Fate/DARK Order   作:えんま

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とりあえず、書きたくてしかたなかったネタだけ書いた。

ご都合主義注意!



他にもいろいろ、再会シーンとか書こうかと思ったけど、そういうところの描写迷ってると筆が全く進まなくなるので、ほんとに書きたい話だけ書くことにした。
重厚なストーリーが読みたいという人は、ほんとに申し訳ないと思う。




第五特異点:北米神話大戦・上

カルナ率いる先遣隊が会敵したのはやはり因縁の相手であるアルジュナであった。

2人の激闘は地を砕き空を裂く、まさしく神話の再現と言って過言ではなかった。

しかしその戦いも、終わりが見え始める。

何せ神々とクリシュナの謀略でもってようやっと殺し得るところにまでその力を削ぐことができた英雄がカルナである。

今、その謀略はここになく、あるのはカルナとアルジュナ、両名のその武のみだ。

無論、アルジュナもまた超常の英雄である。

しかしそれでもなおカルナは強かった。

まして、アルジュナは弓兵。

槍兵たるカルナの間合いで戦っている以上、不利は否めなかった。

徐々にその戦いの均衡がカルナの勝利へと傾きつつあった時だった。

カルナの勝利、それが確実なものとなるその瞬間、それは起きた。

 

「『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルグ)』」

 

突如として放たれた死の象徴とも思える魔槍の投擲。

それはカルナを不死身たらしめる黄金の鎧を貫き、彼に致命傷を与えるに充分な威力を秘めていた。

完全にアルジュナとの死闘に意識を向けていたカルナは、その攻撃に反応することができなかった。

 

「悪く思うな、施しの英雄。何しろこいつぁ、ルール無用の殺し合いでね」

 

その言葉に、カルナは答えなかった。

彼の頭にあったのは、サーヴァントとしての務めを最大限果たすための算段だった。

大量の血をこぼしながら、彼は膝をつく。

 

「クー・フーリン、貴様!」

 

「勘違いすんじゃねえ、アルジュナ……」

 

アルジュナとクー・フーリンの会話も、今の彼には意識の外であった。

霊器には致命的な損傷を負った。

おそらく自らの神殺しの槍を真名解放しても、そのチャージの時間、そして不足する魔力、この二つの点が足を引っ張りクー・フーリンに大きな手傷を与えることは難しいだろう。

あるいは、撤退させることは可能か……

そこまで考えた時に、出発前の記憶がフラッシュバックした。

 

 

 

『リンカー、お前の忘れ物だ』

 

カルナがリンカーに手渡そうとしたのは以前、彼がカルナとの戦いで使用し、そこに置き去りにした剣槍だった。

しかしそれを、リンカーは受け取らなかった。

 

ー貴公が持っていてくれ

ともすれば、何かの役に立とう…貴公が太陽の子ならばなおさらな……

 

だが…、と言い募ろうとしたカルナを制して、彼は続けた。

 

ーこれより始まる戦い、厳しいものになろう……別れは必然だ

で、あれば、それは餞別だ

 

だから、受け取ってくれ

そう続けられたカルナは、黙してしばしそこに佇んだ。

そして以前と同じようにそれを魔力に変換し、自らの内にしまった。

 

『俺には不要なものに思えたが……お前がそう言うのならば受け取ろう』

 

その言葉には、並々ならぬ決意が秘められていた。

 

ーああ……頼んだぞ

 

 

 

 

 

カルナは生死の狭間で、その記憶を思い出し、そしてその時の決意を思い返す。

 

すでにラーマやナイチンゲール、マシュがクー・フーリンと戦闘に入っていた。

もはや、一刻の猶予はないだろう。

リンカーは巨大な弓と、突撃槍のような巨大な矢でもって空を舞うワイバーンや、地を駆けるキメラをマスターの側から狙撃していた。

マスターが死ぬことは、リンカーが決して許さないだろう。

だがここでラーマやナイチンゲールらの戦力を失うことはマスターを失うことの次に致命的だ。

 

