Fate/alternative   作:ギルス

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繰り返されていた、歴史。
いつしか綻び、異物が混じり、流れは幾筋にも分かれて変わる。
この道程は、騎士王の望みにも、天の杯にも、無限の剣の丘にも繋がらない、第四の道。
未知は既知を覆す。歴史がーー転換する。

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これはFate/staynight、及びFate/GrandOrderの二次創作です。
捏造設定、独自解釈、オリキャラなどが入る可能性があります。

また、原作をなぞる展開、演出上止むを得ず原作からの引用文が入る事があります。
(…と、言っていましたがかなりオリジナル要素が先行し始めました、引用は少なくなるかもしれません。)

それでも構わないという心の広い方のみ、先へとお進み下さい。
無理!という方にはブラウザバックを推奨致します。

士郎とぐだ子を軸に物語は展開します。

現在判明している正史との相違点。

◆ マスターは衛宮士郎では無く、ぐだ子。
◇ 切嗣は死が確定しておらず、行方不明。
◆ アルトリアは召喚されず、バーサーカー。
◇ バーサーカーがクー・フーリン・オルタ。
◆ アインツベルン陣営はセイバーを召喚。
◇ ランサーが、近代中国の英霊らしい。

また、ぐだ子はカルデアでの事は覚えていませんし、そもそも並行世界の同一存在です。
しかし、同じ人間ではありますから…何かはある、かもしれません?

ぐだ男は………。

それではどうぞ、拙い作品ではありますがお楽しみ下さい。


第8話『円環矛盾』

林の中、走り回りながら飛来する釘剣を躱す。

先ほどからあの女サーヴァントは…二対一の不利を悟ってか、サーヴァントでは無くマスターを狙いうちしてきた。

 

「っ、また!?」

 

ガキン!、とアーチャーの双剣が凛に迫った釘剣を弾き、即座に相手は飛び退いて、と似たような攻防を数合続けていた。

 

「ええい、しつこい奴…っ!」

 

アーチャーが苛立ちながらも相手を補足しようと辺りを探る。

しかし、早い。

 

「ランサーとは違うが…立体的な機動とは厄介なものだなっ…!」

 

「純粋な速さならランサーに分があるでしょうね…っ、でもこう飛び跳ねられちゃ…!」

 

「ち、俺の精霊の狂騒 (スキル)の効果範囲を見切りやがったか…範囲ギリギリから仕掛けてきやがるな…」

 

迂闊にもスキルを見せてしまったのも悪かった、その効果範囲を相手に見せてしまったのだから。

警戒した相手サーヴァントは先ほどから一定距離を保ちながらしか仕掛けてこないのだ。

 

「埒があかねえ、これでも喰らいやがれ!」

と、自分の宝具である槍をあっさりと投擲するバーサーカー。

 

「!?」

 

これには流石に驚き、更に大袈裟に飛び退く相手サーヴァント。

 

(こいつ…あっさり槍を投げただと?)

アーチャーはそう、訝しむ。

しかしその答えは直ぐに出る事になる。

 

ズリュ、っという感じにバーサーカーの掌から槍が生えたのだ。

 

「!」

 

まるで体の一部を切り離して投げただけに見えた。

何せ槍は直ぐに取り出され、二本、三本、と次々に投擲されたからだ。

 

「く、なんとデタラメな!?」

 

紫の髪を振り乱しながら、奇妙なアイマスク姿の女サーヴァントは必死に回避行動をとり続ける。

 

「クハハハハ、そらそらそらっまだまだあるぞ、逃げろ、怯えろっ!」

 

段々とバーサーカーらしい、というか恐ろしいほどの笑みを浮かべ、高笑を続けるバーサーカー。

 

「…分が悪い、か」

 

そう呟き、大きく距離を取るサーヴァント。

そこに、苛だち混じりの声が聞こえた。

 

「ちっ、何やってんのさ、ライダー?」

舌打ちを隠しもせず、罵りを上げるその声は。

 

「…し、シンジ?」

 

間桐慎二。

桜の兄で、衛宮士郎の同級生。

私に、散々ちょっかいを出してきたあのワカメが、そこに居たーー。

 

****************

 

なんだ、一体何が?

