B級の比企谷くん【ワートリ×俺ガイル】 作:あなたのハートにイオナズン!
俺が女子から生ゴミを手渡される程度の評価を受けている恐れが発覚したジョイフル事件から早くも3年……、いやそこまでは経ってないか、精々二日か三日程度しか過ぎ去ってはいない。
早めの梅雨が訪れたとでも言いたいのか、朝から曇天であった空模様はしとしとと雨模様に代わり、例の事件以降再び舞い戻ることとなったベストプレイスへは本日も伺えない模様。
仕方なしに教室で飯を食うしかないのか、と購買より戻ってみると、スクールカースト上位のグループ内に噂のジョイフルが混じっている姿を見つけてしまった。
……同じクラスだったのかあの
と、なると先の事件を引き起こした主犯は、恐らくはグループ内で女王気取りのあの金髪ロールである可能性が大。
あーゆう手合いは中学にもいた。
下に見た男をからかって陰で笑う、むしろお前が陰気なんじゃねーのかと云いたくなる女子特有の腹黒さ。
そんな内面真っ黒でよくクラスの低カーストを下に見れるな、と云いたくなるが、そういうモノは得てして己を知らぬものである。
注意を促したところで大抵は無駄に終わり、逆恨みが待っている。
よかろう、そうして敵対するというのならば、こちらはむしろ迎撃の準備をしようではないか。
具体的には豚の血あたりを集めよう。某アイアンメイデンでお馴染みの拷問部によればスタンダードな手筈らしいからな。
そうしてこちらが己の席へと戻りつつ、内心復讐の手段を測りかねていると、某ジョイフルが金髪ロールへと申し訳なさそうな声を上げた。
「――あはは、で、さあ優美子、あたし、ちょっといくところがあるんだけどー……」
「そーなん? じゃあ行って来ればいーじゃん。あー、帰りにレモンティー買ってきてくれる?」
「え、あー、いや、ちょっと時間がかかるといいますかー……」
何やら齟齬があるご様子。
言い淀むジョイフルに、金髪ロールは怪訝な顔で話を問うも、はっきりとしない答え方に女王は段々と苛立ちを顕わにしてゆく。
さながらその様は獄炎の女王、――む、いかん、まーだ俺の中に残っているのか中学の残滓。
消え去れ……っ! もう俺は左腕が疼いたり、世界に封印された13柱の神の一角である、などという黒歴史を思い起こすことは無いんだ……っ!
「なんなん、はっきり言いなよ。そんな言いづらいこと隠してるわけ? あーしら友達と違ったの?」
苛立ちが最高潮にでも達しているのか、金髪ロールはクラス中に聞こえる声量で友人(仮)を威圧する。
その雰囲気に圧されてか、クラスに残っていた他の奴らも居心地が悪そうに教室を出始めて往く始末。
逃げ遅れた俺は、とりあえずこの互いに押し黙った空気を打破すべく、云いたいことを呟いた。
「ともだち、ねぇ」
無駄にニヒルな含み笑いを周囲に思わせたかもしれないが、現在イメージしているのは指一本立てたマスクの彼であったりする。空中浮遊!
「あ? なんか文句あんの?」
おう、見事にこっちにヘイトを向けるか。
まあ元より敵対していたお相手だ、存分に煽って遣ろう。
「別にぃ?」
「だったら口挟んでんじゃねーよ。関係ない奴は黙ってて」
む? コイツは俺のことを大して認識してなかった?
やだ、自意識過剰じゃねーかよ俺……!
