Fate/DARK Order   作:えんま

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お待たせしました。

VSクー・フーリン
です。

楽しんでいただけたら幸いです。


第五特異点:北米神話大戦・下

「そろそろ来るのね、王様。体の方はどう?カルナにしてやられたみたいじゃない」

 

異界化されたホワイトハウスの中で、メイヴがクー・フーリンに心配げに尋ねた。

 

「肉体の方の修復は8割ってとこか。魔槍の方は真名解放には耐えられそうにねえが戦闘には問題ねえ」

 

クー・フーリンは淡白に答える。

それでもメイヴの顔から不安が消えることはなかった。

最強と信じていた男が、あわや消滅という傷を負って帰ってきたのだ。

さしものメイヴも、心配を隠すことができなかった。

 

「……もしもの時は、こっちにアレ(・・)を持ってくるわ」

 

「……オレ一人で充分だ、って言いてえところだが、この傷に加えてアルジュナも裏切ってんだとしたらちと厄介だな。

それに、どういうカラクリかわからねえが、あの騎士姿のサーヴァント、生きていやがった。仕方ねえ、好きにしろ」

 

クー・フーリンはただ勝利を得る機械として、最も勝利を得やすい選択を取る。

ひたすらに勝利を。

そうあれかしとされたその男の内には、未だあの焦燥感が燻っていた。

 

「そう……あーあ、女王ごっこもこれでおしまいかぁ」

 

メイヴが楽しげに、だがどこか寂しげに呟いた。

 

「楽しいか?」

 

その様子を見て尋ねるクー・フーリンに、感情の起伏は見られなかった。

そんな彼を見てメイヴは微笑む。

 

「ええ、とても…。だからこそ、最後まで楽しみたいものね」

 

生まれながらにして完成された美を持つ彼女は、男が見れば誰もが恋に落ちるであろうほど美しい笑顔を浮かべた。

本当に、今その瞬間が楽しく、幸せであると語るように。

 

「クーちゃんは?楽しくないのよね?」

 

くすくすといたずらっぽく笑いながら、疑問というより確認に近い声音でメイヴは尋ねた。

 

「どうだかな。おまえは勝手に楽しめばいい。俺はおまえが願った王としてあり続けるだけだ」

 

「クーちゃん、愛してるわ」

 

「そうかい」

 

クー・フーリンの素気無い態度にも、気を悪くした様子もなくメイヴは花のような笑顔を浮かべる。

まるで、長年焦がれていたものが手に入ってはしゃぐ幼子のように。

 

「さあ終わりの戦いを始めましょう。みっともなく足掻いて、もがいて、立ち上がって、決意の眼差しでこちらを睨みつける彼らを、雑作もなく踏み潰してあげましょう」

 

その無垢な笑顔がどんどんと邪悪なものへと変わってゆく。

 

「ああ、最高に楽しみ!」

 

 

 

 

 

メイヴの差し向けた精鋭たちを突破し、異界化したホワイトハウスにたどり着いたカルデアの一行を出迎えたのは、当然クー・フーリンとメイヴであった。

 

「ーよう」

 

クー・フーリンの声に、進み出たのは上級騎士の甲冑に身を包んだリンカーだった。

 

「一体全体どういうカラクリでてめえが生きてんのかは知らねえが、どうやらまた殺されたいらしいな」

 

その言葉に、リンカーは黙して語らなかった。

それが癪だったのか、メイヴが不愉快そうに口を開いた。

 

「ちょっとあなた、クーちゃんが話しかけてるのに無視するとはどういう了見なのかしら?」

 

それでもリンカーは口を開かなかった。

しかし彼はメイヴを全く眼中に入れずにクー・フーリンに向けてある仕草をした。

それは古めかしくも由緒ある騎士の一礼。

彼が行ったのは開戦礼。

言葉は不要だ。

言外にそう示したリンカーは顔を上げた。

その瞬間、クー・フーリンはリンカーへと飛びかかっていた。

すぐさま中盾を構えてその一撃を防ぐ。

後ろに吹き飛ばされながらもリンカーは衝撃を殺し切り、体勢を立て直す。

リンカーはその一撃でクー・フーリンが決して本調子でないことを理解した。

 

「そんなに死にてえならてめえから殺してやる、騎士かぶれ」

 

