とある四葉の心理掌握   作:トサキント

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4話

深雪姉さんと達也兄さんと海に行き浜辺を歩いている。やはり深雪姉さんと俺の容姿は目立つのかすれ違う人たちは皆一様に振り向いている。中には恋人がいるのにこちらを向いて恋人に足を踏まれて悶絶している哀れな男もいた。

しばらく海の景色を楽しみながら深雪姉さんと談笑していると達也兄さんが俺たちの前に出て立ち止まる。何事?と思い前を見ると、いかにもといった感じの軍服を着たゴツいおっさん二人と達也兄さんが向かい合っていた。

 

「ああ?ガキには用はないぜ?」

 

嘲笑した顔で達也兄さんの顔を覗き込む。達也兄さんは何も答えずに黙っていた。

 

「ビビって声もだせねぇのか?」

「ハッ、チキン野郎が。かっこつけてんじゃねぇよ!」

 

二人が嗤い見下した様に言葉を口にする。そんな二人に対し達也兄さんは静かに言葉を紡ぐ。

 

「詫びを求めるつもりはない。来た道を引き返せ。それが互いの為になる。」

 

おおっ!かっくぃ〜。そう思ったのは俺だけではないはずだ。言われた男二人は頭に血管を浮かべている。一触即発状態である。ちょっと頭の中をいじって大人しくさせようかなと本人たちが聞いたら青ざめそうな考えを募らせていると

 

「頭を地面に擦り付けろ。そしたら許してやる。」

「土下座のことを言いたいのか?なら頭ではなく額というべきだな。」

 

相手の言葉に対して挑発的に返していた。えっ何?達也兄さんって喧嘩したいだけなの?と思っていまう。

 

ここから先はいうまでもなく達也兄さんの俺Tueeeが繰り広げられていた。すごいよね?中学一年生が大人二人を、しかも軍人をのしちゃってるんだよ?憧れちゃうよね。俺って操祈ちゃんボディだから真似できないけど夢見ちゃう。

深雪姉さんも素直じゃないね〜。達也兄さんの事は苦手と言っておきながら頬をうっすらと染めて凝視している。自分で気づいてないのかな?まぁ、ブラコンの片鱗はもう見え見えである。気づくのは時間の問題かもしれない。

 

 

 

 

 

騒ぎのせいもあってか完全に興ざめしてしまった俺たちは別荘で寛いでいる。俺は机に突っ伏しだらけきっていた。お母様が見たらなんか言われそうである。

 

「操祈、もう少し体力をつけたらどうなの?」

 

「私だって体力つけたいわよぉ。でもつけたくてもつかないのよぉ!」

 

そうなのだ。俺だって努力しているのである。ランニングなどをして体力をつけようとしているのだがその努力は未だに報われていないのである。すると深雪姉さんが呆れたような声を出す。

 

「はぁ〜。私もあの人もある程度は動けるのに何故貴方だけ運動音痴なのよ。」

 

俺が一番知りたいわっ!と声に出そうになるが我慢する。

 

「知らないわよぉ。深雪姉さん達が羨ましいわぁ〜。たくさん動けて。」

 

この後クルーザーに乗り海に出るのだが俺はあまり乗り気になれない。もう少し体力が欲しい今日この頃。

しかし俺だけ行かない何て事は出来ない。今達也兄さんは俺と深雪姉さんのガーディアンを兼任している。つまり俺と深雪姉さんが離れすぎるとガーディアンとしての役割がはたせないかもしれないのだ。それは達也兄さんにとっては絶対にあってはならない事であるはずだ。だから行くしかないのだ。はぁ。

 

 

 

 

憂鬱な気分になりながらも俺はクルーザーの上で寛いでいる。深雪姉さんは海の中を覗き込みご機嫌である。その元気を分けていただきたい。

 

「ん?何だあれは?」

 

クルーザーの副船長の方から疑問の声が上がる。そちらの方に視線を向けると二つの魚影が見えた。

 

「何?イルカ?」

 

