こんな駄文を評価して下さりありがとうございます。
m(_ _)m
敵の動きを心理掌握で無効化し、周りに敵がいないことを確認するとお母様が俺に対し何か口を開こうとした。が、
「深雪ッ、操祈ッ」
と、汗を流し息切れしながら走って来た達也兄さんの言葉によって遮られた。達也兄さんの中に唯一残っている兄妹愛が其処まで必死にさせたのだろう。
「深雪?操祈?達也何を言っているの?立場をわきまえなさい。」
「ッ!…かしこまりました。」
達也兄さんの俺たちの呼び方が気になったのかお母様は達也兄さんに釘を刺した。
すると入り口の方から足音が聞こえ風間大尉と部下たちが続いて入って来る。お母様は他人のいるこの状況で俺の能力について言及するつもりはないらしく口を閉ざした。
風間大尉は金城一等兵を含む裏切り者の兵士に目を向ける。次に俺たちの前までやってきて頭を下げた。
「申し訳ない。反逆者を出してしまったのは完全に此方の落ち度だ。何をしても罪滅ぼしにはならないだろうが、望む事があれば何なりと言ってくれ。でき得る限りで便宜を図らしてもらう。」
そう告げる。真っ先に達也兄さんが口を開く。
「ではまず、正確な状況を教えて下さい。」
それは俺も知りたい事であった。この状況での情報はとても貴重であり命にも関わる重要な事だ。
「敵の戦力は既に上陸しており慶良間諸島近海も敵に制海権を握られている。また敵に内通したゲリラの活動で所々において妨害が受けた。だか、ゲリラについてはそれ程数がいなかったので既に八割がた制圧を完了している。軍内部の反逆者ももうじき片付くだろう。君達が心配する事はない。」
風間は現在の状況を隠す事なく話した。普通は民間人に其処まで詳しく戦況を話すなどありえない。風間大尉の視線の中にある反逆者たちは精神に何か異常をきたしているのか騒ぎもせずにただ立っているだけだった。つまりこの目のまえにいる達也を含めた五人の中に精神干渉系の魔法師がいる事になる。風間は昔、戦友から精神干渉系の魔法を得意とする者の中には異常に感のいいものや相手の嘘をなんとなく見抜く者がいると聞いた事があった。その事を踏まえ情報を正確に伝えたのだ。もし隠し事や誤魔化しなどがばれでもしたら不信感を持たれてしまうからである。
「では次に母達をシェルターよりも安全な場所へ保護して下さい。」
「防空司令室に保護しよう。あそこの装甲はシェルターの二倍の強度を持つ。」
スゲェなこのシェルターの壁は結構分厚いというのにその二倍の強度とは恐れ入る。
「では最後に、アーマースーツと歩兵装備一式を貸してください。貸す、といっても消耗品はお返し出来ませんが。」
「…何故だ?」
この疑問は尤もだ。達也兄さんはまだ中学一年生でしか無い。風間大尉にもし息子がいるならば達也兄さんぐらいの年齢なのでは無いだろうか。そう、達也兄さんは中身はともかく外見は完全に子供であるためその子供が戦場に出るかのような発言をすれば疑問に思うのも当然だ。
「彼らは妹達を危機に晒しました。その報いは受けさせなければなりません。」
風間大尉は表情を変えずに問う。
「一人で行くつもりか?」
「自分がなそうとしている事は軍事行動ではありません。個人的な報復です。」
「それでも別に構わない。感情と無縁の戦闘など人間ならばありえない。復讐心を持って戦うとしてもそれが制御されていれば問題は無い。」
風間大尉は続ける。
「非戦闘員や投降者の虐殺など認めるわけにはいかないが、そんなつもりは無いのだろう?」
「投降の暇など与えるつもりはありません。」
「ならばよし。もとより今回の我々の任務は侵攻軍の撃退、もしくは殲滅。敵に降伏勧告する必要も無い。司波達也君、君を我々の戦列に加えよう。」
其処で風間大尉は部下に達也兄さんに貸し与えるアーマースーツを取りに行かせようとするがお母様が口を挟む。
「ちょっと待って貰えるかしら。達也、何勝手な事をしようといるの?」
「そうですよ。危険過ぎです。考え直してください、達也君」
穂波さんも達也兄さんが戦場に行くには反対みたいだ。
「お母様私は行かせてもいいかと思います。」
「深雪さん?何を言っているの?達也はあなたのガーディアンよ。あなたから離す訳にはいかないわ。」
風間大尉達には聞こえないように小さな声で話す。さすがにガーディアンなどの単語を聞かせる訳にはいかないのだ。どこから四葉の縁者だとわからないからである。
「ガーディアンである前に私の兄です。どうしてお母様は自分の息子に対して其処まで冷たくなれるのですか⁉︎」
「分かったわ。」
深雪姉さんは自分の気持ちが伝わったと思ったのか。顔に笑みを浮かべていた。
「達也はあなたのガーディアンだからあなたの自由にしなさい。」
「ッ!ですからなぜッ⁉︎」
深雪姉さんは自分が見当外れな事を考えていたと気づき声をあらげようとした。
其処で俺は深雪の肩に手を置く。少し熱くなりすぎである。達也兄さんに対して冷たいのは今に始まった事では無い。でも深雪姉さんは許せないのだろう。今まで自分も同じような対応をしていた事もこの今の関係も。
「深雪姉さんは達也兄さんの意思を尊重したいのよねぇ?達也兄さんはあなたのガーディアンだからあなたが許可すればいいわぁ。」
そうすれば達也兄さんの行動を縛るものは無いのだと言外に伝えると深雪姉さんは頷き達也兄さんに向き直る。
「ミストレスとして許可します。けれど絶対に帰ってきてください。」
達也兄さんは頷くと風間大尉のもとに向かいそのままシェルターから出て行った。俺たちは部下の方が案内してくれるらしく防空司令室に誘導して貰っていた。
その道中で俺は深雪姉さんに問う。
「でもよかったのぉ?戦場の しかもその最前線に行くと思うからとんでも無く危険だ思うけどぉ。」
其処でハッとして顔が青くなり先程の道を全力で引き返し始めた。それに穂波さんが気づき大きな声で呼び止めようとするが深雪姉さんは聞かずに走り去っていった。多分原作通りに達也兄さんとイチャイチャしたら戻ってくるのだろう。
穂波さんとお母様がどうするか話し合っていると深雪姉さんが戻ってきた。
「相談もなしに離れてしまい申し訳ありません。」
「いいでしょう。今回のことは何も言わないでおきます。」
「ありがとうございます。」
深雪姉さんとお母様のやりとりが終わり俺たちは再び防空司令室に歩き出し目的地に到着した。案内してくれた軍人さんは俺たちを防空司令室の中に入れ自分は外を見張るといい入り口を閉めた。今この中には俺達しかいない。すると徐ろにお母様は穂波さんにこの部屋の中に監視カメラや盗聴器などが無いか調べさせ無い事を確かめると俺に視線を向け口を開ける。
「では操祈さん、先程の魔法は何なのか教えて貰えるかしら?」
そう妖艶に微笑みたずねてきた。