クー・フーリンが攻め立て、リンカーが守るという構図のまま彼らは激しい戦闘を繰り広げながらホワイトハウスから出る。

 

「全く、クー・フーリンには私の治療が必要でしたのに。やはりリンカーは不潔です。そもそも彼はいつもいつも甲冑を着込むのをやめてもらわなくては。汗は雑菌が繁殖する格好の場所なのですから」

 

その様を見送ったナイチンゲールがそうこぼした。

もしその言葉の直前まで行われていたマスターの彼女とマシュの2人の必死の説得がなければあの神代の戦いを物ともせずに突貫していただろう。

 

「ま、まあまあ、リンカーが熱消毒してくれると思うから」

 

彼女は苦笑いを浮かべて狂戦士系ナースをたしなめる。

 

「では、余らは女王メイヴが相手というわけだな」

 

ラーマのその言葉に、その場にいる全員がメイヴへと向き直る。

その様を見てメイヴは不愉快げに、しかし嘲笑うように言った。

 

「あなた達、馬鹿なのかしら?クーちゃん相手にサーヴァント1人だなんて、死ぬわよ?あの男」

 

しかし、その言葉に焦燥も怒りも浮かべる者はいなかった。

まして、その中で最も非力であるはずのマスターの少女は、まるで先ほどまで奥の手があるゆえにメイヴ自身が浮かべていたような余裕の表情を浮かべさえした。

その予想外の反応に、メイヴは困惑する。

多くの戦士を生み、率い、権謀術数を駆使して戦場を駆けた女王としての嗅覚が、彼女に危機の臭いを嗅ぎ取らせた。

 

「確かに、クー・フーリンは強いよ。でも……」

 

ーリンカーはもっと強い

 

その彼女の言葉に、メイヴは腹立たしげに顔を歪めた。

何の力もない小娘のただの戯言だと、彼女は切り捨てることができなかったのだ。

メイヴはクー・フーリンと謎のサーヴァントが消えた方向、未だ激しい戦闘音の聞こえる方向に目を向けた。

しかしその視界を遮るようにラーマが進みでる。

 

「悪いが、行かせんぞ。余らがお前に足止めされるのではないぞ?余らが貴様を足止めするのだ!」

 

「勝手なことを!!」

 

 

 

 

 

リンカーは冷静にクー・フーリンの攻撃を防ぎ続けていた。

その双眸はクー・フーリンの一挙一動をつぶさに観察し続けている。

クー・フーリンがその手に持つ魔槍は、どうやらカルナの一撃を防いだ時のダメージが残っているらしく、損傷が著しい。

おそらく真名解放はできて一度か、それを行えば魔槍は自壊するだろう。

リンカーは守りに回りつつも自らクー・フーリンに肉薄し続けた。

その使用可能であろう一度、それが投擲による真名解放であった場合自身に防ぐ手立てがほとんど無いゆえに。

逸らさず、しかし真正面から受けすぎて守りを剥がされないようにしつつ、時折片手に持った直剣を振るう。

以前戦ったとき着込み、装備していたものはロスリックを旅していたときに獲得したものであり、今着用しているのはロードランを旅したときに獲得したものだ。

 

「解せねえな」

 

クー・フーリンがその激しい槍捌きの中ぽつりと呟いた。

 

「てめえ、どこの英霊だ?騎士の格好した英雄は大勢いるだろうが、てめえみてえなのはとんと思いつかねえ。無名の英雄にしちゃあ腕が立ちすぎる」

 

ーさて、中世の騎士道物語の主人公やもしれんぞ?

 

槍と、直剣、盾との攻防の最中言葉を交わす2人。

時折魔槍はリンカーの体に癒えぬ呪いの傷跡を残すもそれはあまりに軽微なものだった。

 

「たわけ。そんな凡庸な装備の主人公がいるか」

 

そもそも、とクー・フーリンは言葉を続けた。

 

「てめえの剣は間違っても騎士のお行儀のいい剣じゃねえ。どっちかってーとケルト(こっち)側の剣だろうが」

 

