Fate/alternative   作:ギルス

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ーー神の憎悪、神の呪い。
神々とは、人から見れば理不尽そのもの。
人は神の域には並び立てぬが故。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この作品はFate/staynight、及びFate/GrandOrderの二次創作です。
捏造設定、独自解釈、オリキャラなどが入る可能性があります。

また、原作をなぞる展開、演出上止むを得ず原作からの引用文が入る事があります。

それでも構わないという心の広い方のみ、先へとお進み下さい。
無理!という方にはブラウザバックを推奨致します。

士郎とぐだ子を軸に物語は展開します。

現在判明している正史との相違点。

◇ マスターは衛宮士郎では無く、ぐだ子。
◆ 切嗣は死が確定しておらず、行方不明。
◇ アルトリアは召喚されず、バーサーカー。
◆ バーサーカーがクー・フーリン・オルタ。
◇ アインツベルン陣営はセイバーを召喚。
◆ ランサーが、近代中国の英霊らしい。

また、ぐだ子はカルデアでの事は覚えていませんし、そもそも並行世界の同一存在です。
しかし、同じ人間ではありますから…何かはある、かもしれません?

ぐだ男は………。

それではどうぞ、拙い作品ではありますが宜しければお楽しみください。


第7話 『神性』

「ーーマスターよ、儂は一体全体何時までこの様な茶番を繰り返せば良いのだ?」

 

赤髪を束ね、その身を包む装いもまた紅い。

眼光鋭く、その身体は鋼の如き逞しさと、内包する気力を感じさせる。

 

「そう慌てるな…ランサーよ」

黒いカソックを纏い、その高い背丈は闇の中にあってなお、存在感を示す。

男は地下室の明かりをつけ、背中を向けたままにこちらに話かける。

 

「慌てるなと言うがな…セイバー、アサシン、キャスターを覗いて他三騎は一度は手合わせしたがの…いい加減全力で戦わせて貰えんか?」

 

カソックの男は、チェスの駒の様な物を地図上に配置し、動かす。

7つの駒、7騎のサーヴァントを模したピースが動かされ、穂群原学園の位置に、バーサーカー、アーチャー、そして、ライダーの駒が配置される。

カッ、と硬質な音を立ててガラステーブル上の地図上に駒が立つ。

 

「時がくれば嫌でもやり合うのだ。」

故に待て、とこれまで、幾度か繰り返した問答はやはり同じ結末を迎える。

 

「引き続き警戒はしておけ、なに…いずれはお前が楽しめる戦いもあるだろう。」

 

「ーーフン、まどろっこしい事だ。」

 

***************

 

「ーー本当にごめんなさい、衛宮君、それに…」

 

「九重、朔弥ですよ、遠坂先輩。」

 

「ありがとう、九重さんーーアーチャーが本当に失礼な事をしてしまったわね…」

 

「ですから、お互い様、でいいじゃないですか、それより今は学園の事を。」

 

頭を下げる凛に朔弥はそう、切り返す。

 

「ーーそうね。」

考えこむ様にして、数瞬躊躇いを見せた後、凛は口を開く。

 

「今、学園に張られた結界は…ハッキリ言って放置できるものじゃないわ。」

 

「ーーどんな、ゲホ、モノなんだよ?」

まだ僅かに咳き込みながら言葉を挟んだのは士郎。

 

「発動したらーー中に捉えた人間を…溶かし、殺して…にじみ出た魂を吸い上げるーー外道の産物よ。」

 

「ーーーーッ!?」

士郎の顔が怒りとも焦りともつかない表情に変わる。

 

「術式、壊せないんですか?」

 

「あまりに複雑すぎる…悔しいけど。サーヴァントの使う神代の魔術でしょうね…無理だったわ、昨晩試みたけれど僅かに遅延させるのが関の山。」

 

士郎の目が、お前は?、と朔弥に向く。

 

「ーー冬木のセカンドオーナーである遠坂先輩にできないなら私にはもっと無理、かな…」

 

「セカンド、なんだって??」

 

士郎の言葉に、凛は顔を顰める。

 

「外様の彼女が知っていてなんでこの地に住んでる貴方が知らないのよ…貴方の師は一体何を教えていたのかしら…」

 

呆れ顔で凛が話すのも無理はない。

セカンドオーナーとは地域一帯を管理する者ーーつまりはこの地域の魔術師の元締め、と言える存在だからだ。

本来この地の魔術師ならば知っていて然るべき、住み始めた段階で挨拶くらいすべき相手だからだ。

反対に無断で住んでいるならばそれはそれとして尚更警戒対象として知っているべきである。

 

