女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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FGOメンテ長すぎて書けちゃった☆
ストックとして予約投稿出しといたぜ!

書いた日(8/24)


ちなみにもう1話ストックあるんだぜ……(明後日出るよ)


望月紅葉は察しが悪い。

 

お仕事たくさん、楽しくなっちゃうなー!カキカキ、カキカキ、あっち描いて、カキカキ!こっち描いてカキカキ!うわぁ、全然無くならない。新しい仕事を貰ってから2週間経つのだが、まだまだ残っている。まぁ、今まで作った3Dモデリングのクオリティアップとかだからそんなに大変ではない。さっきまで描いてたのなんだよって?OKマークだよ。

 

 

もう新しいモデリングの担当はゆん先輩とか望月に託されたわけなので、俺は今まで自分が作ったのも含めて、おかしな所(大きさ、光の加減、色指定のミスなど)がないか発注書と見比べてやっていかねばならんのだ。こういうのは普通、ひふみ先輩とかゆん先輩のような熟練者というか慣れてる人がやるべきだと思うの。

 

 

「おっ昼だー!」

 

 

はじめさんがパソコンのキーボードから手を離して、バンザイしながら立ち上がる。相変わらず健康そうな脇をしてらっしゃる。毛細血管がたくさん詰まってるらしいが視認できなくて残念。できても嫌な気しかしないと思うが。

 

 

「私はお弁当買いに行こうかなって」

 

 

「いいね」

 

 

「ほんなら私も」

 

 

お昼ご飯となるとやはり昼休み。至福の時間である。この時間、俺は屋上でただ1人孤独なグルメを楽しむ。今日のお供はカルビ弁当だ。脂が乗っててオラワクワクすっぞ!

 

 

「で、八幡とももちゃんは今日も……」

 

 

俺はコンビニの袋を手に取り、望月は風呂敷からラップに包まれた巨大なおにぎりを出現させる。それに涼風は苦笑いを浮かべる。

 

 

「相変わらず大きいね、そのおにぎり…」

 

 

見てびっくりな海苔をぺたぺた数枚貼り付けられたそのおにぎりは望月の顔の半分かもしくは胸くらいありそうだ。後者に関しては嘘だ。あながち間違いでもなさそうな気がするけどすまない。

 

 

「最初見た時はびっくりしたけど、紅葉ちゃんが入社して2週間だもんね。少し慣れてきたよ」

 

 

「ほんま早いな~」

 

 

「…やっぱり紅葉ちゃんも食堂でいっしょにたべない?」

 

 

誘う涼風だが、この光景は初めてではない。涼風じゃなくてもゆん先輩やはじめさんが誘うことは今まで多々あったのだが、最初の1回以外は望月は断っているのだ。望月は自分の席からあまり動こうとはしない。動くのはせいぜいお花を詰む時と帰る時くらいだ。それ以外は何故か頑なに動く素振りを見せない。

 

 

「…いえ、ここの方が落ち着くので…それとも…」

 

 

「それとも?」

 

 

「食堂でないと話せない用件でもあるんですか?」

 

 

「いやそんなことはないんだけどね」

 

 

流石にこうもあっさり断られると涼風も諦めたらしく、はじめさん達と食堂の方に向かった。それを見て、俺も屋上で食べようと腰を上げる。しかし、行く途中で窓から外を見ると雲行きが怪しい。どうやら、風が街によくないものを運び込んできたらしいな……。一雨来る可能性を考慮したら、屋上に出ず室内で食べた方が懸命か。だが、食堂には行かないって目線で断ったしな。まぁ、昔から雨の時は居場所が無かったが今はこうして自分の席がある。自分以外の誰かが座ることがない椅子というのはなんとも素晴らしいことか。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

き、気まずい!俺が率先して屋上で食べていたのには理由がある。まず、俺がいると望月がソワソワしてチラチラと俺の様子を窺ってくるのだ。特に何もしてないはずなのだが、どうしてこうなったのだろうか。おかげで飯を食べる手があまり進まなくなった。

 

 

あと、プログラマー班が怖い。いや、先輩方とは特に関わりがないからどうでもいいんだが、後輩2人が無言でひたすらキーボードを叩いているのが怖い。初日の仲の良さはどこに行ったのやら。八幡悲しいよ。

 

 

「あ、あの……」

 

 

「え、ど、どうした?」

 

 