リンカーがクー・フーリンを観察していたように、クー・フーリンもまたリンカーを探っていた。

騎士甲冑に身を包むもそれはどこまでも勝利を貪欲に求める戦士の戦い方だと彼は判断した。

未だにその手札を暴いていない状態であることに危機感を感じつつクー・フーリンは攻め立てる。

クー・フーリンが神速の連続突きを放つと、リンカーは致命傷になりうる突きのみを盾で受ける。

新たにリンカーの体の端々に傷ができる。

魔槍の呪いとリンカーの不死の呪いがせめぎ合い、結果的に不死の肉体に人並みの自然治癒に頼まねば癒えない傷がつく。

その連続突きの終わり、リンカーは大きく踏み込む。

槍の間合いの内側、直剣の間合いに踏み込み剣を振るう。

クー・フーリンの反応が数瞬遅れた。

もしこれが万全な状態の彼であれば確実に回避していたであろうその一撃をその身に刻まれるクー・フーリン。

それは決して深くはないものの、あることの証左をリンカーに示していた。

 

ーカルナ殿の一撃は、相当重かったらしいな、狂王

 

クー・フーリンは一つ舌打ちを打つと、自らの体にルーン魔術を施し傷を癒す。

それが完了するより前にリンカーが再び懐に飛び込む。

槍と剣が鍔競り合い、火花が散る。

リンカーははっきりとその魔槍に刻まれたひびが広がるのを目にする。

 

「カルナがあんな宝具を持ってるなんて逸話はねえ。あれもてめえの仕業か?」

 

ーさて、あるいは貴様の師の仕業もあり得よう

 

「ほざけ」

 

そこから再び高速の攻防が繰り広げられる。

クー・フーリンは槍を短く持ちリンカーの直剣の間合いに対応する。

その突きと払いの多くを盾で受けつつ、時折直剣で逸らす。

盾を持つ腕に疲労が溜まれば剣で攻め立て一瞬でもその腕を休ませる。

 

「らあっ!!」

 

クー・フーリンが渾身の力でもって突きを放ち、リンカーは自ら後ろに下がって衝撃を逃がしながら盾で受ける。

2人の距離が広がり、再び槍の間合いとなるとクー・フーリンがここぞとばかりに攻めかかる。

一突き一突きが必殺のそれを、丁寧に盾で受け、疲労が溜まれば回避する。

直剣による逸らしも交えながら、致命打を避ける。

そして、その回避のタイミングを徐々に徐々に、リンカーはずらし始めた。

クー・フーリンという大戦士をして気付かぬほど、遅々としたスピードで。

果てしなき道のり、その先にある勝利に確実に一歩一歩進みゆく。

リンカーは思った。

 

なるほど、生前の旅路と変わらないではないか

 

リンカーとクー・フーリンの戦いの決着は、まだまだ遥か先ではあるが、確実にそこへと向かいつつあった。

 

 

 

 

 

「あらあら、威勢良く啖呵を切ったはいいけれど、そんなザマじゃあ形無しね」

 

「ぐ……」

 

メイヴの前には息を切らせ、傷を幾つか負ったラーマ。

そしてバーサーカー・ナイチンゲール。

聖杯による補助。

それがどれほど凶悪なものなのか、メイヴを相手にしていた彼らは痛感していた。

そもそも相手は神代の女王。

元から生半可な敵ではないのだ。

無限とも思える絶大な魔力と、それを元手にした魔術や攻撃。

いかにラーマーヤナの主人公とて容易く勝利を掴める相手ではなかった。

何よりもその戦い方の嫌らしさか。

時折マスターへの攻撃を挟むことでマシュを彼女の元に釘付けにする。

ナイチンゲールはあくまで看護婦であり、いかにバーサーカーといえどその戦闘能力は低くはなくとも決して高くもない。

むしろ拳銃と看護婦としての肉体を用いて神代の英雄の戦いに割って入れるだけ異常であろう。

 

「あなたは邪悪ですが健康優良児です。正直申しますと私、さっさとあなたを倒してクー・フーリンの治療に向かいたいのです。そのよく回る口を閉じて早く戦ってください」

 

即座に連射される拳銃を戦車を動かして回避するメイヴ。

そもそもなぜ神代の英霊であるラーマが息を切らせるような戦場で汗ひとつかかず戦闘行為を続行できているのか、マスターである彼女は本気で疑問に思っていた。

 

