女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている 作:通りすがりの魔術師
オリキャラが死んだ!
北海道といえばカニである。誰がなんと言おうとカニだ。千葉県といえば落花生とMAXコーヒーというようにそれは絶対揺るがないし、それこそが俺のジャスティス。
「う~ん!美味しい!」
「美味い」
「……うん……美味しい……」
ひふみ先輩と涼風に声をかけられて今はカニ料理専門店に来ている。あれだよな、人間って本当に美味いもん食べたら「美味い」しかでてこないよな。それか笑顔。
「比企谷くんはさ、旅館に帰ったらどうするの?」
涼風がカニの甲殻を丁寧に剥ぎながら、俺に尋ねる。
「まぁ、特に決まってないけど多分風呂だな」
「……私達も……お風呂……行こっか……」
「はい!」
ひふみ先輩と涼風が風呂……うーんたわわとした感じがたまらんな。凸凹コンビというかなんというか。いや、どこがとは言わないけどな。
にしてもカニは美味いな。しかし、こういう店では日本茶とか日本酒とかの「和」を重んじる感じがしていたのだが、出てきたのはソーダである。まぁ、美味いな。マスオさんならびゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛と叫んでいるだろう。
「はぁ~美味しかった~」
「…そう…だね」
温泉宿の浴衣というのは湯冷めしないように保温性やら保湿性が高いらしいがそれが返って俺の視線を迷わせる。2人ともスキーをしてから1度風呂に入ったのか身体が火照った感じがしていてなんかエロい。
こういう社員旅行ではトラブルが起きないのは鉄則であり、例えば酔っ払った勢いで…なんてことは現実では存在しない。そもそも、俺は飲めないし居酒屋には行かないからな。……平塚先生に会う可能性があるからな。
社員旅行というのは修学旅行と違って騒ぎさえ起こさなければ、自由に動いていいらしく、それぞれ自由行動を取っている。さきほども俺はカニを食いにいってたわけで旅館に戻ってくると、大浴場へと向かう。
先ほど、ひふみ先輩から聞いた話だが。旅館には宿泊料金とは別にお金を払うことで風呂場を貸し切ることができるらしい。その話を聞いた時はまさか誘われるのかと思ったがそんなことは無かった。悲しい。でも、これでいい気がする。
脱衣して戸を開けると俺以外に誰もおらず貸切状態になっていた。今なら泳いでも怒られないがそんな涼風みたいな子供っぽいことしない。身体を軽く洗い流して湯に浸かると一日の疲れが抜けていく。まぁ、涼風と雪合戦してただけなんだけどね。ぼうっとしてたら眠くなってきた。
……ここで寝たら逆上せるな。そう思って風呂から出て石段に座って足だけ湯につける。こうしてると血行が良くなる気がする。調べたことないから分からんが、足湯は健康にはいいとか聞いたことがある。
「このっ!いい加減に名前で呼べっ!バカは……ん!このっ!」
「あ、青葉ちゃん……?」
「なんで先輩はみんな名前なのに私だけ……なの!?このっ!」
早くも逆上せてきたのか、幻聴が聞こえてきたぞ…。そういえば、涼風とひふみ先輩も入ってるのか。じゃあ、これは幻聴じゃないのか。壁越しだから途切れ途切れしか聞こえないが、誰かさんが涼風に恨まれてるらしいな。怖い怖い。
「あ、青葉ちゃんが呼べば呼んでくれるんじゃないのかな……?」
「そんなわけないですよ!あれは絶対呼びませんよ!もうこのッ!」
あいつ酒でも飲んだのか?ひふみ先輩も大変だな。
これ以上いたらほんとに逆上せそうだ。さっさと出よ。温泉に置いてあるシャンプーで頭を洗い、石鹸で身体の汚れを落としたあと俺はすぐさま風呂を出た。
頭をドライヤーで乾かし、番台のおばさんからコーヒー牛乳を買って一息つく。温泉はあまり来ないがこういうのは憧れだったのだ。出来れば裸で飲み干したかったがそれは子供が出来るまで取っておこう。てか、結婚出来るのかな。
それにしても、部屋に戻っても暇だしどうするかな。こういう時に男1人ってのはすることがなくて困るな…。旅館内をぶらぶらするか、外に出て買い食いでもしようか。マッ缶を1本しか持ってこなかったのは失敗だったな。
「お兄ちゃん、暇なら旅館の中にゲームセンターあるからそこ行きねぇ」
