女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

6 / 111
やっと終わります。
多忙期だけど、そろそろ書かねぇとやべぇなと思って書きました。
近況報告したいけどできない。強いて一つ挙げるならごちうさの映画見たけど『ココアを吉良吉影が吹き替えたようです』のせいでココアの声に違和感しか無かったことですかね。

FGOについては結構前に武蔵ちゃん、アーチャーインフェルノをお迎えしました。クリスマスはマルタさんとすり抜けでデオンくんちゃん、マリーでした。刑部姫かわいい。


アズレンはいいぞ
宝石の国、うまるちゃん、いもさえ、ブレンドSはいいぞ


イーグルジャンプお料理対決〜ごちそうさまでした〜

 

 

始まりがあれば終わりがあるのはこの世の常である。それは、物語とか戦争などにも言えることである。

終わらない戦争とか終わらない物語なんて存在しない。人類史もいずれは終わりを迎えるだろう。ハッピーエンドかバッドエンドかは知ったことではないが。

 

 

「さて、このながーーい、対決も次で最後!最後は涼風青葉さんです!!」

 

 

 

壮大な話になってしまったが、つまりはそういうことである。

この長く終始意味不明であった戦いの幕がようやく下ろされる時が来たのだ。閉め切られた窓から部屋を照らしていた太陽は水平線の彼方へと沈み、かわりに街灯らしき光がガラス越しに映る。2人の犠牲者を出し、ついにあと1人を残してこの料理対決とやらは終わるのだ。こんなに嬉しいことはない。

 

 

一つ、その最後の料理が涼風青葉であることを除けば。

 

 

「……大丈夫、大丈夫…多分、大丈夫…」

 

 

もう後ろ姿だけでもとからあった不安がより掻き立てられる。

何が不安なのかというと、あいつに女子力という家事力を感じられないのだ。聞いたことがある話ではあいつは実家暮らしのはずだ。食事は親が作っているものを食べているのだろう。それに外食をする際はいちいち、家に電話してる姿を見かけた。

 

 

これらの事を踏まえるに、涼風青葉はまともに料理をしたことがない。彼氏がいたことがある女子であれば、バレンタインデーに手作りチョコを渡したりするからそこで技術は磨かれるのだが。残念なことに涼風には、彼氏どころか好きな男すらいなかったらしい。もしいれば俺がここまで不安になることはなかっただろうに…。

 

 

「それでは、青葉さん。料理をどーぞ!」

 

 

「よし!涼風青葉行きます!」

 

 

 

行くってどこに。

行ってくれるならそれで構わない。早くお家に帰りたい。

 

 

「どうぞ!」

 

 

意識が他界しかけてた俺を連れ戻すためなのか、普通に置いた方がいい皿を叩きつけるように置いた涼風はにっこりと笑う。のだが、なぜか目が笑っていない。

 

 

「おい、どうした。顔怖いぞ」

 

 

「別に?ほら、早く食べなよ」

 

 

問うてもはぐらかされてしまった。

……これは何言ってもまともに答えてくれないパターンのやつだと察して、俺は皿に覆い被せられたボールを取る。

 

 

「……へぇ」

 

 

出てきたものがあまりに意外だったものでそんな感嘆符を漏らす。小町も同じく意外に思ったのか、近くに寄ってきた。

 

 

「苺のショートケーキ…だね」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

おそらく、俺に向けられて放たれた言葉なのだろうが、涼風が首肯して答える。

ショートケーキといえば、ケーキの代表格ともいえるものだ。クリスマスからお誕生日、何かの記念日にも引っ張りだこなケーキである。しかし、最近はガトーショコラだとかブッシュ・ド・ノエルやアイスケーキなどに活躍を譲ることも珍しくなくなってきた。

が、ケーキの王道というのは相もかわらず、季節問わずして食べられているケーキであることには変わりないだろう。

 

 

「最後の〆には持ってこいだな」

 

 

炭水化物、和菓子、郷土料理、一般家庭料理、愛がないと難しい料理と続いてここでラーメンとか来られたら死ぬところだったので、このようなデザートは非常にありがたい。

 

 

 

 

これで味も良ければ万々歳なのだが…。

見た目はいい。おそらく、ラップを使って形を整えたのであろう。土台であるスポンジはしっかりしてるし、なんならスポンジとスポンジの間に生クリームと細かく切られた苺が入っている。これは期待できそうだが、悲しいことに期待を裏切るのが人間である。

