ご注文は日常です!   作:お団子うまし

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どうも、たいちょうです!

前回の投稿から2ヶ月あまり経ってからの投稿となってしまいました。
相変わらずの亀更新で申し訳ございません。
今回から再び投稿していこうと思っていますので、どうぞよろしくお願いします!

それでは、どうぞ〜!


第26羽 和服とメイド服、みんなはどっち派ですか?

今日の晩御飯の材料も買い終わり特に何もないまま家に帰ろうとすると、スーパーの入り口近くにある掲示板に貼り付けてある一つのチラシに目が止まる。

『父の日ギフト大特集!』という大きな見出しに続いて、その下に商品の一覧の写真がずらっと並んでいる。

 

「もうそんな時期になったんだな…」

 

今年は父さんに何を贈ろうか、と思考を巡らせていると聞き慣れた声が俺の名前を呼ぶ。

声が聞こえた方向へ向くと、学校帰りであろうシャロと千夜がいた。

 

「「こんにちは奏斗先輩(君)」」

「…二人が一緒に帰ってるのあんまり見ないからちょっと新鮮だな」

「まぁ確かに、私たちの学校と千夜の学校じゃ離れてますしね…」

 

仕方ない、というような顔で言うシャロ。

今更のことだが俺とシャロが通う学校と千夜の通う学校はシャロが言うように真反対というべき程に離れている、だから二人が一緒に帰っているのはあまり見ない光景だった。

 

「何か予定でもあるのか?」

「はい、実は明日甘兎で…むぐっ!?」

 

シャロが何かを言おうとしたところで、千夜が遮るようにシャロの口を抑えた。

 

「ダメじゃないシャロちゃん!こういうのは秘密にしておかないと♪」

 

そう言う千夜の顔は悪戯をするときの子供のような顔をして笑っていた。

今回も千夜が何か企んでるんだろうなぁ、と思っていると。

 

「フフフ………」

 

((怖っ!千夜の笑い方怖っ!))

 

悪戯っ子のような顔じゃない、あれは悪魔だ。カカロットォォオ!!

シャロと二人して怯えていると、千夜の方から声を掛けられた。

 

「奏斗君?」

「は、はい!」

「明日甘兎庵に来てもらえるかしら、きっと良い物が………フフフ」

 

大丈夫、絶対生きて帰るさ。うん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

翌日、俺は甘兎庵の扉の前で心の準備をしていた。

 

「よし…」

 

深呼吸をした後、ドアを開いて店内に入る。

そこに出迎えてくれるのはこの店の看板娘である千夜ーーー

 

「いらっしゃいませ……あ」

「…………」

「…………」

「あ、一人です」

「何事もなかったかのようにするなぁ!」

 

ーーーではなく、何故かリゼが千夜と同じ緑色の和服を着ているという光景が広がっていた。

先日千夜が言っていたことはこういう事だったのか、と合点がいくと同時に一つ疑問が出てくる。

 

「なんだってリゼが甘兎に?」

「ああ、それは……と、その前に席に座ってからだな。シャロと同じところで良いか?」

 

シャロもいたのか、とリゼが指差す方向を見ると、ちゃんとシャロが席に座って此方を見ていた。そしてよくよく見ると、俺たち以外に客がいないことに気がついた。

こんな事もあるものなんだと思いながら、リゼに案内されたシャロの向かい側の席に座る。

 

「じゃあ私はお冷とメニューをもってくるから」

 

そう言ってリゼはカウンターの方へ向かっていった。

それを見届けてから、シャロの方に顔を向ける。

 

「シャロ、なんでリゼが甘兎で働いているんだ?」

「それが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャロが言うに、リゼが自宅の庭にて独自で編み出したバドミントンの必殺技『パトリオットサーブ』を練習していた際に手からラケットがすっぽ抜けてしまい、偶然近くにあったリゼ父の部屋の窓を割ってしまったそうだ。

