胸って良いよね。
今日は金曜日。1週間の終わり。
そう聞けば学生にとっては舞い上がりたいぐらいの至福の時間だろう。
何しろ、テスト明けだ。
そんな俺も今日が週末だという事実に、休日はどうしようかなぁなんて胸を踊らせていた。
そしてその日の昼休み。
今日も今日とて、学校の中庭で
そんな時、ふと俺は今更気になった事を口に出した。
「今更だけどさ、リゼって軍人の娘なんだろ?どんな事やってるんだ?」
「なんだ、今更だな」
「だから今更だなって言っただろ」
「でも、確かに気になりますよね……」
リゼは元々、父親が軍人だという事もあって幼少期から厳しい訓練の毎日。幼少期から銃を握る、という結構派手な人生を送っている。
そんな身近にいる彼女だからこそ、普段は聞けない貴重な話を聞いてみたかった。
「そうだなぁ、CQCの訓練とかやってるぞ」
「む、CQCか……」
「何だ、奏斗?」
「どうかしましたか?」
俺の考えるような素振りを見て、2人がどうしたのか、と聞いてくる。
「ああ、なかなか知る場面って無いし、男としてはちょっとばかし興味はあるかなって」
「……そういう事ならさ、奏斗」
「ん?」
何やらもじもじしながら、何かを言おうか言うまいか迷ってるご様子のリゼ。
だが決心がついたのか、正面に向き直ってこう言った。
「そ、その休日暇なら私の家に………こ、来ないか?い、いや何やら奏斗、興味があるみたいだったし私も仕方なくだな…いや、本当に仕方なくだぞ?本当だぞ?………それで、どうだ………?」
話している内に、顔が俯きがちになりながら早口でまくしたてるリゼ。そして最後は上目遣い。
こうなれば俺もYESと答えるしかない。
「わ、分かったよリゼ。休日、行かせてもらうよ」
そしてリゼは、俺の返答にぱぁっと顔を輝かせる。それにつられて俺も自然と笑顔になる。
一方、シャロは会話に入ろうにも入れない状況に、ただ押し黙るしかなかった。
翌日の土曜日。
リゼが事前に教えてくれた住所をメモに書き取った物を片手に、リゼの家を探していた。
メモによると、リゼの家がここら辺にあると思うんだけど。
「えっと………あ、ここか」
そして
「豪邸、ですと………?」
厳重に柵で囲まれた中には、大豪邸とも言える大きな建物がどしーんと佇んでいた。
そして恐らく入り口であろう、巨大な門の前には黒いスーツに黒いサングラスをつけた屈強な男が2人立っていた。
あれが門番なのだろうか、実際に目にすると凄く迫力があるというか…………
(なんか、話しかけようにも話しかけれねぇ………!)
だが、やらないと始まらない。男は度胸。いざ参る。
「あ、あの………」
「何だい君」
「何か用か?」
改めて感じる迫力に、固唾を飲む。
意を決して言った。
「あ、天音奏斗と言う者です。本日はお宅の天々座理世さんにお誘い頂いたので来訪した次第でしゅ」
我ながら上手くできたと思うが………こら、最後噛んだとか言わない。
2人の男は互いに顔を見合わせ、何やら話し合っている。
ゴクリ、と再び固唾を飲む。
次の言葉が発せられるのが今か今かと待ちわびると。
「これはご丁寧に。お嬢のお友達なら大歓迎です」
「さぁ、どうぞ。お入りください」
「え、あ、はい。ありがとうございます」
そう言った後、2人の門番は意外にもあっさりと門を開ける。
見た目からは想像し得ぬ紳士的な対応に、思わずあっけらかんとする。
(この人達、本当は優しいのかな)
何て心の中で思いつつ、中に入っていく。
「良ければ、お嬢の所へ案内致しますが」
「はい、お願いします」
1人の男性が案内役を申し出てきたので、お言葉に甘えて案内を頼んだ。
入った直前に迷子とかまじで洒落にならないからね。
「ここが、お嬢の部屋です。仲良くしてやってください、奏斗さん」
「はい、どうもありがとうございました」
そう言って軽くお辞儀を交わした後、また自分の持ち場に帰っていく門番及び使用人Aさん。
使用人Aさんと打ち解けて、雑談しながら廊下を歩いていたんだけど、豪邸の中はやはり、というか予想通り広かった。俺の家と比べるまでもない。
改めて、豪邸は凄いなぁと思いつつリゼの部屋のドアをノックし、俺が来たことを告げる。
すると中から暫くジタバタと音がしたかと思えば、リゼが息を切らしながら出てきた。
