Fate/DARK Order   作:えんま

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予定を変えてぐだ子とのコミュ回。
感想にも読みたいってあったし、確かに書きたいとか思って。

ほぼ思いつきを書きなぐってるから内容薄いかもなぁ……。


幕間の物語:名もなき不死

「リンカーとの付き合い方?」

 

ロマンは困ったように彼女の言葉を繰り返した。

 

「うん、リンカーって、私のこと信頼はしてくれてはいると思うんだけど、それでもどこか一線を引いてるような気がして…。どうしたらいいかなって」

 

「いや、それは多分◼︎◼︎ちゃんの方がよくわかってるんじゃないかな?ほら、僕なんてほとんど話したことないし」

 

自分で自分の言葉にがっくりと肩を落とすロマンを尻目に彼女は腕を組んでうーんと唸った。

もちろん、多くの英霊との付き合いを経てきた彼女は無理に彼ら英霊と親交を深めようとするのがあまりよろしくないのは把握している。

彼らにも踏み込んでほしくない部分というのは存在しているに決まっているのだから。

 

「まあロマンには駄目元で聞いただけだから、気にしなくていいよ」

 

「な、なんか日に日に僕の扱いひどくなってないかい!?」

 

あははーと笑いながら彼女は部屋を出る。

閉鎖空間のカルデアでは分かりづらいが時刻はすでに夜も遅い。

食事もエミヤの絶品料理に舌鼓を打って終えていることだし、考えるのは明日にしてもう寝るか、と彼女は自室に歩みを進める。

その間、彼と駆け抜けた戦場のことを思い出し、やはり信頼はしてくれていると思案する。

それでも、彼はどうにもサーヴァントという役職に収まるのみで、いわば個人的な交流とかは少ないのだ。

 

「あ、でもエミヤとはなんか仲よさげだよね」

 

よく彼が厨房に出入りしているのは彼女にも知るところだ。

もしかしてホ……、そこまで考えて彼女はブンブンと首を振ってその邪な考えを頭から振り落とした。

 

「気長に交流を図っていくしかないのかな」

 

今度ロマンが録画しているアニメでも一緒に見ようかな、とか思いつつ寝支度を整える。

部屋に入りシャワーを浴び、寝巻きに着替え歯を磨く。

眠気に耐えつつそれらをこなし、彼女は自分のベッドに潜り込んだ。

カルデアに来てすぐ、は突然のテロとレイシフトだったけれど、初めの頃は慣れなかったこのマイルームでの暮らしもさすがに慣れる。

時折、というかすごい頻度で召喚したサーヴァント達が押しかけてくるのは如何ともしがたいけれど、彼らとの交流はそれまで平凡な生活しか送ってこなかった彼女にとっては非常に楽しいものだ。

 

「リンカーが来てくれたのは、ロンドンから帰ってきてすぐの一回だけだっけ」

 

彼という戦力をしかと把握するために、彼のスキルや宝具を教えて貰ったあの時限りで、彼の足がこの部屋に向かうことはなかった。

訓練や素材集めなどの時は、いつも彼女から彼に声をかけていた。

 

「まあ…確かに、用事がなければ誰かのところに行くような人でもないけどさ……」

 

それにしたってなぜエミヤなのか、彼女は改めて憤った。

いや、エミヤがいい人なのは認めるが。

実はバトラー、あるいはマザーのサーヴァントなのではと疑うほど面倒見のいい英霊であるのは認めるのだけど。

 

つらつらとそんなことを考えてるうちに、彼女はいつの間にやら夢の世界に旅立っていた。

 

 

レイシフトを行うときのような感覚が彼女の体を駆け抜けた。

 

 

「……ん、あれ……?」

 

彼女が目を開けば、辺りには暗闇が広がっていた。

混乱しつつも数々の修羅場をくぐり抜けてきた彼女はすぐさま自身の置かれている状況を把握しにかかった。

服装は寝たときのままだった。

つまり、魔術の多くをその身に纏う礼装に依存する彼女からすればかなり致命的だ。

周りを見ると、暗闇だというのにどういうわけか自身が踏みしめている大地は遠くまで見ることができた。

周りに生命の気配はなく、しんとした静寂に、そして涼やかな、ともすれば冷たいとも感じられる空気に包まれている。

 

「ここって……」

 