”人より多くのものを戴いて生まれた自分は、人より優れた“生の証”を示すべき”

 

カルナのその高潔な精神の根底にある一つの思い。

人より多くのものを戴いた自分は、またも自分には勿体の無いものを戴いてしまった。

ならば、報いなければならない。

父の威光を汚さぬよう生きた生前と同じように。

あの太陽の如き偉大な英雄の威光を汚すこともまた、自分には許されないだろう。

 

彼はリンカーを見た。

まるで、クー・フーリンとラーマ、ナイチンゲール、マシュの戦いに意識を割いていない。

ひたすら襲い来る魔物たちを射ち落し続けている。

その、泰然としたたたずまいのなんと安心感のあることか。

それは、今クー・フーリンと対峙している者たちへの信頼ゆえだろう。

そして、その信頼はカルナ自身にも向けられているものだと、彼は悟った。

 

彼は自らの内から、太陽の長子が振るった、かの剣槍を取り出した。

それはリンカーが所持していたただの武具。

莫大な神秘を保有していても、しかし宝具たり得ることはない。

 

そのままならば。

 

カルナと、彼女の視線が交錯した。

彼女はカルナの取り出した剣槍が、かの無名の王のものだということを知っていた。

何せ、その無名の王をリンカーが打倒した瞬間までも見たのだ。

見間違えようもない。

そして知っている。

無名の王とは太陽の長子であることも。

リンカーがその戦友であった嵐の竜を射落したのち、無名の王はその嵐の力を自らのものにしたことも。

すでに4つもの特異点を駆けてきた彼女は、よく知っている。

宝具とはその英雄の生涯の象徴であるということを。

故に、数々の特異点を駆け、成長した彼女は最善の選択を即座に実行した。

彼女とカルナの思惑が一致する。

彼女の手の甲に刻まれた令呪が一画、明滅した。

 

「令呪を以ってサーヴァント、カルナに命じます。太陽の子として、竜狩りの剣槍を宝具として全力で振るいなさい」

 

「承知した、マスター」

 

 

仮契約として結んだパスを伝って、カルナへと令呪の莫大な魔力が伝達され、その魔力に乗せられた命令が彼の霊器へと実行される。

令呪とは、時として魔法にも匹敵しうる奇跡を生む莫大な魔力の塊。

それが彼女の命に従い、彼を、彼の霊器を、その剣槍を振るうに足る太陽の子として押し上げる。

カルナの握る竜狩りの剣槍が、それに伴いさらなる神秘を発揮し始める。

ただの武具から、宝具へと。

 

「なんだと?」

 

そこに来て、クー・フーリンがカルナを視界に収める。

すでに彼は地に膝をついておらず、その両足で大地を踏みしめていた。

 

「死に損ないが…今更足掻いたところで」

 

クー・フーリンがカルナに飛びかかろうとした、その瞬間だった。

 

「クー・フーリン、鐘楼の()が聞こえるか」

 

「ああっ?何をっ!?」

 

カルナを中心に、凄まじい暴風が吹き荒れた。

そして、どこからともなく、北米の大地に鳴り響く鐘楼の音。

それは、この世とは隔絶されたどこか。

古竜への道を辿るものが果てに至る頂き。

あるいはかの古竜の同盟者、無名の王が座した頂き。

世界が闇に落ちる寸前に至っても、唯一天頂に太陽を戴いていた、古竜の頂き。

それは今なおこの世のどこかにあるのかもしれず、あるいはないのかもしれない。

しかし今、その頂きにある鐘楼が、主の帰還を告げるように鳴り響いていた。

 

「ぐ…お……!?」

 

暴風はクー・フーリンの筋力をもってしても前に進むことができないほど暴力的だった。

大地が暴風に覆われる。

ついにはクー・フーリンとケルト兵は巻き上げられる。

彼らは突如生まれた嵐の中心に次々と吸い寄せられ、しまいにはあまりの暴風に身動きできなくされた。

 