「お、オヤジは…切嗣は俺に魔術を教えるのは反対していたぐらいだからなあ…本格的に教えを請う前に居なくなってしまったし…まともに魔術師としての知識は教えられてないんだ。」

 

(呆れた…衛宮君のお父さん…一体何を考えて何を教えていたのかしら…まあ、今はそんな場合では無いけど…)

 

「そんな事より今は学園だ、どうしたらそんな危険なモノを取り除ける?」

 

「ーー1番確実なのは、仕掛けたサーヴァントか、そのマスターを…殺す事よ。」

 

「殺さ、なきゃ、駄目なんですか?」

質問していた士郎よりも先に聞き返したのは朔弥だ。

 

「駄目ね、だってマスターを殺されたサーヴァントと、サーヴァントを失ったマスターが再契約して新たな敵になる、なんてことだってあり得るんだから。」

 

「ハッ、ならサーヴァントを殺し尽くせばいいーー抉って、斬り裂いて、蹂躙してやればいいだろう。」

 

「暴論ね…それが容易く出来るなら早々にやっているわ。」

 

「ーー弱い、弱いな、弱いから安易な手段に頼るーー単純な力だけを言ってるんじゃあない、心が弱い、決意が足りない…芯がない。」

 

「ーー言ってくれるわね、ならアンタはどれだけ強ーー」

 

ジャラララッ、ガキィン!

 

不意に振り抜いたバーサーカーの腕に、槍が瞬時に現れ、飛来した鎖を弾き、絡め取る。

その先端は巨大な釘状になっており、投擲して刺す武器ーーと、言うよりそれは地面に杭打たれた鎖をそのまま、設置用の杭ごと投げつけたかのような凶悪なものだった、言うなれば釘剣と呼ぶべきか。

 

「そうだな、不意打ちを防いでやるくらいには力はあるぜ、え?」

 

嘲りを含む視線は、私の背後で霊体化を解いたアーチャーに向けられたものか。

 

「礼は言わんぞ…私でも充分間に合っていたからな。」

 

アーチャーは未だに不機嫌極まりない、しかしマスターである遠坂さんの危機に仕方なしに実体化し、武器を構えた様だ。

 

「驚きました…あれを止めますか…あなた。」

 

雑木林の木々の間から見えるのは紫。

美しくも怪しい紫色の髪が逆さに垂れていた。

 

「ーーサーヴァント…ッ!」

 

妖艶な肢体、怪しげに光を照り返す紫髪。

樹木に逆さにぶら下がりながら釘剣の逆端を握りしめる、サーヴァントの姿がそこにはあったーーーー。

 

****************

 

ーーHalf a year ago【半年前】

 

 

「ーーキリツグが…養子を…?」

 

「ハイ、今代の聖杯戦争の事前情報収集にあたり得られた情報です…間違いはないかと。」

 

イリヤに仕える女性型ホムンクルス、セラが神妙な顔で…いや、普段から変わらぬ無表情で語る。

 

 

「私や…お母様を忘れて?」

 

「所詮は裏切り者…聖杯に手をかけながら、姿を見せる事も無くお嬢様を気にかけもしないで10年間放置した輩です。」

 

「これが、その養子、衛宮士郎、だって。」

白の礼服に身を包んだ顔のつくりがまるで同じセラとは対照的にどこか気薄な気配を纏うホムンクルスが写真を取り出し、イリヤの前に差し出した。

 

「リズ…黙りなさい。」

 

「ーーいいわ…サーヴァントの召喚、今すぐ行いましょう…最高のサーヴァントを呼び寄せてみせましょう、お爺様の思惑に乗る気は無かったけれど…潰して、やる…衛宮、士郎ーー!」

 

憎しみが、頭を支配する。

愛情が、憎悪に変わる。

愛しいと言う心は…一歩バランスを崩せば一転して対象を滅ぼすモノへと変わり果てる。

 

捨てられた。

キリツグは、私を、捨てた。

壊した。

あの人は…アインツベルンを裏切り、なおかつ私を…私を、捨てた!

幸せだったのに、お母様が帰らないのは仕方ない、決まっていた事だもの。

聖杯戦争が起きた時からわかっていたから。

でも。

キリツグはーー生きていながら私を迎えにこない。

その上、養子を?

