B級の比企谷くん【ワートリ×俺ガイル】 作:あなたのハートにイオナズン!
感想でもけっこう好意的なご様子で
これもひとえに応援のお陰、ありがとうございます!
…なのに何故評価は一つ星しか増えないのかしら。逆に好ましくない理由がわからない…!ハーメルンで読むワートリ×ガイルの多数と比べても遜色ない程度と自負くらいはしてるのですけどねー…?
あ、小町ちゃんは私の中ではあのレベルのブラコンがデフォルトです。ナニモオカシナトコロハナイデスヨ?
「川崎、ちょっといいか?」
眠い頭をどうにか起こし、最近癖になっている重役出勤で今日も登校する。
すると、先日平塚先生にとっ捕まっていた比企谷が机の前までやってきてぶっきらぼうに呼びかけた。
え、え、なに、なんでコイツいきなり話しかけてくるわけ!?
「……なに?」
混乱する脳を他所に、なんとか自然体を装って応えようとしたら何故か不機嫌さを醸すような返答になる。
最近の自分の行動が徒となってか、クールぶってる私の内心は大後悔の真っ最中だ。
なんでもうちょっと女子らしい受け答えが出来ないかなぁ私! 睨みを利かせるとか完全にヤンキーじゃん!?
「話があるんだが、ちょっと来てくれるか?」
「……此処じゃ出来ない話なの?」
「プライベートだからなぁ、出来れば
「ん、わかったよ」
と、冷静に頷いて席から立ち付いて行くふりをして、本気で動悸が怪しくなってきているのを実感する……!
なに、なんなの、なんのはなし!? ぷ、プライベートで、ふたりっきり、え、というか教室で呼びかける時点で行動選択可笑しくないコイツ!?
比企谷はボッチを自称してるけど、自分がそこまで注目されてないと思ったら大間違いなんだからね!?
今も教室中からではないけど、三浦とか由比ヶ浜なんかがこっちをガン見してるし……!
女子とふたりっきりになろうとしている自分の行動をもう少し考えろ!
というか、なんで呼ばれてるんだろう。
あれか、最近私がコイツをやたらと気にしてるのを察知されたのか?
それを窘めるために釘を刺しに……、ないな、そういうことを自分からするような奴じゃないことは、今までの『観察』でもう知ってるし。
私がコイツを気にし始めたのは、丁度一週間ほど前からだ。
体育が終わってすぐの昼休み、私はいつものように屋上へとひとり向かっていた。
其処を、着替えもそこそこに替え欠けの制服姿で廊下を駆け抜ける比企谷の姿が。
猛スピードで横を通り過ぎて往く男子に驚きつつ、何故そこまで焦るような顔をしているのだろうか、とその時はほんの少しだけしか気にかけて居なかった。
そしてしばらくして昼食を屋上で食べ終えて、人気がなかったはずの其処へと現れる誰かの気配に訝し気に入口の方を気に掛ける。
――比企谷だった。
土気色の表情で、この世全ての絶望を一身に浴びせられたかのような足取りで、彼は入口の上に陣取る私に気づきもせずフラフラと屋上へとやって来たのだ。
すわ飛び降りか、と危機を感じたのもつかの間、彼は喉が擦り切れんばかりの慟哭を始めていた。
世界が終わったかのような、実に絶望的なそれは数十分以上続き、とてつもなく居た堪れない、出るに出られない空気を屋上中へと響かせた。
そのまま、まさに飛び出して逝きそうな絶望を解放としていた男子は、そこまで長い時間泣き叫んでいたわけではなかったと思う。
しかし、私にとっては随分と長い時が過ぎていたようにも思えて、その彼に何も言ってあげられそうにない自分が酷くもどかしくて。
同じ年の男の子が、あそこまで感情を顕わにする姿なんて初めて目の当たりにしてしまった私にとっては、衝撃としか言いようがない時間であった。
比企谷はしばらくそうした後、飛び降りなんかを敢行することも無く帰って行ったが、私は胸を締め付けられる感覚を叩き付けられたように身動きが出来ず、しばらくは息を殺したまま教室へ帰ることも出来やしなかった。
心が、震えたのだ。
――それからだ、比企谷の姿を学校で追いかけ始めてしまったのは。
どうしてあんなに絶望していたのだろう、どうやってそれを払拭できたのだろう、という感情から始まって、気づけばアイツの姿を目で追いかける一週間。