となると、あの炭を寄越してきたジョイフル本田は一体何故。
まあいいや、とりあえず言いたいことはまだ終わってない。
「そう思うんだったらまずお前が出てけよ」
とりあえず正論。
クロヘさんはアレだけド正論を吐き出してると、そのうち背後から刺される最終回を迎えそうだよな。
そんな内心の俺という、見るからに低カーストな男子に言い返されたのが腹立たしいのか、金髪ロールは一瞬で怒鳴り返すような顔つきでこちらへと向いた。
しかし、ボーダーという特殊なところで培った経験は、俺に彼女を大して脅威とも見取らぬ判別を下す。
要するに全く怖くない。
死ぬわけじゃない女子相手など恐怖でも何でもないので、スケェェェイス!と叫ばなくとも乗り越えられる程度の低いハードル。
ゲートボールより容易いわ。
「何より関係ないのはお前がそうして怒ってるっていう事実だろうが、この教室で昼めし食ってる他の奴らには何一つ関係ない。関係ない奴巻き込んでんじゃねーよ。お友達との友情を確かめたいのならばお外でどうぞ?」
なお、先も言ったがお外は雨模様である。
ところでこの科白、他の奴が既に逃げ終えて居たらほぼ威力も無いんだけどな。
感覚で見取るけど、まだ聴衆というか野次馬は室内に散見している模様。
何より大多数の誰かを了解得ずに味方に付けられる今だから出来る言だよね。
危うい橋を渡らせるなよ、まったくぅー(呆れ。
「な、こ、っの……っ! ふ、ふん、そんなこと言って、あんたどーせユイが可愛いから助けてやろうとか思ったんでしょ? 見え見えだっつーの、そんなの」
「何故に俺が見も知らぬ奴を助けなくちゃならんのだ」
ほぼコンマを挟まずに返答。
どうやら金髪ロールは俺を攻撃する材料を探そうとしている様子だが、俺からしてみればジョイフル本田は今のところ敵の
黒い全身タイツでイーッと声を上げる若しくは語尾にゲスとかやんすとかつける様な小物程度の相手は、別に助けるほどの者でもないと思う。
関係ないけど、二度寝ちゃんがキャラ作ってたのが地味に悲しい。お前フツーに喋れたのかいっ!
てか、ユイってだれ。
「は、はぁ!? あんたクラスメイトに何言って、」
「待って優美子っ! あのね、私――」
☆ ★ ☆
なんだかんだで台風一過。
ジョイフル本田は何やら彼女なりの言い分で以て金髪ロールと和解を交わし、彼女たちの友情()にはいった罅はいい感じに修復できたらしい。
そうなると俺は元よりお役御免であるので、遅れた昼食をもっぐもぐと健啖に頂き始める。
今日も元気だ、あんパンうめー。
そうしてすっかり毒気を抜かれた金髪ロールに、あんパンを食う間に内心で建てた検算で以て再び近づいて往く。
「――で、レモンティーだったか? 買ってきてやるよ。さっきは言い過ぎたからな、ごめん」
ついさっきまで対峙していた相手に謝られ、一瞬で「な……っ」と絶句する金髪ロール。
だが、此処で騒げば痛い目を見るのは間違いなく彼女だ。
矛を収めた相手を、尚も攻撃する行為は人格を疑う一因成り得る。
モノを考えない莫迦ばかりが世に蔓延っているわけではない、人はそれなりに誰しもが試行して思考して選択して観測して生活する。
この俺の行動は考えなしの側面からすれば烏滸がましい独り善がりであるが、同時に相手の器を量りに掛け得る聴衆へ猜疑を挟む余地を与え得る行動だ。
スクールカーストを地に落とす程度の評判の低迷を謀る俺の一策さて、どう躱す?
「~~っ、……はぁ、此処で騒いだらあーしがガキみたいじゃん……。わかったわよ、ゆるす。あーしも、さわいじゃってごめんね」
――ふぅん、以外にも話の分かる女子だな。
彼女に対する評価をやや上方向に修正し直しながら、俺は再び購買へ向けて足を進めるのであった。
さくさくすっきりと纏まっているのが何か違うのかな
八幡らしくないと評判の4話です
地の文に色々とメタなネタを挟んでいれば八幡らしさというか残滓みたいなものは見受けられると思って書いているのですが、やはり会話をどうにかしないとダメなのかしら
はぁー。と前置きをつけたり、やたら上から目線で斜に構えたり
そういう八幡が欲しいのならよその子になっちゃいなさい!
あと葉山さんが空気です、すんませんでした