 

 

 

でも、それは期待する方が悪いので俺は期待せずに由比ヶ浜の焼いた木炭クッキーを食べる気持ちで一口目を頂こうとすると生クリームを掬おうとしたはずのスプーンが空を切った。見れば、皿は涼風が高々と持ち上げていた。

 

 

「なんで?」

 

 

これはおかしい。一口も食べてないのにお預けだなんて。これが人のやることかよ!文句有り気な目で涼風を睨んだが

 

 

「……」

 

 

 

逆にゴミを見るような目を向けられてしまった。すごく怖い。予想通り、聞いても答えは返ってこないし、まだ何も感想を言ってないのに不機嫌になられている。何故だ。

 

 

「ねぇ、八幡。ケーキを見てなにか思うことはない?」

 

 

「は?」

 

 

口を開いたと思ったら、質問を質問で返された。桜も質問したら質問し返してくるから、涼風たちの高校は疑問文に疑問文で返すように教えていたらしい。

 

 

さて、そんなことを言ったら顔面がケーキまみれになるかもしれないから真面目に考えるとしよう。ケーキを見て思うことか。

 

 

「形は整ってるな」

 

 

「他には?」

 

 

……他?そうだな……。

 

 

「スポンジとスポンジの間に生クリームと苺が…」

 

 

「そうじゃなくて、ケーキを見て何か思うことはない?って」

 

 

ん?どうやら、涼風のケーキではなく、ケーキを見て何を連想するか。ということらしい。

そりゃ、イベントとか祝い事じゃね?けど、この感じだとなにか違いそうだな。ぐぬぬ。

 

 

「わからん」

 

 

「はぁ、やっぱりかぁ」

 

 

遠山さんの気持ちがわかった気がする、とよくわからないことを言うと、涼風は空いた左手で人差し指を立てる。

 

 

「それでは、問題です。八幡が初給料で買ったものなーんだ?」

 

 

「え、えっと……たしか……」

 

 

あれ、何買ったけ。一年前だよな。初給料。

ゲームの最新ソフトだっけ。それともソシャゲの課金に回したんだっけか。新刊を買った覚えもないし…。小町に贈り物……はしてねぇな。あいつもきょとんとこっち見てるし。

 

 

「……もしかして、忘れたの?」

 

 

圧で攻め込んでくるような視線にうっと息を詰まらせると、俺は正直に項垂れて分からないという意思を示す。

 

 

「……はぁ、そっか」

 

 

俺の反応に涼風はがくっと肩を落とすと、皿を机にゆっくり置いてそのまま部屋から出ようとする。

 

 

「ちょちょちょ!どうしたんですか青葉さん!」

 

 

「え、いや、もういいかなって」

 

 

 

「えぇ……、あぁ、もう仕方ないですね!小町が話聞きますから!順番に話してみてください」

 

 

年下に慰められてる……。まぁ、小町だからできることか。それより、ケーキは食べていいのだろうか。さっさと食べて帰りたいし、食べてしまおう。そう思ってスプーンをケーキに向けたが、そこにケーキはなく、小町の手の上にあった。

 

 

「……またか」

 

 

もうやだこの展開。食べればいいのか、食べなくていいのか、はっきりして欲しい。

 

 

「なぁ、小町、俺はいつになったら帰れるんだ?」

 

 

「……お兄ちゃんがこのケーキの意味に気付くまでかな」

 

 

意味?……ヒントは初給料。そういえば、遠山さんと八神さんは日帰りで温泉に行ったが、それを八神さんが忘れてて遠山さんがめちゃくちゃ不機嫌になってたな。そうそう、今の涼風みたいに。

 

 

 

「……あ、あぁ……あ〜……」

 

 

「思い出したの?」

 

 

うん、思い出したよ。思い出して、つい、「あ」を4回も使ったよ。感嘆符ってすごく便利よね。これ英語でも言えること。

 

 

初給料で涼風とケーキを食ったことは思い出したが、それがそのケーキとどういう関係があるのかさっぱりわからんな。

 

 

「まぁ、思い出したが…それがこれと何の関係があるのかわからんな」

 

 

しかも、その時食ったケーキはショートケーキじゃなくてガトーショコラだしな。なかなかに美味かった。

 

 

「……はぁ、いいか。思い出してくれただけ。小町ちゃん、もう降ろしていいよ」

 