自分の事情だってどうにもなってない真っ最中だというのに、感情というやつは自分ではどうしようにも制御できないものであったようだ。
たった一週間で、私は恋としか言いようがない感情に染められていた。
その感情を否定したくて比企谷の悪いところを探して自分の中でどうしても許せないモノを見つけてやろう、などという意地はどんな側面から見ても恋としか言いようがなかった。
しかもちょっとばかり普通なら駄目な部分があったとしても、私なら比企谷ならこのくらいは平気、と変換してしまうのだから、割と完全に末期だ。
決してその他の日常を蔑ろにする気はなかったが、少々気が緩んでいたことは誤魔化せようがない。
お陰でバイト先からの注意も何度か飛んだし、大志に詰め寄られた時だっておざなりな返事が出てしまった。
まったく、恋なんてするものじゃないね。
さて、いったい何の話なのか。
人気の無いところ、と聞いて私のお気に入りのスポットである屋上まで連れてくる。
じっくりと、話を聞かせて貰おうじゃないか。
☆ ★ ☆
「――お前が何を悩んでひとりで抱え込んでいるかなんて、俺には到底想像もつかない。けど、本当に悩むってことは誰にも明かせないってこととイコールで結びついていい話じゃないはずだろ、どうにかして解決したいのなら、誰かに話してみることがひょっとしたら解決のための第一歩を踏み出せるかもしれないだろ。言えよ! 言っちまえよ! 家族にも語れないとか意地張ってなくていいんだよ! お前の泣き言を受け止めるくらい、本当に家族だってお前が思ってるんなら絶対に拒まれることは無いんだ! 血の繋がりが結ぶ絆は、お前だけのちっぽけな独り善がりで崩れるほど容易くなんてねぇんだよ! それでも一歩が進めないっていうんなら、独り言くらい後ろで聞いててやる! お前を信じていてやる! 世界で独りぼっちなんて戯言は吐いて捨てろ! お前の背中は俺が守る! だから踏み出せよ! まだ始まってすらいねぇ、ほんの一歩目はこれが最初だ! さあそろそろ始めようぜ、川崎! お前の世界を切り拓く一歩目くらい、俺が手を引いて行ってやらぁ!」
「……あ、う、うん……」
どこかの幻想殺し張りに長文説教で噛ましてみたが、どうやら解決できたらしい。
こんな無駄に熱い修造みたいなキャラじゃないからこそ、ふざけ半分で彼女を煽る気満々で口遊んだのに、差し出した手を捕まえられて頷かれる始末。
ジャブを打ったのにストレートになっていたような感覚である。
……いーのかなー……。
どうにも色々な部分をすっ飛ばしたような気配すら覚え始めるが、まあ解決は解決だ。
タイシが云うには怪しい名称の店から電話がかかってきたという話であったが、学校に来ていることは確定なのだし直接聞けばよくね? と思った結果の強行軍。
其処で断られたら直にバイト先でも探そうかと思ったのだが、ぶっちゃけバイトをする理由なんて金が欲しい意外にあるわけがない。
そのうえで高額をと求めている節があるのなら、遊ぶ金以上に片付けなくてはならない事情が彼女にあるのだということは容易に連想できたし。
どちらにしても、経済に携わる話を通そうというのならば親御さんなんかに話を通すことは大前提になる。
高校生は大人と子供の中間だとよく言うが、学生やってるうちは子供なんだからしっかり勉強すればいいのだ。
普通に授業の話ではなくて、社会や人生も含めた全体の話でな。
そのうえで、他を知る者に話を持って行くことくらいは、人生経験豊富な方々ならばなんとかできる。
俺たちは其処を頼りつつ、上手く折り合いをつけて成長してゆくしかないのである。
高校生になったからと云って一朝一夕に色々と抱えられるわけがねーって話だよ、まったく。
……さて、そろそろネタ晴らしをしよう。
タイシに相談されたことも含めて、話を持って行く場所もとりあえず進学指導だから平塚先生……じゃ不安だな、そもそもあのひと生活指導だし。厚木先生がそっちをやっていたんだっけか? とりあえず其処まで連れ立つくらいはしないと有言不実行になる。
あとは、殴られるくらいは覚悟しておこう。
ぶっちゃけ、口先三寸で煙に巻いた自覚はあるし。
覚悟完了、腹括れ比企谷八幡!