彼女の足が踏みしめるそこは、大地、と言うには語弊があるものだった。

雪のように厚く積もった灰。

ところどころに武具が突き立ち、暗闇の中でも目に見えるその灰の大地は円形に近い形をしているのがわかった。

 

「リンカーの、夢で見た、最初の…」

 

火の炉、という言葉は辺りを包む静寂に溶けた。

かつて、多くの薪の王が至った玉座なき玉座。

あるいは、世界の中心。

 

ーかようなところに、何か用かね、貴公

 

突然、降って湧いたように響いた声に彼女は肩を震わせた。

見れば、やや奥まったところに、座り込んだ人影が見えた。

 

「リンカー……」

 

彼女が見間違えるはずもない。

そこに在ったのはかの不死の英雄だった。

彼女は灰を踏みしめて彼の元に歩み寄る。

近づいてよく見れば、彼の身を包む甲冑は普段目にするものよりも煤け、灰に濡れていた。

 

「ここは…」

 

ー我が夢の中、ということにしておこう、貴公

 

くたびれたような、枯れた木のような声で彼は言った。

彼女は彼の隣に、人一人分くらい空けて両膝を抱え込むように座った。

 

ーマスターとサーヴァントという繋がりは、存外に深いものらしい

 

呟くように彼は言うと、目の前に突き立っていた古ぼけた螺旋の剣に手をかざす。

ボッと言う音とともに、螺旋の剣が炎を纏った。

辺りを覆っていた暗闇が払われ、また冷えた空気がじんわりと温もりを得た。

寝巻きという薄着だった彼女は、冷えつつあった身体が暖かさに包まれるのを感じた。

 

「ありがとう」

 

彼女の言葉に、彼は軽く肩を竦めた。

その仕草に彼女は笑みをこぼした。

老人のような声音で話すというのに、どこか彼の仕草には茶目っ気というか、若さが滲むことがあるのがおかしかったのだ。

 

「なんだか、不思議だなぁ。サーヴァントの夢の世界に入って、こんな平穏な時間を過ごしてるなんて」

 

思えば、サーヴァントの夢の世界にお邪魔するといつもロクでもない目に遭っていた気がした彼女はそうこぼした。

リンカーはくつくつと笑うと、それは重畳、と呟く。

その目は、と言っても甲冑で見えるわけではないが、彼女を見ずにゆらゆらと揺らめく火を見つめ続けていた。

 

「リンカー、はさ」

 

彼女は恐る恐る口を開いた。

それに彼は言葉を返さなかったものの、その先を促す雰囲気を彼女は感じ取った。

 

「他のサーヴァントも含めて、私たちとあまり関わらないでしょ?どうしてかなって」

 

最後は、少し早口になりながらも彼女は言った。

しばらく、火が揺らめく音だけが辺りに響いた。

ちらりちらりとリンカーを伺う彼女。

やがて、言いづらいなら、と口を開こうとしたときだった。

 

ー私が言葉を交わすのは、常に師か、商人が多かった

 

彼は火を見つめたまま言った。

彼女は、彼の言う師とは誰のことを指すのか判然としなかった。

あるいは、彼が師事を乞うた全ての者のことか。

 

ー無論、私と一個人として交流を持つものもいるにはいたが…それも多くは、戦場での出会いだ

 

彼女は太陽のように熱いリンカーの無二の友人や、どこか抜けた、旧友との約束を果たした男だとかをを思い浮かべた。

 

ー戦いもなく、利害関係もない交流というのに、慣れないのだよ

 

あるいは、と彼は言葉を紡いだ。

 

ー不死となる前、まだ唯人として生きていた頃の記憶を持っていれば、そうはならなかったのやもしれんが……今も、そしてロスリックでも、私は使命を果たす機械に等しい

 

そこで、彼女はなんとなく彼とエミヤが仲のいい、ように見える、理由が少しわかった気がした。

人類の絶滅回避のためのカウンターガーディアンとして、あるいは、その前、ただひたすら正義の味方となるべくして歩み続けていたエミヤとリンカーは、どこか似ているのかもしれない。

それだけが、理由の全てではないとは思うけれども。

 

ーつまり、わからぬのだよ、貴公らとの接し方が

 

戦いの場ならともかく、と言って、それっきり彼は口をつぐんだ。

それからしばらく、2人の間に会話はなかった。

再び火が揺らめく音だけがその場に響く。

そして。

 

「ぷ、あははは」

 

彼女が突然笑い出した。

これには彼も驚いたのか、ぎょっとた様子で彼女に顔を向けた。

 

「あはは、ご、ごめん、なんか思ったより理由が可愛かったというか、ふふふ、なーんだ!もっとなんか深刻なワケアリかと……」

 

ー可愛い、かね?

