクターである。恥ずかしい。

 

 

 

「そっか、よかった……よく…似合ってるよ」

 

 

 

「ひふみ先輩も綺麗ですよ」

 

 

 

お互いに自分の担当したキャラのコスプレをするというのは、自担のキャラ好きすぎかよとか言われそうだが、あながち否定出来ないのが悲しいところだ。そろそろ、出ようかとひふみ先輩に声をかけようとすると俯いていた。

 

 

「どうかしましたか?」

 

 

 

「なっ!な、なんでもないから……さ、先に出てて!」

 

 

 

心配したが返って迷惑だったのか、出るのを急かされたのでお先にと周りに人がいないことを確かめてから多目的トイレの個室から出る。そこまで長い時間いなかったと思うのだが、体感時間では相当いたのではないかと錯覚してしまう。いわゆる、CROSSROADS状態である。初耳だろうが俺も今初めて言ったからお相子ってことで。

 

 

「あ、あれレラジェじゃね?」

 

 

「マジ? うわ、ホントだー!クオリティたけぇ!」

 

 

「写真いいですかー!?」

 

 

コインロッカーに荷物を預けて会場に戻るといきなり色んな人から好奇の目で見られる。中には握手を求めてきたり、どこのレイヤーさんですかとか聞いてくる人もいたが、そこは「名乗る名など持たぬ」とか言って誤魔化しておいた。レラジェの初登場の時に主人公に名前を問われた時の返しなんですけどね、キャハッ!

 

 

「す、すごい……比企谷さんくらい似てる……!!」

 

 

「こうして見ると八幡とそっくりだな……1枚撮って送ってあげよ!」

 

 

 

そりゃいるよね知り合い。関係者は入れるもんね!でも、ここまで早くに見つかるとは予想外である。しかし、特に俺だとバレてる様子は無くて良かった。多分、俺がコスプレするわけないと思ってるおかげなのだろうか。普段の行いって大事だな!

弓を構えたり、適当なポーズを取っていると急に歓声が上がる。何事かと、背後を盗み見るように振り向くと容姿端麗でまるで美しさを身にまとった様な人が現れる。

 

 

 

この日を待っていました。と、その雰囲気が全てを物語っていた。ゲームで見せていた堅苦しい表情ではなく、柔和な笑顔を浮かべてこちらに歩いてくる。

 

 

 

「ヒガンバナ!ヒガンバナですよ!はじめさん!」

 

 

 

「ももちゃん、そんなに言わなくてもわかるけど……レラジェとヒガンバナって関連性あったっけ……」

 

 

 

「知らないんですか!ヒガンバナの待ち人はレラジェだったんですよ!」

 

 

 

「マジで!!?」

 

 

 

身内がうるさかったので耳を傾けていると衝撃的な設定が明かされてしまった。一体どういう訳ですか、わかるように説明してくれ。

 

 

 

「クリア後に開放されるアナザーストーリー見てないんですか……?」

 

 

 

「え、あ、うーん、ソフィアちゃんとかナイトとかは見たんだけど……てか、レラジェとかヒガンバナのってあった?」

 

 

「ありますよ!ハードモードでレラジェを自分の体力を半分以上残してクリア達成すれば出ます。ヒガンバナも同じ条件です」

 

 

 

えぇ……ハードモードのあの二人を体力半分以上残して倒すとか、マジでハードモードじゃん。ゲームなんだからそれくらい優しくしてやれよ…。攻略Wikiとか見なかったからそういうのは知らねぇんだよな。また今度、ようつべで実況動画見よう、そうしよう。

 

 

 

そう心に誓うと、ひふみ先輩は俺の隣まで来ており表情を崩さずに腕を組んでくる。その時に黄色い歓声が上がり、綺麗すぎる待ち人と周りの空気に当てられて少し恥ずかしい気分になってしまう。しかも、柔らかい双丘が当たってるわけで。ひふみ先輩の方を見ると、ぴたっと目が合う。

 

 

 

「……また、よろしくね……」

 

 

 

潤った唇が動き、まるで感謝するかのように、次もあることを告げるような言葉に思わず胸が高鳴る。不思議と嫌でもなく、むしろ嬉しいと思ってしまう。誰かに必要とされることで幸福感や高揚感を感じることは昔から無意識的にあったが、今回は少し違う気がした。

一年前では到底考えられないこの状況に苦笑しつつも、横で艶めかしい妖美を放って立っている人ともに同じ舞台を楽しむことにした。




オリキャラだけどゲームキャラだしいいかなって。


詳しい説明。

ヒガンバナ。
情熱的なハートを持つが、人付き合いが苦手かつ優秀すぎるが故に孤高である。炎系の魔法を得意とし、剣と鈍器を扱う。愛する者と出会うために村を出て、その途中で主人公達と出会う。そして、最期は戦場に咲く花のように散っていった。


戦闘ボイス
味方時
戦闘開始「さて、どうやって潰そうか!」
魔法使用「我が真紅の炎を受けよ!プロミネンス!」
近接攻撃「躱せるものなら躱してみよ!」
戦闘終了「この程度で私を倒せるとでも思ったのか?たわけ…」


敵対時
戦闘開始「うそだ……うそだ……うそだ……!!」
魔法使用「我が絶望を味わえ!プロミネンスメテオ!」
近接攻撃「もう私は自分を抑えきれない!!」
戦闘終了「あぁ……!!ああああああああッッッ!!!!」


アナザーストーリー。

愛する者というのはレラジェ。年齢は19歳くらいでレラジェより歳上。レラジェと同じ村で育ち、親同士の取り決めで許婚となるが、16の時にレラジェが村のしきたりを破ったことにより彼が村から追放されて離れ離れとなる。その際に「もし、俺が今のあんたと同じくらいになるまで生きていたなら、俺はあんたを幸せにしてみせると誓おう」と言い残し、村を去る。
レラジェは村で学んで技術や知識を活かして盗賊となり、数年間食い繋いで生きていくが、ある時に1人の女の子(ソフィア)or主人公を守るために死んでしまう。
レラジェが死ぬ前に村から出ることを許可されたヒガンバナはレラジェを探しに出るが、主人公らと合流した時には既に……。


メインストーリークリア後の2巡目にエクストラモードを選択した場合のみ彼らが出会うであろうルートが存在するはずだが、そのルートではレラジェはソフィアに言い寄られているため、おそらく続きがあるとすれば修羅場である。




見た目はひふみ先輩のコスプレそのもの。葉月さんの指示である。
名前の由来は作者の好きな花から。綺麗だけど、悲壮的だよな。

こんかいのおまけはなし!さぁ、次の話は0時に投稿だよ!




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