 

ドア付近でしょげてた涼風がため息を吐きながら言うと、小町もため息吐きつつ皿を置く。

 

 

「じゃ、食べていいよ。お兄ちゃん」

 

 

やっとですか。いつまでこのクイズが続くのかとヒヤヒヤしたわ。それにもし間違えてたらどうなっていたかと想像したら嫌な気分になってきた。さっさと、食って帰ろ。

 

 

「はむ……ん、ん…」

 

 

口の中に広がる苺の風味と生クリームの甘さ。それを程よく抑えつけるかのようにスポンジの柔らかい甘みがやってくる。思ってたよりは悪くない味だ。

 

 

「ど、どうかな」

 

 

「……いや、想定外の味だ」

 

 

「それってどういう意味!?」

 

 

だって、ここまでまともな味だとは思わないだろ。下手したらセミのぬけがらとか入ってると思ったもん。ジャイアンシチューかよ。比叡でもいれねぇぞ。

 

 

俺の中では料理下手の人は余計なもんを入れる法則があると由比ヶ浜に教わったからな。それは八神さんにも当てはまったことだ。あの人の場合は入れ方が悪かったってのもあるのだが。

 

 

「多分、不味いと思って身構えてたら美味しかったんじゃないですかね」

 

 

さすが、小町。伊達に何十年も一緒にいるだけある。まぁ、それも昨年までの話。悲しいなぁ。家に帰ったら灯りがついておらず、中に入って一人で飯を食う……あれ、何故か目から塩が……。

 

 

「そっか、良かった。練習した甲斐があったよ」

 

 

 

「練習?」

 

 

「うん、みんなでご飯作ろうってなって、それで葉月さんの知り合いに連絡したらここを貸してくれたんだ」

 

 

どうしてそうなったのか。あと、あの黒服は葉月さんの知り合いなのか。とても、接点があるようには見えないが。

一つ聞いてもいいかと前置きしてから尋ねる。

 

 

「どうして俺が呼ばれた」

 

 

呼ばれた、というよりは強制連行だったのだが。

別に料理するだけなら、誰かの家に集まるか、ここのような場所を借りて女の子だけでキャッキャッしていればいい。その硝子の花園に俺が必要なわけないだろう。

 

 

「え、だって八幡呼ばなかったら拗ねるじゃん」

 

 

『そうそう』

 

 

複数の同意の声が聞こえ、急いで声の方に振り向くと八神さん、遠山さん、うみこさん……イーグルジャンプオールスターが立っていた。

 

 

「比企谷さんはこういう催しはお呼びしても来ないと妹さんが言うので」

 

 

「だから、うみこさんとはじめに二人で車ではこんできてもらったんや」

 

 

「久しぶりに運転したから疲れたぁ…けど、料理は楽しかったよ!」

 

 

いつの間に会社の人間に俺の妹の連絡先が回ってるんですかね。昨年のクリスマスの時か?その時か?マジで知らなかったんですけど。てか、はじめさん免許持ってたんですね。

 

 

「それはいいんですよ。いや、ちっともよくないけど」

 

 

「よくないんだ…」

 

 

桜よ、そう肩を落とすな。強制連行されたことに関しては、怒ってないから。貴重な休みを邪魔されたことに関しては少しあるが。

 

 

「俺はこういう催しは知らなきゃ呼ばれなくても平気ですよ」

 

 

「それってこの催しを知ったら平気じゃないってこと……ですよね?」

 

 

なかなかどうして鳴海はそう鋭いところをついてくるのかな。思わず「そうだよ」って言いそうになったじゃねぇか。

 

 

「めんどくさい性格してるなぁ」

 

 

「なんでだろ、八神さんだけには言われたくない気がする」

 

 

「確かにコウちゃんが言える立場じゃないわね」

 

 

「おいコラどういう意味だそれ」

 

 

俺の言葉に遠山さんが同意するといつも通りの服装になっている八神さんが笑顔を引き攣らせていた。うっすら青筋も出てる。カルシウムとりましょカルシウム。

 

 

「ん?八神さんが言える立場じゃないって言うのは……」

 

 

「えっと、八神さんが『八幡がいないと嫌だー!つまらん!』って……むごごご!!?」

 

 

「余計なことを言うのはこのお口かなぁ?」

 

 

独り言に反応してくれた望月は八神さんにモチモチしてそうな頬を延ばされてしまった。望月、お前の死は無駄にはしない。

 

