女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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クリスマス回のあとに忘年会の催しを決める話があるのだが、別に忘年会の話がないしいいかとなりました。(まぁ、別に年明けてからでもできるし)


たまにはいいもんだな

 

 

 

新年明けましておめでとう。とかいうけど、何がめでたいのかよくわからず使ってる節があるよな。

確かに新年が明けるまで生きてたね!おめでとう!とかそういう意味があるのなら納得であるが、そんなのある意味不謹慎すぎるし、寿命が縮んだね!やったね!的な意味もありそうでさらに不謹慎だ。

 

 

だが、戸塚からのあけおめメールというのはココロオドルものであり、エンジョイエンジョイ音楽は鳴り続けるような気がするので不思議である。やはり世界は戸塚で満たされなければいけないのかもしれない。

 

 

ここで大きなあくびを一つ。

 

 

眠い。非常に。なんで朝の5時に高尾山なんかに来なきゃならんのだ。

別に初の日の出なんて見えればどこで見ても一緒だろ。あれだよ?太陽だよ?1月1日に見たからと言ってその1年が太陽のように輝かしくなるとは限らんのになんで人々はそんなに見たがるのだろうか。

俺なら美少女のパンティとか戸塚の恥ずかしがる姿を見る方がよっぽど1年間輝かしくなれる気がするがね。……いや、変態の汚名を着せられる可能性があるな。うん。

 

 

 

「ふわぁ……眠いですね……」

 

 

隣で甘栗色の髪の毛から良い香りがするので見てみれば、高校時代に俺を下僕とか奴隷扱いしていた女が映る。

 

 

「眠いなら帰ろうぜ。俺も寝たい」

 

 

「うわぁ、相変わらずですね…」

 

 

そうやって俺のことをゴミを見るみたいな目で引くのは一色いろは。俺のかつての後輩である。しばらく見ない間にヘアースタイルを変えたのかセミロングからショートボブに変えていた。まぁ可愛いと思いますが、今年の正月はガキ使で迎える予定がこいつのせいでできなかった。許せん。

 

 

一色は来る途中に聞いた話では、俺が行こうとしていた私立文系の大学に指定校推薦で受かったらしく、それのお祝いを由比ヶ浜達にはしてもらったのだが、俺にはしてもらってないからという理不尽な理由でここに連れてこられたのだ。どこが理不尽かと言うと、そのお祝いのパーティ的なのに俺が呼ばれてないことなんだよね。それで初詣に付き合わされるっておかしくない?

 

 

「そういえばクリスマスに雪乃先輩と集まったってマジですか?」

 

 

「集まったってより遭遇したというか、逃げようにも逃げれなかったというか」

 

 

いや、あの日は平塚先生がいなかったらどうなっていたか。多分、今年も1人で新年迎えたんだろうなぁ……。ある独身女性を可哀想に思っていると一色はあざとく頬を膨らませる。

 

 

 

「なるほど。よくわかりませんがなんで呼んでくれなかったんですか」

 

 

 

「俺に言われてもな。声かけて回ってたのは由比ヶ浜だし。俺は連絡先知らんし。そもそもクリスマスは1人で過ごすつもりだったからな」

 

 

 

クリスマスといえば未来の猫型ロボットのアニメなんだろうが、俺は08小隊の方が好きなんだよなぁ。あとはビルドファイターズとか。アビゴルバイン?だっけな。カッコイイよな。

 

 

 

「……まぁそのことは初詣に付き合ってくれてるので許してあげましょう」

 

 

 

わーい!やったー!うれしー!なわけねぇだろ。なんだよけものフレンズって。どこが獣なんだよ。毛が足りねぇ!と、どっかのケモナーの意見を言ったわけだが…。

 

 

 

「で、どうすんの?帰るの?」

 

 

 

「は?何言ってるんですか。これからこれ登るんですよ」

 

 

 

指さす方向を見れば長蛇の列ができた坂道。どうして人間は高いところで朝日を見たがるんですかね。別に自分の家から見た朝日でも感動的だと思うんだけど。

 

 

「マジで?」

 

 

 

「マジです。大丈夫ですよ、ロープウェイが通ってますし。すぐに行けますよ」

 

 

 

そのロープウェイというのは、俺達以外も使うだろうし明らか2つしか通ってないのだが、すぐに行けるのだろうか。どこが大丈夫なのだろうか。それに新年いきなり山登りなんてしたくないよ俺。

 

 

「でも、登ってる間に日が出たらどうすんだよ」

 

 

 

「あー……」

 

