n番煎じなのはわかってるけど書きたかったんです。
ダクソ2は嫌いじゃないよ。むしろシリーズで一番すきなタイトルだけど、設定的に使わなかったんや。
男はおもむろに頭を上げた。
果たしてどれだけそうしていたのか、永遠にも思える時間、片膝を立てて座り込んでいた彼の体には灰が積もっていた。
元は精緻な刺繍の施されていたであろうサーコートは擦り切れ見る影もなく、その身にまとった騎士甲冑はかつての輝きを失い、煤け、くすみ、傷つき、歪んで久しい。
自らの体に降り積もったものが灰であるなら、今自分が座り込んでいる地面に降り積もっているものもまた灰であった。
その灰を、身じろぎした体がかすかに巻き上げた。
『ーーー』
それは呼び声であった。
男は笑みをこぼした。
大王から火を継ぎ、薪として燃え尽き、その後数多の年月を経て火のない灰として再び蘇えった。
そして最初の火を消すことで火継ぎを終わらせた自分に、まだ役目などというものが残っているとは思ってもみなかったからだ。
まして、最初の火が消えて久しく、その後に続いた不死なる神々と定命たる人々の時代も終わり、今や文明という新たな灯火を得た人類繁栄の時代にあって、自分が求められるなど、予想しろという方が困難であった。
「座」に在って「座」にはなく、この世であってこの世でない場所、根源、あるいは『』と呼ばれるそれの底に在る自分にその声が届くことも男には驚きであった。
いや……、と男は自分の考えを改めた。
その声は決してただ一個人のものだけではなかった。
火の時代が終わり、その後に続いた闇の時代において新たに芽生えた火により繁栄を極めた人類。
その呼び声はその人類の破滅回避の祈りたる
人類は、滅びの危機にあるらしい
男は思った。
それは悲しいことだと。
ただ火の時代存続のために、ひたすら不死人が薪とされるあの時代。
人が死を許されず、ただ理性の磨耗を待つだけであったあの時代。
なんのために終わらせたのか。
無論、後に続く人がため……
灰として蘇ってから、男は知った。
自身の後にも不死は薪の王としてその身を最初の火に焚べられ、あの己が身を焼かれる苦しみを味わい続けたのだと。
王がいた。数え切れないほどの王が。知り得ることもできないほど多くの王が。
己より始まったその連鎖。
それを終わらせるがために、それまで犠牲となった者たちから憎まれる覚悟で、自分は火を消したのだ。
あの最後の火防女の見た未来に希望を託して。
で、あれば
答えはひとつ
男は立ち上がった。
降り積もった灰がハラハラと舞い落ちる。
その煤けた鎧に火の燻りが宿る。
灰としての旅の道中獲得した莫大なソウル。
燃え尽き灰と化したことで火の炉に残してきた、薪の王となったかつての自分のソウル、そしてその他の薪の王のソウルが寄り集まり形を成した王の化身を打倒したことで獲得した莫大なソウル。
それらを燃料に、闇の時代の始まりとなったその身に火が灯る。
闇と静寂に支配されていた世界が男の存在に食い破られ、灯りがともり、そして火の燻る音が鳴り響く。
男は手を前方にかざした。
その火の宿った腕が照らした先に浮かび上がったのは、灰の大地に突き立つ、古ぼけた螺旋の剣。
その柄を、握り込む。
男の火が、その螺旋の剣に伝播する。
男はゆっくりと、その剣を引き抜く。
その呼び声、応えよう
男は天を仰いだ。
そのまま剣を握っていない腕を宙へ伸ばす。
火の時代最後の英雄と、
「先輩っ!!」
マシュの悲痛な叫びが聞こえた。
カルデア最後のマスターは死の危機に瀕していた。
第4特異点の舞台であるロンドン、その地下空間において突如として現れた魔術王ソロモン。
現地で召喚されたサーヴァントと、自身がカルデアにおいて召喚したサーヴァント、そしてパートナーであるデミサーヴァントのマシュ、彼らの奮戦もむなしく、魔術王の使役する4柱の魔神柱に苦戦していた。
その矢先、誰1人として油断はしていなかった。
いや、むしろその身の全神経を眼前の敵へと集中させていただろう。
それでも生まれてしまった一つの綻び。
彼女の最も近くで戦っていたマシュもまた、魔神柱の攻撃に身をさらされ身動きが取れなかったその瞬間であった。
眼前に死が迫る。
彼女は決してそれから目をそらさなかった。
死ぬ。
それは嫌だと、彼女は思った。
まだ死にたくない。
なぜなら彼女の死はすなはち人類の滅亡であり、それはつまり大切な仲間であるマシュやロマンの死でもあったからだ。
それは何としても避けなければならない。
「ふん…終わりか」
魔術王の、その何の感慨も持たぬ言葉が嫌に耳にこびりついた。
もう、どうしようもない。
それは明らかであったが、しかし、彼女は諦めたくなかった。
眼前に迫る死を睨み据える。
一秒が、それよりも短い一瞬が、無限とも思えるほど長い時間に引き延ばされる。
まだ…
引き延ばされた時間の中で、大切な人たちの顔を思い浮かべながら、彼女は思った。
まだ、私はっ……!!
その瞬間、彼女の衣服のポケットに入れられていた聖晶石がすべて光り輝いた。
サーヴァント一騎を召喚するのに必要な個数をはるかに超えるそれらが、召喚陣もなしに、何かを召喚しようとしているのだ。
そのまばゆい光は彼女を包み込み、そして……
『な、なんだっ!?ソロモンが現れる時と同じか、それ以上の魔力反応だぞっ!?』
光はその空間を全て飲み込み、その場にいた者たちの目を潰した。
誰もが目を瞑る。
その中で唯一その目を開いていたのはやはり魔術王であった。
過去、現在、未来、全てを見通すその眼でもって、その光の先を見据えていた。
「そんな、先輩っ、何がっ」
その場にいる多くが固唾を飲んで光が収まるのを待つしかなかった。
坂田金時やモードレッドは魔術王の動向に注意を向けるも、膨大な魔力を含んだ光に感覚を乱されそれは叶わない。
「……まさか、こんなことがあろうとは……
魔術王の言葉が木霊した。
ようやく光が収まり、彼女は目を開いた。
彼女を襲わんとしていた死は、綺麗さっぱり討ち払われている。
チリチリと、男の周辺に火の残滓が残っていた。
眼前に、大きな背中があった。
右手に歪な螺旋状の剣を担い、くすみ、煤け、傷つき、歪み、そして焼けた騎士甲冑に身を包んだ誰かがそこにいた。
ーサーヴァント、
それは、男の声だった。
青年の声音であるはずなのに、重く、まるで老翁のように年老いて聞こえた。
鎧のいたるところで火が燻り、赤熱する。
ボロボロのサーコートから火の粉が散った。
ー貴公に炎の導きがあらんことを
父が子に送るような、そんな優しい声音でその男は言った。
クラスがリンカーなのは、火継ぎの祭祀場の英語訳がFirelink Shrineだから。
ダクソで火継ぎエンド→薪の王を起こす鐘がなるも一番古い王だから他の棺邪魔で出てこれない→棺ある程度なくなって出てきたらもう火のない灰が活躍する時代だから灰として活動
みたいな流れです。