「これだから喋れるバーサーカーは!!」

 

すでに戦闘開始からかなりの時間が経つも、リンカーとクー・フーリンの戦いに決着がつく様子はない。

それでもラーマは悲観していなかった。

そもそも彼はリンカーの勝利を疑うことも、まして自分がメイヴに勝利することを諦めてもいなかった。

神秘の最も薄い時代の、唯の人であるマスター。

彼女のその輝かんばかりの意志の強さを目の当たりにした。

彼女の生きていた時代にほど近い、近代の英雄であるナイチンゲール。

その、バーサーカーとして世界に認識されるほどの鉄の意志も目の当たりにした。

神代とは遥かに遠き時代に生まれた、唯の人が、それだけ強い意志を持っていたのだ。

神代にヴィシュヌの化身として生まれ落ち、理想王へと至った自分が、諦めていいはずがない。

再び彼はメイヴのチャリオットに躍りかかる。

メイヴの持つ鞭とラーマの剣が激突する。

そこにすかさずナイチンゲールが発砲するもチャリオットが急発進したために躱される。

ラーマも弾き飛ばされるが中空で体勢を立て直す。

幸い、室内ということもあってチャリオットの動きは制限されているものの、それはラーマにも言えることでもあった。

彼の宝具は決して室内で放っていいようなものではない。

メイヴによってケルトの戦士が生み出される。

急造の彼らだが、しかしラーマ、ナイチンゲール、そしてマシュと彼女らを一時分断するには十分な戦力でもあった。

 

「血から生み出されるとは!不潔です!今すぐ消毒します!!」

 

ああっ、またナイチンゲールがバーサーク・ナースに!というマスターの言葉は銃声にかき消された。

その後に続いたマシュの、それは元からです!という言葉もまた銃声にかき消される。

 

「さあ、今度こそ息の根を止めてあげるわ!」

 

孤立したラーマに向けて、メイヴのチャリオットが駆ける。

聖杯から魔力が供給され、宝具の解放の予兆がラーマの目に映った。

その時、ホワイトハウスの外からも莫大な魔力が立ち昇り、宝具が解放されたことを知らせた。

その魔力がクー・フーリンのものであることを感じ取り、メイヴが彼の勝利を確信した瞬間だった。

 

「クーちゃん!?」

 

一転して顔に驚愕を貼り付け、メイヴが悲痛な叫び声をあげた。

メイヴのチャリオットが方向を変えてクー・フーリンの元に向かって駆ける。

宝具の真名解放に備えようとしていたラーマはその虚を突かれてしまう。

 

「しまっ…!」

 

ありえない、それがメイヴの心を支配していた。

あのスカサハすら屠って見せた、自分の最強の王が負けるはずがない。

だが、自分と彼との間にあったパス、それが……

チャリオットがホワイトハウスの入り口を駆け抜け、先ほど

の真名解放が行われたそこに出た。

そして、彼女は見た。

 

「あ、あ、あああああああああっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

途方もないほどの攻防の果て。

ついぞクー・フーリンは目の前の敵の正体を見破ることができなかった。

しかし、すでに時間をかけすぎている。

下手をすればメイヴが自分のいないところで討ち取られる可能性もある。

それはすなはち聖杯が奪取されることであり、つまり自分たちの敗北を意味する。

ゆえに彼は勝負へ打って出ることにした。

目の前のサーヴァントが、抉り穿つ鏖殺の槍を放つだけの間合いを取らせてくれるとも、また取れたとしても投擲までの隙を逃すとも思えない。

ゆえに彼は、再び間合いが剣から槍のものへと変わった瞬間にそれを解放した。

 

「『嚙み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』!」

 

カルナの一撃を防ぐために使用した際の損傷と、今までの戦闘による負荷で、その外骨格型アーマーは発動と同時に崩壊を開始している。

それでも一度、敵を屠るには充分だと、クー・フーリンはリンカーへと襲い掛かった。

 

ーどこの英霊かと聞いたな

 

リンカーが口を開いた。

しかし、クー・フーリンが今更それに付き合う道理はない。

リンカーは一撃、二撃と盾で防ぐ。

あまりの威力に盾が爪の形に抉られる。

三、四と防ぎ、ブルーシールドがズタボロになった瞬間だった。

 