何故、慎二が、サーヴァントを…?

ライダー、そう呼んだ。

つまり、それはーー

 

「…間桐くん…貴方がマスターだったなんてね…気がつかなかったわ、どうして?間桐の家系はもうーー」

 

「魔術師として、枯れ落ちた、って?あのさ、知識はあるんだ…幾ら僕に魔力や回路が乏しかろうがさーー方法は、あるんだよ遠坂。」

 

してやった、としたり顔で言い放つ慎二。

だが、待てよ。

おまえが、マスター、だったのなら。

 

「答えろ、慎二。」

 

「あ?衛宮?なんだよなんだよ、おまえがマスターだったの?生意気だなあ…衛宮の癖にそぉんな強そうなサーヴァント、従えてさあ…」

 

勘違いも甚だしい、が。

誰もわざわざ正すことはなかった。

 

「…答えろ、よ…この、結界は慎二、おまえが仕掛けたのか?」

 

聞きたくはない、だが聞かなきゃいけない。

 

「は?ああ、そうだけど?」

 

あっさりと、ヤツはそう、答えた。

 

「し、慎二ィィィ!!」

激昂し、突撃する。

 

「あ、馬鹿、懲りなさいよあんたは!」

凛が慌てて宝石を構え、放つ。

 

「あ〜っ、もうっ、勿体無いっ!」

 

切り札の宝石程ではないが、それなりに高価なそれを躊躇いながらも起動する。

 

「弾けろっ!」

 

投げ放たれたトルマリンから迸る電撃が視界を紫電で染め、奪う。

 

「穿て。」

バーサーカーの声に反応して、其処彼処に突き刺さっている槍から一斉に、刃が伸びた。

穂先の根元、横向きに左右三本ずつある刃が凄まじい勢いで。

偶然、その内の一束がライダーの肩を切り裂く。

 

「ぐっ…!?」

 

「ちっ、本気で何してるんだよお前はぁっ、もう、いい…一旦退いて…」

 

即座に慎二を抱え、校舎のある方へと飛び退くライダー。

 

「逃がすかよっ!」

 

バーサーカーと、士郎がまた懲りずに走り出した、その瞬間。

 

ズクン。

 

視界が一瞬ーーブレた。

甘い匂いが増し、辺りに充満する。

 

「ぐっ…これ、は!」

士郎が走り出した足を止め、口をおさえる。

 

「不利を悟って…ついに切り札をきったと、そういう事か…」

アーチャーが呟き。

「あんの、ワカメ頭っ、なんて事を!」

凛が吠える。

 

「言ってる場合、かよっ先に行くぞ!」

士郎が、叫び、走り出す。

 

「ーー肉体強化 (フィジカルブースト)開始 (オン)!」

 

それは、魔術の行使に他ならない。

呪文とか、掛け声みたいなそれはイメージを引き出し形にする為のものであり、なんでもいい。

魔術師には別段代わり映えのない自身の肉体強化。

凛は、精々思っていたよりまともな魔術が使えるんだ、程度の感想。

 

朔弥は、あ、あれ良いなあ、自分は使えないし、程度の感想。

 

しかし、一人の男は違う。

驚愕に目を見開いていた。

(ば、馬鹿なーー何故、あんな魔術を使える!)

 

有り得ない。

今、この時代の、この男が此れ程自然に魔術を使えるなどと。

 

そう、考えても見ろ、今回の円環 (ループ)は、明らかにおかしいのだ。

 

彼女が居ない。

まるで知らないバーサーカーが居る。

何より、本来ならば彼女についての記憶以外は殆ど磨耗し、或いは聖杯が記憶を封じていたのかもしれないと、今ならば思い至るーーが。

 

今回は余りにも、思い出せる事が多い (・・・・・・・・・)のだ。

 

目の前で逃げたライダー。

彼女も覚えている。

真名や、マスターに関しては確かに記憶に欠落があり思い出せない。

しかしーー姿形、それそのものは見た瞬間に思い出した。

どういう訳だか、彼女と自分がどこか近未来的な場所で笑い、語り合う姿まで見えた。

 

訳がわからない。

この、記憶はーー何だ!

