ご注文は日常です!   作:お団子うまし

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どもども、たいちょうです。

SAO、FateGO等々で全く更新できていませんでした。どうもすいません。

そして、七夕ですね!皆さんは何をお願いしましたか?

自分は、モテ期が来ますようn(ピチューン)


第22羽 いつかの約束を 後編 ※挿絵あり

目的の場所まで歩いてくのに、それほど時間はかからなかった。

そこは、何の変哲も無い、一見普通の場所のように他人には見えるだろう。

だがここは、俺たち(奏斗と桜雪)にとって、とても思い出のある場所だ。

それは河川敷の近くの道に植えてある、今は枯れている桜の木の道。

俺たちは今年の春、ここで出会った。

 

最近ここに来ることなんてなかったな、なんて心の中で呟きながら辺りを見渡す。

 

 

「……もう、1年経つんだね」

 

桜雪は独り言のような……どこか寂しそうな声でそう言った。

 

「今思えば、あの時出会ったのってそこまで運命的な出会いってわけでもないよな」

「むぅ、そんな風に言うのは好感度だだ下がりだよ?」

 

少し頰をぷくっとさせながら怒る桜雪。

 

「ごめん、まぁでもあの日に桜雪に会えて良かったかな、俺は」

「うん、私も奏斗君に会えて良かった」

 

なんか、カップルが言うセリフみたいで恥ずかしいのだが、今は我慢する。

ふと、桜雪はこちらを向いて笑顔で言った。

 

「これから先いろんなことがあると思うけど、これからもよろしく、奏斗君!」

「あ、えっと……」

 

その発言に対し俺は、はいとは言えなかった。

言葉に詰まっていると、桜雪から声がかかる。

 

「どうかしたの?」

「あ、いや、その…な」

「……?」

 

小首を傾げる桜雪に、俺は言った。

 

「その、今日言おうと思ってたことなんだけどさ……あー」

「なになに?早く言ってみてよ!」

 

………そんな子犬が興味を持ってるみたいな顔されると、なかなか辛い。

 

「俺、1週間後………引っ越すんだ」

「へぇ、引っ越すんだ………って、えぇ!?」

 

両手を口に当てて驚きを隠せない桜雪に続けて言う。

 

「今日、父さんから聞いたんだ。俺だってびっくりしたさ、けど仕事の都合で…木組みの街って言ったら分かるか?そこに引っ越すことになったんだ」

「……マダオ君たちには言ったの?」

「ああ、今日伝えたよ」

「………そっか」

「………うん」

 

 

 

 

 

それから2人は、近くにあるベンチに座り、沈黙の状態を保ったまま、遠くの景色を眺めていた。それからしばらくしないうちに雪が降った。今の俺たちの心情を表すように。寂しく。

 

「そういえば、今日は雪が降るって天気予報で言ってたな」

「………そうだね」

 

話しかけようとしても、桜雪はただ相槌をうつだけで、それだけだった。

 

「………桜雪「今日は、もう帰るね……」

「あ、ああ、わかった。気をつけて帰れよ?」

 

桜雪は一言、うん。と力無く頷いた後、トボトボと帰路についた。

俺はそんな、哀愁漂う背中を、ただ見つめることしかできなかった。

 

 

ーーー雪はやはり、冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

日が経って、今はあっという間に引っ越しの前日の朝。

俺はどこか、遣る瀬無さを残したまま、ほとんど家具が片付けられた部屋の中で朝を迎えた。この重い体は、朝特有の気怠さか、或いはあの日の喪失感が続いているのか。

 

「桜雪……」

 

再び女の子の名前を口に出す。そしてため息をつき、再び眠りにつこうとする。

 

プルルルル

 

「電話……?」

 

いやいや立ち上がり、電話に出る。

 

「もしもし……?」

『もしもし奏斗、白雄だ。今日予定あるか?』

 

その声は、白雄のものだった。

 

「あるけど……今日はそんな気分じゃないんだ」

『……まぁとりあえず来いって。〇〇駅の近くのスタ〇で10時待ち合わせな」

「わかったよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅から、歩きで5分歩いて、待ち合わせの場所に着く。店の中に入ると、手を上げる白雄と、もう1人女の子がいる。なんか見覚えがあるな、と思いつつも、店員に同席をする事を伝え、白雄達の元へ向かう。

 

「おう奏斗、きたか」

「おはようございます、奏斗君」

「…なんでクラス委員長の笹原がいるんだよ」

「何故って、別に良いじゃないですか」

 

彼女は笹原 桃(ささはら もも)。高校から知り合って、同じクラスメイトで、俺のクラスの委員長をやっている。

誰に対しても敬語で、そういう真面目な部分で男女ともに人気がある。

一応容姿を言っておくと、肌は白く髪の色、髪の色はともに黒で、腰まで伸びたロングヘア。前髪を分けたところにヘアピンをしている。

まさに、THE 優等生と言ったところか。

 

笹原の隣の席に座り、マダオと向かい合うように座る。

 

