女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている 作:通りすがりの魔術師
とりあえず、2期 や っ た ぜ
アニメて新刊出る前に4巻分の話は書き上げたいですね。では、どうぞ
バレンタインは嫌いだ。
別に甘いものは嫌いじゃない。それはMAXコーヒーを飲んでる時点で察してほしい。てか、チョコは少し苦いくらいがちょうどいいと思う。
負け惜しみに聞こえるかもしれんが、そういうのではない。
貰ってもお返しが面倒だ。なんてわけでもない。ほら、俺はいつも小町からしか貰えないからね?少しお返しが増えても問題ないんですよ。
そして、覗くのは2月13日の夜に届いた愛する妹から『今年は色んな人達から貰えるだろうから〜じゃあ、幸せなバレンタインを〜』
なんでお前がたくさん貰えるからって俺が貰えなくなるの?的な返信をしたのだが、何故かゴミ呼ばわりされた不遇。
だから、チョコの唯一の貰い先である小町からチョコが貰えないと知った俺はもうバレンタインを否定する。
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バレンタインってそもそも何のための日か忘れてしまったここ最近。とりあえず、チョコレート会社の企てた陰謀だ。俺が望むのは血のバレンタインです。すみません嘘です。小町からチョコが貰えないからって錯乱してる。
「……にしても多いな」
バレンタイン当日にチョコを買いに来るのはどうかと思うが、上の命令には逆らえない。だが、この時期に男はチョコは買いづらい。まるで女の子からチョコを貰えないからって自分で買ってるみたいだ。デジタル化してる日本なら店頭にパソコン置いてクリックしたら買えるシステムとか導入してくれたらいいんだがな。それならネットで買えとか言われそうだ。というか、俺は普通は貰う側ですよね!
女の子で賑わうチョコ売り場をぼんやり見てると、見慣れた青紫の髪が揺れているのが映った。なにやら動物のチョコをじっと見つめていたが、首をぶんぶん振るとウイスキーボンボンを手にした。無理して大人っぽいチョコ買うなよ、子供っぽく見えるぞ。
で、外も社内もバレンタイン一色だ。まだ昼前だというのにこの騒ぎ。夜になったら家とかホテルにいってドッタンバッタン大騒ぎするに決まってる。
「爆発しろ!」
エレベーターから出て聞こえたのが葉月さんの呪いの言葉だった。覗いてみると八神さんが遠山さんにチョコを4箱も渡していた。あーやっぱりそういう仲なんですね。そんな目で見てたら八神さんが顔を赤くしてこちらを向く。
「ち、違う!こ、これは!」
「もう……仕方ないんだから……」
もう1人は好きな人にチョコをたくさん貰えてご満悦のようだ。やれやれだぜ。
「あ、ごめんね、八幡……その、りんがあんたの分も……」
遠山さん……アタイ許せへん!あの男勝りでギャップ萌えの塊の八神さんからチョコが貰えないなんて!もしかしたら、デレデレしながらチョコを渡してくれたかもしれないのに!ないです(確信)
俺が涙を殺しながら歯を食いしばっていると涼風が顔をひょっこり出してくる。
「あのこれからここで少しチョコパーティーをするんですけど葉月さん達もどうですか?」
「いいね、お邪魔しようかな」
葉月さんはそう言うと涼風の方に行くが、お2人さんは自分の席で食べると言いその場に残った。さて、俺はと言うと……まぁ、強制連行だ。
「そうだ、比企谷くんこれ」
「あ、どうも」
なんだか遠山さんからチョコを貰ったけどついで感がすごいが義理だし是非もなしかな!でも、貰えたから嬉しい!