☆ ★ ☆
「え、お前莫迦なの?」
「おいちょっとは歯に衣着せなよ、馬鹿じゃないよ、少しだけ勉強に自信がなかったんだよ……」
さて色々と話が済んで翌日の昼休み、場所は昨日の屋上。
俺のストレートな質問に目を伏せて語尾が細くなってゆく川崎の成績は、ちょっとばかり平均を下回る凡夫であった。
そうだな、めっさやることが無くて勉強にしか食指を動かせない才覚あるボッチならばともかく、バイトもやって授業にも身が入らないボッチなら成績の方は下降してゆくのは当然だわな。
明かされた成績に、あちゃー、と俺は思う。
「そうなると塾の特待受けるのも無理かー、学校から推薦まで取れそうにもないな。諦めるか」
「いやいやいや、其処はきちんと面倒見てよ。発破かけたのアンタでしょ」
「ちょっとばかしケツ叩いた程度で責任の話されてもねぇ、選択するのは個人だろー」
どちらかと云えば前進したとはいえ、其処を俺が誇る気も無いので偽悪的に振り切る。
酸いも甘いも、本当に噛み分けるべきは自分自身。
甘依存を許すほど優しく扱う義理は無かった。
今回の顛末。
進学を望む川崎姉略して姉崎だが、同時に塾の利用を始めたタイシに自分
が、そこはそれ、やはり世間を知らぬ小娘の浅はかさ。
子供の学費程度し払えなくて何が親か、と黙ってバイトに勤しんだ姉崎は親にこっぴどく叱られた。
普通の親からしてみれば自分の子供がましてや娘が可愛くない親などは居るはずも無く、未成年で深夜バイトに自分たちに無許可で首を突っ込んだ時点で
大体俺の予想通りの展開になったなぁ、と自負しつつも、そうなったからこそ面倒見ろとは如何なものか。
先ほども言ったが、前と比べれば進歩していてもそれを選択したのは本人次第なので、やはり俺がドヤる議題ではないことは確か。
そして上手いこと乗せられたと思っている姉崎の面倒など、最初だけ見ればあとは自分でできるだろー、と歩行器付けた赤ん坊でもない彼女の『最後まで』などと御免被る。
一歩踏み出せたのなら後は自分で歩け、あんたには立派な足がついてるじゃないか。
「あんたの得意なことだけでもいいから、ちょっとは手を貸してよ。他の人を頼れって言ったのあんたじゃないか。よろしくね、国語学年三位」
何処か不敵に微笑んで、姉崎もとい川崎はこちらの言質を盾に協力を促していた。
それは仕方がねーが、何故、知ってる……?
・八幡の魂の叫び
戸塚の性別関連です
恋愛系ってこう書けばよろしいのかしら、ちょっとよくわかりませんわ
そんなわけで次回はチェーンメール編
いまいち評価が伸び悩むのならばもっとたくさんの人に読んで貰うべきか
そのためには推薦文を書いてもらうしかないかなーチラチラ(他力本願