 

様々な考えが浮かんでは、怒りに塗つぶされる。

無意識に指を噛みながら、地下室への階段を降りていく。

 

「ーーこれが、聖遺物ーー」

 

赤い高級感のある布にくるまって、細長いものが安置された祭壇。

否、細長い、とは遠目に見ての話。

全体のシルエットとしては確かにスラリと長い…両・片手汎用のツーハンドソード。

しかし、その全長は優に3m

槍よりも長く、刃だけで2mを超える。

人が持つには巨大すぎる、剣であった。

 

「リズ、セラ。」

 

「はい、お嬢様…準備は万全で御座います、後は魔力を注ぎ、呪をのせるだけ…」

 

「よろしい、ならばーー始めましょう。」

 

時刻は、丁度月がのぼる頃合いだ。

魔力の循環も問題は無い。

 

「ーー素に、銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には大師、シュバインオーグ。

 

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよーー、

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

閉じよ(みたせ)

 

身体中が、沸き立つ。

魔力回路が焼き切れそうな程、熱い。

 

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」

 

「ーーーーーーAnfang(セット)

 

感じる。

すぐ側にーー人智を超えた、神に連なる者が。

 

「ーーーーーーーー告げる」

 

「ーーーーーー告げる。」

 

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」

 

「誓いを此処に、我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者ーー汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ天秤の守り手よーーーー!!」

 

視界が白に染まる。

閃光が奔り、目の前にある巨大な剣が、浮き上がり…、空中で静止する。

ボワッ、っと噴き上がったのは真紅の炎。

炎は輝きを増し、剣の周りで渦巻いたかと思うと、やがて人の形を成した。

 

神々に祝福されたその見事な肉体美。

均整のとれた芸術的な身体のライン。

隆々とした筋肉が、しかし無駄なくついている。

 

肩から、腰までは魔力を帯びた革鎧を纏い、手甲と足鎧をつけたその、姿。

 

眼前に横たえられた、巨大な剣に手を伸ばす。

まるで、喜びに打ち震えるかのように剣が啼いた。

 

キィイイン、と澄んだ音色が地下室に反響する。

柄にその指先が触れた途端。

炎が噴き上がり、かの者の身体を覆う。

 

「!?」

 

イリヤが驚き、目を見開きその様を見る。

 

「ーー懐かしいな、変わらぬ様で何よりだ。」

 

炎はしかし、彼を焼き尽くすどころかその身体を優しく包み、挨拶だとばかりにじゃれつくだけであった。

巻き上がる髪は炎が照り返し、輝くばかり。

 

「サーヴァント、セイバー…■■■■■、召喚に応じ参上したーー。」

 

剣を手に、跪き、頭上に掲げる。

まるで臣下が王から騎士の叙勲を受ける様に。

 

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン…私が貴方のマスターよ、セイバー。」

 

セイバーはその言葉に、ただ黙って頷き、主となった少女の言葉を待つ。

 

「流石は…■■■■最強の英霊ーーなんと言う輝き、なんと言う…神気。」

 

生唾を飲む音が嫌に大きく耳に響く。

眼前で自らの主に跪き、剣を差し出す姿すら。

神々しいその威容。

 

「これならば…此度の聖杯戦争…お嬢様の勝ち…ね」

 

聖杯戦争開始の半年以上前。

聖杯のサポートすら無く…イリヤはサーヴァントを召喚してみせたのだ。

冬木ですら無く、遠くアインツベルン所縁の地にて。

 

「セイバー、これより貴方は我が剣、そして…私のーー」

 

今代の聖杯戦争中最高峰の英霊は、最優のクラス、セイバーとして、限界した。




【後書き的なもの】

少し間が空きまして、作品がまだストックあるのになんでモタモタしてるのかと。
まあ、ちょっとリアルでいろいろありましたのですが。

さて、今回はセイバー召喚の回想が主でした。
召喚呪文も一部改変されてオリジナルです。
だって、我が大師シュバインオーグって…
ゼルレッチさんですよね…あれはつまり、遠坂が唱えた場合になるんではないかなあ、と勝手に考え改変しました。
「我が」のみ削ってます。
まあ原作でも誰が唱えてもそのままなんですけど、どうにも違和感を禁じ得ない為に勝手に変えてます、不愉快に思う方がいたらごめんなさい。

まあ、わかる人にはわかるだろうけどセイバーも一応名前は伏せました。
後、イリヤが外見がかなり成長している点もあり、その辺りはおいおい明かしますが、オリジナルが強くなってきましたから原作引用はかなり減りそうです。

で、ライダーに関しては原作通りのメドゥーサさん。
考えてみたら…この話の面子相手だと涙目なレベル…
がんばれ、末っ子…!?←

それでは、次回、またお会いしましょう!

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