「おーい、八幡早く来なよ」
へいへーい、とはじめさんに呼ばれたのでその場を去る。たかが、数cmの距離だが。
机に広げられたマットにたくさんのチョコと紅茶。
「じゃーんチョコット工房の人気チョコレート詰め合わせ!買うの大変やったんだから!」
「チョコばかりだと思ったから私はクッキー……」
「みんな普通ですな〜私は動物チョコレート!!」
チョコット工房なんて俺は知らんぞ!せいぜい、ゴジラだかゴディバとかいうとこしか知らん。貰ったことはないがな。それにしても、ひふみ先輩はなにかと空気を読むのに長けてる気がする。バレンタインというのはチョコをあげるのが定番だからな。どうしてもチョコが集まりやすくなるからこういうのは助かる。
で、なんでゴリラなんですかね……女の子ならもっとうさぎとか……ダメですね。心がぴょんぴょんしなくなる。
「1個しかないやん!」
「砕けばみんなで食べれるじゃん」
「でもちょっとかわいそうですね……」
砕くといってもどうやって砕くのか。ちなみにダイヤモンドはハンマーで割れます。トリビアで観た。荒木さんごめんなさい。
「動物さんチョコっていろんなものがあって可愛いですよね。私も迷ったんですけど…」
「どんなのにしたの?」
はじめさんが聞くと涼風はえへへと笑いながら箱の包装を破っていく。そのへんは雑いのな。
「ちょっと背伸びして大人のチョコレートを……じゃん!ウイスキーボンボン!お酒ですよ!お酒!!」
「そこまでにしとけよ涼風」
「ええ!?なんで!?」
「いや、言ってみたかっただけだ。悪気はない」
さっきまで俺、全然喋ってなかったからね。それに比べてお前はたくさん喋ってたんだから、俺にも少しは喋らせてほしい。心の中では俺の方がたくさん喋ってるんだがな。
「これって未成年が食べても大丈夫なの?」
「あくまでお菓子だから問題ないよ。でも食べ過ぎると…ね」
「え、じゃあ、もし食べすぎてちょっと酔ってしまって…交番のお巡りさんに飲酒チェックされたら……」
「た……逮捕……?」
「ま…まだ会社辞めたくないです!」
「気にしすぎだし、どちらにしろ補導までだろう」
なんで会社に来てまでこんなコントを見せられなきゃいかんのだろうか。アキトさんやミカさんは……oh......思ったよりも修羅場みたいだ。主にミカさんが。
「八幡……食べないの……?」
「あ、食べます」
なんか忘年会からひふみ先輩に下の名前で呼ばれているのだが、酔っ払ってるからだと思ったんだが、そういうわけじゃなさそうだ。もしかすると脈ありかもしれない。いや、それはない。
「うん、お酒のいい香り。美味しいね」
「なんやまだ仕事あるのにお酒ってちょっと背徳感あってええな」
今までに食べたことがないわけではないが……大丈夫……だよな?酔って錯乱しないよな?俺が食べるか否かと悩んでいると涼風が恐る恐るウイスキーボンボンを手に取る。
「わ、私も食べてみます……!」
「青葉ちゃんお酒ってはじめてー?」
「は、はい…」
「甘酒とかもないのか?」
「え!?あれってお酒なの!?」
「一応お酒だよ…」
ノンアルコールみたいなもんだと聞いたが。にしても、この子ほんとに大丈夫かな。いや、なんか歳とったら簡単な詐欺に引っかかりそうで怖いんだけども。
「酔ったらどうしよ……」
「その時は八幡とはじめに取り押さえてもらい」
「そうですね!」
いや、勝手に決めないでよ。そんな視線が俺とはじめさんと交差し、ため息をつく。とりあえず、涼風の舌にウイスキーボンボンは合っているらしい。もう1個だけと手を伸ばしているが、これは無限ループの予感だ。
「葉月さんはどんなチョコレートなんですか?」
「あぁ、私の?えっと、まずこれは……」
袋から1つずつチョコを取り出していく葉月さん。どうやら動物チョコレートを買ったらしく、ハリネズミをひふみ先輩、犬ははじめさん、猫はゆんさんにだ。
「比企谷くんにはアライグマだ。理由かね?特にない」
「えぇ...」
貰えるのはありがたいけど理由もなく渡されるのは困るなぁ…。アライグマか……アライさんにおまかせなのだー!って感じか?俺は虎の方が良かったな。ほら、1人で山月記コントできるし。
「そして涼風くんへはクマだけどどうかな?」
「わぁ、可愛い…」
次の瞬間、クマの頭部は無くなっていた。
「クマさん美味しい……」
恍惚とした表情を浮かべながらクマの残骸がついた指をぺろりと舐める涼風。何があった???
そう思ってウイスキーボンボンの箱を見ると全て無くなっていた。
「こいつ何個食べたんだ……!?」
平らげられたウイスキーボンボンの袋を掴むと、涼風がずいっと俺の胸ぐらを掴んでくる。
「数個だよ…何ビビってるの?それより比企谷くん」
「ひ、ひゃい?」
「なんで私だけまだ苗字呼びなの?いい加減青葉って呼んでよ?ねぇ?」
なんなんだこいつ。てか、アルコール度数低いチョコでも酔っぱらうんだな…。そんなことを考えて目をそらすと服をつかむ力が強くなる。
「ほら、そうやって逃げようとする。もうむしゃくしゃしてきた……!」
そう言うと涼風は俺を掴んでいた手を離してはじめさんの買ってきたチョコを力強く掴むと「ゴリラめ…こしゃくな…食ってやる!」とゴリラの頭部を一かじりする。それ以上食べさせないようにはじめさんが取り押さえてはいるが……
「涼風くんの来年の飲み会大丈夫かな……」
それでも食べる口は止まらず、葉月さんのそんな呟きが俺の耳に強く残った。
久しぶりなのでかなりぐだぐだになりました。多分、いつもなんですが。
それはそうと、なんか書いてない時期の方がお気に入り登録が多かったです。あれ?俺書かない方がいいんじゃないかな……となったのは別の話。