深雪姉さんが可愛らしく首を傾げて疑問に思っている。それもそのはず、この近くにはイルカなどの大きい生物があまり生息していないという情報を船長にもらっていたからである。しかし全くいない訳でもないので運がいいのかな?と呑気に眺めていると魚影がの全貌が明らかになってくる。その姿はイルカなんて可愛いものではなかった。

 

「魚雷だっ!」

 

船長が叫ぶ。皆んなそれぞれ違う対応を取る。お母様は魚雷に目を向けるだけで動かない。穂波さんはCADを取り出し魔法を発動させようとしている。深雪姉さんはCADを取り出したはいいものの焦って何もできていない。俺?俺は達也兄さんが何とかしてくれるだろうと信じてるから。俺の想いが通じたのか達也兄さんは右手を前に突き出し構えていた。そして強力な魔法が行使され魚雷は影を広げながら沈んでいった。おそらくばらばらになったのだろう。

 

「よくやったわ。達也。」

 

お母様はそう伝える。そして何事もなかったかのように寛いでいた。

 

「奥様、一度陸に戻りましょう。」

 

当然の判断だろう。俺達が攻撃されたのは間違いないのだから。

 

「ええ。そのつもりよ。」

 

お母様はそう答える。それにしてもさすが達也兄さんである。あの一瞬でCADも使わずに魔法を使うとは。やはり公式チートは格が違うな。そう思わずにはいられない。

 

 

 

 

陸に戻ると俺たちは国防軍からの聴取が待っていた。勘弁して欲しい。今日は色々ありすぎた。休ませて欲しい、そう思うのは贅沢なのだろうか?

 

聴取は風間大尉と部下の方がするらしい。最初は順調に進んでいたんだが相手の質問の仕方がいかにもお前たちが何かしたんだろう?といった感じの雰囲気を醸し出しているので穂波さんがキレ気味で大変である。

 

「何故攻撃されたか心当たりはありませんか?」

「あるわけないじゃないですかっ!一般人ですよっ⁉︎私たちは⁉︎」

 

正確には俺たちは一般人では無いが向こうは俺たちの事を知らないという事は確認済みなので(心理掌握マジ便利☆)問題はないだろう。

 

「しかし、何もないのに攻撃してくるわけが無いとおもうが?」

 

風間大尉が疑問を口にすると達也兄さんが口を開く。

 

「攻撃というよりあれは自分たちを捕らえるのが目的だったのでは無いでしょうか。」

「ほぅ。何故そう思う?」

「あれは発泡魚雷でしたから。」

 

発泡魚雷とは敵船を殲滅するためのものではなく敵船の周りに泡を大量に発生させ動きを止める。もしくは転覆させ事故に見せかけるといったようなことに用いられるものである。

 

「それは確かか?」

「ええ。間違いないです。」

 

風間大尉は一瞬ためを作り達也兄さんに問う。

 

「どうやってそれを突き止めた?」

「回答を拒否します。」

 

だろうな、と風間大尉は呟く。すると達也兄さんが質問を投げかける。

 

「根拠が必要ですか?」

「いや、必要無いだろう。」

 

そう告げる。そこでお母様が退屈そうに「もう終わりでいいかしら?子供達も疲れていると思うので」と話を打ち切り聴取は終わった。

 

俺は聴取のあいだ風間大尉の頭の中を失敬していた。敵の情報を得るためである。まだ正確には特定出来ていないが風間大尉は大亜連合が今回のことを仕掛けたのでは無いかと考えているようである。あの国とは何年も前に戦争をしていて未だに終戦には至っていないからだ。さすが大尉である。もう答えに行き着いてらっしゃる。でも大亜連合と完全に断定出来ていないようだ。

ここからが本題である今回の戦争は国防軍からの裏切りがあり、それが原作では司波家へ危害を加えていた。そう。俺にもその危害が及ぶかもしれないのである。だから風間大尉の記憶からどの人間が裏切っていそうか風間大尉のその人物に対しての心象などを参考に調べていた。

 

因みに記憶を読むだけならリモコンは必要ない。本当、使い勝手良すぎじゃね?この能力。

 

 

 

 


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