「それで、今日は何の用なんだ?」

「ああ、今日はちょっと付き合ってもらうぞ」

「…おい、俺はそんな趣味は」

「違うからね!?」

 

芸能人顔負けの盛大なツッコミが炸裂した横で、笹原は首を傾げ、どう言う意味か考えている様子だった。

そうだよね、純情なお方はそっち系は知らないんだよね。いや、知らなくていいけど。

 

「あ、奏斗君。寝癖ついてます」

「え?あ、本当だ」

 

いきなり寝癖がついてる事を指摘され、視線はマダオから笹原へと移る。

そして笹原は、ちょこんと指で俺の飛び跳ねている寝癖を触り、ふふっと優雅に笑う。端っこでマダオが目を見開き、恐ろしい形相をしているのを俺は見た。思わず二度見をしたぐらいだ。

口の動きからすると、俺の名前を呼んでいる。いやだなぁ、怖いなぁ。

 

くそっなんで奏斗だけ…まぁいい。とりあえず店を出て、目的の場所に向かうぞ」

「目的の場所って?あ〜怖かった

「それは、後のお楽しみだ」

「お、おう」

「それじゃ行くぞー」

 

 

 

 

 

 

 

会計も済ませ、そんなに時間がかからない距離を歩き、目的の場所に着いたわけだが。

 

「いいか?絶対に入るなよ?あと中も見んなよ?」

「フリじゃないですよ〜」

 

バタン

 

これはフリか?フリなのか?

そして俺は扉をそぉ〜っと開け………ることはしない。

 

 

 

今、俺はいかにも高そうなレストランの前で待たされている。なんたってこんな所に、学生が行くような場所じゃないだろう……2人はどうしたかって?お店の中に入って行きました、()()()()()

……別にぼっちじゃないし。

ちょっと内心寂しく思いながらも2人を待っていると、扉が少し開き、その間から手でひょいひょいとこちらを招く。

扉まで歩いていって、扉を開けると。

 

パァーン パン パァァァァァン ホッヒヒ

 

突然のクラッカーの音に驚く。………おい、いまなんか変なクラッカーあったぞ。

 

「これは一体……」

「お前が引っ越すって聞いた次の日からお別れ会の企画をしようと思ったんだけど、普通なのもあれだし何か無いかって探したんだ。そしたら親父が、その友人の店を紹介してくれて、事情を話したら承諾してくれたんだ。ギリギリになったけどな」

「そこまでやらなくても……」

「奏斗君が引っ越すって聞いて、皆さんいてもたってもいられなかったそうですよ?」

 

「そうだぞ奏斗ー!」

「引っ越すならちゃんと私たちにも言ってよね!」

「ホッヒヒ」

「お別れ会ぐらいちゃんとしろよお前は!」

 

「みんな…ありがとう」

 

近くにいた悠斗と洸夜も俺の方へ向かってきた。

 

「奏斗、まだ礼を言うには早いよ。まず最初に言うべき人がいるでしょ?………早く行ってあげなよ」

 

と悠斗。それに続くように

 

「………」

「………なんか言えよ!」

「だって全部言われちゃったんだもん!」

 

こう言う場面でも相変わらずな、洸夜であった。

 

 

 

あいつの所に向かおうとすると突然、肩に手を置かれて、そちらを向く。

 

「マダオ、どうした?」

「……桜雪ちゃんは近くの公園にいる。女子達も同行してるからすぐ分かるはずだぜ」

「……!ありがとう、()()。行ってくる」

 

本当にかっこいいよ、お前。

白雄はグッとサムズアップしたかと思えば

 

 

 

 

「………奏斗が久しぶりに俺の名前を呼んでくれたああああ!!!」

 

 

「あーはいはい」

「よかったなー」

 

前言撤回、やはりマダオはマダオだった。

マダオに対して、クラスのみんなも呆れているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園に向かうと、白雄が言っていた、女子達がベンチに座っていた。

俺はすぐさま駆け寄る。

 

「桜雪っ!」

「え、奏斗、君?」

 

桜雪の声を久しぶりに聞いて安心したのか、体から力が抜けそうになったが堪える。

そして、桜雪に近づいたときには、他の女子はいなくなってた。どんだけ有能なんでしょうか俺のクラスメイト達は。

一呼吸置いて、言うべきことを言う。

 

「桜雪、伝えたいことがある」

「……」

 

今度の沈黙は、この前の時のような沈黙ではなかった。きちんと、真正面から向き合ってくれている。

 

ありがとう

「え?」

 

 

 

「ずっと一緒にいてくれて、毎日が本当に楽しかったよ………白雄達、そして桜雪に会えてよかった。俺、桜雪が大好きだよ」

「ふえぇ!?///」

 

「前にあんな事があったから、ちょっとくすぐったいんだけど………って桜雪?」

か、奏斗君、今大好きって………ひ、ひゃい!?」

「どうした?顔真っ赤だぞ」

「な、なんでもないよ、ウン、ナンデモナイ」

「何故に片言?」

 