ずっと暇そうにここに佇む俺に番台のおばちゃんがそう言ってくれる。俺はその言葉に従うように足を進めた。行ってみると思ったより広く人も多い。卓球もあったけどこっちの方が暇つぶしには丁度いいだろう。な、に、をしようかなと財布から出した百円で1人キャッチボールをしていると涼風達が〇リオカートをしていた。
「やったね!」
「……負けない…!」
「ちょ!青葉ちゃんさっきから何してんの!?」
「このコース曲がりきれませんよ~!」
はじめさんが全速前進でぶっちぎりの1位に思えたが後ろからアイテムを使って2位に接近しているひふみ先輩。そして、かなり後ろの方でのろのろ進んでいるゆん先輩とドリフトを知らないのかそれが使えずカーブで落っこちる涼風。うん、これDVDにしたら売れるんじゃないかな。
「このゲームでこの篠田はじめに精神的動揺による操作ミスは決してない!」
あ、あかんそれ。フラグや。本人は鼻を擦りながら「言ってみたかったんだよね~」と言ってるがその顔を一瞬にして歪む。
「あぁ!?」
「……ふふ」
キノコで加速したひふみ先輩にコース外に弾き出され、はじめさんは信じられないという顔をしていた。それに対してひふみ先輩はにこやかに笑って1位に躍り出る。
「うわぁぁぁん!また落ちた!!」
「何やってんの……」
あっちはあっちで楽しそうにやってんな。レインボーブリッジ、難しいけど慣れたらめちゃくちゃ楽しいからな。それにもうひふみ先輩ゴールしてるし、勝負は決まっただろう。
さてと、俺はどうしようかと背を向けた時にどうやら気付かれたらしい。
「あ、比企谷くんやん」
はじめさんがコース外に落ちたことで2位になったゆん先輩がおーいと手を振る。いつもは元気な涼風とはじめさんは意気消沈といった様子だ。
「どうしたん?こんなところで」
「まぁ、暇だったんでぶらぶらしてただけですよ」
「そうなんや。みんなで遊んでんねんけど、どないする?」
うーん、この道端で犬の糞を踏み潰してしまったような顔をしているのが2人もいる中で遊ぶのはプロぼっちには難しいな。しかも、涼風に関しては親の敵を見るような目で見てくるし。そもそも、遊ぶといっても何をするのかがわからない。ほら、遊ぶと友達って言葉ほど定義が曖昧なものは無い。
「別に構いませんけど、何するんですか?」
俺が尋ねるとひふみ先輩がある四角い筐体を指差す。プリパラ?ムシキング?そんなちゃちなもんじゃない。プリント倶楽部だ。略してプリクラ。この人にしては意外なチョイスすぎて俺とゆん先輩が固まっていると、ある2人は乗り気のようだ。
「いいですね!」
「撮ろう撮ろう!」
先ほどのトラウマを払拭したいのか若干荒ぶってるようにも見える。プリクラか。そういえば、戸塚となんかでかいのと撮ったくらいだな。俺自体写真に写るのが嫌いというのもあるが、あまり縁のないものである。
「まぁ、たまにはええか」
2人のはしゃぎ具合を見てゆん先輩は微笑む。……このパターンだと俺も写ることになりそうだな。別にいいのだがこんな美少女に囲まれて写真を撮るというのはどうなのだろうか。
「比企谷くんも……撮ろ……?」
撮りますよね。あんな上目遣いで言われて撮らない男子は女に興味がない人でしょうね。
「うわ、思ったより狭いね」
「椅子あるからちゃう?」
「どかせられないんですかね」
プリクラとかバリバリ撮ってそうなイケイケ系女子3人が筐体に文句をつけてるとひふみ先輩がポチポチと画面を操作する。
「意外ですね、こういうの慣れてないと思ってたんですけど」
「…コスプレ…してる時……たまに……撮るから……」
あぁ、そうか。ってなぜそうなった。まぁ、プリクラにそんな使い方があるとは俺もまた活用しよう。多分しないけど。
「ひふみ先輩、もうちょっと後ろじゃないと映りませんよ」
「はじめが邪魔なんやろ」
「そんなことないよ!」
「あっ!もうそろそろですよ!」
「……はい、……チーズ……」
4人の可愛らしい女の子達の真ん中に写った目の腐った男子。
もし、この1枚を見て俺が思うことがあるのだとしたら。
それはなんで俺はこんなに美少女に囲まれて無愛想にしてるの?くらいであろう。これを小町へのおみやげにすれば喜ぶだろうが、俺はそっと財布の中に閉まっておいた
手直し楽しい