 

少し心外そうに彼は言った。

 

「うん、だってそれ、なんか不器用な男の子がうまく女の子とおしゃべりできない理由に似てるなって」

 

要は、何を話せばいいかわからないからぶっきらぼうになってしまう思春期の男の子的な。

そう思うと何だか彼女は、目の前の大英雄がどこか身近な存在に思えてしまった。

 

「誰だって、初めて会うタイプの人と話すのは難しいよ。私なんて言葉は通じるのに意思疎通できない系サーヴァントと日頃から死と隣り合わせのコミュニケーションしてるんだから!大変なんてもんじゃないよ!」

 

き、きよひー、待って、嘘は、嘘はついてないの!ちょっと声をかけるの忘れてて、次は絶対声かけるから!ほんと、ほんとだよ!?だから燃やすのはよして!?

え?アッセイ?違うよ!私圧制者じゃないよ!!そうでしょ同志スパさん!今こそ魔術王への反逆の時じゃない!え?今のは命令じゃないからっ、ノーカン、ノーカウントだよ!!

待って!今ちゃんと手を洗うから、だからその拳銃を仕舞って、お願い!撃たれたら手が洗えな、ヒィ!?お、オーケー、い、一発だけなら誤射かもしれないもんね?よーし、手を洗うぞぉ?

 

自分で言っておいて、彼女はトラウマが頭を駆け巡ったせいで錯乱気味に頭を抱えた。

どうして私まだ生きてるんだろう……とか、まだ生きてるなんて私すごい……とか思いを巡らす。

その姿にリンカーはふふ、と笑い声をあげた。

 

ーなるほど、私のこの思いは、万人が持つものか

気づかぬうちに、自分は特別などと自惚れていたようだ

 

所詮は私も、名もなき不死の一人か。

彼はそう、口の中で呟くと自らのソウルの中から、ある物を取り出した。

 

ー貴公、これを、友好の証だ

 

「へ?」

 

いまだ頭を抱えて身悶えていた彼女は、その言葉で我に帰ると、不思議そうにそれを受け取った。

 

「これは?」

 

ーなに、何の変哲も無い、ただのペンダントだ

私が、使命の旅を始めるより以前から持っていた数少ないものの一つだよ

 

「え、そんな、そんな大事なもの……」

 

ーよい、よいのだよ……それは、私の失われた日常の象徴だ

貴公にもまた、そうであって欲しい

私の帰るべき、日常の象徴で……

 

彼の、その慈愛に満ちた声に押し負けるように彼女はそれを貰うことに納得した。

自らの首にそれをかける。

それを見た彼は鷹揚に頷くと、言った。

 

ーさあ、もう帰りたまえ

 

ふわりと、灯っていた火が消える。

彼女は頷くと、睡魔が襲い来るのを感じた。

 

「明日からは、もっともっとおしゃべりしようね、リンカー」

 

ーああ、無論だとも

 

薄れゆく意識の中で、再び彼女はレイシフトのときのような感覚を感じ取った。

 

 

 

「ーぱい、先輩、朝ですよ、先輩」

 

「ん、あ?マ、シュ?」

 

「はい、先輩。あなたのマシュです」

 

「ん……ん?私の…?」

 

「あ、いえ、今のはちょっとした言葉の綾と言いますか……そ、それより、先輩、そちらのペンダントはどうしたんですか?とても古いもののようですけど……」

 

「え?あ……これは、うん、えーと……秘密?」

 

「ええ!ど、どうしてですか!」

 

「あはははは、慌てるマシュも可愛いなぁ」

 

「え、あ、ありがとうございます、じゃなくて!」

 

「あははは……まあいいじゃんいいじゃん」





ぐだ子 は しょくばい を てにいれた !

なお普通の聖杯戦争で唯一召喚できる触媒の模様。
なんの効果もない(ガチ)、超一級品の聖遺物。

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