急に話しかけられると動揺するのは昔から治っておらず、思わず割り箸を落としそうになってしまった。うん、ダメリーマン。

 

 

「比企谷さんって変わってますよね」

 

 

それ君が言うの?と思ってしまったが心当たりがないわけではないのでここはぐっと堪えて。

 

 

「そうか?」

 

 

「はい、比企谷さんが休みの時にみなさんが言ってました」

 

 

えぇ...何言われてたのぉ……私気になります!ブースに唯一の男だからネタにしやすいのかもしれないが、特に表立って変なことはしてないから大丈夫なはずだ。それに俺が変わっているってのはあくまで周りからの見解で望月はそう思うように強いられただけかもしれない。

 

 

「……望月はどう思うんだ?俺のこと。あと、口元にご飯粒ついてるぞ」

 

 

「へっ!?……えっと、その、やっぱり……」

 

 

指摘すると慌ててご飯粒を取り口に含む。その後の口ごもりから察するにあれか、やっぱり嫌いなパターンか。それは言いにくいよな。でも、言葉にしないあたり望月は優しいんだな。うん、あぁ、目頭が熱くなってきた。俺の目がスプラッシュしそうだ。

 

 

「もも…ちゃんにはち…まん?」

 

 

あぁ、天使だ。間違えた女神か。天使は戸塚と小町だった。危なかった。てか、ひふみ先輩そのオーバーオール可愛いですね。

 

 

「2人とも…食堂…行かないの……?」

 

 

「…ひふみ先輩もあまり行かないじゃないですか」

 

 

ごもっともな意見である。

 

 

「うん、私は…宗次郎と…あ、ペットなんだけどいっしょに昼ごはん食べたくて…でも食堂が疲れちゃうのわかるから…人付き合いって…大変…だよね!」

 

 

「はぁ…」

 

 

おいコラ望月!なんだよ、その反応は!ひふみ先輩が珍しく自分からグイグイ行ってるんだから無理にでもハイテンションに返せよ!

レラジェの話の時みたいな興奮とスペクタクルを出せよ!

 

 

「……そういえば、比企谷さんはなんで今日はここで食べてるんですか?」

 

 

また急にそんなこと聞くなよ…。雨降りそうだったからなんだけど…こっからじゃ窓見えないからどう言おうか。普通に言っても「晴れてるじゃないですか」とか言われたら詰む。

 

 

「まぁ、気分だよ気分」

 

 

「はぁ…」

 

 

その反応、面と向かってやられると腹立つな。ここは先輩らしくビシッと……って俺、高1の時に同じようなことバイトリーダーにしたわ。うわぁ、人の事言えなくてごめんなさい。

 

 

「えっと…んと…そうだ!宗次郎…見る?」

 

 

自己嫌悪に陥っている俺と気を遣われてることが分かってない望月の不穏な空気にひふみ先輩は携帯を取り出すと仰向けになって起き上がれなくなった宗次郎の写真を見せてくる。

 

 

「あ、ハリネズミ。可愛い…」

 

 

うんうん、ペットは飼い主に似るっていうからな。当たり前体操でも言われてたことだな、見たことないから知らんけど。宗次郎の写真を見てやっと表情が柔らかくなった望月を見てひふみ先輩は安堵の息を漏らす。

 

 

「あら、何見てるの?」

 

 

「ひふみ先輩がペット見せてくれて…」

 

 

「これが噂の宗次郎くんだったのね」

 

 

「可愛いです」

 

 

スタジオか取引先に行っていたのか白いスーツ姿で戻ってきた遠山さんは宗次郎の写真を見るとニコッと笑顔を浮かべる。

 

 

「ひふみちゃんもリーダーらしくなってきたわね」

 

 

「……いや、そんなことない……です!!」

 

 

「ふふふ」

 

 

リーダーらしくなってきたかと言われたらどうなのだろうか。以前よりはコミュニケーションを図ってくれてるあたり、自分の役割を果たそうとはしているのだろう。で、遠山さんはさっきと全く違う殺気を秘めた笑顔を俺に向けてくるの?

 

 

いつもは幼少期に惚れてた男の子と遊ぶ時のような笑顔を八神さんに向けるのに。いまは鈍感な男の子(八神さん)が他に女の子とフラグ作ってたことを把握したみたいな顔してて怖い。あとすげー怖い。

 

 

 

###

 

 

 

 

「おっ昼だー!」

 

 

最近、時計見なくてもはじめさんがお昼とか仕事終わりを知らせてくれるから超便利。先輩をアラーム替わりに使ってくスタイル。別に俺がしてとか言ったわけじゃないからいいよね!