「おうリゼ、どうした。なんかジタバタやってたみたいだけど」
「いや、何でもないんだ。何でもない」
そう言うリゼには何でもなく見えないんだが、まぁ本人がそう言うんだから何にもないんだろう。
俺は本来の主旨について聞く。
「それで、今日はどうするんだ?」
「あぁ、そうだったな。奏斗、お前には私が直伝でCQCの技をいくつか教えてやる」
◇
リゼ宅の中庭にて。
「よし、奏斗。始めるぞ」
「何だかリゼ、様になってるな」
「ん、そうか///」
では、早速CQCについて学んでいくわけだけど。
「俺、CQCなんてどうすればいいかわからんぞ」
「安心しろ、まずは私が手本を見せる」
そう言うと同時に徐々に俺に近づいて来る。
あれ、これもう既に始まってるかんーーー
「ふっ……!」
「どわぁ!?」
ーーと考えてる間にはもう地面に投げられていた。
反射的に受け身を取れたのが幸いだったが、投げ手も上手かったのか痛みはそこまで感じなかった。
「あれ、俺どうなったんです?」
「勿論私に投げられたんだ。ほら、手を貸せ」
「何だか妙に楽しそうだな………よっこらせっと」
「そ、そんな風に見えるか?まぁいい、じゃあ次行くぞ。まずは、私をヘッドロックしてくれ」
「へ、ヘッドロック……」
ヘッドロックってあのヘッドロックかよ。
女の子にそんな事やるなんて、ちょっと気が引けるがリゼはそんな事お構いなしに。
「大丈夫だって、さぁ早く」
ええい、ここは腹を決めてやるしかない。
-----リゼ父視点-----
「よし………じゃあリゼ、いくぞ……」
「ああ、来い……奏斗。遠慮はしないでいいから……」
「くっ………こんな事誰かに見られでもしたら……」
「大丈夫だって、心配するな………私は平気だ……」
「わかったリゼがそう言うなら…………これで……いいのか……?」
「違う、そうじゃない……」
「じゃあ、こうか……?」
「ああ、それでいい………」
「俺はどうすればいい………?」
「そのままじっとしていてくれ、後は私がやるから………力は抜けよ、痛いから………」
「え、それはどういう…………」
-----リゼ父視点終了-----
「それっ」
「ほげふっ!?」
リゼはガッチリとヘッドロックされた状態から、いつに間にか俺を投げ飛ばしていた。
「リゼって凄いんだな……」
「まだ褒めるには早いっ……ぞ!」
「えーーー」
答える間も無く、リゼは右腕で俺の首を抱えて、左脇に俺の右腕を挟む、柔道で言う袈裟固めをした。
「どうだ奏斗!」
「くっ……あ」
必死にもがいてる時に気づいた。
大きく豊かな果実が、俺の顔にそれはそれは近くにありました。
俺の右腕なんかもうしっかりと当たってるし。
というか女の子の体って柔らかいんだな…なんて、こんな状況でも思ってしまった。そしてシャンプーのいい香りが鼻をくすぐる。
一方リゼはそんな俺のことはお構いなしに、固め技を続ける。くそっ俺の気も知らないで!
このままでは、いい香りと柔らかい感触で俺の理性ががががが。
「リゼ!ギブギブ、降参だ!」
「何だ、もう降参か?」
「いや、そうじゃなくて……ふぎゅ」
さらに締めつけてくる事によって、果実が顔に密着する形になる。
「ち、違う!胸!胸!」
「え?胸………ひゃぁぁああ!?///」
「ぐほぉ……!」
胸が密着してるのを指摘するとすぐに固め技を中断、かと思いきや、さらに締めつけてくる。
あ、なんか意識がーーーーーあばよ、とっつぁん。
「ひゃぁぁぁ///………あれ?奏斗…って………あ」
「お嬢が楽しそうで何より!奏斗さんにも感謝ですな!」
「あぁ、あの顔を見るのは何年振りか……グスッ」
そんな一部始終を見て、娘の久しぶりに見る顔に思わず笑顔が溢れる使用人と、涙を流すリゼ父であった。
「奏斗!おい、起きろ〜!奏斗ぉ〜!」
そんなことも知らずに気絶する奏斗の肩を揺するリゼ。
最後に一言。
ひと時の夢をありがとう。
というわけで、今回はカワウソ太郎さんの案から頂いた、オリ回でした!
リゼの胸に一回でもいいから包まれてみたいですね!
オリジナル回の案は活動報告の方で常時受け付けていますので、今見ている方から、もしこんな話があったらいいなぁなんていう妄想話がありましたら、活動報告の方でコメントを頂けれたら嬉しいです!
誤字脱字報告、ご感想お待ちしております!