 

校舎へと走り込む士郎、遅れて続いていく凛、朔弥。

それに追随しながら混乱する思考を兎に角今は、と隅に追いやり切り替える。

 

「……!」

 

三人と二騎が足を止める。

生徒達が、廊下で、教室で倒れ伏していた。

生徒だけではない。

 

そこには…意識を半ば以上混濁しながらも生徒をどうにかしようとしている、藤村大河の姿もあった。

 

「あ、あれぇ…士郎?」

 

「…藤、姉っ!」

 

「よかったあ、大丈夫そ、うだね…」

 

安心してか、そのままーーポス、と士郎の胸に寄りかかり意識を手放す、大河。

大河をそっと横たえ、視線を前へと飛ばす。

 

「…慎二。」

 

「何だよ衛宮?」

 

廊下の突き当たりには、慎二が立っている。

その前には、サーヴァント、ライダー。

 

「最後だ、聖杯戦争なんかから手を引け、この物騒な結界を解除してーー」

 

ズバッ、と黒い何かが士郎の頬を掠めた。

ツー、と赤い血が流れる。

 

「馬鹿なの?やめるわけないじゃんか…それとも二対一だからって調子に乗ってるのか?」

 

スウ、と士郎の目が怒りに細くなって。

 

「残念だ、本気で残念だよ慎二。」

 

「よせ。小僧ーー貴様が魔術を使えるからと、サーヴァントに…」

 

アーチャーが制止し、自分達に任せろと言わんとして。

 

「よけいなお世話だ、あいつはさ…友達なんだよ、だからーー俺がやらなきゃ、いけないんだよーー投影 (トレース)開始 (オン)!」

 

左手には肉厚の刃を持ったナイフ。

所謂軍用ナイフ、ファイティングナイフと呼ばれる物だ。

右には拳銃、回転式ーーリボルバーと呼ばれるタイプの大口径の物だ。

ダンウェッソンモデルW12。

357マグナム弾を吐き出す、本来なら片手で扱うような代物では無い。

 

「ーーっ、やっぱり刃物はまだしも拳銃の類は反動がきついな、クソ。」

 

軽く頭を振り、頭痛を振り払う士郎。

 

「な、ななな、なんだ今のっ、どこからそんな物騒なモノ取り出した!?」

 

「ーー問題ありません、慎二、あの様な現代兵器など我々サーヴァントには通用するわけがーー」

 

ガォン‼︎、ガキィン‼︎‼︎

 

「ーーっ!?」

 

「流石は、英霊…今のを止めるかよ。」

 

確かに、不意とはいえ彼女、ライダーは弾丸を止めた、いや…辛うじて弾いた。

何故そうしたのかと問われれば、悪寒がしたのだ。

何故だか、これは食らうわけにはいかない、とーー。

 

弾いた弾が、彼女の髪を掠め、引きちぎっていた。

数本の紫髪が宙を舞う。

 

「ーー何です、何なんですか貴方は。」

 

釘剣を構え、油断なく構えるライダー。

敵は二騎と、さらに一人。

自身に致命の一撃を与える可能性が増えたのだ。

もはや一瞬たりとも気は抜けない。

 

「なーー!」

凛、そしてアーチャーは混乱の極みにあった。

有り得ない、今の士郎が使った魔術。

何もないところから武器が生成された。

更には弾丸の威力。

髪とはいえ、サーヴァントの身体に損傷を与える。

つまりそれは、無から生み出された概念礼装だということか。

 

「ーー出鱈目だ、貴様、一体ーー?」

アーチャーの驚きも今は士郎には関係がない、むしろ都合がいい。

慎二は、自分が止めるのだから。

 

「正義の味方ーー見習い、ってところか、な。」

 

ありえない、凛は目の前の光景が信じられず、繰り返し心中で呟く。

 

(投影?いえ、物資の創造魔術?

にしたってそれが概念を帯びているとかどんな奇跡よーー!?)