さらに運が悪いことに、その部屋にあったリゼ父のお気に入りのワインも割ってしまったという事だった。

 

「要するにその罪滅ぼしがしたいと」

「はい、しかも私が働いているフルールでも働くみたいで……」

 

まさかの三軒掛け持ち。

まぁリゼの事だから難なくやってくれるだろうが、少し心配だ。

シャロも同じなのか、不安そうな顔をしていた。

そんなシャロの頭に、ちょっと身を乗り出した態勢から手を置いて安心させるように撫でる。

 

「ぁ……奏斗、先輩…?」

「よしよし、シャロは良い子だな〜」

「ぁぅ…///」

 

恥ずかしさからか赤面するシャロ。流石にやりすぎたので、すぐに手を引っ込める。

……でもこうしてみると、なんだか恋人同士みたいだ」

 

「え、あ、えっと…///」

「ん、シャロ?」

「私は奏斗先輩のこ、こここ……きょいびとでもいいでしゅ!///」

 

目をぐるぐるさせながらシャロは聞き取れない言葉を発する。

と、そこにリゼがお冷とメニューを持ってきた。

 

「お前らは一体何やってるんだ………どうぞ、お冷とメニューです」

「いや、ちょっと頭撫でて安心させようとしただけなんだが……」

「それをちょっととは言わない」

 

呆れ顔で言うリゼ。そこに千夜が奥から出てくる、そしてまるで有り得ない物を見たかのような顔で言った。

 

「奏斗君………恐ろしい子っ……!」

「なんでだよ!」

 

ガラスの○○、知ってる人は知ってるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、客は来ないまま俺たちは雑談して過ごした。

そして甘兎庵の前にて。

 

「あの、リゼ先輩。明日からはフルールでバイトするんですよね?」

「甘兎と日替わりでな。明日はよろしくな、シャロ」

「はい、楽しみにしてます!……それではリゼ先輩、奏斗先輩。また明日」

「またなシャロ!」

 

そうしてリゼとシャロはそれぞれ逆方向に歩いていった。俺もリゼに続いて行こうとすると千夜が、手で俺を招くような仕草をする。

 

「悪いリゼ、ちょっと待っててくれ」

「え?ああ…分かった」

 

「それで、どうした千夜」

「明日リゼちゃんがフルールで働くって言ったでしょ?それでもし良ければ奏斗君も行ってくれたら嬉しいかなって」

「それは……ああ、そうか」

 

きっと千夜も三軒も掛け持ちしているリゼの事が心配なんだろう。

それで俺に監視と言っちゃなんだが、リゼを護衛してほしいということなのだろう。

 

「分かった、それなら俺に任せてくれ!」

「良かったぁ、このカメラでリゼちゃんが働いている姿を撮って来てほしいな、って思ってたの♪」

「うん、やっぱり千夜は期待を裏切らないなちくしょー!」

 

今日も千夜は平常運転です。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

翌日、俺は千夜から授かったカメラを片手にフルール・ド・ラパンにやってきた。千夜の依頼にYESと答えたからにはやるしかないのだ。拒否権はない。

 

店内に入ると、当然と言うべきかやはりリゼがーーー

 

「いらっしゃいませ〜♪「カシャカシャ」…あ」

「…………」ササッ

「…………」

「あ、一人です」

「いやこのくだりまたやるのかよ!」

 

今日も素晴らしいツッコミありがとうございます。そして普段見れないリゼのフルール限定のいらっしゃいませ、頂きました。バッチリとカメラに収めさせてもらったぞ。

え、盗撮?安心せいシャロに許可は得ている………その代わりにその写真コピーさせてくれとは言われたが。

 

「そしてシャロは何故照れているんだ!?///」

「何だか見てはいけないものを見たような気がして……///」

 

確かにそれは同感だと俺も思う。

今のリゼは服装とスタイルが相まって中々に如何わしいオーラを醸し出している。

 

「ま、まぁとりあえず席にどうぞ……」

 