「てめえの筋力じゃあもう防げねえだろうが」

 

クー・フーリンは、右腕を引き、渾身の力で抜手を放った。

 

ーある偉大な王から賜った名を教えよう

 

クー・フーリンは知らなかった。

その防げなくなるタイミングをずらされていたことを。

クー・フーリンは知らなかった。

リンカーの武器が盾と直剣だけではないことを。

クー・フーリンは知らなかった。

リンカーがノータイムで武器を持ち替えられることを。

クー・フーリンは知らなかった。

致命的なまでに、彼のことを。

 

ー『王狩り』だ、狂王

 

気づけば、リンカーが盾を担っていた左腕には特殊な形のナイフが握られていた。

パリィングナイフと呼ばれるそれでもって、リンカーはクー・フーリンの右腕を弾いた。

まるで、小蝿を払うように、なんでもなさげに。

 

「な、に!?」

 

あまりの攻撃の衝撃にパリィングダガーはくだけ散るも、完全にクー・フーリンは体をさらけ出すように体勢を崩された。

すでにその右腕には、彼がロードランにおいても、ロスリックにおいても最も信頼した武器のうちの一つが握られていた。

ハルバード。

なんの変哲も無いそれはしかし、アノール・ロンドの巨人鍛冶師に結晶派生の強化が施されている。

さらに一瞬で彼が指に嵌めていた指輪が変わる。

そこにはスズメバチを象った指輪が収められる。

すでにその大半が自壊しつつある外骨格の土手っ腹に、渾身の一撃が突き刺さった。

夥しい量の血が噴き出し、クー・フーリンの体がくの字に折れ曲がる。

その体を貫いたまま上に一瞬持ち上げ、リンカーは地面へとハルバードの切っ先を叩きつけた。

深々と地面へ突き刺さるハルバード。

その柄の中ほどに、貫かれたクー・フーリンの体が力なくあった。

外骨格は砕け散り、かろうじて腕部に残るのみ。

リンカーはハルバードの柄から手を離す。

その瞬間。

 

「油断してんじゃねえ!!」

 

クー・フーリンが跳ね起きるようにリンカーに襲いかかった。

戦闘続行A。

それが致命傷を受けてもなおクー・フーリンに戦闘を可能になせていた。

未だ残る腕部の爪の切っ先で、彼を貫かんとする。

 

ー私に、油断などありえん

 

ありとあらゆる奇襲不意打ちだまし討ちにあった彼に、油断も慢心もなかった。

すでにクー・フーリンの腹部にハルバードはなく、リンカーの両手には炎の力を帯びた炎の拳である、デーモンナックルが装備されていた。

クー・フーリンの攻撃へのカウンター気味に彼の顎をリンカーのナックルが捉えた。

 

「ガァッ」

 

頭が上に跳ねあげられる。

そのまま再び腹部を炎の拳が襲い、クー・フーリンの体がくの字に折れる。

その前に突き出た顔面を殴るように掴み、地面へと仰向けになるように叩きつけた。

クー・フーリンの顔面を掴んだまま自らのソウルを活性させるリンカー。

そして、デーモンナックルがリンカーのソウルの力に呼応し、爆発を起こした。

その爆発は地面すら吹き飛ばす。

立ち上る土煙。

風が吹き煙が晴れる。

そこには、肩近くまで吹き飛び頭部を失って横たわるクー・フーリンと、とどめを刺した姿勢のままのリンカーがいた。

 

「あ、あ、あああああああああっ!?」

 

悲痛な叫び声を聞き、リンカーがそちらに顔を向ける。

そこにはメイヴがいた。

リンカーは立ち上がり、メイヴを見据える。

その身に火継ぎの鎧を着込み、悠然と構える。

 

その時、クー・フーリンの体が光となって消えた。

 

 

 




感想で展開予想されちゃってどうしようかと思ったけどそのままにしました。

感想で気になるものがあったので本編で語らないだろう設定を少し。

この主人公はロスリックで目覚めてはじめての火の状況を理解してから最初から最後まで火継ぎの終わりを目指して突き進んでるのでロンドール関係とは完全に無関係です。
関わることはあっても完全に敵対側です。
ロンドールとしてもはじめての火はなくなったら困るので。

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