 

 

人の列の長さや進み具合からして初の日の出が見れない、もしくは見えにくい可能性がある。せっかくここまで来たのだから見てみたいと思ってしまうあたり俺も人の子だな。

 

 

 

「仕方がありませんね。あ、ほら、そこにベンチがありますしあそこに座って見ましょう」

 

 

 

「いいけど、誰か座って……あ?」

 

 

一色の言うとおりベンチはあるが誰か2人ほど座っている。どちらも女性だ。アダルトというよりはロリっぽい。というか、あの長いツインテールはどこかで見たことがある気がする。そう、昨年の4月あたりからかなりの頻度で。でも、他人の空似ということもあるだろう。というか、あいつならあのうるさいのと一緒だろ。見た感じ明らかに違うやつといるし。つまり、あいつは涼風じゃない。

 

 

「ほたる先輩ーお久しぶりです」

 

 

 

おやおや、目を離した隙に一色がベンチに座っている人に話しかけに行ったぞ。どうやら、一色の中学時代の先輩らしいな。

さて俺はどうすればいいのだろうか。そう思っていると後ろから靴を蹴られた。誰だよ新年早々喧嘩売ってくるリア充は……

 

 

「あ、やっぱりハッチじゃん。あけおめー!」

 

 

 

お前かよ。……ってことは、あのロングツインテラーはまさか…。

 

 

 

「あおっちー、ハッチいるよー!よくわかんないけど」

 

 

 

「えっ、えー!?なんで!?」

 

 

そんな幽霊とか死人を見たように驚かなくてもいいんじゃないですかね。しかしまぁ、なんでこいつらと遭遇しなきゃいけないのだろうか。やっぱり元旦は家にこもってるにかぎる気がするんだが。

 

 

「えっと、あけましておめでとう」

 

 

「おう、おめでとう」

 

 

マジで何がめでたいのかわからんが。言われたらそう返すしかない。こんにちはって言われたらこんにちワンって返すみたいなもんだよな。

 

 

「比企谷くんも初の日の出見に来たの?」

 

 

「まぁ、後輩に無理矢理な」

 

 

チラリと隣で中学時代の先輩らしき人と話している一色を見ると涼風は一瞬眉根を寄せた顔をするがすぐに「そうなんだ」と笑顔を向ける。

 

 

「あれか?邪魔だったらさっさと退散するが」

 

 

幼馴染とか親友とかの付き合いを察して一色を連れてこの場を去ろうと思ったが2人は首を横に振った。

 

 

「別にいいよ」

 

 

「……そうか、なんか悪いな」

 

 

 

なんで俺が謝らねばならんのだ。一色を睨みつけると少しだけ焦ったような顔をすると自己紹介を始めた。流石のコミュ力だ。オラにも分けて欲しい。

 

 

 

「一色いろはと言います。先輩の1つ歳下で今年で大学生になります。よろしくです」

 

 

当たり障りのない挨拶だな。こいつならもっと「総武高のアイドル色ちゃんだよー!今年でキャンパスライフの仲間入りだよー!」とか言いそうなのに。

 

 

 

「涼風青葉です。比企谷くんとは同じ会社の同僚なんだ。よろしくね」

 

 

「桜ねねだよ!私も大学生なんだ!よろしくね!」

 

 

 

「はいーよろしくでーす」

 

 

 

あれ?一色さんなんかちょっと適当じゃないですかね?

 

 

「あ、先輩。この人は私の中学の時の先輩のほたる先輩です」

 

 

「よろしくね、えーと……」

 

 

「あ、比企谷八幡です。」

 

 

「比企谷くん……うん、よろしくね」

 

 

可愛らしいベレー帽にタートルネックに大人びたコート。顔は童顔だが、涼風と桜よりは少しだけ大人びて見えるその子はニコリと笑う。

 

 

ベンチは5人で座るには狭く、それに女性ばかりのところに座る気にもなれないので俺は立って太陽を見ることにした。あれだな。覚悟ってのはこの登りゆく朝日よりも明るい輝きで道を照らしている。そして俺がこれから向かうべき正しい道をも。そんな名言を思い出していると桜が声を上げる。

 

 

 

「あ、見てみて太陽!」

 

 

 

顔を上げてみれば薄らとかかっている雲を抜けて朝日が昇って来る。そういえば初の日の出なんていつぶりに見ただろうか。

たまにはこういうのもいいだろうと思う。たまに見るからこそ感動があり楽しめる。毎年見てんじゃつまらなくなるだろう。

 

だからたまには……な。


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