「く、そがっ!」

 

クー・フーリンが悪態を吐くも、しかし嵐は彼を決して捉えて離さない。

カルナは自然と、嵐を身にまとい宙に浮ぶ。

その身は令呪によって、一時的に太陽の長子、無名の王という英霊として世界に誤認され昇華されている。

それは太陽の子にしてインドラの神殺しの槍に縁あるカルナでなければ成り立たなかっただろう。

いや、カルナであっても成り立つことは奇跡に近かった。

己が主の現界に呼応して、またカルナの決意に呼応して、竜狩りの剣槍が彼の宝具としてその力を取り戻す。

嵐と雷をまとい、カルナは暴風によって身動きを取れなくされたクー・フーリンとケルトの軍勢を見据える。

それはかつて、その嵐の力によって不死の大英雄との戦場を形作った逸話の拡大解釈によるものだ。

チャージの間に躱されるならば、動けなくすればよい。

単純なことだった。

 

「ぐ、ゴフッ」

 

カルナが大量の血を吐いた。

いかに令呪を用いても、その身はすでに致命傷を負っている。

そこにさらに、本来であれば神霊である存在の宝具の使用だ。

その負荷も相まって、もう彼は長くは保たない。

故にカルナはその全身全霊を捧げてその宝具を解放する。

その剣槍が、まばゆい雷を帯電する。

 

リンカーは、その姿にかつての強敵を幻視した。

 

「日輪の威を知れ」

 

その剣槍を、カルナは天高く突き上げた。

天へほとばしる雷光。

 

「『嵐よ来れ、試練の時也(アンディー・パラック)』!!」

 

世界が明滅した。

 

空が、大地が揺れ、轟音はもはやただ破壊を撒き散らす衝撃波だった。

 

その場にいた全ての者の目と耳が使い物にならなくなった。

 

それは一言で言ってしまえば落雷だ。

 

だがそれは大地に大穴を空けた。

 

焼き尽くされるケルト側の軍勢。

 

これぞまさしく、神話の再現。

 

 

 

 

 

 

「仕留め損ねたか……」

 

視覚と聴覚が戻った後、もはや消えかけのカルナはクー・フーリンを見据えて言った。

直前で『噛み砕く死牙の獣』を真名解放したのだろう。

その左半身とそこを覆っていた外骨格は炭化し、頭の部分も焼け焦げ砕けている。

その身体で無事なところはなく、内臓も身体を駆け巡った雷にズタボロにされていた。

比較的無事な右半身の外骨格も、もはやその機能を十全に発揮することは不可能なほど損傷していた。

カルナの渾身の一撃も、魔力不足と霊器へのダメージで十全ではなかったのだ。

それがその全存在を賭けた一撃でも、聖杯によって強化されていたクー・フーリンにはあと一歩届かなかった。

 

「チッ……しくじったな」

 

クー・フーリンはすぐさま撤退を開始した。

もはやケルト兵はカルナの宝具で一網打尽にされている。

目の前のサーヴァント達を阻むものはいない。

ならば、すぐにでも帰還し傷を癒やさねばならないだろう。

 

カルナは上級騎士の鎧を身に纏ったリンカーとそのかたわらにいる彼女を見た。

彼らと最後まで戦いきることができないのは残念であったが、カルナは満足げに目を閉じ、消えた。

運命とはわからぬものだ。

いつか彼らのもとに召喚されることもあるだろう。

そして、アルジュナとの決着をつける機会にも恵まれるに違いない。

彼は、カルデアの、リンカーが勝利し、その人理修復の旅が続くことを微塵も疑わず、アメリカの大地から消えた。

 

 




太陽の長子と施しの英雄があわさり最強に見える。

ゆくゆくは嵐の竜を乗り回すカルナが見たいところ。



え?カルナの出番が多い?
悪かったな!Fateで一番好きなキャラなんだよ!!


宝具の名前というかルピは思いつかなかったです。

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