女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている 作:通りすがりの魔術師
「天才か……?」
どうでもよくない話、この話書くために原作見返しでたのですが……
ひふみ先輩の……ビックサンダーマウンテンの……右側に……ほ、ホクロが……ぶ、ブヒィィィィ!!!!
有給を使って行ったムーンレンジャーのライブは実によかった。特にひふみ先輩がサイリウムを激しく振るたびに、ひふみ先輩のビックサンダーマウンテンも……ゲフンゲフン!
さぁて、仕事仕事。楽しんだ後に苦しいことがあるのは昔から。楽あれば苦ありとはよく言ったものだ。しかし、俺はこう考える。
苦しいことがあるから、楽しいことはより一層楽しく感じるのではないかと。
涼風がラスボスを完成させたことにより、主人公が着るゴリラや魚、熊などのモデリングが次々と出来上がっていた。
俺的にはタカ、トラ、バッタとかも欲しいと思っているのだが流石に却下されそうだと思ってやめてる。タカはいいと思うんだが、人はどう足掻いても飛べないんだな。まぁ、手を水平に伸ばせば飛べるかもしれない。メイドラゴンでやってたし。
口にサンドイッチを頬張りながら、ようつべで動画鑑賞する昼休みも悪くない。ヘッドホンを持ってきてみたが大正解だな。これなら誰にも邪魔されずに昼食を満喫できる。動く時は流石に外さないとダメなのだが。急に引っ張ると抜けちゃうからね。別に悪いものを見てるわけじゃないんだけど。迷惑になるとあれだし。
ヘッドホンを取って、ずっと座っていたからか肩が凝っていたのでピッコロさんみたいにバキバキと鳴らすように首を動かすのだが鳴らない。やはり、俺はナメック星人ではないらしい。
「ひふみん!」
「「!?」」
突然、ダン!と叩かれた机に強烈に反応してしまう俺とひふみ先輩。勢いよく立ち上がった八神さんはその勢いのまま、ひふみ先輩の席へと近づく。
俺は特に何もしてないはずだから、驚く必要も無いのだろうが急にそんな音がすれば誰でも驚くだろう。
「な…なに…?」
「い、いや、なにってわけじゃないけど…珍しかった?笑ってるの…?」
「ううん…最近は、よく笑ってるよ…コウちゃん。昔は仕事中はずっと真剣な顔で仕事してたから…安心する…」
「別に昔だって笑うことあったって!」
会話を聞いてる限り、どういう脈絡でそんな話になったのか分からないのだが、ひふみ先輩の言う通り八神さんは笑うことが多い。デフォルトだと思ったが、そうでもないらしい。
「でもさっきは上がってきたキャラモデルが良さげだったからそれで笑ってたのかもね私…」
頬を掻きながら八神さんはそっぽを向くとひふみ先輩は柔和な表情を浮かべる。
「ありがとう…」
「あー!ひふみんだって笑うようになったじゃん。表情筋が柔らかくなったんじゃないの〜?あれか〜?あいつか〜?」
「や、やめて…」
うりうりと意地の悪い笑みでひふみ先輩の頬を引っ張る八神さんに口でやめてと言いつつあまり抵抗を示さないひふみ先輩。てか、八神さんなんで俺の方見てるんですかね。
「八幡もひふみんよく笑うようになったと思うよね?」
あぁ、そういう質問のためですか。
「まぁ、去年よりはよく見るようになった気がしますね」
「だよね〜」
「……!!」
そんな楽しげな会話をしてると何故か部屋の空気が少し下がったような寒気を覚えた。あれ?なんでだろうな〜おかしいな〜と思っていると。
「あら〜2人だけで話してるなんて珍しいわね。どうしたの?」
にこりと僅かながら何か含みのある声音でそう尋ねる遠山さん。地味に俺が除外されてる件。
「ええ?いいじゃんなんだって。2人だけの秘密だよね。ひふみん」
ジト目で誤魔化すように言う八神さんにひふみ先輩は「え?あ…うん…」と遠慮がちに返事を返す。
「あらあら、それは妬けちゃうわ。お邪魔だったみたいね」
その言葉で俺とひふみ先輩は確信した。何かまずい空気が漂っている。ぼっち同士、人の顔色を窺うことに長けた観察眼が遠山さんの微笑からそれを感じ取ったのだ。
遠山さんはあとは2人でどうぞと去っていくとひふみ先輩が「あ…」と何か言いたげな目で見つめる。
「もう何怒ってるんだか…」
あんたが鈍いからだろ…と八神さんに言ってやりたいが、遠山さんからすれば本人から気持ちに気づいてもらった方がいいだろう。が、あろう事か八神さんはさらに鈍感スキルを発揮する。
「あ、そうだ。こないだの肉じゃが、ホントに美味しかったんだけどもう作らないの?」
「!?」
あ、また部屋の空気が……。ちょっとプラズマクラスターでも買いに行こう。これ以上この部屋にいたら酸素欠乏症とかになって彗星でも見てしまいそうだ。
「りんちゃんに…作って…もらえば…?」
「まぁ確かにりんの肉じゃがは美味しいよ」
「うんうん!」
「でもひふみんのも美味しかったから忘れられなくて」
あーー!せっかく、ひふみ先輩のフォローのおかげでいい空気に戻ってたのに!奥の方のブース(遠山さんの席)から黒いオーラが漂ってるよ!