 

 

「じゃーん、今日は私、おにぎりを握ってきました!」

 

 

「うそ!?青葉ちゃんも?偶然だな~私もなんだよね~」

 

 

「ヘタクソ」

 

 

ゆん先輩がジト目で突っ込むくらい白々しく驚くはじめさん。多分、昨日食堂で打ち合わせでもしてきたのだろう。ゆん先輩もサンドイッチを作ってきたらしい。

 

 

「ももちゃんはやっぱり~」

 

 

「今日は私もお弁当を買いに行こうと思って小さいおにぎりしか…」

 

 

「それでもおにぎりはあるんだ」

 

 

はじめさんの振りにちゃんと反応したところを見ると望月も周りの打ち解けたいという気持ちをようやく理解したらしい。よかったよかった。

 

 

「お腹いっぱいになるほど買うとお金が無くなっちゃうので…」

 

 

「それでいつもおにぎりだったんだね」

 

 

炭水化物ってお腹に入ると結構満足感出るからおにぎりってかなりいいらしいな。そう考えると関西の炭水化物のオンパレードは食費も少なくてかなり家計に優しいのかもしれない。

 

 

「ももちゃんって一人暮らし?」

 

 

「いえ、なるとルームシェアです。一緒に上京してきたので」

 

 

「わかるわかる。家賃とか払ってるとやっぱりお金がね~」

 

 

「はじめはおもちゃのせいもあるやろ」

 

 

ルームシェアかぁ、戸塚としたかったな。なんなら、そのまま入籍して永遠の愛を違うかもしれない。でも、ルームシェアって借り物だから結局返さなきゃいけないんだよな。

 

 

「はやくたくさん稼いでお肉もたくさん食べたいです」

 

 

「太らないようにね」

 

 

そうだな、早く稼いで楽になりたいよな。俺は未だに専業主婦の夢は捨てていないぞ。やっぱり働かないで食べる飯は美味いからな。人の金で焼肉が食べたい。

 

 

「実家はどこなの?」

 

 

「北海道です」

 

 

「ホンマ?去年の社員旅行北海道でな、海鮮とか美味しかったわ~」

 

 

「美味しいですよね。東京のは少し物足りないです。あと高いし…」

 

 

まぁ、東京は都心だから流通してくるが新鮮かどうかと言われたらそうでもないからな。やっぱり野菜とか魚の生物は採れたてが最高だと社員旅行で知り合った番台のおばちゃんが言ってたぜ。食べ物の話をしたからか、ぐう~と大きな腹の音を鳴らす望月。それに涼風がフォローするように言う。

 

 

「おかず買いに行きましょうか。私達もおにぎりだけだとあれだし」

 

 

「せやな」

 

 

恥ずかしがる望月の心境を察して多くは触れない3人。優しい世界はここにあったようだ。4人がブースを出ていったのを見て今日はここで1人で食べようかとサランラップを捲っておにぎりにかぶりつこうとした時ーーー

 

 

 

「ももちゃん、これがイーグルジャンプの主…もずく……!」

 

 

と、ひふみ先輩が葉月さんのペットを抱えてやって来た。持ち上げられたもずくが「にゃー」と鳴くとその場に静寂が生まれる。

 

 

「……あれ?ももちゃんは……?」

 

 

「涼風達と飯買いに行きましたけど……」

 

 

俺がそう言うと、ひふみ先輩はすぐさま顔を赤くして、もずくを床に置くと手で顔を覆って泣き叫んだ。

 

 

「……うわぁぁぁんん!!」

 

 

そのままどこかに駆け出していくひふみ先輩を追いかけるため、俺も立ち上がったのだが。

 

 

「ちょっ、ひふみ先輩!どこに!?猫置いてかないで!?」

 

 

 

「にゃー」

 

 

この後、コミカルに追いかけっこをした疲れから仕事に集中出来なかったのは言うまでもない。




遠山さんの笑顔の差分ですが、中の人が他に演じたキャラをイメージして書きました。めんまと霞ヶ丘詩羽先輩なのですが、多分わからないと思います。俺もわからん。


あと風邪ひきました。でませい!

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