 

「来てくれて……ほんとに、よかった…」

 

 

あぁ、相変わらずひふみ先輩の笑顔が眩しい。なんだか、これだけ見ると来てよかったと思えるよね。俺も、すごく、安心した。

 

 

「では、団欒も済んだところで結果発表といきましょー!!」

 

 

団欒って。他に言葉あっただろ。それにあともう少しひふみ先輩と話させろよ。

 

 

「皆さんにはそれぞれ異なるお料理を作っていただいたわけですが、どれが一番美味しかったか審査員の方々に判定していただきましょう!」

 

 

 

終始そのテンションで疲れない?と心配になってしまいそうなくらい興奮してる小町は審査員席へと目を向ける。すると、そこには青い顔をして椅子の足元に転がっている材木座。

『探さないでください』と書かれたナプキンの置かれた葉月さんの机。……思い返せば、八神さんのご飯?食べてから葉月さんのこと放ったらかしだったな。

 

 

 

「……」

 

 

『……』

 

 

どうすんだよこの空気。審査員俺以外全滅じゃねぇか。困ったようにオロオロする小町に「審査員一人に講評は出来ないだろ」と現実のナイフを突きつけるとガクっと項垂れる。

が、すぐに顔を上げて笑顔を取り戻す。

 

 

「まぁ、今回のイベントはお兄ちゃんにご飯を食べてもらうことだったし、オッケー!うん!お料理対決そんなのなかった!」

 

 

小町の無理矢理な締めに唖然とするイーグルジャンプオールスター。

すみませんね、俺の妹が迷惑かけまして。

 

 

 

「それはそれとして」

 

 

ん?どうしました、うみこさん。

 

 

「やっぱり知りたいわよね」

 

 

何がですか、遠山さん。

 

 

「まぁ、むりかもしれないけど……気にはなるよね」

 

 

「そら……なぁ?」

 

 

何が気になるのかについては触れず、はじめさんとゆん先輩は目を合わせる。

 

 

「私も気になるなー頑張ったし」

 

 

「私、なんにもしてないけど聞いていいのかな」

 

 

頬をうっすら朱に染め鳴海は頭のシュシュを軽く抑え、望月は毛先を手で梳かしながらそんなことを言う。

 

 

「わ、私も、き、聞きたい……」

 

 

なんでも聞いてください、ひふみ先輩。でも、何について聞きたいのか言ってくれないと答えれませんが。

 

 

「やっぱりみんな気になるんだね」

 

 

「じゃ、聞いてみよっか」

 

 

桜と涼風が並んで立つ。そして、それに合わせるかのように二人を中心にするように俺を囲む円を作る。

 

 

「よし、みんな、せーのでいくよ」

 

 

 

その円で俺の真正面に位置する八神さんが、全員の顔を見回して声を出す。すると、倒れている材木座、いなくなった葉月さん、小町と俺を除くメンバーが揃えて同じ質問を投げかけてくる。

 

 

 

『私の作った料理をまた食べてくれますかー!?』

 

 

 

 

気になること、というのはそういうことか。

それくらいお安いごようだ。なんなら、一人については俺が一緒に作ってやりたいくらいだ。いや、出来れば一緒に作らせてほしい。愛がないと食えない料理はやっぱり美味しく食べたいしな。

 

 

 

食事、それは一人で食べても美味い料理は美味い。けど、誰かと食べる料理はもっと美味しいのだ。それを俺は知っている。

家族と、妹と、学校の部活仲間と、会社の人達と。

多くの人で机を囲んで、料理を肴にしながら和気あいあいと過ごす。

俺はそんな一時に僅かながら幸福を感じる。たとえ微量であっても、それが幸せであることには変わりない。だから、俺の答えはただ一つ。

 

 

 

「……まぁ、機会があれば」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの答えに賛否両論の『否』しかなかったのは別の話だ。

 






やっと、終わった。疲れた。寝るりあん。



昔の読み返してると、昔の方が八幡らしさが出てたと思います。
だから、お気に入りユーザーが減っていくのは話がつまらなくなってるのと八幡らしさが無くなってきているからなんじゃないかと推察します。



多忙期終わったらひふみ先輩とブレンドSのカフェに行く話でも書けたらいいですね。(書くとは言ってない)個別ルートは7巻出るまでに一人はやってきたいですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。