「あ…えっと…作り方のメモ…無くしちゃって…もう…無理…」
「そっかー残念。美味しかったのになぁ…」
ホントに残念そうにするなよ…多分ひふみ先輩の気の利いた嘘なんだから。八神さんはトボトボと俺の隣の冷蔵庫からマッ缶を出すとぐびぐび飲み始める。
「八神さんって鈍感ですよね」
「……八幡がそれ言う…?」
え、我は悪意とかにすごく敏感でござるから、鈍感ではござらんよ。
えぇ〜ほんとにござるか〜?みたいなこと言われても違うと断言出来るね。
そもそも、俺に好意を抱くやつとかいないし。強いて言うなら戸塚くらい?小町はあれだ。素直じゃないから。多感な時期だからな。仕方ない。結局、戸塚さえいればいい。
「俺はアレですよ、まともな好意とか向けられたことないんで」
「私もないよ?中学と高校は女子校だったし……あ、でも友チョコはたくさん貰ったなー」
「いや、それ絶対本命入ってますよ」
俺の言葉に八神さんはないないと手を振る。可哀想に昔からなのか…多分誰も本命だとは言わなかったんだろう。言ったら嫌われるとか思ったんだろうか。
「八幡はチョコとか貰ったことないの?」
「ありますよ。妹とか高校時代の部活仲間とかに。まぁ、後者はチョコというよりは木炭でしたけど」
「木炭!?」
チョコクッキーもチョコに入れていいなら貰ったことになるよな。ありがとう由比ヶ浜、役に立ったぞ。しかし、よく良く考えれば、いやよく良く考えなくても、俺は八神さんと違って本命は貰ったことがないのだ。全部、義理。部活が同じ、会社が同じだから、とかそういう理由だ。それ故に俺もホワイトデーはMAXコーヒーを渡すくらいしかしていない。数人にはゴミを見るような目で見られたが仕方がない。俺だからな。
「じゃ、私、葉月さんのとこ行かなきゃだから、また後でね〜」
また後で、って戻ってきても話さないじゃないですか。そう思いながらも会釈するあたり俺って出来た人間なのかもしれない。さてと、あちらはどうなったかなと目を向けるとひふみ先輩がゴソゴソとクッションを取り出してぐったりしてた。
パソコンに映し出されたメッセージを見るになんとか遠山さんの機嫌を直せたらしい。
「比企谷さん」
俺も変な空気に当てられて疲れたから寝ようと思ったら、うみこさんに声をかけられてしまった。残り5分の昼休み、寝かせて欲しかったぜ。
「どうしました?」
「滝本さんに会議が1時に変更になったとお伝えしていただけませんか?起こすのも迷惑かと思いますので」
「分かりました。伝えておきます」
やったね、八幡、ひふみ先輩と会話する機会ができたね。そう思ってウキウキワクワクしてるとうみこさんにじっと見つめられる。
「な、なんですか?」
「寝不足ですか?」
「はい?」
確かに昨日と一昨日は合計で10時間程度しか寝てないが、そんなに眠い顔はしていないはずだが。
「いつにも増して目の下のクマが凄いです。目も澱んでますし…」
あー寝坊しかけて朝、鏡を見ずに顔洗ったから自分の顔みてないんだよな。てか、目はいつも通りじゃない?そう言おうと口を開こうとしたがうみこさんのうんちくというありがたいお言葉に阻まれてしまう。
「睡眠はとても大事なんですよ。寝不足は仕事にも影響しますし、なにより健康に良くありません、椅子で寝るのもーーー」
それが昼休みが終わるまで続いたために、ひふみ先輩への伝言が八神さんに取られてしまったのは言うまでもない。
「な、なんで、そんなに睨むんですか……」
「いえ、別に……」
アニメがどこまでいってるか知らないけど追いつかれてないことを祈りたい……