いつの間にか、いつもの会話に戻っていて、それに気づいた俺と桜雪は互いに目を見合わせて笑顔になる。

 

「奏斗君、この前はごめんなさい。私、奏斗君がいなくなるって聞いて、本当に悲しくて、冷たい態度取っちゃった………」

「いいんだよ、俺だってそうなる」

「奏斗君……」

「それに、俺はいなくなったりしない。家は離れても、電話やメールだってできる。だからいなくなるなんてことはないよ」

「うん、奏斗君の言う通り。ふふっ……」

「桜雪、みんなのところへ行こう?」

 

差し伸べた手は、しっかりと握られーー

 

「………待って」

 

ーーずに、桜雪の手は俺の服の裾を掴んでいた。

 

「ん?」

 

すると桜雪は、顔と耳を真っ赤に染めて、上目遣いをしながら。

 

「さっき、その、私の事…………す……って///」

「え?」

 

うまく聞き取れずに、耳を近づける。

目をギュッと瞑り、桜雪は言った。

 

「さっき、私の事大好きって言ってくれたよね?///」

「………は?」

 

ちょっと待った、俺がいつそんな事言った?

 

 

いや、待てよ?

 

 

 

ーー

 

ーーーー

 

『ずっと一緒にいてくれて、毎日が本当に楽しかったよ………白雄達、そして桜雪に会えてよかった。俺、桜雪が大好きだよ』

 

『俺、桜雪が大好きだよ』

 

『大好きだよ』

 

ーーーー

 

ーー

 

 

 

あぁ、やってしまいましたなぁ。

って他人事のように言ってる場合じゃない。

 

「あの、桜雪?」

「だから、そのね………私も、その///」

 

桜雪、君はいま盛大な間違いをしているよ。いや、これは俺の言い方も悪いけどさ。

 

「桜雪〜、その大好きっていうのは、友達としての大好きと言う事でして……」

「私、とっても嬉しいな………って、え、そうなの?」

「ああ、だから異性としての大好きって意味じゃ、ないんだ……ははは………」

「…………」

「あの、桜雪さーん?」

「奏斗君のばか……私が勝手に勘違いしちゃって、恥ずかしい」

「ごめんって」

「……ふーんだ」

 

桜雪がこうなってる時は、頭を撫でると良し。

それでも、ツンケンとしてる場合は好物のショコラケーキを与えるが吉。

 

何の動物の紹介だよ、と1人でツッコミを入れて、とりあえず頭を撫でる。

 

「むぅ………えへへ」

 

ほら、機嫌が良くなった!

これで一件落着っと。

 

 

 

 

「全く、お二人さん、熱いねぇ〜」

「「え?」」

 

この声は………!

いや、いるはずがない、あいつがこんな所に。

声のする方へ向くと、俺の願いは一気に消え去った。

 

「ちわっす」

「「マダオ(君)!?」」

「俺だけじゃない、クラスのみんなが見てたぜ?気づかなかったか?」

「「気づかなかった!!」」

「そんじゃ、おーい、みんな。出てきていいぞー」

「「みんな!?」」

 

マダオがそう言うと、あらゆる茂み、木の裏からクラスのみんながぞろぞろと出てきた。

そして一言

 

「「「「ごちそうさまでした!」」」」

 

「「どう言う意味!?」」

 

度重なるツッコミに息を切らしていると、マダオが俺たちの近くに来て

 

「まぁ何はともあれ、これで一件落着ってやつですかね?」

「「してるけど、してない!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲

 

そんな騒がしい1日が終わり、引越しをする当日。

 

クラスのみんなが送迎に来てくれた。

 

ある人は泣き、ある人は、また会おうと約束した。

 

そしてマダオ…いや白雄は、予想どうり大号泣。それにもらい泣きをした男達の光景はまさに地獄絵図だったが、実は俺も、もらい泣きした。

 

悠斗と洸夜とも様々な雑談をし、最後に別れの握手を済ませ、最後に桜雪の元へ。

 

 

 

 

「もうそろそろ、だな」

「うん……」

「心配するなって、電話だっていつだってできるんだし」

「……でも!奏斗君が行っちゃうのは…………嫌」

 

そう言い終わると同時に、桜雪の目には涙で溢れていた。

 

「え、ちょ、泣くなよ」

「だってぇ……だって!」

 

子供のように、泣き噦る桜雪。拭っても、涙が止まることはない。

そんな姿を見て、俺は桜雪を力一杯抱きしめずにはいられなかった。

 

「奏……斗君?」

「絶対に、また会いに行く、約束する。だから次会う時は………河川敷でな?」

「……うん!約束だから……ね?」

「ああ、約束だ」

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

それは一年前の話ーーー。

 

 

 

 

 

 

冬。と聞くと、どこか寂しい雰囲気にさせるものがある。人によっては、寒い季節とか、1年の終わり、等。

感じることは多種多様だ。

けど、俺にとって冬はーーー。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー最高の季節だ。

 

 

 

 

 




というわけで、奏斗君の過去のお話は終わりでございます。


次回もよろしくお願いいたします!

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