席に座り、取り敢えずショートケーキとローズマリーを頼む。

だが、リゼはどうも浮かない顔をしていた。

 

「大丈夫かリゼ?やっぱり三軒も掛け持ちしてるから……」

「いや、このくらいどうということはない」

「ならいいんだが…でもあまり無理はするなよ?」

「わ、分かってるって………それより顔が近い///」

「あ、すまん」

 

あわあわとした感じで離れていくリゼは話題を変えようとシャロがどうしてバイトをしているのか聞く。

それを聞いたシャロはなんとも驚いた様子だった。

 

「えっ!?……そ、それは……こ、ここの食器が凄く気に入っていて、決してお金に困ってるというわけではなくて……」

 

顔を真っ赤にしてオロオロしながらも答えるシャロ。

 

「あぁ、親に頼らずお金使いたいもんな」

「え、えぇ……………初めて自分のお金で好きなものを買えた時って嬉しいですよね!」

「あぁ!……感動したな~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでフルールでの時間も過ぎ、あっという間に父の日当日。そしてリゼの掛け持ちバイトの最終日まで時間は過ぎた。

今日までの間、リゼは男顔負けの体力で一生懸命働き続けた。俺は近くで見守ることしかできなかったが、そのリゼの努力を少しは手助けできただろうか。

 

 

 

 

「……これからワインを見に行こうと思うんだが、奏斗とシャロも一緒に行かないか?」

「もちろん」

「ご一緒させていただきます!」

 

 

 

 

そして俺たちは、ワインを見に行った

 

 

………が。

 

 

 

 

「………お金が足りませんでしたね」

「予想以上に高かった………」

 

そう呟く二人。

リゼ父が気に入っていたワインは、俺たち学生の財布の中身を合わせても買えないような高級品だった。

残念そうなリゼに俺はどうしたものかと考えていると良いことを思いつく。

 

「なぁリゼ、ワインが駄目なら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このグラスの透明感、たまりませんよね♪」

「成る程、ワイングラスかぁ………」

 

ワインが駄目ならワイングラスだろうと思い、グラスやカップを取り扱っている店を選んだ。

 

「先輩、今ならセットがお得みたいですよ?」

「えっ……親父とペアグラスは流石に無理だ…」

「酷い言われようだな………そこは両親用とかじゃないのか?」

「あ、ああ…成る程」

 

シャロはリゼにペアグラスを渡すと微笑みながら言った。

 

「……あんなに頑張ったんですから、きっと喜んでくれますよ」

「シャロ………ありがとう!」

「…はいっ!」

 

 

 

 

 

店でペアグラスを買った後、俺はとリゼはシャロと別れ一緒に歩いていた。

 

「なぁ奏斗、お前は父の日のプレゼント何にしたんだ?」

「あぁ、プラモデルと包丁にしたよ。包丁に関しては結構お高いやつ」

「プラモデルは奏斗のお父さんの趣味っていうのは予想できるけど、包丁…?」

「あぁ、父さん料理関係の仕事してるからさ。だから包丁」

「へぇ、じゃあ奏斗が料理上手いのも頷けるな……」

 

お陰で英夫さん十枚と一葉さん一枚消えてったけど。まぁまだ王の財宝の中には沢山あるんだけど。

今回は甘えてバビッちゃっただけだし!

 

 

「なぁ、奏斗……」

「ん?」

「結局ここ毎日、私の側につきっきりだったな」

 

そう言うリゼの顔は俯いていて表情が読み取れない。

俺はその顔を覗き込んで言った。

 

「…迷惑だったか?」

 

いいや、と首を横に振るリゼ。その顔は本当に嬉しそうな表情で。

 

「奏斗のお陰で、その……今日までやってこれたしな。だから、ありがとう」

「……どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてリゼの長い長い日替わりバイトは幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「お礼と言っちゃ何だが、また今度私の家でCQCを……」

「それは勘弁」

「なんでだっ!?」







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