 

今にも叫び出したいくらいだ。

しかもあいつは。

マスターですらないのだから。

 

「ーー不本意ではありますが、使わせていただきましょう…いいですね?慎二?」

 

ライダーが、意を決した顔ーー口元しかわからないが、をしてこちらを見据えた。

ふ、と力みなく左手が上がり、眼帯を外し、た。

 

「これはーーまずい、皆、奴の目を見るな!」

アーチャーが何かに気づいて、叫ぶ。

だが、遅かった。

 

ライダーの眼帯、自己封印・暗黒神殿(ブレイカー・ゴルゴーン)が外される。

現れたのは蛇眼。

見たものを石へと変える、魔の瞳。

 

「ーーこいつは、石化の魔眼かよ!」

 

「や、やばっ足が!」

 

焦る凛、バーサーカー、アーチャー。

足が徐々に石へと変わっていく。

サーヴァントはまだマシだ、対魔力によってその侵攻は緩やかだから。

だが、凛と朔弥は見る間に石化が進む。

 

「うぐ!?」

 

そしてそれは、士郎も同じく。

サーヴァント二騎がいる事から油断したのだ。

士郎以外の面々は完全に射程から逃れ損ねた。

士郎もまた、機敏に反応したものの片足が石化し始めていた。

 

「ーー衛宮先輩ーー頼みました。」

朔弥が、そう一言告げる。

朔弥の片手から、翠色の光が降り注ぐ。

イシスの雨。

彼女のもつ数少ない魔術の一つ、その効果は、あらゆる状態異常の回復。

そしてそれを最後に朔弥が一気に石化する。

魔術をオーバーロードさせ、すぐ隣の凛にかかる呪いを力技で強引に自身に集めたのだ。

 

「え、ちょっと!?」

 

「ーー!」

 

士郎は唇を噛み締め、血を流し、直後に叫ぶ。

 

「ッ、アァッーー!」

 

ズガァァン!

けたたましい音を立て、弾丸が奔る。

起源弾。

衛宮切嗣、魔術師殺しが切り札とした魔を破壊する弾丸が放たれる。

 

「ぬ、うーー!」

 

美貌を歪ませながらライダーが仰け反り、回避しようとするも、完全にはかわしきれずに額を掠める。

 

威力は殆ど通らない。

僅かに額の皮を削り、血を流した程度の。

サーヴァントにしてみれば数秒もかからず治癒する程度の傷が。

彼女を、毒に浸した。

 

「ーーこれ、は…魔力の流れが!?」

 

「お、おい!?」

 

狼狽える慎二。

そして、ライダーは…

 

「ーーーーッ」

 

声ならぬ叫びを上げながら、自らの喉を。

切り裂いた。




はい、おはようございますこんにちはこんばんは。
ギルスです。(英雄王ではありませんよ?w)

なかなかオルタニキとセイバーの戦いまで行きません、、、
まあ、流石にライダー戦はしないといけないなあと強引ですがこんな展開に。

原作通りの落ちこぼれ士郎だと思ったか?
残念、セイバーがいない補正で魔術師殺しの技を受け継いでいたよ!

あくまで士郎の理想が高い為以前ろくにおそわらなかったと答えた士郎ですが、実際にはこの世界の士郎には改めて教えることが少ないから、だったのです。
まあ、切嗣は確かに魔術師としての心構えなんか教えませんでしたけどね。

第一切嗣自身にそんなもの無いでしょうから。

さて、一時的ですが朔弥が脱落。
そして士郎が活躍ーーする、のか?
うん、まだ私にもわかりませんw

一応、士郎が現在使用している魔術をデータに。

投影魔術

創造可能な武具
強化を施した刃物類
一部銃器(あまりに複雑な構造だと魔力を通した概念礼装としては扱い辛くなる)
衛宮切嗣の起源弾

身体強化

身体能力の向上。
サーヴァントのステータスで言えば一時的にだが筋力、敏捷をCランク程度には上げられる。

視力強化

夜目をきかせたり、数十メートル先を見渡す程度に強化可能。


と、言った具合です。
起源弾を複製可能な時点でやり過ぎかとも思いましたが、切嗣みたいな爆破や暗殺はしないだろうから…ある意味切嗣が撃ち放題な状態よりはマシです、多分。

それでは皆様、また次回更新でお会いしましょう!

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